クリニックの窓教えて、開業医のホント

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―医療法人 相生会 西片貝クリニック ―
理事長・院長 若松良二
群馬県前橋市

 
医院長 若松院長は、昭和50年に新潟大学医学部を卒業後、出身地から最寄りの群馬大学医学部第三内科学教室に入局し、腎臓病と膠原病の診療と研究に取り組んだ。クリニックを開業したのは平成4年のことだ。JR上毛線の上泉駅から徒歩で5分。100台分の広々とした駐車スペースと、やわらかな自然光をとり入れたエントランスがまず目に付く。

「すでに、有床診療所が減り始めていた時期ですが、20床の入院設備と、16台の透析装置で始めました。専門である腎臓病、膠原病などを、急性期からトータルケアができるクリニックにしたかったのです。入院や透析をやるのですから、仕事としては、勤務医のほうが楽だったでしょう。 まあ、普通の診療所でも、かかりつけの患者さんから電話があって、夜中に起こされるということが、昔はありました。しかし今では、前橋の医師会でやっている夜間診療所がありますから。一般の外来診療だけで開業した先生は、入院の受け持ちを持つ勤務医より楽かもしれません。 しかし、自分で開業するにしても、勤務するにしても、一生の仕事として楽しめるかどうかは大きいと思いますね。目指すものがあって、やりがいがあるかどうか」
 
 開設以来、透析装置は50台に、職員数は60人に増えた。この数字だけを見ると、機能分化と病診連携を進める動きに逆行しているように思える。

「自分のやりたいことが、その地域にマッチするかどうか、地域のニーズに合っているかどうかは、もちろん考えなければいけないでしょう。 東京の診療所で透析をやるなら、駅前クリニックなどの形がありますね。大きな病院で治療を受け、ある程度落ち着いたところで、通いやすいクリニックに移る形です」


 

 しかし、地域医療で求められる、かかりつけ医としての役割を、患者の立場からみると、どうなるか。何らかの持病があれば、それに応じた専門知識と技術を持ったクリニックをかかりつけにしたいと思うのではないだろうか。

「分業、専門化が進む中、たとえば退院のタイミングでも、病状だけを考えれば良かったものが、入院日数の基準も考えなければならなくなった。もちろん、それぞれの病院で、地域医療連絡室を作るなど、取り組みも進んでいます。 しかし、一番大切なのは、患者さんが納得し、安心できるようにすることです。医療機関同士の連絡だけではなく、患者さんと、きちんと話しをしないといけません。 このクリニックでは、逆紹介を受けることも多く、地域医療の一環を担っている、信頼されているという実感があります」

 
 現在、腎臓病の外来は100名以上、透析を受けている人は160名に達している。その観点から今回の医療改革についてうかがうと、

「今回の改定で、一番問題だと思うのは、透析をする時間を長くとっても切り詰めても、報酬は一律だという点です。 透析を短時間でやると、体に良い影響はありません。むしろ、時間をかけたほうが良いというのが一致した意見です。しかし、経営から見れば、短時間ですませて人件費や材料費を切り詰めたほうが有利になってしまう。収入から支出を引いた残りの利益が、今までは一割程度あったとしても、収入で7~8%減になれば、利益はほとんど残らない。 経営が成り立たなくなったらどうなるか。今までどおりの医療を受けられるのかどうか、一番心配しているのは患者さんです」


 
それでは、患者さんに不安を与えない、健全経営には何が必要なのだろうか。

「いかに安く、良いものを提供するか。透析に必要な材料を作る会社などもふくめ、全体で取り組まなければならない。事実、ダイライザーを作っている会社で、合併などが始まっています。次は、透析をする施設自体で、グループ化などの動きが出てくるでしょうね」

それを見越して、という訳でもないのだろうが、平成10年に医療法人財団相生会を設立。同財団内に、やはり透析を得意とするわかば病院を立ち上げている。 また、平成13年には訪問看護ステーションを併設し、こちらも本格的に稼動し始めた。

「スタッフに、非常に熱意にある人がいまして。患者さんだけではなく、家族の皆さんにも喜んでいただけるので、やりがいがあるのですね。 在宅で、日常生活を続けながらと望む人も多いですから。ワンストップで最後まで面倒を見てくれるところがあれば、患者さんも安心です。 もちろん、熱意だけではできないことです。経営も成り立たないと、クリニックとしては続けられませんから。しかし、ぜひこれをやりたいと思う熱意がないと、始まりません」


そして、仕事を楽しめるなら、始めたときの熱意を持続できる。それが、厳しさを求められる医療の現場に、笑顔のあるコミュニケーションをもたらし、地域からの信頼を育んでいるのではないだろうか。



【1F~2F平面図】
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【地図】


2003.1.10掲載 (C)LinkStaff



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