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武蔵国分寺公園クリニック

桜井 明弘 院長

名郷 直樹 院長プロフィール

1961年に愛知県名古屋市で生まれる。1986年に自治医科大学を卒業後、名古屋第二赤十字病院で研修医となる。1988年に作手村国保診療所所長に就任する。1992年に自治医科大学で地域医療学を学ぶ。1994年に自治医科大学地域医療学助手に就任する。1995年に作手村国保診療所所長に就任する。2003年から2011年まで社団法人地域医療振興協会公益事業部地域医療研究所地域医療研修センター長を務める。2004年から2006年まで市立伊東市民病院臨床研修センターセンター長を務める。2005年から2011年5月まで東京北社会保険病院臨床研修センターセンター長を務める。2011年に武蔵国分寺公園クリニック院長に就任する。
日本プライマリ・ケア連合学会、日本外来小児科学会、日本医学教育学会、日本疫学会に所属する。

 東京都国分寺市は聖武天皇の命により、741年に建立された国分寺(武蔵国分寺)がこの地にあったことに由来する街である。市内には東京都立武蔵国分寺公園、東京都立殿ケ谷戸庭園、武蔵国分寺跡などの名所や旧跡が数多く存在するほか、JR中央本線、武蔵野線、西武鉄道の国分寺線や多摩湖線が通るなど、交通の要衝でもある。
 武蔵国分寺公園クリニックはJR中央本線、武蔵野線の西国分寺駅から徒歩9分ほどの場所に2011年に開業したクリニックである。名郷直樹院長は家庭医療、総合医療の領域で長く活躍し、愛知県の山間部でのへき地医療にも従事した経験を持つ。開業後は診療科にとらわれず、クリニックに隣接する老人保健施設や歯科医院、薬局、訪問看護ステーションと連携した都市部の地域医療に取り組んでいる。
 今月は武蔵国分寺公園クリニックの名郷直樹院長にお話を伺った。

開業に至るまで

◆ 医師を目指された経緯をお聞かせください。
 高校2年生のときに両親が離婚し、経済的に厳しい状況になりました。そこで、家を出て自立できる選択肢として、自治医科大学を受験しようと思うようになったのがきっかけです。


◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
 高校3年間はラグビーをしていました。出身の千種高校はかなりの強豪で、私の前後の学年は東海大会に出場したんですよ。私の学年は人数が少なかったこともあって県大会止まりでしたが、私がラグビー経験者ということは入学時に既に先輩方に知られていたようで、すぐにお声がかかりました。自治医科大学は全寮制なのですが、寮に荷物を運ぶときに体格のいい先輩が手伝ってくれたりしたのは私を勧誘するためだったのだとあとで気づきましたね(笑)。最初はほかのことをしたいと思っていたのですが、大学でもラグビーを再開することになったんです。でも、やれば楽しいスポーツですけどね。


◆ 大学時代はどんなご趣味をお持ちでしたか。
 趣味は特にありませんでしたね。全寮制は私には合わなかったので、寮を出ることにしたんです。寮を出るには単位を落としておらず、申請書を出すことが条件だったのですが、無事にクリアできたので一人暮らしを始めました。一人暮らしをしたこと自体が一番、楽しかった思い出です。


◆ 自治医大の卒業生は出身県での研修を行うのですね。
 自治医大の卒業生はへき地医療を行わないといけませんから、出身高校のある都道府県でのローテート研修が義務付けられています。当時の愛知県では名古屋第一赤十字病院、名古屋第二赤十字病院、名古屋掖済会病院が研修病院でしたが、私は第二赤十字病院で研修することになりました。今の初期研修のように、指導医がきちんとついていない状態での研修ですから、技術的なことの習得には良かったと思います。ただ、患者さんの安全ですとか、医師としての作法や態度面では問題がありましたね。


◆ 作手村ではへき地医療を経験されたのですね。
 最初は患者さんに怒られたり、職員から支持されなかったりしましたが、楽しかったです。へき地で一生懸命やろうと思っていましたね。合計12年をへき地で過ごしました。


◆ また大学に戻られたのはなぜですか。
 卒後2年目の頃は外科に入局したんですが、手術はそんなに好きではなかったのです(笑)。ほかに専攻したい診療科があったわけではないですし、とにかく母校に帰って今後どうしようか考えるためです。この期間は臨床から離れていましたが、へき地医療の代診に行ったりはしていました。しかしながら、義務年限がまだ残っていたので、再びへき地に戻ったのです。


◆ 地域医療振興協会でのキャリアも長いですね。
 へき地医療専門医の育成を目指して、医学教育を中心に仕事をしていました。このときも教育と研究だけに専念したかったのですが、臨床をやらないというのは難しかったですね。


◆ 勤務医時代を振り返って、いかがですか。
 給料をいただいて、雇われる立場でいるのは楽だったと思います。開業後は経営者ですから、職員のボーナスをどうやって出そうかと苦心していますよ(笑)。

