心のこもった医療を地域密着で提供
野本 花奈 院長プロフィール
1972年、愛媛県に生まれる。1997年日本大学医学部を卒業し、駿河台日本大学病院循環器科に入局する。その後、阿伎留病院(現 公立阿伎留医療センター)循環器科を経て、2002年本田病院に勤務する。2010年11月、東京都目黒区に駒沢ハートクリニックを開設し、現在に至る。日本循環器学会循環器専門医、日本内科学会認定内科医、日本医師会認定産業医。
駒沢ハートクリニックは、東京都目黒区の駒沢オリンピック公園に近い落ち着いた住宅街の中にある。野本院長はその地域に20年間在住し、駿河台日本大学病院などの病院で勤務医をしながら、2人の子どもを育ててきた。子どもの母親の友達など友人や知人が多い環境で、2010年11月、自らのクリニックを開業する。大学病院などで培った循環器科や内科の経験をもとに、心のこもった医療を提供する地域密着型の診療所を目指している。
開業に至るまで
野本院長が医師になりたいと思い始めたのは、小学生のときだったという。卒業文集に既に、将来の夢として医師という職業を記していた。中学や高校では理系が得意で、ご両親から「女性も手に職をつけた方がいい」と言われていたこともあり、大学は迷うことなく医学部に進学した。
日本大学を卒業後は、駿河台日本大学病院の循環器科に入局する。最初の2年間は全ての内科と救急科を研修で回り、その後は心臓疾患を中心とする循環器の入院患者を担当していた。関連病院の阿伎留病院(現 公立阿伎留医療センター)循環器科に出向し、再び大学病院に戻った2001年に結婚。仕事が何時に終わるかわからないようなせわしない日々の中、2003年と2006年に子どもを出産した。
「子どもを2人抱えて、大学病院で仕事を続けるのは難しいなと思いはじめた頃、開業することも考えるようになりました。しかし、まずは自宅から近く、保育園へのお迎えも問題なく行けるような病院に就職し、またそこから先を考えてみようと思ったんです。」
「スケジュールはかなりタイトでしたが、インフルエンザの予防注射を患者さんの来院のきっかけにしたかったので、秋には始めたいと思っていました。また退職して半年以上経つと、既についてくれていた患者さんが別のクリニックに行ってしまうかもしれないので、早めに準備を進めました。」
開業資金は約5500万円で、医療機器はレントゲンとエコー、心電図を購入し、電子カルテとCRはリースで導入した。開業時のPRとしてはホームページを制作し、新聞への折込と内覧会を行った。
「私自身、20年間この地域に住んできて、子どもも近くの保育園に通っているので、お母さん友達がかなり多くいるんですね。そうした友人がご家族を紹介してくださったりし、口コミで広がってきています。そういったこともあり、広告にあまりお金はかけませんでした。」
来院患者数はオープン当初は1日5人から6人だったが、開院から2カ月経った現在は10人程度と増加している。
場所の選定について
クリニックの前には東京医療センターがあり、専門的な治療が必要な場合は東京医療センターや駿河台日本大学病院に紹介している。開業の場所を選ぶ際には大きな病院の近くを敬遠する医師も多いが、野本院長はどのように考えていたのか聞いてみた。
「大きな病院では検査も診察も治療も待たされ、さらに会計にも長い時間かかって、本当に1日がかりになってしまいます。そういうことを望まない方も多いのですが、勤務医をしている主人は『患者さんは診療所では専門医療を受けられないことを心配して、大きい病院と繋がっていたいと考えている』と言っています。一方で、病院で待ち時間が長いのは病状が落ち着いた患者さんも数多く通院しているからなんですね。したがって、本当に重症な方は病院で診察していただいて、落ち着いた患者さんは開業医が診るというふうに役割分担をすれば、皆が助かるのではないかと思います。東京医療センターには登録医の制度があり、患者さんの紹介もしてくれますし、こちらが紹介した患者さんのカルテを閲覧できるシステムになっているので、私も登録しています。」
クリニックのある場所は、東急田園都市線の駒沢大学駅と東急東横線の都立大学駅から徒歩15分の住宅街の中にあり、駅からは少し離れている。
