クリニックの窓教えて、開業医のホント

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佐藤内科診療所

 神奈川県横浜市神奈川区桐畑は神奈川区の南部、東急東横線の反町駅から第二京浜国道(国道1号線)を含むエリアとなっている。JR京浜東北線の東神奈川駅や京急本線の神奈川駅にもほど近く、第二京浜国道沿いのサカタのタネガーデンセンター横浜はガーデニング愛好家で賑わいを見せている。
 佐藤内科診療所は東急東横線の反町駅から徒歩5分、サカタのタネガーデンセンター横浜の隣地に位置する。佐藤泰弘院長のお祖父様が戦前に開業した伝統ある診療所で、お父様の継承を経て、2013年に泰弘院長が継承した。一般内科のほか、院長の専門である消化器内科に加え、全人的な医療の追求を目指して、心療内科の診療を行っているのも特徴だ。
 今月は佐藤内科診療所の佐藤泰弘院長にお話を伺った。

佐藤 泰弘 院長

佐藤 泰弘 院長プロフィール

1961年に神奈川県横浜市で生まれる。1989年に東邦大学を卒業し、東京慈恵会医科大学附属病院で研修を行う。1992年に東京慈恵会医科大学附属病院第一内科(現 消化器・肝臓内科)に入局する。2003年に東京慈恵会医科大学内視鏡科へ移籍、診療医長に就任する。2007年に済生会神奈川県病院に内視鏡センター長として着任する。東京慈恵会医科大学内視鏡科非常勤診療医長を併任する。また、神奈川県鎌倉市の信愛クリニックで心療内科の診療経験を積む。2010年に佐藤内科診療所に副院長として着任する。2013年に佐藤内科診療所院長に就任する。


日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化器病学会専門医、日本内科学会認定医、日本医師会認定産業医など。日本消化管学会、日本食道学会、日本心療内科学会にも所属する。

開業に至るまで

◆ 医師を目指された経緯をお聞かせください。
 我が家は祖父の代からの医師家系で、祖父は私が中学生のときに亡くなったのですが、子どもの頃から周囲の方々に「僕もお医者さんになるんでしょ」と言われて育ってきました。子どもの頃は仮面ライダーやタイガーマスク、少し大きくなってからはブラック・ジャックといったヒーローが好きで、特別な能力がなくても、医師はそんなヒーローのように、人の役に立てる仕事だと思うようになりました。教科については理科より社会の方が得意でしたが、医師にならなかったとしたら、周囲の方々から「ならない」ではなく、「なれない」と思われてしまうので、まずは医学部に行くことにしました。


◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
 勉強はあまりせず、運動ばかりしていました。部活動はラグビー部です。私たちは「スクールウォーズ」のリアル世代なんです(笑)。ポジションはセンターでした。怪我もしましたし、きついことしか記憶にありませんが、東医体などでの出来事は思い出に残っていますし、「One for all, All for one」の精神は今も大事にしています。ただ、医師になってからは怪我して休むわけにはいかないので、観戦専門です。


◆ 大学時代はどんなご趣味をお持ちでしたか。
 やはりスポーツですね。家の近所に坂が多いので、そういう坂のあるところをよく走っていました。テニスやスキーなども時間があれば、していました。


◆ 専攻を内科に決められたのはいつですか。
 研修医のときです。心の面を診られる医師になりたかったので、学生時代は心療内科を考えていたんです。心療内科は精神科よりもジェネラルで、疾患に偏りのないところが良かったですね。私は患者さんを心身両面で、総合的に診られる医師を目指していました。研修先に選んだ東京慈恵会医科大学附属病院は総合ローテート方式で、小児科や産婦人科など、色々な診療科の先生方と知り合いになれました。私は他大学出身でしたが、分け隔てなく接していただけました。当時、ご指導いただいた先生方は今でも声をかけてくださいます。慈恵医大では精神科の研修も行いました。


◆ 結局は消化器内科を専門にされたのですね。
 研修医時代に母が食道がんになったことがきっかけです。母の闘病を通じて、消化器を勉強したいと思うようになりました。


◆ 研修後に東京慈恵会医科大学の第一内科に入局されたのはどうしてですか。
 当時の第一内科はナンバー制でしたが、その中でも消化器をメインにしていましたので、ほかの選択肢はありませんでした。また、父が東京慈恵会医科大学の出身で、当時は関連病院の院長をしていましたが、父の旧知の先生が多かったということもありました。


◆ 勤務医時代には心療内科の診療もなさっていたのですね。
 将来の継承を見据え、実家に近い済生会神奈川県病院に勤務することにしました。ちょうど済生会横浜市東部病院の立ち上げのときで、病院の機能移転を行うことになっており、神奈川県病院に残る医師を募っていて、そのタイミングで医局を辞めました。それで、神奈川県病院で内視鏡センター長を務めつつ、鎌倉市の信愛クリニックで勉強をさせていただきました。内視鏡を初めて握ったときに、当時の指導医から「胃は心の鏡」と教わり、ずっと座右の銘にしてきました。身体疾患の治療は当然ですが、心療内科の知識があれば、もう少し多くの患者さんを救えるかと思い、経験を積みました。


