そこで今後、力をいれたいと思っているのが、予防医療の啓蒙だ。 「啓蒙と言うと、ちょっと違うかもしれません。たとえば検診などを、ただなんとなく受けているのではもったいない。検査の結果がどうか、何に気をつけたら良いのか、放っておくとどうなるのかなど、分かりやすく具体的に説明してあげたいですね。それには、急性期を扱った経験が役に立つと思います」 ところで、このクリニックには、往診のほかにもうひとつ、重要な柱がある。小児科だ。これも、手間がかかってもうからないと敬遠されがちな分野である。 「本人がしゃべれないし、母親の精神的ストレスも、とってあげなければいけない。大変なことは多いです」 ヤオコーの川野社長は小児医学奨学財団の設立者でもあり、できれば標榜科目に小児科をいれて欲しいとの申し入れがあった。 「しかし、できれば、という話しですから。やろうと決めたのは、地域での必要性を感じたからです。この近くには団地も多いし、必要としている人が多いのに、小児科が少なかったんです。実際、開業してみると、小児科の患者さんは非常に多いですね」
やりたい事とできる事の狭間でジレンマを感じるのは、だれしもの事だろう。 「若いうちは、自己資金もないし、銀行も貸してくれない。勤務医としての給料だって、開業医としての実績にはなりませんからね。 その一方、患者さんの立場から見て、どんなクリニックや医療が良いのかについて、僕なりに考えていましたし、アイデアもありました。勘違いもありましたが(笑)。 スタッフにきちんとお給料を払えないような状態では、良い医療なんてできない。けれど、自分がやりたいこと、志がなければ、やはり良い医療はできないと思います」 必要としている人の、必要に応える。人を相手とする職業なら当たり前の志が、今、最も求められているのかもしれない。
【クリニックの窓バックナンバーリストへ】
おすすめ求人