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かぶらきクリニック

鏑木 與善 院長

鏑木 與善 院長プロフィール

1964年に東京都品川区で生まれる。1989年に東京慈恵会医科大学を卒業後、東京慈恵会医科大学附属病院で研修を行う。1991年に東京慈恵会医科大学附属病院第三内科(現 糖尿病・代謝・内分泌内科)に入局する。1995年に大森赤十字病院内科に勤務する。2004年に大森赤十字病院内科副部長に就任する。2006年4月に東京都大田区にかぶらきクリニックを開業する。


日本内科学会認定医、産業医など。日本糖尿病学会、日本内分泌学会、日本外科学会にも所属する。

 東京都大田区中央は文字通り、大田区の中央部に位置する住宅街である。JR京浜東北線の大森駅、JR京浜東北線、東急目黒線、東急池上線の蒲田駅の中間にあたり、東急池上線の池上駅からも東急バスが出ている。関東大震災後に多くの芸術家や文化人が移り住み、馬込文士村を形成したことで知られる。町内に大田文化の森や馬込文士村の一角である龍子記念館などが点在し、散策も楽しめる街となっている。
 かぶらきクリニックは東急バスの池上営業所から徒歩1分の場所に2006年に開業したクリニックである。かぶらきクリニックでは開業以来、糖尿病、高脂血症、高血圧症などの生活習慣病の治療や栄養相談、甲状腺疾患などの内分泌疾患の治療に力を入れている。
 今月はかぶらきクリニックの鏑木與善(もとよし)院長にお話を伺った。


開業に至るまで

◆ 医師を目指された経緯をお聞かせください。
 父は医師ではないのですが、9歳上の姉が医師です。私が小学生のときに、姉が医学部に入ったんですね。当時の私は『ブラック・ジャック』を読んでいましたから、姉の姿を見て、「あんな仕事をするんだなあ」と思ったものです。それから、高校1年生のときに国立西洋美術館にムンクの展覧会を見に行きました。ムンクは「叫び」で有名な画家ですが、展覧会で印象に残ったのは「Das Kranke Madchen」でした。「The Sick Girl」とも呼ばれる作品で、10歳ぐらいの女の子がベッドに横たわり、布団から出た指を母親が握って泣いています。女の子は重病なのか、目も落ち込み、息も絶え絶えの様子ですが、その横の医師はこちらを向いてどうしようもないという顔をしていました。その絵画を見て、こんな子どもの苦しみをとってあげたいと考えたのが医師を目指した動機です。


◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
 弓道部に入っていました。慈恵医大は単科大学なので、人間関係を作るためには部活動に入っておかないといけないという雰囲気がありましたね。弓道部では仲の良い友達ができ、今も親しくしています。勉強は中の中から中の上といったところでしょうか(笑)。最初の3年間は部活動に打ち込み、残りの3年間は勉強が中心でしたね。


◆ 大学時代はどんな趣味をお持ちでしたか。
 友達と旅行に行ったりしていました。勉強も仲間とすると楽しかったです。一人ではできないことでも、仲間と苦楽を分かち合えればできるようになることもありますね。


◆ 専攻を内科に決められたのはいつですか。
 大学を卒業したときは内科か外科かというよりも消化器を学びたかったんです。それで、第三内科を選びました。今は消化器内科になっていますが、当時はナンバー内科ですから、第三内科に入り、消化器や内分泌を研修しました。


◆ その中で内分泌を専門にしようと思われたのはどうしてですか。
 第三内科で仲良くさせていただいていた上司が糖尿病を専門にされていたんです。昔は緩いところがあり、研修医でも動物実験や研究ができたんですね。私が研修医時代に行った実験がたまたまうまくいったことがあり、その上司から「糖尿病は面白いから、やってみたら」と勧められたのがきっかけです。1990年、91年あたりは肝臓ではインターフェロン、循環器ではステントやカテーテルが日本で始まった頃で、内科医を目指していた友達は肝臓や循環器に行こうとする人が多かったんです。一方で、糖尿病は治療薬もあまりなく、内科の中では縁の下の力持ち的存在でした。治療方法も乏しく、いわゆる華のない存在だったんです。患者さんも今ほど多くなかったので、「面白くないよ」という声もあったのですが、自分が好きで行くところだから後悔はしないはずだと思いましたね。結果として、治療薬も出てきて、注目される分野になりました。最初から儲けてやろうとか、研究発表をしてやろうと考えていたわけではなく、やってみたら楽しかったという感じです。


