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杉岡小児科

杉岡 竜也 院長

杉岡 竜也 院長プロフィール

1964年に千葉県船橋市で生まれる。1990年に順天堂大学を卒業後、千葉大学小児科医局に入局し、千葉大学医学部附属病院、船橋市立医療センターで研修を行う。1992年に千葉県立こども病院感染症科に勤務する。1994年に君津中央病院新生児科に勤務する。1995年に千葉市立青葉病院小児科に勤務する。1996年に千葉大学医学部附属病院で研究に従事し、医学博士号を取得する。1998年に千葉市立青葉病院小児科に勤務する。2003年に千葉県八千代市の杉岡小児科を継承する。

日本小児科学会認定医など。日本小児感染症学会、日本小児呼吸器学会にも所属する。

 千葉県八千代市は人口約19万人で、千葉県第7位の都市である。1955年に日本住宅公団(現 独立行政法人都市再生機構)による、我が国初の大規模住宅団地となった八千代台団地が建設されたことで、「住宅団地発祥の地」として知られている。もともと京成電鉄本線沿いに発展した街であるが、1996年の東葉高速鉄道東葉高速線の開通を受けて、宅地開発がなおも進んでいる。
 杉岡小児科は京成電鉄本線の八千代台駅東口から徒歩3分の場所に1974年に開業したクリニックである。初代の院長は杉岡昌明理事長であったが、現在は代替わりし、子息の杉岡竜也医師が院長を務めている。杉岡院長は千葉大学小児科医局に所属し、小児感染症を専門としてきたが、継承後は専門にこだわらず、乳幼児健診や育児相談なども行っている。
 今月は杉岡小児科の杉岡竜也院長にお話を伺った。


開業に至るまで

◆ 医師を目指された経緯をお聞かせください。
 父が医師であることが大きいですね。父は私が生まれた頃は千葉大学医学部小児科教室員をしていたのですが、私が10歳のときにここに土地を得て、開業したのです。民家の一部が診療所になっているような建物で、玄関こそは自宅と分かれていましたが、診療所のスペースと自宅は階段で繋がっていました。夜でも患者さんが来られると、階段を急いで降りていた父の姿を見ていましたから、私にとっての一番身近な職業が医師でした。


◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
 真面目とは言い難かったです。当時の順天堂大学は習志野市大久保に寮があり、1年生の男子学生は寮生活が必須でした。大久保近辺は昔、陸軍の旅団や連隊が置かれたところで、その頃からの樹木が植えられたままになっています。「その木を切ると、おばけや祟りが出る」などと言って、非科学的に盛り上がっていましたね(笑)。近隣に日本大学や東邦大学のキャンパスもありますので、学生向けの飲み屋さんが多く、よく飲んでいました。バブルの頃でしたので、合コンやダンスパーティーなどもありましたね。2年のときは自宅から通いました。3年生からはキャンパスが御茶ノ水に移るのですが、試験の前などは友達の家で勉強していました。5年生からは本郷で一人暮らしを始めましたが、大学には近くなったものの、勉強はあまりせずに、よくお酒を飲んでいました。


◆ 大学時代はどんなご趣味をお持ちでしたか。
 ゴルフ部に入っていました。学内に体育会に入っておかないといけないという雰囲気があり、どこかに入ろうとゴルフを選びました。でも、実技は苦手で、マネージャーに徹していました。スコアの計算よりお金の計算をしていましたね(笑)。この近辺で過ごす機会も多く、地域の変遷を見てきました。寮は酒々井町に移ってしまい、以前の寮はマンションに変わったんですよ。


◆ 専攻を小児科に決められたのはいつですか。
 父が小児科のクリニックを開業していましたから、医学部を目指すときに既に小児科だと決めていました。運命でもあり、既定路線でもありましたね。一浪後に地方の国立大学にも合格したのですが、都内の大学を選んだのも、地方に行くとこちらに帰ってくるのが難しくなるかもしれないと考えたからです。


◆ 千葉大学の医局を選ばれたのはどうしてですか。
 将来、千葉で開業医になるなら、千葉大学の医局に入った方がいいと、父から言われたのです。少し抵抗もしましたが、結局は言われた通りにしました(笑)。同期は8人でしたが、そのうち4人が他大学出身者でしたので、肩身が狭くなることもなく、面白かったですね。


