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横浜まちだクリニック

渡辺英靖 院長

渡辺英靖 院長プロフィール

1974年に広島県豊田郡大崎上島町で生まれる。1999年に川崎医科大学を卒業後、昭和大学病院リハビリテーション科に入局する。東京共済病院整形外科を経て、昭和大学藤が丘リハビリテーション病院に勤務する。2004年に昭和大学医学部助教に就任する。2008年に昭和大学リハビリテーション医学教室医局長に就任する。2011年8月に横浜市青葉区に横浜まちだクリニックを開業する。身体障害者福祉法第15条指定医、義肢装具等適合判定医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本障害者スポーツ協会公認障害者スポーツ医、臨床研修指導医など。

 神奈川県横浜市青葉区田奈町は1953年から東急電鉄が開発してきた多摩田園都市の一角を占める街である。東急田園都市線の田奈駅のすぐ南側に国道246号線が通り、東名高速道路の横浜青葉インターチェンジにも程近いが、田奈駅周辺は田園地帯が広がっている。
 横浜まちだクリニックは田奈駅から徒歩2分の場所に、2011年に開業した在宅医療専門のクリニックである。渡辺英靖院長はリハビリテーション科の専門医であるため、クリニックの標榜科目は内科、リハビリテーション科、整形外科となっており、内科をメインとしながらも、ご自身の強みを活かした在宅医療を行っている。
 今月は横浜まちだクリニックの渡辺英靖院長にお話を伺った。

開業に至るまで

◆ 医師を目指された経緯をお聞かせください。
 祖父母の影響が大きかったですね。両親は衣料品の会社を経営していまして、医療関係者ではありません。祖父はやはり昔の人間ですから、医師が「お医者様」なんですね。しかし、私が中学生のときに亡くなってしまいました。それで高校受験の際に、祖母や両親から「おじいちゃんの願いだったから」と川崎医科大学附属高校の受験を勧められ、進学しました。中学3年の段階では具体的な医師像はありませんでしたが、大学2年生のときに始まった解剖実習や5年生でのポリクリを通して、これが医師なのだという実感を持つようになりました。


◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
 中学時代だけはテニス部でしたが、小学校、高校と野球をしてきましたので、大学でも野球を続けていました。ピッチャーもしましたし、サードやライトもしていました。体育会そのものの大学時代でしたね(笑)。


◆ 大学時代はどんなご趣味をお持ちでしたか。
 バイクが大好きだったんです。大学時代は400CCのアメリカンタイプのバイクに乗り、ツーリングに出かけていました。テントを持っていって、阿蘇山でキャンプをしたり、四国一周をしたりで面白かったですね。また、ダイビングも趣味で、沖縄や海外で楽しんでいました。


◆ 専門をリハビリテーション科に決めたのはどんな理由からですか。
 国家試験に合格後、オーストラリアに語学留学に行ったんです。そのため、1年遅れての入局になったのですが、その頃は救命救急、移植外科、スポーツ外科の間で迷っていて、色々な大学に見学に行っていました。その中で、昭和大学の森義明教授にお会いし、その温かいお人柄に惚れたんです。森先生は昭和大学病院にリハビリテーション医学診療科を開設された方で、「病気を診るな、人を診ろ」という教えに強く惹かれました。


◆ 昭和大学に入局されてみて、いかがでしたか。
 森先生からは患者さんの生活やバックグラウンドをトータルで診ることの大切さを教わりました。当時の私は開業に関しては将来の選択肢の一つといった漠然としたイメージしかなかったのですが、開業するのであれば何でも診られる地域の医師になりたかったので、とても役に立つ教育をしていただいたと思っています。


◆ 東京共済病院の整形外科に勤務されたのはどうしてですか。
 昭和大学リハビリテーション科の医局のいいところなのですが、卒後3、4年目は他科を学ぶことができるんです。リハビリテーション科の医師は総合医ですから、様々な科の知識が必要です。神経内科や麻酔科を選ぶ人もいますが、私はもともと好きだった整形外科に行くことにしました。東京共済病院は医局の関連病院ということで決まったのですが、とても楽しかったですね。


◆ 昭和大学藤が丘リハビリテーション病院にも勤務されていますね。
 東京共済病院での研修を終え、医局に戻ってきた直後に勤務することになりました。それまでは総合病院しか勤務したことがなかったですし、直前にいたのが整形外科でしたから、最初は戸惑いましたね。でも、すぐに全人的医療の世界に戻ってきた喜びを感じ、この道で頑張っていこうという思いを新たにしました。


◆ 在宅医療に興味を持たれたきっかけはどんなことだったのでしょう。
 卒後2年目の研修医時代に足立区の増田クリニックにアルバイトに行ったことです。1つ上の先輩が在宅医療で開業したいとおっしゃっていて、勉強のために増田クリニックで非常勤医師をされていたんです。それで、私を誘ってくださったので行ってみたのですが、衝撃を受けましたね。当時の増田クリニックでは簡単な手術や輸血、CVカテーテル挿入なども在宅で行っていて、こんな医療もあるのだと驚きました。それ以後、アルバイトを通して在宅医療にずっと関わってきました。開業する直前には横浜市都筑区で港北ニュータウン診療所を開業されている神山一行理事長のもとで勉強させていただきました。