開業の契機・理由

◆ 開業の動機をお聞かせください。
 地域医療振興協会に勤務しているときに、次の職場はどこにしようかと考えていたのです。そこへ大学の先輩から「開業してみないか」と誘われたのが大きな動機です。ですから、こんなクリニックを開業したいからというヴィジョンがあったわけではありません(笑)。


◆ 開業地はどのように決められたのですか。
 医療法人社団実幸会は東久留米市内に2軒のクリニックを開業しており、私どもが3軒目になります。この場所はもともと第四小学校があった場所で、第四小学校の移転後は更地になっていました。そこでコンペがあり、「健康の駅」構想が立ち上がったのです。この構想のもとで歯科医院や薬局との複合施設の一角に入居することが決まっていましたので、私が探してきた場所ではないんですよ。


◆ 開業地をご覧になっての第一印象はいかがでしたか。
 この場所は昔の東山道沿いです。奈良時代に今の群馬県太田市から東京へと南下する道が東山道だったそうです。国分寺があった街ですから、そういった歴史を感じますね。最初に開業地を見たときは空地でしたが、前の通りは人通りが少なかったです。気にはなったものの、開業の厳しさを知らなかったので、よく分かっていなかったですね(笑)。


◆ マーケティングはなさいましたか。
 全く行っていません。恐らく医療法人の方も何もしていないでしょう。競合なども調べていないですね。


◆ 開業するまでにご苦労された点はどんなことですか。
 スタッフ集めでしょうか。事務スタッフには多くの応募があってすぐ採用が決まったのですが、看護師は苦労しました。新聞の折込広告やハローワークなどで求人をしましたが、開業日の2週間前まで決まらなかったんです。それで、看護師なしで始めようかと思っていたところ、何とか決まって安心しました。


◆ 医師会には入りましたか。
 北多摩医師会に入りました。特に問題はなかったです。


◆ 当初はどのようなスタッフ構成でしたか。
 常勤医が私と福士元春医師の2人、看護師2人、事務長、事務スタッフ3人という構成です。診療時間が8時から22時までですので、最初から医師は2人体制であることが必須でしたし、福士医師と一緒だからこそ開業しようと思っていました。
 今年4月からは常勤医師は4人体制となります。開業医はグループ診療で一次救急と在宅医療を行うべきだと思っています。私どもの在宅医療は強化型で、24時間の連携システムを構築しています。


◆ 医療設備については、いかがでしょうか。
 開業にあたってのコンセプトの一つが電子カルテを充実させて臨床研究をするというものです。この電子カルテの開発に1年半を要しましたが、今は臨床を行うだけで臨床データを積み重ねていけるので、診療支援に繋がっています。
 このほかはレントゲン、エコー、心電計、スパイロメーターといった医療設備を揃えました。


◆ 設計や内装のこだわりについて、お聞かせください。
 私が開業を決意したときには既にコンペが終わっていましたので、ほとんどの図面ができあがっていました。2階は会議室と廊下となっていましたが、ここは私のこだわりを出して変更しました。モデルにしたのは自治医大の学生寮なんです。中央に共有のオープンスペースがあって、それぞれの居室に入るためにはオープンスペースを通らなくてはいけません。私どもでもオープンスペースの周囲に医師の部屋を3室、休憩室、事務長室、予備室を配置しています。職員がどう思っているかどうかは分からないですね(笑)。


クリニックについて

◆ 診療内容をお聞かせください。
 内科と小児科を標榜していますが、そういった診療科にとらわれず、小児から100歳以上の方までを診ています。標榜科目に家庭医療や総合診療があるのならば、それらに当てはまるでしょう。


◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
 「あらゆる健康上の問題に相談に乗ります」ということと「何でも診ます」ということですね。


◆ 4診体制なんですね。
 最初の設計のときから4診になっていたのですが、実際は3診が稼働しています。1診は非感染性と予防接種、3診、4診は感染症です。一つは看護師用になっています。また、2階でもインフルエンザのワクチンなどの診察を行っています。


◆ 在宅医療にも力を入れていらっしゃいますね。
 へき地医療を12年間してきましたから、訪問診療もずっとやってきました。へき地では毎年50人の患者さんが亡くなっていましたが、そのうちの4割の方が在宅だったのです。200人ぐらいの方をお看取りさせていただきましたね。現在は70軒ほどのご家庭に訪問させていただいています。お看取りは年間30人ぐらいでしょうか。これからは150軒を目指して、訪問先を増やしていきたいです。在宅医療での高い診療報酬がいつまで続くかどうかは分かりませんが、経営的には外来だけでは全く成り立ちません。


◆ 患者さんの層はいかがですか。
 現在、患者さんの内訳は50%が小児、30%がその親御さん世代、20%が高齢の方です。また、小児のうち25%が予防接種で、成人では10%が健診ですね。


◆ 健診はどのような内容で行っていますか。
 後期高齢者の特定健診のほか、産業医を務めていますので、雇入れ時の健診なども行っています。


◆ 病診連携については、いかがですか。
 三次救急は東京都立多摩総合医療センターや武蔵野赤十字病院、杏林大学医学部付属病院に送っていますが、この地域は二次救急の病院の数が乏しいのが不満です。認知症の患者さんが誤嚥性肺炎を繰り返したりされたら、受け入れ先の病院を探すだけで半日かかることもあります。診療科が決まらないような患者さんも少なくありませんし、二次救急を受ける仕組みが整ってほしいです。