◆ 専門を感染症にされた理由をお聞かせください。
 昔の小児科の開業医は専門がどうしても感染症か、アレルギーになってしまうんです。どちらか、あるいは両方を専門にするかという感じですね。血液、代謝、内分泌などは一人ではできず、病院にいないと難しいです。私が感染症を選んだのは友達に誘われたのがきっかけですが、感染症の診断は醍醐味があると、すぐに魅力を覚えました。当時は百日咳の検査方法も違っていて、培地に咳をさせていたのですが、これを“ふき付け法”といいました。なかなかテクニックがいります。感染症の場合は治癒までの期間が比較的短く、転帰があまりミゼラブルではありません。「これだ」と狙った方法が効くのはダイナミックですし、そこに感動しました。


◆ 勤務医時代を振り返って、いかがですか。
 当直以外はあまりきつい思い出はありません。今、東京女子医科大学八千代医療センターにお手伝いに行っているのですが、そこで若い先生方が仲間と当直しているのを見ると、いい時代になったと思いますね。今は指導医も残っていますから、困ったこともすぐに尋ねることができます。私が若い頃の当直はきつかったですし、一人で当直することがほとんどでしたので、不安や恐怖感がありました。


継承の契機・理由

◆継承の動機をお聞かせください。
 2003年頃、親と一緒に過ごす機会が増えたのですが、父が「ここが痛い、あそこが痛い」と言ったりするのを聞いて、そろそろ継承しないといけないのかなと思うようになりました。また、その頃、勤務していた病院が新築移転して、電子カルテを導入するなどの最先端の病院に生まれ変わったんです。しかし、当時のコンピューターには融通が利かない面があり、ストレスが溜まっていました。私にはアナログな方が合っていると考えたのもきっかけです。


◆ お父様は開業地をどのように探されたのですか。
 父が当時、勤務していた八千代中央病院は八千代台駅を挟んだところにありました。現在は八千代リハビリテーション学院の学生寮になっているところです。そこで、患者さんを奪うことがないように、線路の反対側で探したようです。父なりにマーケットリサーチをして、競合がないところを選んだとのことでした。


◆ 継承にあたって、改めてクリニックをご覧になったときの印象はいかがでしたか。
 この辺りは昔から八千代市だったところです。私の母校の小学校も近くにあり、八千代台駅まで徒歩3分ですから、コンパクトでいい街だと感じました。駅前にユアエルムができて、買い物の利便性も高まってきましたね。ただ、地域の高齢化は進んでおり、私どもにも祖父母の家に帰省してきたお孫さんの受診が目立っています。東葉高速線が開通して、八千代中央駅や八千代緑が丘駅の方に若い人たちが住むようになりましたから、子どもが多いのはあちらの地域ですね。


◆ 継承にあたって、マーケティングはなさいましたか。
 何もしていないです。


◆ 継承までに、ご苦労された点はどんなことですか。
 何でも新しいものがいいわけではないので、その取捨選択でしょうか。古いものとしては病名などの判子を使い続けています。電子カルテは慌てて導入する必要はないと考えました。


◆ 医師会には入りましたか。
 入らないという選択はなかったですね(笑)。八千代市医師会に入っており、夜間急病センターや休日の当番医を務めています。


◆ 継承当初はどのようなスタッフ構成でしたか。
 看護師4人、事務スタッフ4人です。最初は父のときからの引き継ぎでしたが、少しずつ若いメンバーに代わっています。若いスタッフが入ると、カンフル剤になりますね。


◆ 医療設備については、いかがでしょうか。
 レントゲンをデジタルのものに新調しました。それまでのフィルム式のレントゲンが経年劣化で壊れてしまい、補充部品も作っていないとのことでしたので、買い換えるしかなかったんです。デジタルレントゲンを使ってみて、やはりいいものだというのが父との共通見解です。


◆ 設計や内装のこだわりについて、お聞かせください。
 継承当初はそのままでしたが、床が抜けそうになったり、すきま風が入ってきたりということもあり、2012年に建て替えを行いました。気密性はもちろん、東日本大震災後でしたので耐震性にもこだわりました。2階には図書室などのスペースを作りましたが、年配の方のためにエレベーターも設置しています。
 1階の待合室、診療部内は廊下を含めて全て床暖房で、キッズスペースもあります。授乳スペースにはカーテンをつけましたし、看護師が働きやすいように処置室を広くしました。処置室では点滴も行っています。時代の趨勢で、ベッドに乗り切らないほどのワクチンを打つこともありますから、広くして良かったですね。それから、感染症診察室、感染症隔離待合室、通路の一方通行化もこだわった結果です。


