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山手クリニック

服部 幹彦 院長

服部 幹彦 院長プロフィール

1969年に東京都世田谷区で生まれる。1995年に日本医科大学を卒業後、日本医科大学整形外科教室に入局し、日本医科大学付属病院で研修を行う。1997年に日本医科大学大学院に入学する。2002年に日本医科大学大学院を修了する。日本医科大学付属病院、大分県の大場整形外科に勤務を経て、山形県の北村山公立病院に整形外科医長として勤務する。日本医科大学多摩永山病院に勤務する。医療法人アレックスに勤務しながら、女子アイスホッケーナショナルチームのサポートを行う。2008年に訪問診療のクリニックを設立する。2014年4月に東京都世田谷区代沢に山手クリニックを開設する。


日本整形外科学会専門医・脊椎病医・スポーツ認定医、義肢・装具適合判定医、日本体育協会公認ドクター、日本医師会認定産業医、日本抗加齢医学会専門医など。日本臨床スポーツ医学会にも所属する。


女子アイスホッケーナショナルチーム、アジアリーグ日光アイスバックス、東洋大学アイスホッケー部、FCトレーロス、プロゴルファー大山志保選手、松山英樹選手、アン・ソンジュ選手、比嘉真美子選手。


日本オリンピック委員会医科学スタッフ、世田谷区特技委員、日本テコンドー協会評議員、日本アイスホッケー連盟医科学委員、奥多摩森林セラピー顧問、新宿鍼灸柔整専門学校顧問など。

 東京都世田谷区代沢は代田と下北沢の合成地名であり、商店街もあれば、閑静な住宅街も広がっている。小田急小田原線、京王井の頭線の下北沢駅からほど近く、賑わいを見せている。一方で、暗渠となった川がせせらぎとして甦った代沢せせらぎ公園は桜並木でも知られ、世田谷区の地域風景資産に指定されている。
 山手クリニックは世田谷区代沢に2014年に開業した整形外科、皮膚科のクリニックである。下北沢駅から茶沢通りに入り、徒歩5分の場所にある。服部幹彦院長は著名なスポーツドクターであり、ソチオリンピックには女子アイスホッケーのナショナルチームドクターとして帯同した。開業後もスポーツ整形外科を中心に、皮膚科領域まで幅広い診療を行っている。
 今月は山手クリニックの服部幹彦院長にお話を伺った。


開業に至るまで

◆ 医師を目指された経緯をお聞かせください。
 いわゆる医師家系ではありません。医師を目指したきっかけとしては、小学生の頃に虫垂炎で入院したときの体験が大きかったですね。また、私の家は両親が共働きで、祖母が私を育ててくれたんです。その祖母が病気がちだったので、祖母の助けになりたいと考えました。


◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
 アイスホッケー部に打ち込んでいました。小、中学校のときはサッカーをしていて、高校では競技スキー部に入っていたので、アイスホッケーは初心者だったんです。当時は京都大学のアメリカンフットボール部が強かった頃で、私もアメリカンフットボールに憧れたこともありましたが、先輩からの誘いを受けて、アイスホッケー部に入部しました。


◆ 大学時代はどんな趣味をお持ちでしたか。
 アイスホッケー部の活動が忙しかったので、特に趣味はありませんでしたね。アイスホッケーでは他大学の練習に参加したり、積極的に行動していました。


◆ 専攻を整形外科に決められたのはいつですか。
 大学6年生のときです。アイスホッケー部で練習をしていくうちに、スポーツドクターになって、アイスホッケーの選手をサポートしたいと思うようになりました。最初は循環器内科もいいなと思っていたのですが、国家試験前に人生を考え直したんです。スポーツ整形外科は発展性のある診療科だということ、自分で新しいことを作っていける可能性があること、純粋にオリンピックチームをサポートしていきたいという気持ちから選択しました。


◆ 大学院に進まれたり、色々な病院に勤務されたのですね。
 臨床系の大学院でしたので、勉強しながら、外来や病棟の仕事もしていました。医局人事で、大分県、山形県、福島県、栃木県などの病院に勤務しましたが、それぞれの土地で多くの経験を積むことができました。


◆ チームドクターの経験も豊富でいらっしゃいますね。
 大学の先輩が当時の国土計画のアイスホッケー部でチームドクターをしていて、そのお手伝いをボランティアで始めたんです。それから神奈川県アイスホッケー連盟の医科学委員などを務めるようになりました。女子の代表チームに関わるようになったのは2007年の長春アジア大会からですので、10年になりますね。


