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MARySOL整形外科

山本 さゆり 院長

山本 さゆり 院長プロフィール

1972年に山形県山形市で生まれ、幼少から高校卒業までを千葉県船橋市で過ごす。1997年に福島県立医科大学を卒業後、慶應義塾大学整形外科学教室に入局する。その後、慶應義塾大学病院、国立栃木病院(現 栃木医療センター)、清水市立病院(現 静岡市立清水病院)、国立埼玉病院(現 埼玉病院)、芳賀赤十字病院、国立成育医療研究センター、川崎市立川崎病院、伊勢原協同病院に勤務する。2012年に神奈川県藤沢市にMARySOL整形外科を開業する。


日本整形外科学会専門医・運動器リハビリテーション医など。日本手外科学会にも所属する。

 神奈川県藤沢市辻堂東海岸は藤沢市の南部にあり、辻堂海岸に面した街である。辻堂海岸には辻堂海水浴場があり、夏には海水浴客で賑わうほか、一年を通してサーフィンが盛んである。JR東海道本線の辻堂駅から辻堂海岸までの昭和通りはサーファー通りとも呼ばれ、多くのサーフショップが建ち並んでいる。
 MARySOL整形外科はその昭和通り沿いのクリニックモールである湘南メディカルビルに2012年に開業したクリニックである。山本さゆり院長は慶應義塾大学の整形外科医局で経験を積み、上肢外科を専攻してきた。開業後は「皆様が笑顔になれるクリニック」を目指して、プライマリケアに取り組んでいる。理学療法士のみならず、トレーナーも常勤し、健康意識の高い地域のニーズに応えている。
 今月はMARySOL整形外科の山本さゆり院長にお話を伺った。


開業に至るまで

◆ 医師を目指された経緯をお聞かせください。
 最初から人と関わる仕事が向いていると思っていました。具体的に医学部に行こうと決めたのは高校3年生になって進路別に授業の選択を迫られたときでした。人と関わりながら、遣り甲斐を持って、女性でも自立してやっていける職業を考えたとき、自然と医師に辿りつきました。


◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
 大学に通ったり、アルバイトをしたり、初めて車を持ったので、あちこちドライブに行ったりと、普通の学生でした。また初めての一人暮らしだったので、色々なことを経験したのも良い思い出です。


◆ 大学時代はどんなご趣味をお持ちでしたか。
 小さい頃から歌うことは大好きでしたので、中学、高校と聖歌隊に入っていた延長で、大学でもグリークラブに混ぜてもらっていました。また、美人の先輩に勧誘され、ゴルフ部にも入部しましたが、ゴルフは才能がなく、今でもたまに行きますが、ずっと下手なままです。


◆ 専攻を整形外科に決められたのはいつですか。
 6年生のポリクリで整形外科に行ったことがきっかけです。整形外科の先生方は皆明るく、医局に活気を感じました。中でも菊池臣一先生が親分肌で格好良く、手術も上手で憧れました。整形外科の疾患は、手術をすることで機能が明らかに改善することを治療する側も、患者さんも実感できるので、面白そうだと思いました。


◆ 慶應義塾大学の整形外科学教室に入ろうと思われたのはなぜですか。
 関東出身なので、関東の大学の医局を考えていました。慶應義塾大学を選んだのは関連病院とスタッフの多さが理由です。関連病院が多ければ多いほど、それだけの勉強ができると思いました。


◆ 色々な病院に勤務されたのですね。
 勤務した先々のトップの先生の専門分野が違いますし、同じ手術であっても、それぞれの先生によって方法が違ったりしますので、勉強になりました。フレッシュマン出張で勤めた当時の国立栃木病院では、現在『白石式』と呼ばれる頸椎選択的椎弓形成術で有名な白石建先生が部長でいらして、その術式を最初に行ったときに横で見させていただいたのは貴重な経験です。地方を転々としましたが、その土地の名所を訪れたり、その土地の美味しい者を食べたり、いろんな仲間と巡り会ったり、とても楽しく過ごしました。


◆ 勤務医時代を振り返って、いかがですか。
 勤務医時代は当直やオンコールなどの拘束時間が多くて大変でしたが、多くの先生方や医療スタッフと働けて様々な経験を積めた時代でした。また、全ての責任を自分が負わねばならない今とは違い、上司や病院に守ってもらえた時代でもありました。


開業の契機・理由

◆開業の動機をお聞かせください。
 医師には研究したい人や、一生手術をしていきたい人など、色々なタイプの人がいますが、私の理想は患者さんと会話をする時間をしっかり取り、患者さんに寄り添う医師でした。お会いすることで、患者さんが笑顔になり、患者さんを前向きにするお手伝いをしたかったので、大学病院や総合病院で勤務医として働くよりも、地域に近い場所で働けるクリニックの方が自分には向いていると思い、10年目を超えた当たりから開業を考え始めました。開業医として患者さんを最初に診て、手術や精密検査の必要があれば最適な医療機関に紹介をしたり、大病院では予約の間隔が長く、その間不安に過ごされることが多いので、その間のフォローをしたりと、患者さんに寄り添った治療は開業医にしかできないと思いました。たまたま2012年2月に知り合いの先生が開業コンサルタントの方を紹介してくださり、運の良いことに物件もすぐ見つかりましたので、今がそのときだと思い、開業を決意しました。