クリニックについて

◆ 診療内容をお聞かせください。
 一般小児内科、乳幼児健診、学童や学生健診、各種予防接種です。小児感染症の診断と治療には力を入れています。感染症と診断をした患者さんに、各疾患に合わせた薬物治療を行っています。感染症には心臓カテーテルなどの特殊な技能はいりませんが、早く診断することを求められます。私どもではRSウィルス、インフルエンザやマイコプラズマ感染症などのキットを導入し、早期診断を行っています。
 喘息に関しては薬物療法、環境調整をはじめとする指導管理、小児アレルギー疾患には薬物療法、食事療法などの指導管理が中心ですね。
 また、乳幼児期、小児期に関する健康相談などもお受けしています。


◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
 出来るだけ早く診断し、治療方針を出してさしあげることを心がけています。インフルエンザなどは迅速検査ができるものはなるべく検査を早めに行えるようにしてますし、胃腸炎のように連日続けて来院していただかないと診断と治療がすすまないものもあります。しかし、少なくとも来院された日の夜に何かが起きないようにするための努力をしています。


◆ 患者さんの層はいかがですか。
 0歳児から中学生までが中心です。ただ、小さいときから来院されていて、高校生や大学生になっても続けていらしている患者さんもいますし、父に会いたいという理由でいらしている患者さんもいますよ。親御さんに関しては私で診られるものは診ていますが、特殊な疾患、重症と思われる方は、近隣の内科のクリニックや東京女子医科大学八千代医療センターにご紹介しています。


◆ どのような内容の健診を行っていらっしゃいますか。
 いわゆる乳児健診など、クライテリアに基づいて定期健診化されているものが中心です。


◆ 病診連携については、いかがですか。
 紹介先のほとんどが東京女子医科大学八千代医療センターです。アレルギー負荷試験については下志津病院にお願いしています。以前は千葉大学医学部附属病院や千葉市立海浜病院、千葉県こども病院にご紹介することもあります。


◆ 経営理念をお教えください。
 一つの問題をその日のうちに解決するようにしています。ただ、先輩である父がそばにいますから、風通し良く、相談していますね。父が元気なうちに聞けるだけのことを聞いて、経営のノウハウを学びたいと思っています。


◆ スタッフ教育はどのようにされていますか。
 朝礼のほか、勉強会を開催しています。2階の図書室にホワイトボードを置いていますので、そこが会場です。冬場は忙しくなりますから、夏に頻繁に行っていますね。現実に即したテーマを選ぶようにしています。最近では感染症の広がりを防ぐための吐物の処理方法をテーマにしました。患者さんはもちろん、スタッフが感染症に罹るのを予防するためでもあります。最近ではオンデマンドで勉強することもできますが、私どもでは直接、学ぶ機会を大切にしています。


◆ 増患対策について、どのようなことをなさっていますか。
 ホームページを充実させているところです。妻が「お母さん目線」でのアドバイスをくれるので、助かっていますね。以前はシンプルなサイトでしたが、最近は「学会のため、休診します」といった情報も出すようになりました。また、電子受付システムも始めました。イベントとしては毎年12月にクリスマス会を開いています。病気のとき以外で子どもさんに触れ合える貴重な機会ですね。


開業に向けてのアドバイス

 勤務医にしろ、開業医にしろ、おのおのの良さがあります。私の同級生を見ますと、親が開業医の子どもが勤務医だったり、親が医師でない家庭の子どもが開業医になっていたりと、様々です。親がご商売をしている家庭で育った医師は人慣れしているためか、話し方が優しい人が多いですね。
 開業医になるのであれば、しっかりした理念を持ってほしいです。「勤務医が嫌だから開業する」というマイナスの気持ちで開業するのは良くないですね。大学に残るのであれば研究や論文執筆を頑張ってほしいし、皆で得意なことを伸ばし合っていければと思います。

プライベートの過ごし方(開業後)

 休みの日には子どもと一緒に公園で身体を動かしたり、本屋さんに行ったりしています。夏休みには家族で伊豆に行きました。最近は旅行先で過ごした次の日に仕事というのはきついですね(笑)。リカバリーのために前後1日ずつ必要になってきました。

タイムスケジュール

タイムスケジュール

クリニック平面図

平面図
杉岡小児科
  院長 杉岡 竜也
  住所 〒276-0032
千葉県八千代市八千代台東1-20-7
  医療設備 レントゲン、院内迅速血液検査、ネブライザー、AED、自動解析心電図など。
  スタッフ 10人(院長、理事長、常勤看護師2、非常勤1、非常勤助手1、事務職常勤2、非常勤2)、院内清掃人1名。
  物件形態 戸建て
  延べ面積 210m²
  敷地面積 210m²
  開業資金 継承なのでなし
  外来患者数の変遷 継承当初50人→3カ月後60人→6カ月後60人→現在70人
  URL http://www.sugioka-syouni.or.jp/

2016.12.01 掲載 (C)LinkStaff

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