東京健康クリニック
東京都港区西麻布は外苑西通りと六本木通りが交差する西麻布交差点で知られている地名である。東側で六本木ヒルズに隣接し、賑やかな人通りがあるが、各国の大使館が点在したり、高級住宅街が広がっている。一方で、レストランやカフェなどの飲食店も数多く、美食の街としても知られている。
東京健康クリニックは東京メトロ日比谷線の六本木駅から8分、広尾駅から9分の西麻布3丁目にある。都営地下鉄大江戸線の六本木駅からでも徒歩10分の距離である。田中賢院長の専門は消化器内科で、大学病院勤務時代には消化器病、特に肝疾患や消化器がんの診療に従事してきた。また、大学での研究では肝臓の代謝について研究し、糖尿病の早期診断にも力を注いだ。現在はクリニックにおいてもそれらの専門や経験を活かした診療を提供している。
今月は東京健康クリニックの田中賢院長にお話を伺った。
田中 賢 院長プロフィール
1972年に東京都台東区で生まれる。2000年に東京慈恵会医科大学を卒業後、東京慈恵会医科大学附属病院で内科研修医となる。2002年4月から2005年3月まで東京慈恵会医科大学附属病院で内科レジデントとなり、消化器・肝臓内科を専攻する。2005年4月に東京慈恵会医科大学附属病院消化器・肝臓内科の助教に就任する。一方で、2008年に東京慈恵会医科大学大学院に入学し、2012年に修了する。2015年4月から2017年7月まで外資系製薬会社開発本部で新規薬剤の開発に携わる。2017年12月に東京健康クリニックに院長として、着任する。
日本内科学会認定医、日本肝臓学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会員、日本医師会認定産業医、福島県肝炎治療コーディネーターなど。
開業に至るまで
◆ 医師を目指された経緯をお聞かせください。
小さい頃にかかりつけ医だった、近所の開業医の先生に憧れたことがきっかけです。その先生は内科や小児科を診ておられ、GPという存在でした。その先生の、人を助けるという姿勢に惹かれ、私も周りの人を助けたいと考えるようになりました。
◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
大学時代は医学のみならず、様々なことに目を向け、視野を広げることに注力していました。いずれは何らかの形で国際的な仕事がしたいという思いから、度々アメリカやカナダに一人旅をしました。そのときに培った人間関係は今でも続いており、お互いの国を行き来したり、連絡を取り合っています。大学時代の様々な経験や人脈は、今現在の人生にも活きています。
◆ 大学時代はどんなご趣味をお持ちでしたか。
旅行が好きで、よく海外に行きました。また、音楽も好きでしたので、同級生と国内外のライブに行って騒いだりしたのも良い思い出です。
◆ 専攻を内科に決められたのはいつですか。
医師を目指すきっかけとなった、憧れた先生が内科医でした。また、医学部の4年生の時に目標となる上司の内科の先生に出会いましたので、内科と決めていました。
◆ その中で、消化器内科を専攻されたのはどうしてですか。
医師として働き始めた研修医のとき、今でも先輩として慕っている先生に出会えたことが理由です。また、消化器内科は扱う領域が広く、痛みや苦しみに困っている方が少なくありません。そこに医師として自分が携わって治療することによって、多くの患者さんの症状が改善していく様子を見ることができる。そして痛みや苦しみに困っていた方が楽になっていくことに遣り甲斐を感じました。
◆ サブスペシャリティは肝臓なのですね。
私の周りの先生方は、消化器内科の中でも肝臓を専門にする先生が多かったです。また、私が研究を志したときに指導してくださった先生や、その上司の先生が肝臓の研究をしていたこともあり、私も自然と肝臓を専門とする道を選びました。
◆ 大学院にも進学されています。
肝臓の糖代謝を研究するためです。糖尿病の前段階としてのインスリン抵抗性について、肝代謝の側面から研究をしました。
◆ 製薬会社に勤務されたのはどうしてですか。
教授が退官されたタイミングで医局を辞めたことがきっかけになりました。研究のために留学するという選択肢も考えていましたが、もともと国際的な仕事がしたいと考えていましたので、オファーのあった外資系製薬会社に勤務することにしました。当時はC型肝炎の治療が大きな転換期で、新薬の開発が非常に盛んでした。それまでの医療とは別の角度から、そして最先端の場所から医療を見てみたいと思いました。ただ、大学を退職するタイミングの問題もあって、C型肝炎の治療薬を開発する製薬会社には入社しませんでしたが、新薬の開発や治験の監督に携わりました。
◆ 製薬会社ではどのようなお仕事をされたのですか。
