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こどもみらい大島クリニック

齋藤 勇 院長

齋藤 勇 院長プロフィール

1964年に徳島県阿南市で生まれる。1994年に徳島大学を卒業後、聖隷浜松病院で初期研修を行う。1996年に聖隷浜松病院で後期研修を行う。1999年に大阪府立母子保健総合医療センターに勤務する。2001年に聖隷浜松病院に勤務する。2005年に国立がんセンター中央病院、国立がんセンターがん対策情報センターに勤務する。2011年に東小岩わんぱくクリニック、新小岩わんぱくクリニックに勤務する。2012年に東京都江東区にこどもみらいクリニック(現こどもみらい大島クリニック)を開院する。


日本小児科学会専門医など。日本外来小児科学会、日本生命倫理学会、日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会、小児がん学会、小児血液学会、日本血液学会、日本臨床血液学会、米国臨床腫瘍学会(ASCO: American Society of Clinical Oncology)、日本造血細胞移植学会、日本夜尿症学会などにも所属する。

 東京都江東区大島は江東区の北東部にあたり、都営地下鉄新宿線が街を横断しているほか、新大橋通りや明治通り、丸八通りには都営バスが走るなど、アクセスの良いエリアである。大島小松川公園や大島緑道公園などの公園も点在し、住民の憩いの場にもなっている。
 こどもみらい大島クリニックはUR大島六丁目団地の中に2012年に開院したクリニックである。都営地下鉄新宿線の大島駅から徒歩2分、JR総武線の亀戸駅から徒歩6分であり、浅草や東陽町を結ぶ都営バスの停留所からもほど近い。こどもみらい大島クリニックは小児科、アレルギー科を標榜し、土曜日や日曜日の診療に加え、病児保育、病後児保育にも力を入れるなど、地域に密着した姿勢を打ち出している。
 今月はこどもみらい大島クリニックの齋藤勇院長にお話を伺った。


開業に至るまで

◆ 医師を目指された経緯をお聞かせください。
 一言では難しいですね。私の父は医師を目指して京都府立医科大学に入学したのですが、結核のために医師を諦め、公務員になったのです。その後、兄が精神科の医師になったこともあり、医学や医療に興味を覚えました。別の進路に憧れた時期もありましたが、やはり生命科学に対する関心が高かったので、医学を学びたいと考えるようになりました。


◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
 普通の学生でしたよ(笑)。外国語研究会に入り、英語劇やディスカッション、スピーチコンテストなどの活動をしていました。


◆ 大学時代はどんな趣味をお持ちでしたか。
 音楽ですね。外国語研究会と並行して、室内楽のサークルにも入っていました。私は小さい頃からクラシックギターをやっていたので、サークルでもギターを弾いていました。


◆ 専攻を小児科に決められたのはいつですか。
 卒業するときです。大学の系統講義や実習から白血病などの血液疾患に興味があり、内科か小児科で血液疾患を勉強しようと考えていました。大学6年生のときに色々な病院で研修させてもらった際、救急医療や小児病院などを見学させてもらいました。小児病院では、子どもたちがとてもいい子だったのが印象的でした。病気と闘い、つらい検査や処置とも、前向きに乗り越える生活の中で、思いやりをもったり、感謝の気持ちを育みながら成長する子どもたちと一緒に医療に携わりたいという気持ちになりました。その当時は、不治の病と言われた白血病などが、小児領域から治癒できる病気となりつつありました。母校の大学では日本で初めて末梢血幹細胞移植が実施され、小児がん・小児血液疾患の進歩が華々しい時期であったこともあり、やりがいを感じて小児科を選択しました。


◆ 卒業後に聖隷浜松病院で研修されたのはなぜですか。
 色々なことを身につけたかったからです。当時は医局に入ってひとつの科のみを研修する時代でしたが、私は聖隷浜松病院で小児科、新生児科、神経内科、循環器科、麻酔科、産婦人科、脳神経外科、外科をローテートさせていただきました。希望する全ての診療科を回らせていただいたので、有り難かったです。


