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番町診療所表参道

 東京都渋谷区神宮前は原宿や表参道と呼ばれるエリアであり、中でも神宮前4丁目は表参道ヒルズや東急プラザ表参道原宿が建ち並ぶファッションの街となっている。
 番町診療所表参道はその神宮前4丁目に2008年に移転してきたクリニックである。以前は千代田区番町にあり、MRI検査が一般的な存在になる前から脳ドックに取り組み、多くの患者さんを集めてきた。移転後は内科、循環器内科、糖尿病内科、リウマチ科、整形外科、ペインクリニックなど、多彩な診療科を標榜し、各種の専門外来も充実させている。
 今月は番町診療所表参道の山田正文院長にお話を伺った。

山田 正文 院長

院長先生のプロフィール

1958年に東京都中央区に生まれる。1983年に北里大学を卒業後、慶應義塾大学麻酔科教室に入局する。1985年に防衛医科大学校麻酔学教室、1986年に国立東京第二病院(現 東京医療センター)、1987年に国立小児病院(現 国立成育医療研究センター病院)、1988年に国立療養所青嵐荘病院(現 茨城東病院)に勤務する。1989年に慶應義塾大学病院麻酔科に勤務する。1991年にMontefiore Medical Center Department of Anesthesiologyにリサーチフェローとして留学する。1993年に北里研究所メディカルセンター病院に麻酔科医長として勤務する。1994年に東京都千代田区六番町に番町診療所を開設する。1996年に慶應義塾大学医学部麻酔学教室非常勤講師を兼任する。2008年に東京都渋谷区神宮前に移転し、番町診療所表参道を開設する。


日本麻酔科学会指導医、日本ペインクリニック学会認定ペインクリニック専門医、日本医師会認定産業医・健康スポーツ医など。

開業に至るまで

◆ 医師を目指された経緯をお聞かせください。
 私の家は代々の商家で、父は日本橋で繊維関係の会社を経営していました。私は一人っ子ということもあり、小さい頃から「将来はお父さんの跡を継ぐんでしょ」と言われて育ってきたのですが、逆に父とは違う仕事をしたいと考えるようになりました。医師を選んだのは中学、高校とラグビーをしてきたことで、チームドクターが身近にいたことが大きかったと思います。


◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
 大学でもラグビー部に所属し、医学部リーグに出場していました。ポジションは1番や3番のプロップで、フォワードの最前線にいました。


◆ 大学時代はどんなご趣味をお持ちでしたか。
 父がスキューバダイビングやヨットといったマリンスポーツが好きでしたので、私も一緒に海に出かけていました。海で過ごす時間が好きでしたね。


◆ 専攻を麻酔科に決められたのはいつですか。
 6年生のときです。私は実家が開業医ではなく、科目の縛りがなかったので、救急の現場で命を助けるプロフェッショナルな仕事に就きたいと思いました。そのための基本となるABCを学べるのが麻酔科ですので、麻酔科を選んだんです。当時はまだ救急科の存在が今のように確立していませんでしたし、全身管理を勉強できる麻酔科の方が良かったですね。


◆ 慶應義塾大学の医局に入局されたのですね。
 慶應の麻酔科には長い伝統があります。麻酔科の初代教授でいらした天野道之助先生は東京大学の山村秀夫教授とともに日本麻酔科学会を創設され、戦後の日本の麻酔科学の歴史を作ってこられたレジェンドです。その天野教授のもとで学びたいと思いましたね。当時の北里大学の先生方は3分の1が慶應ご出身ということもあり、北里大学の先生にご相談して、慶應への紹介状を書いていただきました。


◆ 入局後は色々な病院に勤務されています。
 慶應の麻酔科では入局後の5、6年間は関連病院を回ることになっています。そして、大学病院に戻り、チーフレジデントになるというシステムなのです。私は防衛医科大学校や当時の国立東京第二病院、国立小児病院、国立療養所清嵐荘病院などに勤務し、卒後7年目に大学病院に帰りました。


◆ 留学もなさったのですね。
 ニューヨークのモンテフィオーレメディカルセンターに留学し、フォルディス先生のもとで筋弛緩薬の研究を行いました。私が自分で見つけた留学先です。当時は子どももいたのですが、単身赴任しました。アメリカでは臨床というよりも研究中心の生活でしたが、面白かったですね。研究で成果を出し、学会で発表したことも印象に残っています。


◆ 帰国後は北里研究所メディカルセンター病院に着任されています。
 北里研究所メディカルセンター病院では指導医としての立場で、若い医師への指導にあたっていました。