◆ 勤務医時代を振り返って、いかがですか。
 開業医とは忙しさの質が違いますね。ただ、大学病院の勤務医の忙しさの要因は臨床のほかに、教育や研究を行わないといけないところにあります。私は臨床に追われていたので、教育をしたくてもほとんど時間がありませんでした。それに、研究はあまり好きではなかったんです(笑)。臨床がとにかく好きでしたので、大学病院での勤務に向いている医師ではないのかという思いはありましたね。


開業の契機・理由

◆ 開業の動機をお聞かせください。
 港北ニュータウン診療所での神山先生のなさりようを見ていて、開業するならこの形だと思うようになったんです。リハビリと言いますと手術のあとに行うものだというイメージが強いのですが、実際は全ての診療科に渡る知識が必要なのです。患者さんはリハ科に入院しますと、ご自宅に帰るまでの間に家屋評価を受けます。これは医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などがチームを組み、患者さんのご自宅に伺って、手すりの有無や段差などをチェックして家屋改修に繋げるというものですが、こういった経験は在宅医療で開業するにあたって強みになるはずだと確信していました。
 また、私が大学病院で主治医を務めた患者さんの退院後を港北ニュータウン診療所で診るケースが多く、私も非常勤で港北ニュータウン診療所に行っていましたから、一人の患者さんを継続的にフォローしてきたんですね。その中で、入院中にできなかったことが在宅ではできるようになったという「在宅マジック」を目の当たりにし続けたこともあり、在宅医療での開業をしてみたいという気持ちがさらに高まりました。


◆ 開業地はどのように決められたのですか。
 藤が丘の病院に勤務していましたので、横浜市青葉区の東急田園都市線沿いで開業したいという、ざっくりした気持ちだったんです。でも、田奈駅で降りたことはなく、たまたま降りてみたところ、見つけた物件です。前は不動産屋さんが入っていたそうで、空き物件になっていました。田奈駅は急行電車が止まらず、急行停車駅の青葉台と長津田に挟まれていますから、青葉台や長津田よりも家賃が大幅に安いことも決め手になりました。


◆ 開業地をご覧になっての第一印象はいかがでしたか。
 広さはちょうど良かったですし、在宅医療専門のクリニックなので、入口が分かりにくいところが気に入りました(笑)。駅から徒歩で2分程度ですから、スタッフも通勤しやすいだろうと思いましたね。在宅医療の場合は駐車場が必須ですが、建物のすぐ裏に必要分を確保できたのも良かったです。


◆ マーケティングはなさいましたか。
 診療圏調査などのマーケティングは行っていません。先輩方の経営も見ていて、ノウハウも分かっていましたし、開業前の1年間に固定費やランニングコストをエクセルに打ち込み、ペイラインを算出したりもしていましたので、シミュレーションができていたんですね。
 また、大学病院を辞めるにあたって、外来にいらしていた患者さんが10人以上、ついてきてくださったんです。有料老人ホームも2施設が決まっていましたから、最初の月から黒字を計上することができました。


◆ 開業までに、ご苦労された点はどんなことですか。
 特に苦労はなかったですね。開業後1年までの細かい数字も出すなど、きちんと準備していましたので、100%成功する確信を持っていました。


◆ 医師会には入りましたか。
 青葉区医師会に入りました。私どもは内科、リハビリテーション科、整形外科を標榜しているのですが、その書類が医師会の班会に届いたときに、入会担当の先生から説明を求められました。複数の標榜科目だと競合の可能性が出てくるためだと思いますが、説明をしたら、すぐに認めてくださいました。


◆ 開業当初はどのようなスタッフ構成でしたか。
 診療助手を兼ねた事務スタッフが1人だけいました。その後、1人を増員しました。


◆ 医療設備については、いかがでしょうか。
 ポータブル心電図ぐらいですね。カルテは紙カルテで、在宅医療特有のシステムを導入しています。エコーと内視鏡は最近、導入したばかりです。


◆ 設計や内装のこだわりについて、お聞かせください。
 友人の友人である設計士に依頼しましたが、これまで何度も在宅医療のクリニックを手がけてきた人だったので、心配はありませんでした。横浜市の基準に従って診察室を設けていますが、そのほかはクリニックというよりはオフィスの雰囲気ですね。私どもでは業務のほとんどをホワイトボードで管理していますし、大きな地図を貼り、患者さんのお宅や施設をプロットしていますので、どの席からもホワイトボードや地図が見やすいように、デスクの位置を工夫して配置しています。


