クリニックの窓教えて、開業医のホント

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 - めざわ耳鼻科クリニック - 
東京都足立区
 


昨今、電子カルテを導入する病医院も多くなった。とはいえ、新規開業となれば資金的に、どうしても医療機器の購入などが優先される。既存の開業医でも、その導入を控えることが多いのが現状だ。実際「関心はあるが、まだ考えていない」「費用が高い」「入力に手間がかかる」などの声も聞く。
だが、開業にあたり電子カルテを導入し成果をあげているというクリニックもある。その投稿記事が『日本医科大学同窓会報』に掲載されている。今回は導入への関心も高まりつつある電子カルテの有用性を説く投稿者の目澤朗憲院長をご紹介します。
汗ばむくらいの陽気の5月半ば、東京都足立区にあるビル診(2階)の、めざわ耳鼻科クリニックを訪問した。開業が平成12年11月ということでまだ日は浅いが、早くも電子カルテの効果を実感しているようだ。「利便性と患者さんへのPR効果が大きい」と、その導入効果などを語ってくれた。
 
目澤院長は昭和55年に日本医科大学医学部耳鼻咽喉科を卒業、同大耳鼻咽喉科学教室に入局した。昭和58~59年まで静岡済生会病院で勤務した後、昭和63年から12年間、博慈会記念総合病院で副院長まで務められた。開業を考えたのは平成10年頃。郷里である、いわき市へ帰り開業する考えだったが「開業医だった父が亡くなって、郷里で開業する必要性もあまりなくなったので東京での開業に踏み切ったのです」と話してくれた。
医療機器はリースでなくすべて買い取りだという。初期費用はかかったが長い目で見れば安く上がるという判断だ。時を同じくして、東京都医師会の医療開発委員会の委員でもあった目澤院長は『医業経営において診療録等の記入、保存、開示に関する問題点とその対策について』の諮問を受け、その調査の過程で電子カルテと出会った。「メリットが大きいのがすぐにわかった。パソコンを扱うのが嫌いでないこともあって、すぐに導入を決断しました」

大学では診療と研究、後輩の指導など多忙であり、時間が取れなかったという。博慈会記念総合病院で勤務するようになって初めて自分の時間を持つことができた。そこでパソコンを使うようになったとのこと。大学では論文作成でしか使わなかったパソコン。「性に合っていた?」とお聞きすると「でしょうね」と、笑って答える目澤院長。開業してからは名刺から葉書、診察券などもパソコンでデザインし出力しているという。
電子カルテのシステムは至ってシンプルだ。受付で患者さんのカルテ番号を入力し、診療支援システムに送信すると受付情報が来院患者一覧に表示される。その患者さんを選択するとカルテが開き、前回までの診療内容をチェックできる。診療後、その内容や投薬、治療計画などを入力し会計に転送する。会計は診療データを受信し、会計処理から処方箋の印刷、領収書の発行までを行う。新患受付の時だけ住所、保険番号などを入力することになるが、その後はカルテ番号を入力するだけで済む。ウインドウは切り替えができるので受付業務と会計業務が平行してできるので兼任が可能だ。つまり事務員一人分を削減できることを意味する。

「保険が変更になっても切り替えは簡単で入力できるし、それまでのデータはコピーして使えます。何よりもカルテを保管しなくていい。クリニック経営にとっては大きな魅力の一つではないでしょうか」。院内の広さは30坪とのことのだが、もっと広く感じる。横長の敷地ということもあるだろうが、保管庫のスペースがないこともあるのではないか。
カルテに入力の際も定型文を決めておくことで時間を短縮することができる。「私は耳鼻科医なので、耳、鼻、咽喉頭、めまい、頚部とそれぞれ主訴、所見、治療計画、評価の文章を分けて登録しています。定型文を充実しておけば、マウスや電子ペンでのワンクリックで入力が済みます。手書きよりも早い」と、電子カルテのカスタマイズにも余念がない。初期設定とはだいぶ変わったそうだが「使われるのでなく、使わないといけない」と言う目澤院長の言葉にも説得力がある。
 

開業して一番良かったのは病棟管理から開放されたこと。「12年勤務して2日以上休みを取れたことはありませんでした。今は足立区医師会の副会長も務めていますが、勤務医時代と比べれば時間的にもゆとりがあります。その時間を診療報酬などの勉強をする時間にあてています」。勤務医であれば診療コストを考えることは少ない。しかし開業医ともなれば一経営者でもある。当然、コスト意識は高まるものだ。現在は休みの日も決まっているので、勉強する時間ができた。「調べてみるとアレルギー科を標榜していれば、皮膚科的処置でも診療報酬を請求できることも知りました」。蕁麻疹や尋常性疱疹などは皮膚科特定疾患指導料を得ることができるという。これもゆとりある時間のおかげ。

開業理念について目澤院長は「まずお年寄りにやさしくありたいと考えた」。元々この物件にはエレベータがなかったという。だが患者さんすべてが足腰丈夫というわけではない。むしろ階段の昇降がつらい人を考えたい、目澤院長の想いにオーナーも応えてくれた。「3階建てのビルですが、通常ならばエレベータを設置するまでもないと思います。でも相談してみると快く引き受けていただいた。助かりました」
現在の一日平均外来患者数は30人ほどだが、花粉症の時期は50~60人と増えた。入力に時間がかかると思われがちな電子カルテだが、十分対応することができたという。また情報開示にも積極的に対応している。「ディスプレーを患者さん側に向けて薬などの説明をします。身を乗り出して見ていますよ」。患者さんにとっても自分のカルテを見ながら医師に説明を受けることができる。疑問があればその場で答えが得られる。

患者さんに安心してもらい、なおかつ経営面から見てもスペースの有効利用、人経費削減など費用対効果が見込める電子カルテ。まだ様子見と言わず、導入検討の余地は十分にあるのではないだろうか。



めざわ耳鼻科クリニック
住所 〒123-0873 
東京都足立区扇2-46-13
標榜科目 耳鼻咽喉科、アレルギー科
医療設備 ネブライザー、吸引器、聴力検査装置、処置用顕微鏡、内視鏡
延べ床面積 30坪(敷地面積 50坪)
物件形態 ビル診(2階)
スタッフ数 常勤医師:1名、パート受付兼事務員2名
開業資金 3,000万円

 

2001.7.1掲載 (C)LinkStaff  


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