◆ 勤務医時代を振り返って、いかがですか。
 勤務医は自分の守備範囲でないことも、不本意ながらもしなければいけないこともあります。でも、その頃がなければ今はないと思っています。人間関係を築けたのも良かったですね。今日も午前中は神奈川県病院に内視鏡をしに行ってきたんですよ(笑)。


継承の契機・理由

◆ 継承の動機をお聞かせください。
 医師を目指して医学部に入学した時点で、実家の医院を継承するしかないと思っていたのです。ただ、継承にあたっては、父の代で患者さんが減っていたこともあって、不安がありましたね。勤務医は収入が保障されていますが、その収入を捨て、開業医として賭けていくことは心配だったんです。そこで週に1日の勤務から始めてみて、週に2日、3日、4日と増やしていくことにしましたが、週に2日勤務までは無給でした。しかし、信愛クリニックの事務長さんや税理士さんに「開業当初は皆が不安です。先生は家賃がかからないだけ、恵まれていますよ」と励まされ、徐々に決意が固まっていきました。


◆ お祖父様がこの場所を開業地に選ばれたのはどうしてでしょう。
 祖父が開業したのはこの場所ではなく、神奈川区の白楽あたりだったそうです。しかし、その建物が戦争で被災したので、こちらに移転してきたと聞いています。


◆ 継承にあたって、改めてこの場所をどうご覧になりましたか。
 私は生まれ育ったこの地域が大好きなんですよ。継承にあたってはこの場所しか選択肢がなかったですし、この場所で地域に貢献したいと思いました。駅前ではありませんから、競合がないのも良かったですね。信愛クリニックの井出広幸院長も「先生なら、大丈夫」と言って、背中を押してくださいました。


◆ 継承にあたって、マーケティングはなさいましたか。
 業者さんにお願いしたこともありましたが、数字としては厳しかったです。でも、この場所しかないと思っていたので、参考程度にして、継承に踏み切りました。


◆ 継承までに、ご苦労された点はどんなことですか。
 増患対策です。私だけでなく、スタッフの生活も支えていかないといけませんから、プレッシャーをすごく感じました。スタッフについては父の頃からのスタッフに加え、内視鏡検査のために、新たに看護師を募集しました。最初は色々とありましたが、今は落ち着いています。支えてくれるスタッフさんたちは私にとって最高の宝物です。


◆ 医師会には入りましたか。
 継承した時点で神奈川区医師会に入りました。医師会での仕事も徐々に増えてきて、今は広報委員会に所属しています。


◆ 継承当初はどのようなスタッフ構成でしたか。
 医師は私だけで、看護師1人、受付のスタッフ1人という構成でした。


◆ 医療設備については、いかがでしょうか。
 大学病院時代をはじめ、勤務医として朝から晩まで内視鏡をしてきましたので、継承してからもメインとしていこうと思っていました。最初は予算の関係で上部内視鏡のみを導入し、3年後に下部内視鏡を完備しました。上部内視鏡は経鼻もありますが、9割以上は経口ですね。苦痛なく、それでいて良い画像を撮ることにこだわっています。

◆ 設計や内装のこだわりについて、お聞かせください。
 祖父の頃は有床診療所で、2階と3階は入院のための病棟だったのです。継承にあたっては2階の一部を内視鏡のためのスペースに改装しました。予算豊富ではなかったので、原形を維持しつつ、それでいて綺麗に、すっきりした色合いの内装にしてもらいました。設計会社の方々がいい仕事をしてくださいましたね。内視鏡室、リカバリールーム、スタッフルーム、資料を置くための院長室を作りました。3階については将来像を含めて、構想を練っているところです。
 一昨年、診察室、待合室のある1階をリフォームしました。それまではスリッパに履き替えていただいていたので車椅子や足の不自由な患者さんが大変だったんです。このリフォームにより、土足で上がれるように変えたので、バリアフリーに近くなりました。


クリニックについて

◆ 診療内容をお聞かせください。
 内科、消化器内科、心療内科を標榜しています。内科はプライマリケア全般を診ていますが、特に咳を訴える患者さんが多い印象があります。日本咳嗽研究会のガイドラインに従って、見極めるようにしています。
 消化器内科は内視鏡検査がメインですね。私が出勤しているときはいつでもできるようになっていますし、当日でも可能な場合もあります。来院されている時点で何らかの症状がおありになるわけですから、何週間も先というのはどうかなと思っています。また、なるべく早く検査結果をお渡しすることを心がけています。
 心療内科も継承時から標榜していますが、当初は7割の患者さんが心療内科でした。近くに内科の競合がないわけではありませんので、心療内科を診るというのは良いアピールになっているようです。ただ、私は専門家ではないので、手に負えないこともあります。その場合は近くの精神科の先生方の手助けをいただいています。勉強会などに参加し、精神科の先生方と顔を繋いでいます。私の中で「ここまでは診る」という線引きができていますので、精神科の先生方にいい橋渡しをしたいと思っています。