◆ 経営理念をお教えください。
 とにかく潰れないように、職員に給料が払えるようにということですね。


◆ スタッフ教育はどのようにされていますか。
 週に1回、全職員でのミーティングを行っています。連絡事項の確認がメインです。スタッフには「言いたいことがあったら、言ってくださいね」と言っているのですが、ミーティングの場では難しいみたいなので、個別面談も行っています。


◆ 研修医教育も行われていますね。
 臨床だけをするのなら開業はしないと思っていたんです。電子カルテを使った臨床研究に加えて、研修医の受け入れを是非、やりたかったんですね。現在、厚生労働省が定める医師臨床研修制度では2年目の医師が1カ月以上の地域医療研修を行うことが必修と定められています。私どもでは東京都立多摩総合医療センターの協力型臨床研修施設として、初期研修医を定期的に受け入れています。


◆ 後期研修医の教育も行われていますよね。
 日本プライマリ・ケア連合学会認定「武蔵野家庭医療プログラム」に従って、家庭医療専門医を目指す医師を対象とした3年間の研修プログラムを運営しています。また、専門領域での医師研修の一環として、東京都立小児総合医療センターからの研修医も受け入れています。私は前職でもずっと研修医教育に携わってきましたし、医療人を育成する仕事には遣り甲斐がありますね。私どもの特徴はあくまでも私どもの中で行うということと電子カルテによる研究もできるということです。


◆ 開業前研修プログラムもお持ちですね。
 総合診療や家庭医療に関する研修を希望する、ほかの領域からの専門医研修も行っています。義父のクリニックの継承のために家庭医療を学びに来ている泌尿器科医もいますよ。開業前の医師は病院で研修するよりも開業医で研修した方がいいのです。開業後もご希望に応じて、週に1日や半日などの研修をしていただけます。


◆ そのほか、どのような方々の教育をなさっているのですか。
 医学生の実習も、東京慈恵会医科大学の家庭医療プログラム、筑波大学の選択外プログラムの中で1週間単位で受け入れています。また、プライマリ・ケア認定薬剤師制度に対し、研修施設として協力しています。


◆ 指導医として、心がけていらっしゃることをお聞かせください。
 教えないことですね。研修医に「知りたい」と思わせないといけません。指導医は研修医が学びたいというモチベーションを駆り立てる存在であるべきです。「見たいだろう」と言いながら、あえて見せないことです。研修医が教えてほしいと願っているうちは駄目ですね。誉められて、認められて、手取り足取り教えられてという研修では現実に向き合えなくなります。こういう研修医には追い抜かれる気がしないですよ(笑)。指導医が教えなくても学びたい、知りたいという姿勢の研修医を見ると、追い抜かれるかもしれないと思います。そんな研修医は教えなくても勝手に学んでいくんですよ。


◆ 増患対策について、どのようなことをなさっていますか。
 ホームページを作っているほか、道標として電柱広告を5本ぐらい出稿しています。また、JR西国分寺駅に看板を出していますし、京王バスや国分寺市内を走る「ぶんバス」の車内放送広告も行っています。ただ、私どもとしては外来の患者さんを大幅に増やすつもりはありません。できる限りひとりひとり時間をかけて診療していきたいと思っています。体制的にも難しいですしね。今後は在宅の患者さんを増やしていきたいです。


開業に向けてのアドバイス

 開業にあたっては病院のレベルを超えるぐらいの先端医療をスーパースペシャリストとして行うか、グループ診療による一次救急と在宅医療を行うかだと思います。一次救急と在宅医療のためには是非、開業医で研修されることをお勧めします。特に小児の患者さんをきちんと診るのは大事です。小児については特別な増患対策を行わなくても口コミで来院してくれます。小児の予防接種や一次救急、大人の悩み相談をしっかり行うことですね。悩み相談に応えるためには行動科学を学ぶ必要がありますし、EBMも学んでおきたいものです。


プライベートの過ごし方(開業後)

 趣味は読書ですかね。休日は大体、家で原稿書いているか、寝転がって本を読んでいます。あとは家族と外食に行くぐらいでしょうか。


タイムスケジュール

タイムスケジュール

クリニック平面図

平面図

クリニック概要

武蔵国分寺公園クリニック
  院長 名郷直樹
  住所 〒185-0023
東京都国分寺市西元町2-16-34-127
  医療設備 超音波、レントゲン、心電図、ホルター心電図、電子カルテなど
  スタッフ 19人(院長、副院長、非常勤医師5人、常勤看護師3人、非常勤看護師3人、事務長、常勤事務3人、非常勤事務2人)
  物件形態 ビル診
  延べ面積 約100坪
  敷地面積 約50坪
  開業資金 約2億5千万円
  外来患者数の変遷 開業当初2人→3カ月後10人→6カ月後25人→現在80人
  URL http://ebm-clinic.com/index.html

2014.04.01 掲載 (C)LinkStaff

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