◆ 初期研修終了後も聖隷浜松病院にいらしたのですね。
 後期研修として、聖隷浜松病院で一般小児・新生児・小児がん・血液疾患を中心に研修しました。また、その後、化学療法や造血幹細胞移植を深く勉強するため、日本で最も多く造血幹細胞移植療法を行っていた大阪府立母子保健総合医療センターでも研修させて頂きました。その後、再び聖隷浜松病院に帰り、NICUや小児科病棟・外来にて勤務しました。


◆ 国立がんセンターにも勤務されたのですね。
 先輩からのお声がけがあったのがきっかけです。小児がんのみならず、成人の肉腫も扱っていました。質の高い根拠に基づいた治療(Evidence Based Medicine)を実践すべく、きちんとした臨床試験が可能な医療環境の整備のための勉強と実践を兼ねて、2年目以降は臨床研究の支援する仕事として主に臨床試験のプロトコール作成に従事していました。デスクワークとミーティングの毎日でしたが、非常に勉強になりました。


◆ がん治療に興味を持たれた理由をお聞かせください。
 学生時代から興味がありました。困難なことも多いですが、やりがいのある仕事だと思っています。最近は成人も含めて治療成績が良くなってきています。子どものがんは遺伝的形質と偶発的は遺伝子の事故で発生します。大人や高齢者もそうですが、より生活や加齢の影響が大きくなります。そのため大人のがんは予防がある程度有効ですが、子どものがんの予防は難しく、したがって、故なく被った受け入れがたい不運という部分が大きいといえます。そのため、小児がんに携わる者は、何とか治癒させてあげて、その人なりの一生を全うさせてあげたいという思いが強いと思います。


◆ クリニックでの勤務経験もありますね。
 これは当院の開院を見据えてのことです。医師になった以上、一度は自分のクリニックを持ちたかったという思いは多くの医師にあることだと思います。広くクリニックを運営している医療法人に勤務し、外来診療の他、医院経営、保険診療のことなどについても勉強させていただきました。


◆ 勤務医時代を振り返って、いかがですか。
 今はあまりしたくないですね(笑)。勤務医は若いからこそできる仕事ではないでしょうか。小児科は少しずつ医師数が増えてはいますが、実際に医療現場にいる小児科医は多いとは言えません。今後、小児科医が現場に増えてきたら少しは楽になるかもしれませんが、私が勤務医の頃は本当に大変でした。


開業の契機・理由

◆ 開業の動機をお聞かせください。
 小児がんなどの重篤な疾患を患った子どもと接してきましたが、よりありふれた病気で、日頃は元気でいる子どもたちと触れ合いたいと思ったことがきっかけです。また、家族などの私生活の変化も関係しています。私自身の体力とも相談し、定年がなく、自分のペースで働ける道にシフトした訳です。


◆ 開業地はどのように探されたのですか。
 自宅から近い場所で自分で歩いて探しました。最初は中央区で考えていたのですが、その時の開院はうまく進みませんでした。そこで、第2の候補だった、この場所に決めました。開業にあたっては小児科のクリニックとして、病児保育、病後児保育をしたいと考えていたので、クリニックの2軒隣りのテナントが空いていたことが決め手になり、この場所での開院を決めました。


◆ 開業地の第一印象はいかがでしたか。
 大島駅に徒歩2分ですから、駅に近いと思いました。クリニックの前は大島六丁目団地の中で、広場や遊具の多い公園スペースになっていたので、良い立地だと思いました。子どももお年寄りも多い場所ですね(笑)。私としては少なくとも団地に住む子どもたちが、気軽に利用できるクリニックになればと考えました。


◆ 開業にあたって、マーケティングはなさいましたか。
 一般的な診療圏調査は行いました。人口、子どもの人口、クリニックの数などを出してもらいましたが、当時は悪くない結果を得ました。


◆ 開業までに、ご苦労された点はどんなことですか。
 あまり思い浮かばないですが、強いて言えば開院当初の看護師の確保でしょうか。ハローワークやインターネットの求人広告などを頼りました。