◆ 女性外来もなさっていますね。
 診察室の改装にあたっては2診体制にしましたので、第2診察室で女性外来を行っています。私には女性の心理は分かりにくいですし、分かったふりで接するのは失礼です。そこで、大学病院時代の同期やご紹介での女性医師に来ていただき、曜日ごとの日替わりで担当してもらっています。


◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
 患者さんにとってのベストサポーターであるということです。白衣も着ず、ラフな普段着で診療しているのも「ざっくばらんに何でも聞いて」というスタンスからです。


◆ 患者さんの層はいかがですか。
 心療内科を標榜していますから、一般内科だけのクリニックよりは患者さんの年齢層は若めでしょう。継承当初は思春期も診ていましたが、今は小児・思春期に強い先生が近くにいらっしゃいますので、お任せしています。患者さんにとって何がベストかということが第一なので、経営を考えて、自院で抱え込むのは良いことではないと思っています。若い方々のほかは50代の方々も多いです。私が週に2回の勤務しかしていなかった頃はいらしていなかった患者さんが戻ってこられているのが嬉しいですね。ご近所にお住まいの患者さんも増えてきつつあります。


◆ どのような内容の健診を行っていらっしゃいますか。
 内視鏡にこだわりがありますので、胃がん検診はせず、特定健診を行っています。胃がん検診で引っかかった方は保険の範囲内で精査をお受けしています。また横浜市の大腸がんと前立腺がんの検診は担当していますし、一般の健診もお引き受けしています。


◆ 病診連携については、いかがですか。
 済生会神奈川県病院と済生会横浜市東部病院が7割を占めます。そのほかは横浜市立市民病院、横浜労災病院、けいゆう病院、菊名記念病院あたりですね。


◆ 経営理念をお教えください。
 お金のことに関しては税理士さん任せで、私は売上も利益も知らないんです。スタッフの給料などについてもアドバイスいただいて、決めていただいています。ただ、目先の利益のために患者さんの不利益になるようなことは絶対にしてはいけないと思っています。その積み重ねで患者さんからの信頼を得て、経営も潤っていくのではないでしょうか。


◆ スタッフ教育はどのようにされていますか。
 朝の外来が始まる5分前から朝礼をしています。連絡事項が中心ですが、「昨日、ハマスタに行ってきたよ」という報告をすることもあります(笑)。


◆ 増患対策について、どのようなことをなさっていますか。
 ホームページを作っています。若い患者さんにはホームページが訴求しますので、費用対効果があると思っています。基本的にはウェブデザイナーに任せていますが、定期的にセッションをして、私どもとして力を入れていきたいところをホームページ上でどう表現していくかなどを話し合っています。


開業に向けてのアドバイス

 私は継承したので、あまり参考にはならないかもしれませんが、やはり目先の利益にこだわってはいけないということですね。患者さんとは信頼関係が大事なので、誠意がないといけません。お金のことばかり考えている人は信頼されないのです。時間がかかっても、誠意があれば、患者さんはついてきてくださいます。

プライベートの過ごし方(開業後)

 横浜DeNAベイスターズの試合観戦です。中学生の頃からの大ファンなんです。以前は年に2、3回しか横浜スタジアムには行かなかったのですが、最近はSNSでベイスターズ仲間ができたので、一人で行っても仲間と合流できる状態です。現地で仲良くなった人もいますし、ハマスタに行けば誰かに会えますね(笑)。好きな選手は番長こと、三浦大輔選手です。私より年下ではありますが、心から尊敬できますし、あんな人になりたいと思いますね。引退してしまいましたが、いつかチームに帰ってきてくれるのを待っています。

タイムスケジュール

タイムスケジュール

クリニック平面図

平面図
佐藤内科診療所
  院長 佐藤 泰弘
  住所 〒221-0832
神奈川県横浜市神奈川区桐畑8-3
  医療設備 上部内視鏡、下部内視鏡、超音波(腹部、頸動脈、甲状腺) 、呼吸機能検査、血管年齢測定、レントゲン、心電図、電子カルテなど。
  スタッフ 14人(院長、非常勤医師4人、常勤看護師2人、非常勤看護師2人、常勤臨床検査技師1人、常勤事務2人、非常勤事務2人)
  物件形態 戸建て
  延べ面積 70坪
  敷地面積 100坪
  開業資金 約2500万円
  外来患者/日の変遷 継承当初10人→3カ月後20人→6カ月後30人→現在50人~70人
  URL https://www.satoh-naika.com/

2017.09.01 掲載 (C)LinkStaff

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