新薬の開発を無事に運用していくために、医学的な知識をフォローしたり、専門家としてのインプットやアウトプットに従事しました。しかし、医師の経験はそれなりにあっても、会社に入れば新入社員です。1、2年の経験では決して中心的な存在にはなれません。また、自分の専門分野ならアドバイザーとしてのインプットは自信をもってできますが、担当プロジェクトはすべて専門分野外の製剤の開発でしたので大変苦労しました。会社員という立場で、全く新しい経験でしたが、採用していただいたフランス人の上司をはじめとして、チームの皆がオープンマインドに接してくれて有り難かったです。業界も、仕事の内容も、全くのゼロの経験からの挑戦でしたが、大変勉強になりました。
◆ 勤務医時代を振り返って、いかがですか。
実り多い時間だったと思います。今まで育てていただいたのは大学時代からの先輩やスタッフ、患者さんのお陰です。大学病院勤務時代には、現在の自身の診療の軸となる学問の研究できましたし、一人前に育てていただきました。
開業の契機・理由
◆ 継承の動機をお聞かせください。
先の外資系製薬会社に勤務していたときに、乳腺外科のクリニックを開業している従妹から「内科の患者さんを診る先生が必要」という希望があり、私に依頼があったのです。比較的急な展開ではありましたが、製薬会社を退職して従妹のクリニックを手伝うことになりました。従妹を助けることは結果として患者さんを助けることでもありますし、従妹のクリニックをサポートするということは、「私の周りの人を助ける」という考えと一致していました。そのサポートの仕事が落ち着いた頃、医局時代の関連病院から常勤医としてのオファーをいただいたり、または自身で開業することも考えていた最中でした。そして当クリニックから、「院長が退職することになったので、お任せしたい」というお話をいただきました。将来的には自身で開業するにしても、まずは継承し、クリニックを発展させる経験を積みたいと思い、こちらに就任しました。
◆ 東京健康クリニックのどういった点が魅力でしたか。
アメリカの病院やクリニックを見学したことがあるのですが、東京健康クリニックはその雰囲気にとても似ています。高級感のある、ゆったりとした空間であるだけでなく、患者さんと向かい合ってゆっくり話をしながら診察するというスタイルは非常に魅力的ですね。
◆ 開業地をご覧になったときの第一印象はいかがでしたか。
六本木と広尾の中間地点ですので、六本木ヒルズなどのオフィス・商業地と近隣の住宅街の患者さんがいらっしゃるのだろうと思いました。実際に働き始めると、中国大使館も近いためか、医療ツーリズムのお客様も多いです。特にインターナショナルクリニックと謳っているわけではありませんが、外国人の患者さんも少なくありません。
◆ 継承にあたり、マーケティングをなさいましたか。
していません。管理医師の交代として継承しましたので、これからは実際に診療をしながら地域の患者さんのニーズを捉えつつ、検査機器や治療の充実を図っていきます。非常勤の先生方による診療により治療の幅も広がるので、アピールしていく予定です。同時に、ホームページのリニューアルも進めています。
◆ 継承までに、ご苦労された点はどんなことですか。
まずは、自身が初めから作り上げたものではないため、既存のものを理解し、整理するということでしょうか。次に、今までは保険診療の経験がメインでしたので、再生医療など新しい治療の勉強ですね。これからより深く理解して、訴求していきたいと思っています。
◆ 医師会には入りましたか。
入っていません。
◆ 継承当初はどのようなスタッフ構成でしたか。
看護師が2人、事務スタッフが4人でしたが、看護師は増員予定となっています。
◆ 医療設備については、いかがでしょうか。
心電図、超音波、ABI、体組成計、酸素カプセル、コラーゲンマシン、溶岩浴などです。経営陣からは「自分のクリニックとしてやってください」と言われているので、医療設備の見直しや導入をしていきます。超音波診断装置とABIをリニューアルしました。
◆ 設計や内装のこだわりについて、お聞かせください。
継承した時点では特に不満はなかったので、そのまま使用しています。診察室のみならず、点滴室なども広々とした間取りです。通常の治療に加えて、保険外診療である美容点滴のメニューも刷新していますので、広い空間でリラックスして点滴をお受けいただけるのも当院の良いところです。
クリニックについて
◆ 診療内容をお聞かせください。
保険診療が何よりも基本ですので、内科、消化器内科、肝臓内科を中心に診療しています。今まで私が長年経験してきた診療科です。また、肝臓の代謝について研究してきましたので、糖尿病の初期段階での診断や治療も、その経験を活かした診療として行っています。また、非常勤医師による漢方外来も行っており、一定のニーズがあります。