◆ 大森赤十字病院での勤務が長かったのですね。
 30代のほとんどを大森赤十字病院で過ごしたことになります。医師として体力的にも充実していましたし、上もいれば下もいるという、いいときでしたね。スキルを身につけたいというよりも、患者さんからの信頼をいただきたいと頑張っていました。


◆ 勤務医時代を振り返って、いかがですか。
 大森赤十字病院で勤務を始めた頃、外来は週に2回だったんです。それが徐々に患者さんが増えたために、週に2日ではこなせなくなり、そのうち毎日、外来をすることになりました。楽しかったですね。午前中は外来、午後は病棟で働き、患者さんからの信頼を得られているんだなと実感できました。


開業の契機・理由

◆ 開業の動機をお聞かせください。
 私にとっての医師のイメージは小さい頃にかかっていた、近所の開業医さんだったんです。そのイメージのまま、医学部を受験し、医師になりました。そういうイメージがあったので、いずれはと思っていました。開業の動機としては病院の機能分化が進んできたことでしょうか。DPCや病診連携が始まると、大きな病院の中で自分の好きな医療をすることだけでは患者さんを増やしたり、患者さんからの信頼を得ることに繋がらないのではと考えましたね。


◆ 開業地はどのように探されたのですか。
 患者さんが多かったにも関わらず、私の後任に糖尿病を専門にしている医師が着任しないことは分かっていました。しかし、患者さんを置いていくわけにはいきませんから、病院の近くで探すことにしました。近所には大森赤十字病院に勤務されていた先生方のクリニックが多く、私も開業する2、3年前から医師会の講演会などに出席していたので、顔見知りになった先生方も多かったんです。それで、開業するならこのあたりでと決めて、物件を探し始めました。なかなか良い物件に出会えませんでしたが、退勤時にいつもとは違う方向で帰っていたら、偶然、この場所を見つけました。


◆ 開業地の第一印象はいかがでしたか。
 運命の出会いだと思いましたね(笑)。それまで、いくつかの候補があったのですが、広すぎたり、狭すぎたり、エレベーターのないビルの2階や3階だったりと、帯に短し襷に長しだったんです。ここはちょうどいい物件でした。


◆ 開業にあたって、マーケティングはなさいましたか。
 一般的な診療圏調査を行いましたが、人口などから見て、「大丈夫」と言われましたよ。


◆ 開業までに、ご苦労された点はどんなことですか。
 スタッフを集めることですね。それまでは使われる身でしたから分からなかったんです。看護師にしろ、事務スタッフにしろ、本当に集まるのか、集まったとして、開業後に皆で仲良くやっていけるのかということに腐心しました。


◆ 医師会には入りましたか。
 開業と同時に大田区医師会に入りました。私が開業するという噂が既に広まっているようで、医師会に訪ねていったら、先生方から「来た来た」と言われました(笑)。


◆ 開業当初はどのようなスタッフ構成でしたか。
 看護師2人、事務スタッフ4人です。皆、いわゆるフルパートの形態でした。


◆ 医療設備については、いかがでしょうか。
 単純レントゲン、心電図、ホルター心電図に加え、糖尿病に強みのあるクリニックらしく、ヘモグロビンA1c迅速検査ができるように準備しました。


◆ 設計や内装のこだわりについて、お聞かせください。
 設計士さんに全てお任せしました。2階がありますから、床面積が広くなるのは良かったのですが、吹き抜けがあるのをもったいないとおっしゃる人もいます。しかし、設計士さんのお考えは「北向きだから、採光しないといけない」というものでした。結果として、明るくなったので正解でしたね。診察室も広いスペースを確保できました。何より、スタッフが皆、建物を大事にしてくれて、よく掃除してくれるのが嬉しいです。