◆ チームドクターの遣り甲斐はどんなところにありますか。
 選手にいかに早く復帰してもらうかということですね。今も日々、研鑽を積んでいるところです。ただ、これはスポーツ選手だけでなく、一般の患者さんにも当てはまることですし、スポーツ整形外科に限ったことではありません。


◆ 勤務医時代を振り返って、いかがですか。
 勤務医をしているときには気づかなかったことですが、医局を離れてみると、今の仕事は大学での経験がベースになっているのだと分かります。教授をはじめ、先輩方には改めて感謝の思いで一杯です。今も先輩方のお蔭で仕事ができていますし、色々なご支援をいただいています。


開業の契機・理由

◆ 開業の動機をお聞かせください。
 医局を辞める頃に開業を漠然と思い描くようになりました。患者さんに提供したい医療を考えると、開業という道が自然でしたね。


◆ 開業地はどのように探されたのですか。
 思い入れのある地元で開業したかったので、何年もかけて場所を探しました。下北沢は土地がなかなか出ないし、テナントにしても高いんです。そこでサブリース契約という形にしました。


◆ 開業地の第一印象はいかがでしたか。
 下北沢駅と住宅街との境目にあたる場所で、茶沢通りに面していますし、ここしかないという第一印象でした。周囲に高い建物がなく、見通しが良いのも良かったですね。建物ができてからは、少し印象が変わりました。


◆ 開業にあたって、マーケティングはなさいましたか。
 診療圏調査を行いましたが、芳しくない結果でした。診療圏調査の基本は割り算ですから、周辺に競合が多いと、良くない結果になるようですね。


◆ 開業までに、ご苦労された点はどんなことですか。
 時間がなかったことです。ソチオリンピックに帯同したので、2月はソチに行っており、3月に帰ってきて、4月に開業というスケジュールでした(笑)。2月に大雪が降って、建物の建築工事が遅れたり、4月には消費税も上がりましたから、大変でしたね。しかし、スタッフがとても頑張ってくれて、私がソチに行っている間はスカイプで連絡を取り合っていました。


◆ 医師会には入りましたか。
 世田谷区医師会に入りました。


◆ 開業当初はどのようなスタッフ構成でしたか。
 常勤看護師1人、非常勤看護師2人、理学療法士4人、トレーナー2人、管理栄養士1人、常勤事務スタッフ2人でした。紹介などもあり、スタッフ集めに関してはスムーズに進みましたよ。


◆ 医療設備については、いかがでしょうか。
 レントゲン、フラットパネル、エコー、全身の骨量を測定できるディスカバリーなどを導入しました。私どもは個別指導や運動療法が中心なので、物療の機械は少ないですね。再発しない身体を目指すクリニックですので、その方針に見合う医療設備にしています。


◆ 設計や内装のこだわりについて、お聞かせください。
 ご年配の方々とスポーツ選手が同室で治療を受けるのは難しいですから、フロアごとに分けています。2階は疾病度が高い方々のための理学療法室です。3階は運動療法室、4階はパーソナルスペースとなっています。5階は研修室です。通所リハビリテーションを行うこともありますが、地域の方々やスタッフを対象に栄養や皮膚科についての勉強会を開いたり、トレーナーの勉強会をしたりという啓蒙の場となっています。埼玉医科大学の教授でいらした板橋明先生に骨粗鬆症専門外来をお願いしているので、板橋先生に講演していただくこともありますね。


クリニックについて

◆ 診療内容をお聞かせください。
 診察室は2診体制で、ほぼフル稼働しています。整形外科と皮膚科を標榜し、整形外科ではスポーツ外来、一般整形外科、リハビリテーション、骨粗鬆症外来、PRP療法、肩関節専門外来などを行っています。
 皮膚科はスキンケアセンター、スポーツ皮膚科などですね。また、生活習慣病やスポーツ栄養サポートを行っていますし、山手運動療法センターではゴルファー向けのパーソナルプログラムを提供しています。一方で、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションも行っています。現在の医療環境では、整形外科医が主導的に介護分野に携わることは意味があると思います。
 院長が全てを担う「服部クリニック」ではなく、医師、理学療法士、トレーナー、管理栄養士が連携し、施設全体での治療や予防法の提供を心がけています。様々な患者さんに対し、各分野の専門スタッフがそのときの状況に応じて主体となり、運動療法と栄養バランスという2つの観点から、「より良い身体の状態」を目指して治療しています。


◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
 患者さん個々の価値観に基づいて、診療することです。整形外科は社会的なバックグラウンドが治療方針に反映される診療科ですので、バックグラウンドの理解に努めています。例えば、肉離れの患者さんがスポーツを再開しようとするときに、「できそうだけど、エコーで確認してみましょう」とエコーを勧めたり、小児にはレントゲンに映らない怪我もあるので、エコーで確認したりして、再発を防止しています。肘の痛みであっても、股関節が原因であることもありますし、身体全体のコンディションを考慮しながら、肩甲骨、体幹、股関節の安定性を評価しています。


◆ 患者さんの層はいかがですか。
 午前中や午後の早い時間は高齢の方々が多く、遠方からもお見えになります。夕方からは子どもさんとスポーツ選手が中心です。スポーツドクターとしては、アイスホッケー、ゴルフ、ソフトボールはビックカメラや日立、バレーボールは春校バレーで優勝した下北沢成徳学園のサポートをしています。


◆ どのような内容の健診を行っていらっしゃいますか。
 世田谷区の骨粗鬆症検診をお受けしています。また、インフルエンザや肺炎球菌の検査も行っています。


◆ 病診連携については、いかがですか。
 患者さんの病状に応じて、ご紹介しています。紹介状を書く機会はとても多いですね。これまでの繋がりを活かして、患者さんに安心していただけるような紹介先にお願いしています。


◆ 経営理念をお教えください。
 運動と栄養を通して、地域の健康増進に貢献するのが一つのヴィジョンです。運動と栄養は手段であり、目的は患者さんに良くなっていただくことですが、エンドベネフィットとしては患者さんに前向きになっていただくことにあります。動けなかった患者さんが動けるようになるために、技術よりもスタッフとのコミュニケーションで元気づけてさしあげたいと考えています。


◆ スタッフ教育はどのようにされていますか。
 理学療法士やトレーナーへの教育は外部から講師をお招きして、研修してもらっています。アドバイザー的存在のリハビリテーションの専門家に来ていただき、スタッフが一緒に患者さんの治療にあたることもあります。皆が目標にしている人がどんな治療をするのかをその場で見られるのは非常に勉強になりますね。定期的に大学病院に勉強に行く機会もあります。大学病院ではスタッフが担当した患者さんの手術に立ち会わせていただくなど、充実した研修ができているようです。また、運動療法に関しては日本でトップクラスのトレーナーにも来てもらっています。


◆ 増患対策について、どのようなことをなさっていますか。
 ホームページぐらいです。看板は出していませんね。来院動機は圧倒的に口コミです。ホームページに関してはスタッフの得意な分野を打ち出せる内容にするべく、リニューアルを準備中です。


開業に向けてのアドバイス

 アドバイスできるほどのものはありません(笑)。よく聞かれるのは人材管理ですが、私の場合は以前、勤務していたアレックスの林英俊理事長がメンターですね。人材管理は初めてですし、経営学を学んできたわけではありませんが、スタッフとは前向きに面談を繰り返し、一緒に勉強していく姿勢を持っています。勇気を持って、進めているところです。

プライベートの過ごし方(開業後)

 意識的に身体を動かすようにしています。仕事が終わったら高田馬場のリンクに行き、カジュアルホッケーをしています。カジュアルホッケーとはチームに所属せず、自由参加できる形態のアイスホッケーで、楽しいですよ。そのほかの趣味は読書です。

スポーツ診療や運動療法に興味のある医師を募集しています。

タイムスケジュール

タイムスケジュール

クリニック平面図

平面図
山手クリニック
  院長 服部 幹彦
  住所 〒155-0032
東京都世田谷区代沢2-28-11
  医療設備 レントゲン、超音波、低周波治療器、ホットパック、骨密度測定、電子カルテなど。
  スタッフ 40人(院長、常勤医師2人、非常勤医師4人、常勤看護師2人、非常勤看護師2人、理学療法士10人、常勤トレーナー2人、非常勤トレーナー2人、常勤管理栄養士2人、非常勤管理栄養士1人、常勤診療放射線技師1人、非常勤診療放射線技師2人、医療クラーク2人、常勤事務4人、非常勤事務2人、非常勤ドライバー1人)
  物件形態 戸建て
  延べ面積 〇坪
  敷地面積 〇坪
  開業資金 約5,000万円
  外来患者/日の変遷 開業当初20人→3カ月後80人→6カ月後100人→現在160人
  URL http://www.yamateclinic.jp/

2016.06.01 掲載 (C)LinkStaff

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