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-久場クリニック-
東京都世田谷区
 
二子玉川駅から東急大井町線に乗り、1つ目の上野毛駅から歩いて1分。環状八号線沿いのビルに久場クリニックの久場 襄院長をお訪ねしたのは11月の末のこと。近くに多摩美術大学上野毛キャンパスがあることから、午後の授業に向かう学生も数多く見受けられる。

久場クリニックの標榜科目は、内科、整形外科、麻酔科。久場院長は麻酔科35年のベテランと、ホームページでプロフィールを入手しての取材だ。

訪問を告げ挨拶かたがた、しばしの雑談。「患者さんにとって『麻酔科』とは何をする科目なのかが、わからない。前に埼玉で開業した際も町の保健担当課から『麻酔科とは何をする科ですか?』と聞かれたくらいです」と、その認知度の低さを残念がる。

実は久場院長は埼玉県で一度、新規で開業している。この上野毛の地での開業は二度目となるわけだ。最初の開業は、久場院長の奥さんの知人が相続した物件を借り、改修を加えてクリニックとしたものだった。この時も現在と同じ科目を標榜していたが、麻酔科を前面に出しての診療には、患者の「麻酔科」への認知度の低さもあって無理があったようだ。「5年間我慢するつもりであれば、地域に認知もされて盛業に結びついたかも知れないが生活しながらでは難しかった」。それでも開業半年後には、1日30~40人ほどの外来患者があったという。開業して1年程した頃、健康保険が本人負担2割となったことに影響を受けた。患者数が頭打ちになり、診療を続けていく気持ちが揺らいだ。

2年半にわたる埼玉での診療にピリオドを打った久場院長。心機一転。選んだのが世田谷区上野毛だった。立ち退く際に建物は置いて行った形となったが、医療機器はリースでなく全て買い取りだったため、費用も少なくすむ。知人から現在の物件を紹介され、住居からも近いこともあって、平成10年9月に再出発した。
 

久場院長は九州福岡県の出身。「技術屋の家庭で、医師とは何の縁もなかった」という。医師になろうと思ったきっかけについて「小学校の時の友達が医者の息子ばかりだった。3~4人はいたかな。家に遊びに行ってみて『医者っていいな』と思った」と笑って答える。「親父が医者になりたかったので、息子になってもらいたかったということもあった」と付け加えた。

熊本大学医学部を卒業後に「外科を学んだが、当時熊本大学には麻酔科はなく、技術も低かった。オープンドロップ(古典的なエーテルの開放点滴法)という、いい加減な麻酔法しかなくてロクな手術もできなかった。まだそんな時代でした」と述懐する。その後、日本医大で麻酔を2年間学び、熊本大へ戻った久場院長。関東労災病院に麻酔科部長として招かれ、その時期に中国視察で針麻酔を学ぶ機会を得、昭和50年9月には日医大へ助教授として招聘された。

「ある時、外科の同門会で先輩から『自衛隊に来ないか?』と強く勧められた。何でもかじってみようという性格だから、じゃあ行ってみようか」と自衛隊中央病院へ麻酔科部長として2年半勤務した。その後一時、虎ノ門病院で勤務した時期を除いては一貫して自衛隊病院で診療を続け、自衛隊大湊病院院長、海上自衛隊幕僚監部衛生企画室室長、自衛隊横須賀病院院長(海将補)を歴任した。「歳をとったら新しいことをする気力がなくなる」と定年を1年あまり残して、平成7年7月に埼玉で開業し、前述したように閉院し開業地を上野毛に移した。
 

上野毛では駅カンバンを掲示するなど認知活動も行ったが、患者が1日2~3人の時もあり、苦戦が続いたという。転機は半年後、事務スタッフを一新したことからだった。人件費を削減できたほかに、閉院した病院のベテラン事務員が代わりに勤務するようになったのが大きかった。「近所の病院だったので当然周辺の患者さんの顔も名前も良く知っていて、その面で今まで出来なかったコミュニケーションがとれるようになった」と久場院長も満足している。患者数も徐々に増えていき、現在は30人ほどに落ち着いている。
今でも「麻酔科を標榜していてはなかなか患者さんは来ない」と久場院長は言う。結局、内科を表に出して、次に整形外科で痛みを伴う患者さんがいれば麻酔で対応している。20年以上ペインクリニックに携わってきたこともあり、ペインクリニックの有効性も良く知るが、ペインの場合は、注射一回で痛みがとれると、再診に訪れないことが多い。「一度治ると、また痛くなるまで来ないものだ」と効果があるゆえの、再診率の低さにジレンマも感じている。

クリニックで行った神経ブロックは、診療報酬をほとんどの場合、東京都では認めてもらえないという。自由診療とするか安い点数で我慢するかのどちらかしかない。「正式な硬膜外ブロックをいくら行っても100%削られるのが現実です」。実情を反映していない診療報酬の是正が急がれる。
今後の展開についてだが「医療制度が変わる中、それに負けないようにしたい。保険診療以外の自費診療部門をいかに拡大していくかが、これからの急務です」と、レーザー導入も検討しているという。久場院長も今後の経営に手ごたえを感じ始めているようだ。
 
久場クリニック
住所 〒158-0093 
東京都世田谷区上野毛1-12-11 アベニュー上野毛3階
標榜科目 内科、整形外科、麻酔科
医療設備 内視鏡、エコー、レントゲン、ソフトレーザー、ホルター心電図、負荷心電図、スパイロメーター、牽引機、他
延べ床面積 26.4坪
敷地面積 50坪
物件形態 ビル診
スタッフ数 常勤医師:1名、医療事務受付1名
開業資金 4,000万円(1回目)、1,500万円(2回目)

2001.12.3掲載 (C)LinkStaff


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