◆ 勤務医時代を振り返って、いかがですか。
 麻酔科の勉強をしたことで、広く浅くではありますが、全身管理を学べたことが有り難かったです。麻酔科医として救急の現場にいましたので、今も外来での急変に対応できますし、命を助ける自信があります。また、麻酔科医は様々な診療科の医師と仕事をしますので、多方面への繋がりができたのも良かったです。


開業の契機・理由

◆ 開業の動機をお聞かせください。
 留学中から開業したいと思うようになっていったのです。MRIが出始めていた時期でしたし、麻酔科医として全身管理を行ってきたので、各科の医師のまとめ役となって、新しいクリニックを作りたいと考えたのが動機です。


◆ 最初は千代田区六番町に開業されたのですね。
 こちらは実家のビルでした。開業にあたって、GEの1.5テスラのMRIを導入したいと思っていましたので、MRIが入る物件ということで、実家のビルに入居したんです。開業にあたってはMRIを駆使して、脳神経や循環器といった勝負が早いものに取り組もうと思っていました。


◆ 開業までに、ご苦労された点はどんなことですか。
 当時、MRIを個人で購入したのは私が初めてだそうです。銀行には父と一緒に行きましたが、銀行の方へつい偉そうに話してしまって、あとで父から怒られたこともあります(笑)。そうした金銭面だけでなく、機械類の購入や資格を持っている人たちを雇用するということに苦労しました。脳神経外科医や循環器内科医などの専門医を集めることに関しては慶應のみならず、東京女子医科大学や東京慈恵会医科大学の先生方にお願いしました。出身医局がばらばらの方が先輩後輩の縛りがなく、色々な視点から良い医療を目指せると考えたからです。


◆ 移転を考えたのはなぜですか。
 番町のビルの建て直しを行うことにしたので、まずは表参道の物件に仮入居しようとしたんです。ところが、番町の物件が建ぺい率の関係で建て直しができないと分かったので、表参道に完全に移転することになりました。表参道はクリニックモールになっており、このモールの経営者からお誘いを受けたのがこの物件を知ったきっかけです。モールの完成と同時に私どもも移転してきました。


◆ 移転先の第一印象はいかがでしたか。
 それまでは千代田区六番町という住宅街でしたから、表参道は全く違う雰囲気でしたね。しかし、脳ドックなどには全国から患者さんがいらっしゃるので、こちらの方がアクセスが良いだろうと思いました。


◆ 移転にあたり、マーケティングをなさいましたか。
 診療科ごとに診療圏調査を行いましたが、良いデータを得ることができました。


◆ 医師会には入りましたか。
 最初に開業するときに千代田区医師会に入り、移転と同時に渋谷区医師会に入りました。


◆ 移転当初はどのようなスタッフ構成でしたか。
 常勤医師は私だけで、非常勤医師が5人いました。また、看護師が常勤2人、非常勤3人、放射線技師は全員が非常勤で5人でした。事務スタッフは常勤で4人です。クリニックモールでの開業のメリットとして、クリニックモール全体の総合受付があるので、そこにスタッフが常駐していることが挙げられます。そのため、私どもの事務スタッフを少なくすることができたのは良かったです。


◆ 医療設備については、いかがでしょうか。
 MRI、レントゲン、トレッドミル、エコーなどを完備しています。エコーは頸部、腹部、心臓を診ることができるものです。電子カルテもあります。


◆ 設計や内装のこだわりについて、お聞かせください。
 私はもともとインテリアが大好きで、凝りに凝るタイプです。番町のときはB&Bの椅子を揃えたり、MRIの検査中に寒いとおっしゃる患者さんのためにカシミアのブランケットを備えていたりしたんです(笑)。表参道に移転後はシンプルにしていましたが、今回の改装では近未来をイメージしたものに作り変えます。白に統一し、メタルっぽい感じですね。3診体制にし、それぞれの診察室やエコー室、ロッカールームなどをピクトグラムで表示します。


クリニックについて

◆ 診療内容をお聞かせください。
 内科、循環器内科、糖尿病内科、消化器内科、リウマチ科、整形外科、ペインクリニックMRI画像診断を含む放射線診断科を標榜しています。私は麻酔科医ですので、多方面に繋がりがあり、その繋がりを活かした診療内容になっています。麻酔科医の得意なものは全身管理ですから、患者さんのどこかに異常が見つかったら、すぐさま「どこどこ病院の誰々先生」を紹介しています。こういった病診連携は患者さんから喜ばれますね。紹介にあたっては患者さんを自分の家族だと思い、家族に紹介するならどの医師がいいのかという観点を持つようにしています。
 今回、改装を行ったのは整形外科を増設したためです。このほど慶應義塾大学病院整形外科出身の竹島昌栄医師を招聘し、整形外科の診療を開始しました。今後は再生医療にも力を入れていきます。


◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
 医療はサービス業だとは言い切れない部分もありますが、患者さんには最良の医療を提供していきたいと考えています。そのため、スタッフの患者さんへの対応や口の聞き方にはうるさく指導しています(笑)。良い医師には2通りあります。一つはスーパーマンのような医師、もう一つはスーパーマンの医師を知っている医師です。私は後者でありたいですね。患者さんの頭をMRIで診たけれども、何も異常がないで終わるのではなく、患者さんが「痛い」とおっしゃっている以上は何かがあるのです。そういった患者さんの苦しさをトータルで診ることを心がけています。紹介先の病院の手術室で患者さんをお待ちすることもありますよ。


◆ 患者さんの層はいかがですか。
 私どもが強みを持つ頭部や心臓といった内容的にも高齢の方が多いのは確かですね。ただ、神宮前は街全体が若いので、風邪やアレルギー性疾患で来院される若い患者さんもいます。しかし、小児科は診ていません。


◆ どのような内容の検診を行っていらっしゃいますか。
 一般健診や成人病検診を行っていますが、プラスアルファとしての脳や心臓の検診の方がメインです。


◆ 病診連携については、いかがですか。
 慶應義塾大学病院、東京女子医科大学病院、東京慈恵会医科大学附属病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院、東京医科大学病院、東邦大学医療センター大森病院、北里大学北里研究所病院、東京都済生会中央病院、東京医療センター、永寿総合病院、伊藤病院、赤坂見附前田病院などと連携しています。また、診診連携先としては日吉メディカルクリニック、シティタワーズ豊洲津田デンタルクリニック、南青山アイクリニックなどが挙げられます。このほか、患者さんの症状やご希望に合わせて、ご紹介しています。どの病院というよりも、どの医師にという紹介をすることを心がけています。


◆ 経営理念をお教えください。
 経営理念は特にありません(笑)。これまで大変な目にも遭ってきましたし、経営者の仕事の難しさを感じています。


◆ スタッフ教育はどのようにされていますか。
 事務の責任者を作り、朝礼やミーティングを積極的に行いたいところなのですが、現在は改装中でスペースがないので、改装後に再開する予定です。


◆ 増患対策について、どのようなことをなさっていますか。
 こちらに移転したときにMRI検査の価格を下げましたので、グルーポンのサービスを使い、広報しました。グルーポンでは4時間で500枚というナショナルレコードを記録したこともあります(笑)。しかし、今はホームページぐらいですね。


開業に向けてのアドバイス

 開業はしない方がいいです(笑)。私はMRIを導入するなど、重い状態で開業しましたが、開業されるのであれば、医師として、何を診られるのかを考えてみてください。専門医を持っていても、開業医に要求されるスキルはまた違います。経営面ではアイディアが必要ですし、保険点数の知識や業者との付き合い方なども知らないといけません。大学病院などの勤務医でしたら、血液検査をどれだけやっても気になりませんし、医薬品も最高のものが届きますが、開業医はそうではありません。そこで、開業される前に開業医のクリニックで勤務医経験を積まれることをお勧めします。これからの分野としてはアンチエイジング絡みの再生医療や整形外科関連が面白いのではないでしょうか。

プライベートの過ごし方(開業後)

 2歳児の孫と遊ぶのが楽しみですね。一緒に風呂に入ったり、軽井沢に遊びに行ったりしています。
 週末は慶應義塾大学蹴球部のチームドクターとしての仕事もあります。ときには会場が熊谷市などの遠方だったりもしますが、タイガージャージを着た学生たちの純粋で、ひたむきなプレーに感動しています。去年、強豪の明治大学に勝ったときは泣きましたね(笑)。2019年にはラグビーのワールドカップが日本で開催されますので、楽しみです。

タイムスケジュール

タイムスケジュール

クリニック平面図

平面図
番町診療所表参道
  院長 山田 正文
  住所 〒150-0001
東京都渋谷区神宮前4-11-6 表参道千代田ビル地下1階
  医療設備 MRI、レントゲン、超音波(腹部、心臓、頸部)、心電図、負荷心電図検査装置、ホルター心電図、肺機能検査装置、骨密度測定装置、電子カルテなど。
  スタッフ 20人(院長、副院長、非常勤医師5人、常勤看護師2人、非常勤看護師3人、常勤放射線技師1人、非常勤放射線技師3人、常勤事務4人)
  物件形態 ビル診
  延べ面積 約60坪
  敷地面積 約60坪
  開業資金 5億円
  外来患者/日の変遷 開業当初10人 → 3カ月後50人 → 6カ月後60人 → 現在70人
  URL http://www.balisc.co.jp/home/index.shtml

2018.07.01 掲載 (C)LinkStaff

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