「風邪を中心に診るクリニックや耳鼻科、眼科などは駅に近い方がいいですが、慢性疾患を扱うクリニックは駅の近くでなくてもいいと思います。住宅街の中にある方が、患者さんにとっては行きやすいのではないでしょうか。実際、高齢者の新患の患者さんは『駅まで行くと思うと大変なので、近くに診療所ができて助かった』とおっしゃっています。また、東京都では満70歳以上の方はバスが無料になりますから、バス通り沿いにするということは考えていました。」
クリニックの内容と特徴
駒沢ハートクリニックは循環器内科と内科を標榜科目に掲げ、狭心症、心筋梗塞、心不全、心臓弁膜症、不整脈などの循環器の疾患に加え、一般内科の分野では感冒、インフルエンザ、肺炎などの急性疾患、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病、花粉症、気管支喘息などのアレルギー疾患、逆流性食道炎、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、便秘などの消化器疾患、甲状腺疾患、骨粗鬆症、頭痛、めまい、貧血など、幅広い疾患に対応している。
「勤務医時代は循環器の分野で長い間経験を積んできましたので、クリニックでも大きい病院とあまり変わらない質の高い医療を提供したいと考えています。そのため、学会に行ったり、専門誌に目を通したり、つねに知識が衰えないように努力をし続けています。総合病院の治療を受けて病状が落ち着いていても、循環器の専門知識が必要という患者さんのフォローに力を入れていきたいですね。」
野本院長自身が嫌煙家ということもあり、保険での禁煙治療も行っている。
「当院では禁煙治療を行うための呼気一酸化炭素濃度測定器を備えていますし、敷地内禁煙などのいくつかの施設基準を満たしているため、保険で禁煙補助薬を処方することができます。ファイザーのチャンピックスという薬を3カ月飲んでいただいて、その経過を診て、治療します。」
24坪のクリニックは、診察室に厚みのある木の机が置かれ、受付のカウンターと入り口にも木が使われていて、落ち着いた雰囲気だ。
「愛媛にある実家の父が趣味で内装をやっているので、インテリアは設計士さんと父親にかなりの部分を任せました。診察室や受付などの木の家具は愛媛で作って、送ってもらったものです。壁はクロスを貼っているクリニックが多いのですが、当院は全部漆喰にして、重厚感や落ち着きが出るような作りにしてもらいました。」
診療所名の「ハートクリニック」というのは、循環器を扱い、ハートのこもった医療を提供したいという思いから名づけた。今後も循環器を専門分野としながら、幅広い年代層や疾患を診られる地域密着型のクリニックにしていきたいと考えている。
院長のプライベート
プライベートはたまに家族で買い物や公園に行ったりしますが、ほとんどの時間は家事をしていますね。冬に皆でスキーに行くのが、唯一の楽しみです。子どもは今、小学2年生と4歳ですが、両親が地方に住んでいるので、保育園に預けて育ててきました。勤務医時代は休みを取るのが難しかったので、子どもが熱を出したときに看てくれる人がいなかったことが一番の苦労でした。病児保育などを利用して乗り切ってきましたが、心配でしたね。今は上の子は学校が終わると、クリニックの方に帰るようにさせています。体調が良くないときも、ここならベッドもあるので安心です。
開業に向けてのアドバイス
勤務医のときはとにかく病気の治療に専念していればいいという感じですが、開業医になると経営や人事のことなど、ほかのことを考えなくてはならない割合が増えてきます。そのため、医療だけをしていたいという人にはお勧めできないですね。また、開業の準備にもかなり労力が必要になりますので、そうした点を考慮に入れて始められた方がいいと思います。
タイムスケジュール
クリニック平面図
クリニック概要
駒沢ハートクリニック |
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院長 | 野本 花奈 | |
住所 | 〒152-0023 東京都目黒区八雲5-9-21 |
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医療設備 | 一般X線撮影・超音波診断装置・電子カルテ / 画像ファイリングシステム | |
物件形態 | - | |
延べ床面積 | 23.15坪 | |
開業資金 | 約5500万円 | |
URL | http://www.komazawa-heart-clinic.com/ |