◆ 開業地はどのように探されたのですか。
 自宅から車で20分圏内の場所を探しました。景色や街の雰囲気が良く、海に近いところで開業したいと思っていました。


◆ 開業地の第一印象はいかがでしたか。
 まだ基礎を打っている段階でしたが、設計図を見せてもらうと、窓が大きく、開放的で明るい雰囲気だったので、すぐに気に入りました。馴染みのある土地でしたし、海に近いという条件とも合っていました。3階しか空きがなく、整形外科としては手狭な点は気になりましたが、気に入った場所で開業することにこだわりました。またオーナーさんがとても良い方だったのも決め手になりました。
 また当時は3.11の東日本大震災の直後だったため、いつか来るかもしれない津波による被害が心配でしたが、津波も考慮したうえでビルの構造を強化しているということと、万が一のときは地域の避難ビルとして使用できるようにするとの説明を受けたので、安心しました。
 実際にビルが完成して中に入ってみると、正面に大きな富士山が見え、今ではスタッフも患者さんも毎日富士山を楽しみに来るくらいです。


◆ 開業にあたって、マーケティングはなさいましたか。
 診療圏調査をしました。正直、厳しい結果が出ました。同じ時期に開業する競合もありましたし、近隣が海、公園、学校などで占められているため、駅近などに比べると格段に人口が少なかったのです。ただ、新しい住宅も増えていて、海好きな若者も集まってきますし、実際、人口は年々増加していましたので、幅広い年齢層の患者さんがいらっしゃることが期待できると思いました。それに、駅近の喧噪のなかで慌ただしく診療するよりも、落ち着いた空間で患者さんとゆっくり向き合える環境の方が、自分らしい診療スタイルが築けると思いました。また丁寧な診療を続けていれば口コミで自然と患者さんが増えてくるだろうと前向きに考えることにしました。


◆ 開業までに、ご苦労された点はどんなことですか。
 苦労したという思い出は残っていませんが、今思うと前職を辞職するのにはエネルギーが要りましたし、手続きや業者との頻繁な打ち合わせなど、結構忙しかったですが、楽しい思い出です。


◆ 医師会には入りましたか。
 市の検診などを受託することがないため、入会していません。


◆ 開業当初はどのようなスタッフ構成でしたか。
 看護師2人、理学療法士2人、受付のスタッフ2人が常勤で、リハビリテーション助手2人が非常勤でした。クリニックの経営が軌道に乗るまでは、人件費の削減のために各部署常勤を1人にして、あとはパートさんにした方が良いというアドバイスも沢山いただきましたが、開業当初からきちんとしたサービスを提供するために、敢えて各部署常勤2人体制にしました。


◆ 医療設備については、いかがでしょうか。
 整形外科は沢山の設備が必要です。電子カルテをはじめ、レントゲン、超音波、リハビリ機器など、一旦購入したら簡単に買い替えることはできませんので、各社の製品を吟味し、最新かつ使い勝手の良いものを揃えました。新しい試みとしてはiPadによる問診システムを導入しました。


◆ 設計や内装のこだわりについて、お聞かせください。
 患者さんにリラックスしていただける雰囲気にするために、業者さんにはかなりわがままを言いました(笑)。内装業者には、病院らしくない、明るくて素敵な空間、かつ実用的なスペースにしたいと伝えました。たびたびテレビなどで目にしたエーゲ海の島々の青い海と白い家並み、石畳や鮮やかなブーゲンビリアの雰囲気がとても素敵だと思っていたので、インターネットで探した写真を沢山用意して業者さんに渡しました。
 診察室や処置室、受付、リハ室などは、いかに効率よく、動きやすく働けるスペースにするかを考えました。知り合いのクリニックにも見学に行って、実際に働いている人の意見を取り入れたうえで、自分がそのポジションで働くつもりになって、棚の高さや引き出しの高さ、コンセントの位置、スイッチの高さ、シンクの素材など、全ての内装や家具を業者と細やかに打ち合わせして作ってもらいました。週に1度は必ず現地で打ち合わせをしましたので、納得できるものが完成しました。御蔭様でスタッフからは「働きやすくてありがたい」と言われています。
 実際に開業してみると、西日が非常に強いため、あとから全ての窓に断熱フィルムを貼りましたが、それ以外は開院5年目の今も使い勝手よく使わせてもらっています。


