患者のバックグラウンドをトータルに把握し、治療に反映
山川 雅之 院長プロフィール
1956年に東京都で生まれる。1983年に東京医科大学を卒業し、東京医科大学大学院医学研究科に入学する。同年6月、東京医科大学病院外科に入局し、日野市立総合病院、国立がんセンター大腸外科などで研修を行う。1988年に博士号を取得後、牧野記念病院で外科医長、木村病院で副院長、東松山医師会病院で外科部長、順信会目黒整形外科で理事を歴任し、2009年7月、杉並区和泉に山川クリニックを開設する。日本外科学会認定専門医、日本臨床外科学会評議員、日本大腸肛門病学会認定専門医、日本消化器外科学会認定医、ICD(日本感染症学会認定)、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本体育協会公認スポーツドクター、日本セーリング連盟医事科学委員会委員長、日本アンチドーピング機構認定DCO。
東京メトロ丸の内線の方南町駅から歩いて5分ほどのスポーツクラブの地下にある山川クリニックはオフホワイトとブルーを基調とした明るい雰囲気の診療所で、整形外科をメインとして内科、外科の治療を幅広く行っている。ただ疾患を診るだけでなく、患者さんの性格や職業、趣味、家庭環境などのバックグラウンドをトータルに把握した上で、総合診療として治療法を決めていくのが特徴だ。また、痛みを伴う治療については、できるだけ苦痛を感じないで済む工夫をしているという山川院長に、開業までのいきさつや診療方針、今後の課題などについて、お話を伺った。
開業に至るまで
山川院長の家庭は祖父の代から医師の家系である。おばあちゃん子だった院長はお婆様からお爺様の話を聞かされて育ち、小さい頃から自分は医師になるものだと思っていたという。東京医科大学卒業後は大学院に進み、大腸がんを研究テーマに選ぶ。東京医科大学病院、国立がんセンターなどで研修を行い、直腸がんに対する選択的骨盤神経温存手術の術後排尿機能についての研究で、1988年に博士号を取得する。その後は、牧野記念病院など、東京医科大の関連病院で、がん全般に関する外科の治療に携わった。そんな生活を続けるうち、がんの治療に対してある種の疑問を抱くようになる。
「様々な研鑽を積みながら長い間、治療を行ってきましたが、がんの5年生存率はこの20年間で上がることはありませんでした。化学療法にも目覚しい進歩はなく、『人を助けるにはもっと別の方法があるのではないか』と思うようになったんです。そして、早期発見やプライマリケアに力を注ぐことの方が効率的に多くの人を救えるのではと考え、開業を思い描くようになりました。」
それから、開業するならどの診療科がいいのか思案していたが、「整形外科なら痛みで来院した患者さんの治療をしながら、他にも病気があれば、それを治すことができる」と思い、整形外科をメインとした開業を決めた。そこで、整形外科の知識を身に付けるため、友人が経営していた病院に4年間勤務する。
そして2009年7月、いくつかあった候補地の中で、自宅から通いやすく、出身の東京医科大学からも近い、杉並区の和泉にクリニックをオープンした。スポーツクラブのビルの地下にある80坪のスペースをオフホワイトとブルーを基調としたクリニックに改装した。開業資金は約5000万円で、銀行からの借り入れと自己資金で賄っている。オープン前にはポスティングと新聞広告を掲載し、開業支援をお願いした企業にホームページも制作してもらった。
来院患者数はオープン当初は1日20~30人で、1年半近く経った今では70~80人と順調に推移している。
クリニックの内容と特徴
山川クリニックは整形外科、内科、外科、リハビリテーション科を標榜科目として掲げ、整形外科の分野では骨折、捻挫、打撲、腱鞘炎、腰痛、関節痛、骨粗鬆症などの治療を行っている。また内科では糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病や消化器疾患、アレルギー疾患などに加え、漢方の治療も行う。
「例えば葛根湯は風邪薬だと思われていますが、麻黄という成分が肩凝りに有効です。そのため、肩凝りに鎮痛剤だけを処方するのではなく、こういう漢方薬も出すと、高齢の患者さんは特によく飲んでくれますね。また、一般の薬に加え、アメリカの学会でも認められつつある六君子湯などもうまく使いながら治療しています。」
