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SAS診療に特化した開業スタイル

医療法人社団 グッドスリープクリニック
    
    


院長 斎藤 恒博 氏

 昨年2月、運転手の居眠り運転によって山陽新幹線が緊急停止したという事件は記憶に新しい。その原因となったことから、医療界のみならず広く一般に知られることとなった睡眠時無呼吸症候群(以下SAS)。国内の推定患者数は100万から200万程度といわれ、高齢化や食生活の変化から、今後ますます増加すると予想されている。そこで、規模の大小を問わず、このSASを専門的に扱う医療機関は増え始めている。今回は、その先駆けである「グッドスリープクリニック」を訪問した。



 ■開業前後

 院長は斎藤恒博氏。1975年に東京大学を卒業した後、1982年医学博士号を取得。その後、アメリカ合衆国テネシー州立大学記念研究センターへ留学する。帰国後は東京大学医学部第三内科助手、三井記念病院血液内科科長、帝京大学医学部第三内科助教授を歴任している。1998年、産業医の資格を取得して企業に勤務し始め、その翌年には資格のアップデートとして労働コンサルタントとなった。2000年8月に退社、その後約6ヶ月間を開業準備に費やすことになる。2001年2月の法人設立に始まり、港区医師会への加入を経て、同年4月に「グッドスリープクリニック」をオープンした。このSASに特化するアイデアは、クリントン政権時代に行われたプログラム『ウェイクアップアメリカ』から得たという。このプログラムによって、各州で「スリープラボ」と呼ばれる診療施設がつくられていった。このスリープラボこそが、グッドスリープクリニックのビジネスモデルであるという。
厚生労働省(当時は厚生省)による国家資格。



クリニック外観

 「このクリニックを開いた理由は色々とあります。まず、もともと潜在的な患者さんは多かったのですが、どこで治療すればよいのかわかりにくかった。一方で、病院はSASの検査が他の疾患のそれとまったく違うので、同じように扱えずにもてあましていました。そこで、SAS専門のユニットがあってもよいのではないかと思ったのです。また、SASの治療器(CPAPができたのは1980年代ですが、その頃のものは日常の使用に耐えるようなものではありませんでした。それがここ10年でやっと実用的なものとなり、2000年4月からCPAPが保険適用になったということもあります
2004年9月現在、点数は1460点(指導管理料250点および機器加算1210点をあわせたもの。



 ■クリニックの内容

クリニックの一隅にある休憩コーナー。
喫煙も可能だ

 このクリニックの最大の特徴は、その名前が示すように、SASの診断に特化している点だろう。その開業および経営・運営について、詳しく尋ねてみた。
まず、有床の診療所ということから一定の施設基準があり、それをクリアしている物件を探さなくてはならないのが大変だったという。次に、JRの駅が近いというのも増患のためには必要だった。その点、現在の物件はJR浜松町駅のみならず、都営線の大門駅・芝公園口駅からも近く、好立地である。また、生活習慣病に悩み始める30代後半から50代後半ぐらいの男性が多く集まる場所でなければならない。これも、クリニックの周囲は日本有数のビジネス街なのでクリアしている。
患者向けの広告は「満足な媒体が見つからないので、特に出していない」。しかし、同クリニックはそれを補って余りあるホームページを持つ。このホームページは、SAS診療に関する説明はもちろんのこと、一度でも来院するとIDとパスワードが発行されるので、これを使ってホームページ上で入院検査予約もできるようになっている。95パーセントの患者がこのホームページを見て来るということから、その高い効果がわかるだろう。その他、雑誌や新聞に寄せられた氏のコラムや記事などにも、患者は引き寄せられているようだ。また、著書の『ストレス社会の快適睡眠』(2002年、日本放送出版協会)も、広く読まれている。

「2001年の12月頃など、一晩に1人、2人というときもありましたね。しかし、件の新幹線の事件が起きた後には、4ヶ月先まで予約が一杯になりました。今は落ち着いて、約2週間待ちぐらいの状態です」

では、実際にどのような患者たちが、このクリニックの門をたたくのだろうか?
「『自分はSASかもしれない。でも、そうであって欲しくない』と悩みたくなくて、いらっしゃる方が多いようですね。だから、一晩に30回以上の無呼吸が起きていようと、『なんだやはりSASだったのか』と納得しただけで、治療しない方もいます。手術をすれば終わりというわけではなく、生活習慣を改善することなどそれなりの努力が必要なので、面倒にも思われるのでしょう。また、CPAPになじめず、治療をあきらめる方もいらっしゃいます。長期にCPAPを使っている患者さんでも、月に1回診察に来なければならないのが煩わしいようですね。それでも、患者さんには『楽になるためにこのクリニックに来ているのだ』という印象を持ってもらうために、色々と努力しています」

セミダブルベッドを設置した検査室。「外国人の患者さんは足が出てしまうのです」と、氏は笑う。



受付スタッフ

画像をクリックすると病院HPが開きます

 また、SASの治療には生活習慣病対策が不可欠である。そこで、栄養指導などにも余念がない。動脈硬化度を測定するPWI・ABIを導入しているのも、その一環だ。

一見すれば、立地条件や運営状況も申し分ない同クリニック。しかし、氏には不満足なところもある。

「本当にケアが必要な人たち、つまり、交通に関わる人や工場勤務の方たちには、この場所では来て頂けません。会社から患者さんを紹介されることもありますが、それは大企業が多い。そこで、中小企業の患者さんの掘り起こしが必要ではないかと思います。それは、地域医師会の産業部会を通してやるのが一番良いでしょうね。また、マウスピースを作ってくれる歯科を探すのが大変でした。もっとも、マウスピースにも保険が適用されるようになり、状況は良くなりましたが」

一方で、「診療は大変だと思いませんよ。むしろ患者さんとのやりとりを楽しんでいます」と言う斎藤氏。患者と同じ椅子に座り、向き合って話せる対面型のテーブルを選んだのも、このような理由からだろう。


 ■開業に向けてのアドバイス
 
 しかし、開院当初はそれが週3回、週90時間は拘束される日々だった。もっとも、現在は氏が念入りに面談して採用したという非常勤ドクターたちがいるので、週に1回当直をするのみだ。

「やはりマンパワーの確保が大事だと思います。医師のみならず受付のスタッフも必要ですから。本当に開院当初は大変だったので、医師が1人で運営するというより、チームを組んでやるほうがよいと思います。もっとも、どんな医師にもできるわけではありません。診療をするというより、患者さんと充分にコミュニケーションをとれるような方、つまりサービスをするという感覚を持つ方が向いていると思います」
 
「タイムスケジュール」および「クリニック平面図」は社外秘
 
医療法人社団 グッドスリープクリニック
院長 斎藤 恒博 氏
住所 〒105-0012
東京都港区芝大門2-10-1
第一大門ビル1階
医療設備 睡眠ポリグラフィー測定記録・自動解析装置、CPAP、PWI・ABI
延べ床面積 65坪
物件形態 ビル診
スタッフ数 非常勤医師5名、臨床検査技師6名、受付5名(常勤・非常勤あわせて)
開業資金 社外秘
HP http://www.good-sleep.gr.jp/index.html
(終わり)
2004.10.1掲載 (C)LinkStaff
 

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