クリニックの窓教えて、開業医のホント

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―湘南美容外科クリニック―
相川 佳之 院長
 
 
医院長 湘南美容外科クリニックは、現在、横浜と藤沢の二ヶ所で営業している。今回訪ねた横浜院は、JR横浜駅の改札から徒歩5分足らず。駅ビルを出るとすぐそこで、待合室の窓からはランドマークタワーが見える。
ただし、入り口は目立たない。看板は小さく、7階までエレベーターで上がらなければならないのだ。これには理由がある。

「整形手術を受けるかたは、出てくるところを顔見知りに見られたくありませんから。地元のクリニックを避け、どこかの街へ出かけて受けるのです。
交通の便が良いことと、場所のイメージも考えました。やはり、おしゃれなところのほうが良いですよね」


相川院長にとって、美容整形外科での開業は、学生時代からの念願だった。日大医学部卒業後、癌研究所付属病院で麻酔を学んだのも、寄り道ではない。
「美容整形での開業を視野に入れると、自分で手術と麻酔ができないと。麻酔の要らないプチ整形だけでは、開業してもたち行きませんからね」
 
外観 その後、大手美容外科に入り、数万件の手術経験を積み、2000年3月、湘南美容クリニックを開設した。ここまで美容整形にこだわる理由は、何だろうか。
「美容整形は、前向きな部門というか、喜んでもらえる分野だと思います。それに、失敗か成功か、すぐにわかる。もともと体育会系で、勝ち負けがはっきりするのが好きなんです」

他の診療科目なら、勝ち負けの基準は治ったかどうかだが、美容整形は違う。
「本人が鏡を見て判定するわけです。何も言わなくても、表情を見れば分かりますよ。そのときの笑顔が、一番のやりがいですね」
 

従業員これはある意味、最も厳しい判定基準だろう。しかも、勝つことが義務付けられている。人間はいつか死ぬという必然のもと、部分的勝利を積み重ねるしかない診療科目と違うのはそこだ。
「他の診療科目なら、治すところは診察で決まります。美容整形の場合、どこをどうなおしたいかは、お客さんのイメージの中にあるわけで、そこをきっちり押さえないと、クレームが来ます」

そのため、事前の入念なカウンセリングが不可欠となる。
「どれだけのコストをかけて、どんな整形をするか、こちらで決めるわけにはいかない。これも、他の科目とは違いますね。できることとその効果を、きちんと説明して、相手に選んでもらう姿勢が必要です。当クリニックでは、施術ごとの値段も、はっきりと出していますし、施術結果のシミュレーションも使って、こんな感じになりますよと見せています。自分の理想に近づけたいけれど、整形したとは分からないように、という人が多いので、鼻を一ミリ高くしてくれと言われて、ハイ御注文どおりとやるわけには行きません。イメージを具体化して、共有しておかないと、まちがいのもとです」

 
内観技術と知識だけではなく、コミュニケーション能力が問われるのだ。
「洗えば落ちる化粧とは違いますから、プチ整形といえども、本人にしてみれば相当な思い切りが必要なんです。それに、今すぐ絶対に必要だと思って来るわけじゃありません。話しの通じない人に任せるはずがない」

これは、医者としてのコミュニケーション能力に限らない。
「医者や看護婦を見て、ファッションのセンスが違うと感じただけで帰ってしまうかも知れない。タレントの顔を例に出されて、こっちがその名前を知らなければ、大丈夫かなという顔をされるでしょうし」
求められる腕前の質も、違ってくる。
「外科の腕前が良くても、美容整形がうまいとは限りません。同じ木を扱うのでも、建築と彫刻の腕前では違う、という感じかな」
 

事務長プチ整形の普及やテレビ番組の影響で、美容整形への抵抗感は薄れて来た。
「それでも、口コミで来院者が増えることは、まずありません。宣伝は不可欠ですね。ただ、派手にコマーシャルをうつ気はありません。ホームページなどを使って、当クリニックでどんなことができるかをお知らせするという感じです。
狭い意味での美容整形だけではありません。たとえば、でべそとか腋臭とか、病気とは言えなくとも、本人にとっては悩みの種でしょう。これも治療できるわけですよ。そういう事を、もっと皆さんにお知らせしたい」

最後に、今後の夢をうかがった。
「美容整形の地位を、もっと引き上げたいですね。そのためにもプライドと意欲のある人に来て欲しい。儲かるらしいからプチ整形でもやるか、程度の思惑では来て欲しくないですよ。
また、はっきり言って、誰にでもできるプチ整形が売り物になると思ったら大間違い。その上、教科書どおりに手術が成功しても、お客が納得してくれるとは限らない。そのあたりが分かっていないと、本人だけでなく、美容整形全体が評判を落とします。
もうひとつ、これから開業する人にアドバイスするなら、麻酔の勉強をしておくのがお勧めです。麻酔のある無しでは、できることの幅がまったく違いますから」
(終わり)

 


2003.6.1掲載 (C)LinkStaff


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