次に美容分野ですね。クリニック内にワンフロアの美容の施設があります。美容機器もこれから使っていきたいと考えています。そして、近隣のエステティックサロンと提携しましたので、エステティックサロンのお客様も来られるようになりました。エステティックサロンでは当然、医療は提供できませんが、我々の美容コンテンツをサロンとの協業で提供しようと考えています。肌の再生医療に関しても、実績のある先生をお招きして提供できます。
それから、がん診療です。私は今まで数多くの消化器がんの患者さんを診てきました。その経験を活かして、クリニックであってもできうる限りのがん診療を行っています。早期の診断や、または有名な先生へのコンサルトやセカンドオピニオンに繋げています。免疫細胞療法や再生医療の施設認定も受けています。免疫細胞療法に関しては、国内でトップクラスの医療機関と共同でハイレベルな医療を提供しています。保険診療のみならず、効果が認められる治療であれば、患者さんにしっかりご説明したうえで提供していきます。様々な角度から患者さんをサポートする医療を展開していくつもりです。
◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
病に悩んだり、苦しんでいる患者さんのお話をしっかり伺い、治療することにより患者さんを笑顔にすることです。漠然としていますが、これがポリシーです。患者さんの立場を完全に理解するのは難しいことですが、できる限り理解するように努めています。医師になったときから、専門家として患者さんをリードしつつ、一緒に治療する姿勢を今も継続しています。「こうしなきゃいけません」よりも「このようにしたらいかがでしょう」という感じですね。あくまでもプロとしてリードはしますが、なるべく一緒に決めていきながら診療するようにしています。
◆ 患者さんの層はいかがですか。
慢性疾患に関しては50代以降の方が中心で、どちらかと言うと男性の患者さんの方が女性よりも多いです。美容は20代から50代までの女性の患者さんがメインで、中心は30代から40代となっています。がん診療は40代から50代の男性が多いですね。
◆ どのような内容の検診を行っていらっしゃいますか。
血液検査に加え、超音波診断装置とABIにより、クリニックとしての画像診断や慢性疾患のスクリーニングは可能です。必要があれば設備が整った施設にご紹介しています。
◆ 病診連携については、いかがですか。
公的な連携病院は東京都立広尾病院です。また、都内の大学病院やがんの専門病院にご紹介することもあります。
◆ 経営理念をお教えください。
発展することはいいことですが、企業ではなく医療機関なので、地に足をつけてやりたいです。まずは任されたことをきちんとこなすことが大事だと思っています。
◆ スタッフ教育はどのようにされていますか。
勉強会の準備を行っているところです。「報・連・相」はどの環境、職場においても大切ですので、日頃から連絡を密に取るようにしています。ミーティングでは、問題点を早い段階で洗い出してスタッフと共有し、改善するようにしています。
◆ 増患対策について、どのようなことをなさっていますか。
既にホームページはありますが、これからリニューアルします。患者さん一人一人を大切にしていることが伝わる増患対策をしたいですね。
開業に向けてのアドバイス
私の信念に通じるところですが、プロとしてのしっかりとした知識や視点が必要ですので、専門分野だけでなく、学んでおくといいと思います。また、私自身も今でも学びに遭遇しますので、学び続ける姿勢が大事なのだと思います。
医師はプロとして患者さんに接しているものの、患者さんの多くは年上の方ですので、人生の先輩としてのリスペクトの気持ちを持って接しています。今までも人生の先輩である患者さんから多くのことを教えていただきました。私は内科医として歩んできましたので、特に人と接する職業という意識をもっています。
プライベートの過ごし方(開業後)
食事の場などで、人と会って、語り合うのが好きです。初めて出会ったときから時間が経つにつれ、それぞれの立場が変わりますが、付き合い方は変わらないですね。幼なじみとも今でも会っていますし、職種も医療だけでなく、様々な業界の友人と会うようにして情報や刺激をもらっています。
タイムスケジュール
クリニック平面図
東京健康クリニック | ||
院長 | 田中 賢 | |
住所 | 〒106-0031 東京都港区西麻布3-6-6 |
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医療設備 | 超音波診断装置、心電図、体組成計、ABI、電子カルテなど。 | |
スタッフ | 11人(院長、非常勤医師4人、常勤看護師2人、常勤事務4人) | |
物件形態 | 戸建て | |
延べ面積 | 約825m² | |
敷地面積 | 約165m² | |
開業資金 | 0円 | |
外来患者/日の変遷 | 継承当初 10人 → 3カ月後 15人 → 現在 20人 | |
URL | http://www.tokyokenko.jp/ |