クリニックについて

◆ 診療内容をお聞かせください。
 在宅への訪問診療で、内科、リハビリテーション科、整形外科を標榜しています。内容としては内科がほとんどですね。年間に25人から30人ぐらいの看取りもしています。
 私はリハビリテーションの専門医ですから、リハビリ医的な視点を持つことも心がけています。ベッドで寝ていてもできることなどを指導しますし、環境への指導もしています。また、大学病院時代の友人に義肢装具士がいますので、義肢などのチェックも行っています。


◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
 在宅医療ではとにかく患者さん主体でないといけません。大学病院はEvidence Based Medicineですが、在宅医療はNarrative Based Medicineですね。患者さんとしっかり話すことで、患者さんの思いを汲み取って、嫌な薬や治療法を避けるようにしたり、家庭環境を知ることも大切です。


◆ 患者さんの層はいかがですか。
 男性女性はほぼ半分ずつで、平均年齢は85歳といったところでしょうか。70歳と聞くと若いと思ってしまいます(笑)。一人では通院できない方が対象で、計画を立てたうえで定期的に訪問させていただいています。


◆ リハビリテーション科の専門医が在宅医療をなさっているのは珍しいですよね。
 抵抗も違和感もなかったです。リハビリテーション科は全人的医療ですから、これまで皮膚科や泌尿器科などの分野も浅く広く診てきました。また、リハ医は障害のある方を診るので、障害を障害として受け止め、一人の人間として生活されているのだという認識を持っています。患者さんの人格をそのまま受け止め、「これは飲みたくない、これはしたくない」とおっしゃることを丁寧に伺うようにしています。大学病院で勤務していたときと変わらないですね。


◆ 病診連携については、いかがですか。
 青葉区内ですと、昭和大学藤が丘病院、横浜総合病院、たちばな台病院、横浜新都市脳神経外科病院と連携しています。また、旭区の横浜旭中央総合病院、町田市の南町田病院とも連携しています。在宅医療の中では急性期医療をお願いする必要がありますので、急性期病院との病診連携は大事ですね。


◆ 経営理念をお教えください。
 地域のためにありたいということがまず挙げられます。そして、患者さんを幸せにするのと同じように、職員を幸せにしないといけませんから、適正な利益も上げていかなくてはいけないと思っています。


◆ スタッフ教育はどのようにされていますか。
 毎朝20分から30分をかけて、ミーティングを行っています。その日に訪問する予定の患者さんについて報告し合ったり、前日に訪問した患者さんの様子などを話し合い、情報を共有しています。
 また毎週金曜日の夕方は運営会議を行っています。スタッフが感じていることを意見として出してもらい、ディスカッションをしたうえで、月曜日からの診療に活かしています。


◆ 増患対策について、どのようなことをなさっていますか。
 ホームページのほかは、横浜市が出している『ハートページ』に出稿している程度です。『ハートページ』は横浜市内の行政機関に置かれますので、行政の方からの紹介に繋がっているようです。また、『頼れるドクター田園都市』に一度だけ出稿したこともありました。そのほかは看板なども出していないですし、積極的な増患対策は全く行っていません。


開業に向けてのアドバイス

 医師たるもの、人間的に優れた人間でないといけないですし、人間を思う気持ちを養っておくことが大前提になるでしょう。成功している医師はそこが違いますし、「聞く力」があります。きちんと聞いてさしあげるだけで、患者さんはほっとされるんですよ。
 また、開業後はありとあらゆる患者さんがいらっしゃいますから、自分の専門でないと診られないというのではなく、幅広く診る力が必要になります。

プライベートの過ごし方(開業後)

 子どもと一緒に公園で遊んだり、釣りに連れていったりすることが多いですね。私は島育ちなので、小中学生の頃から海釣りに親しんできたんです。葉山に漁船を持っている釣り仲間がいるので、今もよく行きます。釣りをすると、自分で魚を捌けるようになるんですよね(笑)。ゴルフも好きですが、今は月に1回できればいいなという程度です。今後は野球も再開したくて、草野球チームに入りたいと思っています。

タイムスケジュール

タイムスケジュール

クリニック平面図

平面図

クリニック概要

横浜まちだクリニック
  院長 渡辺 英靖
  住所 〒227-0064
神奈川県横浜市青葉区田奈町43-2
アーバンハイツ土志田2階
  医療設備 ポータブル心電図、ポータブル超音波、ポータブル内視鏡、アンビューマスク、在宅医療特化システムなど。
  スタッフ 15人(院長、常勤医師1人、非常勤医師4人、週末オンコールのための非常勤医師2人、常勤看護師1人、常勤診療助手5人、常勤事務1人)
  物件形態 ビル診
  延べ面積 82㎡
  敷地面積 82㎡
  開業資金 2000万円
  在宅患者数の変遷 開業当初66人→3カ月後113人→6カ月後146人→現在269人
  URL http://yokohama-machida.com/

2014.12.01 掲載 (C)LinkStaff

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