◆ 医師会には入りましたか。
 江東区医師会に入会しました。小児科は予防接種や健診がありますので、医師会に入るのは必須ですね。


◆ 開業当初はどのようなスタッフ構成でしたか。
 看護師1人、事務スタッフ3人です。開業当初は第2、第4日曜日をワクチンの日にして、第1、第3日曜日を休日にしていました。私としては平日の他に土日もいつも診療しているクリニックにしたかったので2年目に医師を雇用することで、通常時期は祝日を除く全ての日の診療が可能になりました。年末年始とお盆の時期には休みがあります。


◆ 医療設備については、いかがでしょうか。
 エコーや心電図などを揃えましたが、大きな医療機器はその程度に留めました。近くに江東病院がありますから、入院や血液検査が必要な患者さんは紹介しています。病院内にラボがあり、緊急検査は1時間程度で出ますので、うちで外注に出すよりも早く、患者さんの意思決定にとっても便利です。以前は緊急項目の検査をしていたこともありますが、今は病診連携を大事にしています。ただ、緊急でないアレルギー検査などは当院で外注しています。


◆ 設計や内装のこだわりについて、お聞かせください。
 建物が細長いので設計の自由度に乏しく、できる範囲で設計したら現状のようになったという感じですね。こだわりとしては、感染症の疑いのある子どもさんと一般のお子さんとの入口を分けていることです。また、私どもには保育士がいますので、院内の貼りものなどは保育士さんに任せています。


クリニックについて

◆ 診療内容をお聞かせください。
 小児科とアレルギー科を標榜しています。普通の小児科です。一般の市中感染症を中心に急性期の患者さんを診ることがほとんどです。その他は喘息の患者さんが多いですね。開業当初から通っている患者さんもいます。
 予防接種や乳幼児健診にも積極的に取り組んでいます。予防接種はヒブ、肺炎球菌、BCG、四種混合、ロタウイルス、MR、水痘、おたふく風邪、日本脳炎、B型肝炎、A型肝炎、2種混合、子宮頸がんなどです。乳幼児健診は7-8カ月健診、9-10カ月健診、1歳6カ月健診を実施しています。
 クリニックを開業したのは2012年3月ですが、病児保育、病後児保育はその年の6月から始めました。これは江東区の委託事業であり、対象は江東区にお住まいの寝返りなどができる満7カ月の児から就学前までの子どもさんで、江東区内の保育施設に通っている児です。利用するには江東区への登録が必要です。病気の回復期だけでなく、発熱があるなど急性期の子どもさんもお預かりしています。電話で予約を受け付けし、当日朝の診療でお預かりできるかどうかを最終判断します。風邪や胃腸炎などの一般的な感染症に加え、水痘、おたふく風邪、インフルエンザなどの感染症でも、他の児との関係で問題なければお預かりしています。


◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
 子育て支援に繋がる医療、快適で利用しやすいクリニック、明るい未来を志向した医療ということです。子育て支援は病児保育、病後児保育が挙げられます。利用される方々の声をしっかりお聞きし、利用しやすく、また役に立つ施設でありたいと願っています。
 「快適で利用しやすい」に関しては予約システムの導入です。小児科クリニックは混雑している、待ち時間が長いといった問題があり、感染も気になりますが、当院では自動音声電話のほか、ウェブからの予約が可能です。診察の進捗状況は院内、院外のモニターやウェブの予約画面から確認していただけますし、予約外受診も受けています。
 さらに、「明るい未来を志向した医療」としては、まず、エコな運営を心がけています。ペーパーレス化やLED照明などの省エネ化などです。また、院内の掲示やホームページでは病気の予防や生活習慣に関する情報を発信し、健康への意識が高い次世代の育成に取り組んでいます。


◆ 患者さんの層はいかがですか。
 子どもさんのみならず、親御さんも受診されますね。たまに大人の患者さんが単独でいらっしゃることもあります。当院では高齢者へのインフルエンザの予防接種(公的補助)にも対応していますので、3世代のご家族でいらっしゃることもあります。


