これは、抽象的な建前ではない。通常、クリニックの長所を宣伝し、特色を決めるのは院長と経営者を兼ねる医師だ。帝国クリニックは、患者と街の色に自ら染まろうとしている。 「有名なところに行きたがる人もいるし、名前を売るのもひとつの手です。けれど、街の口コミで、私だけが知っている良い店を大事にする人もいる。そういうスタンスのほうが、来た人はくつろげるんじゃないか。思い切って、街の色に染まり、必要不可欠の存在になるほうが良いのではないかと思うようになりました」 たとえば、学校で保健室が果たしている心療内科的アドバイザーの役割。 「心療内科の看板は出していません。けれど、看板を出さなくても、やってきますね。ある意味、9割はそれだという気もします。かつては、やる気が起こらないとか、抽象的な症状が多かったのですが、今は、おなかや頭が痛い、吐き気がするなどの具体的な臓器症状がある。その、かなりの部分がうつ病だという説を聞いたことがあります。確かにそうだと思いますね。病気のほかに、何かつらいことはないのって聞くと、それをきっかけに話が始まるんです。はっきり言って、人の悩み事を、他人が治せるものじゃないんですよ。悩んでいることはそれぞれに違うし。どうこうしろと説教できるほど、僕はえらくないです。悩んでいるときって、もやもやしているだけで、整理がつかないでしょう。しかし、話すときには、順序だてて表現します。僕がアドバイスをしなくても、それで整理がつくんですね。そのお手伝いをしているだけです」
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