クリニックについて

◆ 診療内容をお聞かせください。
 標榜しているのは内科、循環器科、糖尿病内科です。近くで勤務医をしていたこともあり、開業当初は9割近くの患者さんが糖尿病の方でしたが、今は6割ぐらいですね。それでも、メーカーからデータの依頼があるぐらいの患者さんがいらしています。そのほかは糖尿病を持っていないけれども、血圧やコレステロールで悩んでいる患者さん、風邪などの患者さんに来院していただいています。


◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
 生活習慣病をメインにしているクリニックですから、患者さんの「痛い」や「痒い」といった訴えがあるわけではないので、患者さんの治療へのモチベーションを持続させないといけません。そこで、薬の量やインスリン注射の回数などをできるだけ減らして、薬剤の負担のみならず、心理的、経済的な負担も少なくする工夫をしています。そして、患者さんが来やすく、何でも話せる雰囲気を作っています。患者さんが治療から「脱落」しないことが大切だと思っています。


◆ 患者さんの層はいかがですか。
 50代後半から60代の方が多いです。中には80代、90代の方もいらっしゃいますね。近隣の方がほとんどですが、品川や多摩川あたりから来院されることもあります。


◆ どのような内容の健診を行っていらっしゃいますか。
 大田区の健診や企業健診など、フォーマットがあるものをお受けしています。


◆ 病診連携については、いかがですか。
 登録医になっているのは川崎幸病院、東京高輪病院ですが、紹介先のメインは大森赤十字病院ですね。そのほかは牧田総合病院、池上総合病院、東邦大学医療センター大森病院、昭和大学病院、東芝病院、安田病院などと連携しています。


◆ 経営理念をお教えください。
 短期的には損をしたり、コストがかかったとしても、患者さんからの信頼が何者にも代えがたい財産ですから、ホスピタリティを重視しています。どうしても待ち時間が発生しますから、その分、患者さんにとって居心地の良い空間になるようにと心がけています。


◆ スタッフ教育はどのようにされていますか。
 開業の一番難しいところがスタッフ教育ですね。私どもでも課題です。小さい子どもがいるスタッフが多いので、家庭の事情もありますから、まとまった時間に勉強会を開催できない状況です。


◆ 増患対策について、どのようなことをなさっていますか。
 特に何もしていません。開業して10年ですが、幸いにして、右肩上がりとまではいかないものの、患者さんの数は減っていないんです。診療時間内には常に患者さんがいる状況です。私一人で外来をしていますから、このぐらいの来院数で満足しています。逆に、これ以上に増えてしまうと、今の患者さんにご迷惑をかけますからね。


開業に向けてのアドバイス

 まずは「開業するので、病院を辞めます」と言ったときに引き止められるような医師でないといけません。「やれやれ、辞めてくれて良かった。はい、次」と思われるようでは駄目ですね(笑)。私は内科医ですので、内科のことしかアドバイスできませんが、余程のスペシャリティの看板を持って開業する以外は様々な疾患を診ないといけません。忙しいとは思いますが、勤務医をしているときに、診断がつく前の患者さんやどの診療科にかかるといいか分からない患者さんを積極的に診て、訓練しておくことをお勧めします。内科医なら、外科医や整形外科医から信頼される仕事をすれば、開業の際にもスムーズですし、勤務先の病院の近くで開業するのなら、病診連携にあたっても問題ありません。

プライベートの過ごし方(開業後)

 子どもが高校生と中学生なので、休みの日は子どもが中心になってしまいますね。長い休みのときは家族で旅行に行っています。今年の夏は沖縄に出かけました。

タイムスケジュール

タイムスケジュール

クリニック平面図

平面図
かぶらきクリニック
  院長 鏑木 與善
  住所 〒143-0024
東京都大田区中央4-36-6
  医療設備 胸部・腹部レントゲン、心電図、24時間ホルター心電図、血糖値迅速検査、ヘモグロビンA1c迅速検査、血圧脈波測定、電子カルテなど。
  スタッフ 11人(院長、常勤看護師3人、非常勤管理栄養士1人、常勤事務4人、非常勤事務2人)
  物件形態 戸建て
  延べ面積 72坪
  敷地面積 45坪
  開業資金 約1億円
  外来患者/日の変遷 開業当初50人→3カ月後50人→6カ月後60人→現在70人
  URL 準備中

2016.09.01 掲載 (C)LinkStaff

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