外科の分野では外傷や熱傷の治療、皮膚や皮下の腫瘍切除、巻き爪の手術のほか、これまでの経験を生かし、がんのセカンドオピニオン、緩和治療なども行っている。
「今はモルヒネなどの良い薬が多く出ているので、がんの痛みを少なくし、楽な生活を送れるようにできるのですが、そういうことを考慮する外科医はあまり多くいません。また、医薬用の麻薬は患者さん本人にしか処方できず、家族が取りに行くわけにはいかないので、大きい病院だと待ち時間が長くて大変です。そんな痛みに悩む患者さんを当院でサポートできればと思っています。」
リハビリテーション科では温熱治療器、メドマー、腰部・頚部牽引装置などの機器を使い、治療を行う。広いリハビリ室には、水のジェット噴射で筋肉をほぐすウォーターベッドも置かれているが、これは押す力が強すぎず、身体にあった押し方をしてくれると、患者さんにも好評だ。
治療方針としてはただ疾患を診るだけでなく、その人の性格や職業、趣味、家庭環境などのバックグラウンドをトータルに把握した上で、どの治療法が最も適しているのかを決めていく。また、痛みを伴う治療については、できるだけ苦痛を感じないで済む工夫をしているという。
「例えば、関節注射などは痛いイメージがありますが、世間話をしている間にしてしまうと、あまり気にならないこともあります(笑)。また、何でも頭ごなしに押し付けるのではなく、患者さんの希望もある程度聞いて、治療を長く継続できるようにしています。」
現在、患者さんの7割は高齢者で、リハビリの治療も行っているため、今後はスタッフに作業療法士も加えて、骨折や脳梗塞後の運動機能回復の治療、訪問リハビリなどを行うことも検討している。
院長のプライベート
学生時代、ヨット部に入っていた関係で、今も日本セーリング連盟医事科学委員会の委員長や東京都のヨット連盟の理事を務めていて、夏場はヨットレースの運営に出かけたりします。また、日本アンチドーピング機構認定DCOという資格を持っているので、ドーピングの検査に行くこともありますね。月に1、2回の休みはそんなことに使っていますが、この間は大学生の息子に付き合って、御殿場のアウトレットに買い物に行ったりもしました。
開業に向けてのアドバイス
開業は自分の理想とする医療ができるという点ではいいのですが、勤務医とは異なる雑務も多く、大変な面もあります。医師会や役所に提出しなければならない書類も多いですし、スタッフが働きやすい職場環境も作らなければなりません。製薬会社の講演会に出席したり、勉強も必要なので、勤務医よりも自由時間がないこともあります。したがって、ただ自分の時間が欲しいからとか、お金儲けがしたいからといったことで開業しても、うまくいかないでしょう。開業するにあたっては、こうした大変な面もよく考慮に入れて、検討された方がいいと思います。
「開業はあくまでもスタートだと思います。
妥協しないといけないことや方向修正しなければならないことがでてきます。開業の先輩たちにいろいろ相談できたり地域の状況に合ったアドバイスや情報をもらえるので医師会に入会するのも悪くないです。開業してまだ1年余りなのでまだまだ大変ですが開業を決心した時の思いを忘れず日々の診療に励んでいます。」
タイムスケジュール
クリニック平面図
クリニック概要
山川クリニック |
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院長 | 山川 雅之 | |
住所 | 〒168-0063 東京都杉並区和泉4-1-1 シグマスポーツビルB1F |
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医療設備 | レントゲン(デジタル)・電子カルテ(ユヤマ)・ウォーターベット・リハビリ機器(頸椎、腰椎牽引、干渉波、メドマー)・心電計・スパイロメーター・スモーカライザー | |
物件形態 | ビルテナント | |
延べ床面積 | 80坪 | |
開業資金 | 自己資金:1000万円 | |
URL | http://www5.ocn.ne.jp/~yamakawa/ |