クリニックの窓教えて、開業医のホント

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― すだ眼科  ―
須田秩史 院長
 
 
「開業は難しいですね。」
間もなく開業して半年を迎える須田院長の率直な感想だ。これまで30年間、勤務医としてのキャリアを積み重ねてきた。「雇用される」側から「雇用する」側への立場の変化は思っていた以上に大きいと言う。現在、受付や検査助手など5人のスタッフ全てが女性である。

「スタッフとの良い人間関係を構築していくことは大切ですね。そのほか事業主として何でもしなくてはいけませんしね。」

 
開業のきっかけを尋ねた。
「もともと、いつかは開業したいと思っていました。ちょうど、勤務していた病院の勤務体制の変更などがありました。定年まであと5年だったのですが、5年後よりも体力のあるうちに早く開業した方がいいと決断しました。祖父の代から眼科医で両親ともに開業していたのですが、父が病気になり、実家の医院は閉院したのです。その頃、私はまだ医師として駆け出しでしたので、実家のあとを継ぐというタイミングではありませんでした。ですから、開業にあたってはゼロからのスタートでした。ただ、小さい頃から開業の怖さというものを見ておりましたので、根性を据えてやらねばとは思っていました。個人事業ですし、競争というものもありますからね。」


 

眼科部長として大病院に勤務しながらの開業準備は多忙を極めた。
「一番苦労したことは、やはり場所探しです。去年1年間で30ヶ所以上見て回りました。最初は大阪市内で地下鉄の駅前を希望していました。ところが、どの駅前にも既に眼科があるんですよ(笑)。それで、大阪市外に目を向けました。市外と言っても広いですよね。最終的に通勤時間のことを考えると、自宅に近いところを探した方が良いと判断しました。」

結局、吹田市山田西の公社山田西団地内で開業に踏み切った。最寄り駅の山田駅(阪急千里線、大阪モノレール)からはバスというアクセスだが、公社団地が何棟も立ち並び、商店街に隣接していることから人通りが途絶えない。
「開院の日の朝、玄関の前に患者さんが並んでいました。当初は予想を超える患者さんの数に面喰うこともありました。今は大分落ち着いてきて、一日平均の外来患者数は60人強といったところでしょうか。土地柄か子どもの患者さんも多いですね。」

 
開業医には勤務医と異なる視点が求められる。
「勤めていた頃は洗眼はしませんでしたし、ワックも不要だと考えていました。実際開業してみると、子どもさんが眼鏡をかける時期を先に延ばしたいという親御さんの希望も多くて驚きました。ワックも慌てて導入したんですよ。勤務医時代なら考えられませんね。患者さんのニーズにはできるだけ応えていきたいです。もちろん洗眼もしていますよ(笑)。」

時代の変化に伴い、医師のスタンスも変わってきたと言われる。
「医業はサービス業です。私は祖父や両親の姿を見てきたので、勤務医時代から患者さんに対して、傲慢であったり偉そうな態度を取らないように気を付けていましたが、開業してなおさら、患者さんと同じ目線よりも下に立つということを心がけています。眼科医より眼医者であれ、というのが基本ですね。いつも患者さんに慕われ、喜んでもらうのが理想です。」

 

取材は休診日の午後行ったのだが、写真の撮影のため、少しの時間シャッターを開けて頂いた。するとすぐに「お願いできますか?」と患者さんが入ってこられた。すだ眼科が地域になくてはならない存在であることが実感できる光景だった。
最後に開業にあたってのアドバイスをお願いした。

「まずは資金の問題ですね。これが解決すると楽になります。次に、人づきあいが苦手だとは言っていられないです。何と言っても人を使う立場になりますので。それから、奥さんを大切に(笑)。妻は影の事業主であり、功労者ですから。」


(終わり)

 


2003.9.1掲載 (C)LinkStaff


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