これはある意味、最も厳しい判定基準だろう。しかも、勝つことが義務付けられている。人間はいつか死ぬという必然のもと、部分的勝利を積み重ねるしかない診療科目と違うのはそこだ。 「他の診療科目なら、治すところは診察で決まります。美容整形の場合、どこをどうなおしたいかは、お客さんのイメージの中にあるわけで、そこをきっちり押さえないと、クレームが来ます」 そのため、事前の入念なカウンセリングが不可欠となる。 「どれだけのコストをかけて、どんな整形をするか、こちらで決めるわけにはいかない。これも、他の科目とは違いますね。できることとその効果を、きちんと説明して、相手に選んでもらう姿勢が必要です。当クリニックでは、施術ごとの値段も、はっきりと出していますし、施術結果のシミュレーションも使って、こんな感じになりますよと見せています。自分の理想に近づけたいけれど、整形したとは分からないように、という人が多いので、鼻を一ミリ高くしてくれと言われて、ハイ御注文どおりとやるわけには行きません。イメージを具体化して、共有しておかないと、まちがいのもとです」
プチ整形の普及やテレビ番組の影響で、美容整形への抵抗感は薄れて来た。 「それでも、口コミで来院者が増えることは、まずありません。宣伝は不可欠ですね。ただ、派手にコマーシャルをうつ気はありません。ホームページなどを使って、当クリニックでどんなことができるかをお知らせするという感じです。 狭い意味での美容整形だけではありません。たとえば、でべそとか腋臭とか、病気とは言えなくとも、本人にとっては悩みの種でしょう。これも治療できるわけですよ。そういう事を、もっと皆さんにお知らせしたい」 最後に、今後の夢をうかがった。 「美容整形の地位を、もっと引き上げたいですね。そのためにもプライドと意欲のある人に来て欲しい。儲かるらしいからプチ整形でもやるか、程度の思惑では来て欲しくないですよ。 また、はっきり言って、誰にでもできるプチ整形が売り物になると思ったら大間違い。その上、教科書どおりに手術が成功しても、お客が納得してくれるとは限らない。そのあたりが分かっていないと、本人だけでなく、美容整形全体が評判を落とします。 もうひとつ、これから開業する人にアドバイスするなら、麻酔の勉強をしておくのがお勧めです。麻酔のある無しでは、できることの幅がまったく違いますから」 (終わり)
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