クリニックについて

◆ 診療内容をお聞かせください。
 整形外科とリハビリテーション科を標榜しています。整形外科は外傷、変性疾患、炎症性疾患、スポーツ障害、末梢神経障害、痛風、骨粗しょう症、交通事故による怪我、仕事中の怪我、装具の作成、形状記憶合金のワイヤーを用いた巻き爪の治療などを行っています。多いのは腰、肩、膝などの慢性疾患です。スポーツが盛んな土地なので、お子さんのスポーツ障害や怪我なども少なくありません。サーフィンのメッカですから、フィンでの切り傷などの治療もあります。海での怪我を見越し、処置室には足洗い場も作ってあります。
 リハビリテーション科では理学療法士による理学療法が主体です。物療機器による物理療法も行っていますが、大切なのは患者さん自身が自分の身体の状態を理解して、自ら身体の使い方を改善するように、患者さんを教育することだと考えていますので、理学療法士やメディカルトレーナーの介入により、患者さんが能動的なリハビリを行える環境作りを目指しています。


◆ 最近はトレーナーさんも加わっているそうですね。
 健康意識の高いエリアですのでニーズもあり、浸透しやすいと考え、トレーナーに入職してもらいました。腰痛の患者さんに「腹筋しましょう」と言っても、どうしていいのか分からない方が多いので、トレーナーが運動やストレッチの指導にあたります。運動と言うと敷居が高いですが、車椅子に座ったままでもできるものもありますし、ロコモティブシンドロームの予防にもなります。アスリートの方には競技種目やレベルに応じたトレーニングメニューを作成しています。まず医師である私が診断し、次いで理学療法士が筋肉の硬直部位や程度、身体の動かし方などの評価を行い、さらにトレーナーが強化を図ることで、最強かつ最善のリハビリが提供できるようになりました。また、投薬や注射と合わせて最善のリハビリを提供することで、最大の治療効果が期待できるようになったと思います。


◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
 患者さんを笑顔でお帰しすることです。患者さんは緊張して来院されますので、患者さんのお話を傾聴することに努めています。患者さんが何で来たのか、何をしてほしいのかに応えていきたいです。


◆ 患者さんの層はいかがですか。
 高齢の方が半分ほどで、子どもさんが1、2割といったところでしょうか。残りは40、50代の方々です。20、30代の方は少ないです。お子さんが大きくなっていく姿を見たり、ご家族の皆さんで来院してくださるのは嬉しいです。


◆ どのような内容の健診を行っていらっしゃいますか。
 特に行っていません。


◆ 病診連携については、いかがですか。
 慶應義塾大学病院、伊勢原協同病院、川崎市立川崎病院、国際親善総合病院、済生会横浜市南部病院、国立成育医療研究センター、藤沢市民病院、湘南藤沢徳洲会病院、平塚市民病院、湘南中央病院などと連携しています。


◆ 経営理念をお教えください。
 前年の同月よりはプラスでありたいとは思っています。そのためにはスタッフの教育が大切です。患者さんへ治療などの効果をきちんと説明ができれば、次の来院に繋がると話しています。


◆ スタッフ教育はどのようにされていますか。
 気になることは毎朝の朝礼で伝えます。また、スタッフには報連相の徹底を常に言い聞かせています。スタッフ間でも気になることは必ず伝え合い、情報を共有するように教えています。月に1回程度はテーマを決めて、勉強会を行っています。


◆ 増患対策について、どのようなことをなさっていますか。
 ホームページのほかは近くのバス停数カ所にクリニック名を入れています。また診療圏内の目につきやすそうな所に3カ所、看板を出しています。ただ、最終的には口コミが一番ですので、丁寧な診療を続けることが一番の増患対策だと思います。


開業に向けてのアドバイス

 開業をしたいと思ったときがそのときです。気に入った場所で、自分のやりたいスタイルでできるのが開業の魅力です。あとは頼りになるコンサルタントを探し、後悔ないように妥協せず、したいと思ったことを貫いてください。

プライベートの過ごし方(開業後)

 サーフィン発祥の地である湘南の中でも古くからサーフショップが建ち並ぶサーファー通りに開業したこともあり、2年前からサーフィンを始めました。サーフィンに先だってはじめたSUP(stand up puddle board) は、クルージング、波乗り、釣りなど、色々な楽しみ方ができるので、休診日の木曜日には海に出かけるのが楽しみです。愛犬達と海に出かけたり、山に登ったりして過ごす時間も宝物です。

タイムスケジュール

タイムスケジュール

クリニック平面図

平面図
MARySOL整形外科
  院長 山本 さゆり
  住所 〒251-0045
神奈川県藤沢市辻堂東海岸1-12-20
湘南メディカルビル3階
  医療設備 レントゲン撮影装置・最新DRシステム、骨密度測定器、ウォーターベッド型マッサージ器、牽引装置(頚椎腰椎一体型)、マイクロ波治療器、超音波治療器、電気刺激治療器(ポラリスカイネ、マックスカイネ)、上肢交互運動器、レッグエクステンション、メドマー、iPad問診システム、電子カルテなど。
  スタッフ 11人(院長、常勤理学療法士1人、常勤トレーナー1人、非常勤リハビリテーション助手5人、常勤看護師1人、常勤事務2人)
  物件形態 ビル診
  延べ面積 60坪
  敷地面積 60坪
  開業資金 1億円
  在宅患者数の変遷 開業当初30人→3カ月後50人→6カ月後80人→現在130人
  URL http://marysol-seikei.com/index.html

2017.02.01 掲載 (C)LinkStaff

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