◆ 経営理念をお教えください。
 経営者としてのはキャリアは長くないのでがないので、経営理念というほどのものはありません(笑)。ただ、法人の理念としてはきちんと明文化しています。先にお話しした「クリニックの方針」診療理念と重なることも多いのですが、次のようなものです。1.地域社会へ地道で利用しやすい医療の貢献を続ける。具体的には、①から派生したものがあります。利用しやすいクリニックの運営(休日診療、予約・予約外併用診療)、②プライマリ医療の充実(最適な病診連携の追求)、③時代とニーズにあった情報発信(根拠に基づく医療情報の提供)。2.夢のある未来社会の実現に貢献する。具体的には、④人口減少への対応(子育て支援、健康寿命の追求)、⑤国際化への対応(英語診療への対応、渡航医学への対応)、⑥男女協同社会への積極的関与。3.挑戦し成長し続ける先駆的医療組織となる。具体的には、⑦持続可能な適正医療の追求、⑧聖域からの脱却、⑨生きがいやりがい、意欲と誇りを持てる職場形成、などです。詳細は長くなるので、今後の法人ページをご覧ください。


◆ スタッフ教育はどのようにされていますか。
 以前はあまり系統的にはできていませんでした。最近は入職時にはオリエンテーションを行い、法人としての理念を伝えています。また、テーマごとの勉強会やミーティングも活発に開催しています。月曜日から金曜日までは朝礼もあります。以前は私が話をしていたのですが、まあ、面白くないですね(笑)。それで、最近はスタッフが持ち回りで司会をし、連絡事項の確認とショートスピーチをしています。これにより、お互いの肩の力が抜け、コミュニケーションを取りやすくなりましたね。徐々に和やかな職場になってきていると思っています。


◆ 増患対策について、どのようなことをなさっていますか。
 ホームページ、電柱広告、大島駅での看板ぐらいでしょうか。また、江東区役所にデジタルサイネージ広告を出しています。デジタルサイネージには地図があり、他の店舗を含めて順番に、かつ、ランダムにフォトムービーが20秒くらい表示されますが、クリニック名を押すとその店舗のフォトムービーが他の表示の途中でも割って入ります。


開業に向けてのアドバイス

 開業は大変です(笑)。特に開業後1年ぐらい経つと、こんなに大変なものなのかと思います。しかしながら、その頃には経営も伸びてきますので、いい意味で忙しくなってきますから、これからのことを考えられるようにもなります。開業を考えていらっしゃるのなら、どこかのクリニックで実際に管理者のような立場で診療を体験されることをお勧めします。小児科は医師ごとの違いというか、腕前というか、が少ない診療科ではありますが、あらかじめそのような立場で診療の経験を積み、要領を得ておくことが大切でしょう。

プライベートの過ごし方(開業後)

 子どもがまだ小さいので、子ども中心に回っている感じですね。学校のイベントや習い事での発表会などにはできるだけ参加するようにしています。

タイムスケジュール

【勤務医時代】
当直がある日かない日で大きく異なりますが、勤務医時代は週に1日は休めていました。


【開業後】
休日はほぼありません。診療で出ていないときもずっとクリニックで他の仕事をしています。時間的には勤務医時代より忙しくなっていますが、どれもやりがいの感じられる部分が増えてきました。


こどもみらい大島クリニック
  院長 齋藤 勇
  住所 〒136-0072
東京都江東区大島6-1-4 大島六丁目団地4号棟102 
  医療設備 超音波、心電図、ネブライザー、吸引器、医療カート、滅菌器、電子カルテなど。
  スタッフ 19人(院長、常勤医師1人、非常勤医師3人、常勤看護師2人、非常勤看護師2人、常勤事務5人、保育士3人、看護助手1人、法人マネージャー1人)
  物件形態 ビル診
  延べ面積 33坪
  敷地面積 33坪
  開業資金 約5,000万円
  外来患者/日の変遷 開業当初10人→3カ月後20人→6カ月後40人→現在70人
  URL http://www.kodomo-mirai.net/

2016.05.01 掲載 (C)LinkStaff

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