クリニックの窓教えて、開業医のホント

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-おかクリニック-
神奈川県横浜市

岡慶子院長高度成長期に全国各地に建設された集合住宅。その中の一つである公団奈良北団地は、横浜市青葉区と東京都町田市との境に位置する。昭和44年に完成したこの団地群は30年以上の時を重ね、現在、高齢者モデル住宅地区に指定されている。高齢化が進む日本の縮図ともいえよう。

新宿から小田急小田原線に乗ることおよそ40分。玉川学園前駅に近く、高台に位置し閑静な佇まいをみせるその一角に今回ご紹介する、おかクリニックがある。主な患者層は地域住民である高齢者が多く、内科や整形外科の需要は高い。

開業は平成13年8月27日。ポスティングと新聞広告によって集まった内覧会見学者は25、26日の二日間で380人を数えた。「MRさんや業者さんたちに、『新記録ですよ』と言われました」と、話す岡慶子院長にお話を伺った。

通常、内覧会見学者の1割が初日に来院するとされている。「患者さんは合計37人でした。内科のスタートにしては良いとのことです」。おかクリニックは順調な滑り出しを迎えた。
 
クリニック外観 実は以前、この場所で開業していた院長が平成12年に亡くなって閉院状態だったのを、住民からの要請もあって公団による公募に名乗りを挙げての開業だという。「私の他に何人の方が応募していたのか、選定基準はわかりませんが、単科では難しかったと思います」。土地建物は公団の所有で、内装費用や医療機器のリースなどが岡院長の負担となった。

クリニックは今風に改築され、院内に入ると待合室は吹き抜けになっており、採光もよく明るく開放的な造りになっている。また特注のステンドガラスをアクセントとしているのも印象的だ。院内では有線でクラッシックが流れており、「以前の診療所を知る患者さんもこの造りにびっくりされているようです」と、岡院長もその出来栄えに満足そうだ。
 
院内の様子父も兄も医師だったこともあり医師となったのもごく自然だった。岡院長は、昭和52年に東京女子医科大学を卒業後、実家である佐賀からの通勤の利便さから、九州大学医学部第2内科へ入局した。医局員として6年間の勤務を経て、夫である義範医師との結婚を機に再び関東へ行くことになった。神経内科を専攻していたこともあって、神奈川県立七沢脳血管センターにて勤務。太田総合病院附属鶴川病院を経て、緑協和病院では副院長職を務めた。

元々、開業志向があり休みを利用して開業物件を探していたが、内科単科での開業は難しいと考えた岡院長は、非常勤医師として小児科クリニックに週一回3年間勤務して、小児科診療を学び開業に備えた。後は物件が決まるだけだったわけだ。
 
院内の様子現在、一日平均60名ほどの来院があるが、今回の診療報酬改定で長期の処方が可能となったので、2週間ごとの再診料が1回減る勘定だ。高齢者の割合の多いクリニックにとっては経営的にも打撃だが、今年4月から手の外科を専門とする義範医師(慶應義塾大学医学部卒、現・東海大学整形外科助教授)による整形外科(金曜日)が標榜科目に加わった。坂を上り下りして整形外科へ通院していた患者さんからの要望を受けてのことだが、診療科目が増えるのは強みとなる。

開業した年の12月に、早くもカルテ番号が1000番を超えたが、電子カルテは導入していない。「電子カルテの場合、どうしてもお互いモニタを見てしまう。そうすると患者さんと目を合わせての診療ができません」と、対話を重視しての診療を第一に考えての判断だ。
院内の様子在籍した二つの大学での経験が今に生きているという。女子医大で身についた自由な気風は、患者さんや職員との人間関係作りに欠かせない。九州大学では徹底的に臨床を学び、礼儀を教わった。それは現在の診療の確かな裏づけとなり、また医師会での他の会員との接し方の土台となっている。

自身も含めて、接遇には「笑顔と思いやり」を大切にとの職員教育を心がけている。月に一度はミーティングを行い、意見を交わすが、誕生月の職員がいれば花束を渡す、といった女性医師ならではの気配りもある。院内にはそこ、かしこに花が飾られ、患者さんの目を楽しませている。

時間があれば好きな旅行をしたいという岡院長。開業前に義範医師の整形外科学会出席に同行し、イスタンブールに行ったのが最後だ。「3年くらいは行けないだろうと思って行きました。余裕ができればいろいろと行ってみたい。開業1年も経っていないし、まだ無理でしょうけどね」と、順調と思える医院経営にも、まだまだ手綱を緩めることはない。
 
勤務医時代の一日開業現在の一日
 
おかクリニック
住所 〒227-0036
神奈川県横浜市青葉区奈良町2913-1-107
標榜科目 内科、小児科、整形外科、リハビリテーション科
医療設備 レントゲン、心電図、牽引器、マイクロ波、低周波
延べ床面積 40坪
物件形態 ビル診
スタッフ数
常勤医師:
1名
看護師:
3名(非常勤)
受付事務:
1名(常勤)
  2名(非常勤)
  ※のべ13名
開業資金 5,000万円(内装・医療機器リース)
2002.5.30掲載 (C)LinkStaff

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