西武池袋線大泉学園駅からは成増行きバスで15分ほどかかるものの、バス通りを挟んで向かいには大泉中央公園が広がっており、緑の中でくつろげる環境に恵まれている。
「僕は循環器が専門で、学会での発表も、年に十数回のペースでやっていました。心臓やカテーテルもやりたかったので、そちらに特化することも考えたのですが、普通の外来中心のクリニックでは面白くないし、多分、経営も成り立たないでしょう」
そう辻正純院長が言うのは、このロケーションでの開業を前提としていたからだろう。
「もともとは、母がここで開業していたんです。その関係で、アルツハイマーや老人医療には思い入れがありました。一人息子でもあるし、どういう形で受け継いだら良いか。それは念頭にありましたね」
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はた目には、継承イコール資産を受け継いだプラスからの出発に見えるが、親子であっても診療科目は違う。開業形態にも、建物の高さにも地域行政からの制限がある場所での新規まきなおしだ。
しかし、地元の人々にどう貢献できるか、地域医療に必要とされるものは何かを考えると、別の視界が開けるものらしい。
「在宅医療は今のトレンドですが、病診連携は、必ずしもうまく行っているとは思えない。大学病院などでは、お年寄りを嫌うことがあるんですね。
それと、たとえば癌の患者さんでも、放射線や薬物治療とかができる患者さんは取ってくれますけれど、手の施しようのない末期になった途端に送り返して来たりする。仕方のない部分はあるんですけれど、患者さんにすれば、見捨てられたという気持ちになってしまいます。
特に、練馬区は病院が少ないということもあって、紹介先に困ってしまうんですね。それで、最後まで面倒を見られる入院施設を持ったクリニックと、在宅医療の基地になる施設が必要なのではと思ったのです」
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在宅医療の基地と聞けばいかめしいビルを思い浮かべる。しかし、歯科を含めると4つの診療室と19床の入院施設、全身CT、リハビリルームなどを備えた大きなクリニックでありながら、辻クリニックの外観には、物々しく構えた印象が無い。これは、介護施設は生活の場だというコンセプトを、クリニックまで徹底した結果だ。定員100人の老健施設とは、一階と二階の渡り廊下でつながっている。
「始めてみると、両方を適宜利用されるかたが多くて、想像していたより多くの患者さんに御利用頂いております。表には出ないけれども本当は困っていて、地元に手ごろな施設があれば利用したいという人は、実はたくさんいらっしゃるんですね。
うちは地元密着型で、診療圏はそれほど広くない。せいぜい練馬区内なのですが、ほとんどいつも満床です。逆に、こういった施設が無いところではどうなっているんだろう、捨て置かれているんだろうかと、そら恐ろしくなるくらいです」 |
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そのため、増患策より、質と内容をさらに充実させること、入院期間はなるべく必要最低限にすることを考えている。
「入院させておくほうが無難だし、経営の面から見ても、ある程度長くいてもらうほうが良いという考え方もあるでしょう。けれど、それだと施設依存症の患者さんを作ってしまうことになりかねない。入院している間に、家での居場所が無くなってしまうケースもありますから」
ベッドから出ても、最後まで面倒を見る。決して見捨てない。そのために訪問介護ステーションと介護支援センターを併設し、一貫したケアを行っている。在宅に戻った患者にとって、この安心感は大きいはずだ。
「介護保険と医療保険を両輪にして、組み合わせでケアできるというのも利点です。医療保険にも、介護保険にも、単独では限界があるわけですよ。それを、患者さんの状態に合わせて、両方利用できるメリットは大きいですね。おかげで、患者さんにとっても使い勝手の良いクリニックになったと思います」 |
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在宅から通院、入院まで一貫した医療を行えば、家族ぐるみの付き合いになるのも当然だろう。文字通りのホームドクターである。そこで必要なものは、なんだろうか。
「若い医師の中には、患者さんとのコミュニケーションが、うまく取れない人がいます。この人、この患者さんは、という感覚ではなく、この病気、この症例はと考えてしまうんですね。けれど、患者さんからすれば、安心して話ができるのが一番だと思います」
「クリニックを開業する医師は、こんな医療をやりたい、こういうクリニックを作りたいという夢があると思うんです。それを大切にして、本当にやりたいことをやれば良いと思います。自己実現と言っても良いかもしれません。
もちろんそのためには、経営が成り立たなければいけない。医学以外のことも勉強しなければいけないし、協力してくれるスタッフが必要です。良いスタッフに恵まれれば、一人でやるよりずっと大きなことができる。
僕の場合は、ご縁に恵まれていました。」 |
お金さえ出せば良いスタッフが集まるというものではない。やりがいや夢に、人が集まるのだろう。地域ボランティアとの交流も活発で、レクリエーションに参加する団体は約70を数える。医師、患者とその家族、そして住民へ。地域医療を支える人の輪が、さらに充実して行くことだろう。 |
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辻内科循環器科歯科クリニック |
開業年月日 |
平成10年3月2日 |
開業形態 |
医療法人社団 |
住所 |
〒178-0061
東京都練馬区大泉学園町8-24-25 |
標榜科目 |
内科、呼吸器科、循環器科、整形外科、消化器科、神経内科、皮膚科、理学診療科、放射線科、歯科 |
医療設備 |
全身型CT、内視鏡、トレッドミル、心臓腹部エコー、リハビリ用機器 |
延べ床面積 |
1184、48㎡ |
敷地面積 |
629、48㎡ |
開業資金 |
3億2千万円 |
一月あたりの平均外来患者数 |
約3380人 |
診療時間(休診日) |
医科 |
月~金 9時~12時 14時30分~17時30分
土 9時~12時 |
歯科 |
月火水金 9時30分~12時30分 14時30分~18時
木土 9時30分~12時30分 |
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院長先生のプロフィール |
出身大学 |
日本大学医学部 54年卒 |
専攻 |
循環器科 |
卒後勤務歴 |
日本大学医学部第2内科 |
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千葉西総合病院 循環器内科(部長) |
タイムスケジュール |
勤務医時代 朝8時から夜10時まで勤務 |
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開業後(現在) 朝8時から夜7時まで |
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スタッフ数 |
医師 |
13名 |
歯科医師 |
2名 |
看護婦 |
13名 |
薬剤師 |
1名 |
放射線技師 |
1名 |
臨床検査技師 |
1名 |
歯科衛生士 |
4名 |
理学療法士 |
1名 |
鍼灸士 |
1名 |
看護補助者 |
4名 |
事務員 |
6名 |
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<病院配置図>
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