クリニックの窓教えて、開業医のホント

バックナンバーはコチラ

24時間対応の在宅医療・往診に特化した開業

孝仁ホームクリニック
    
    



クリニック外観

 在宅医療を必要する患者が増えている。入院生活はもう耐えられない、自宅で療養したい、また入院日数の短縮という医療行政的な措置からなど様々な理由で、在宅医療を選択する人が増えてきている。今回は、品川区大井町で在宅医療・往診専門のクリニックを営む「孝仁ホームクリニック」を訪問した。



 ■開業前後

 院長は高久仁利氏。信州大学医学部を卒業した後、平成元年東京慈恵医大付属第3病院外科に入局。大学病院、関連病院にて臨床経験の傍ら、今は亡き伊坪名誉教授のご指導のもとに肺癌の化学療法の研究で、平成8年学位を取得する。平成9年、新潟県立がんセンター勤務後帰京し、平成14年産業医を取得する。
主任教授の退官時期が近づき開業を考え始め医局の諸先生方のご助言やご紹介にて、何件かの検討するも勤務医の仕事と開業準備の両立に追われていた。その矢先に母が急死し、開業計画はいったん白紙に戻る。しかし「孝仁会」の皆様の励ましやご協力を得て新たに在宅医療という形で平成15年夏に開業を準備し始め、同年11月1日開院、現在に至る。
孝仁会:院長の友人からなる後援組織。開業時の資金援助をしたり、クリニックに対してそれぞれの立場より忌憚なき意見していただける、院長の最も信頼する仲間。


クリニック受付


 ■クリニックの内容

スタッフ

 このクリニックの最大の特徴は、その名前が示すように、在宅医療・往診専門のクリニックに特化している点だろう。その開業および経営運営について、詳しく尋ねてみた。
まず、在宅医療の拠点となる物件探しだが、高久院長は大井町出身で土地勘があった。重要視したポイントは、往診時に車で移動するのに適した場所で、かつ交通の便が良いことだったという。その点、現在の物件は、幹線道路に面し、駐車スペースが近所にあり、JR京浜東北線、東急大井町線、東京臨海高速鉄道りんかい線の大井町駅の3駅が利用できて、駅から徒歩2分と好立地である。

 患者向けの広告は、在宅医療・往診専門のクリニックということで、地元での口込みとホームページを公開する以外はしない。ただし開業当初は、高久院長自らクリニックを紹介したリーフレットを持ち、訪問看護ステーションや病院の地域医療連携室等を回ったこともあった。


「患者さんやご家族にとっては、病院や訪問看護ステーションに紹介され、面識もない医者が訪ねてくるわけです。また在宅医の認知度が低いせいか、勤務医よりも格下にみられたり、患者さんの弱みにつけ込んだりするのではないか? という風にみられてしまうこともありました。さらに終末期の患者さんの場合は、今まで診ていた医者から見放されたと感じている方がかなりいらして、こうした方々の医療不信にどうやって取り組んでいけばいいのか、私の役割は決して敗戦処理ではないので苦慮することもあります。
また患者さんの望んでいることが、必ずしも家族の望んでいることと一致しない場合があります。患者さんの希望を叶えようとすると、家族の反感をかったり、反対に家族と深くつきあいすぎても、患者さんが宙に浮いてしまいます。自戒の意味も含めて言葉や、人間関係に配慮が必要だと思っています」

 
往診

 在宅医療・往診専門クリニックの経営面はどうなのだろうか?

「クリニックの収益をあげることに固執しないで、自分が得意分野の診療を行っていれば、利益は後からついてくると思っています。もちろん開業当初はPRが必要ですが、あまり売り込みすぎると在宅医療の誤解等で地域によっては他の医療機関とのあつれきが生じることもあります。経営については、専門の先生方と定期的にご相談させて頂いており、開業資金も比較的少なくてほぼシミュレーションと同等という評価を頂いております」

 開業して一年が経った感想と今後の展望について伺ってみた。

「かつて大学病院に勤務していたときは、朝から晩までオペ室に入り、その後、病棟を回っていました。そのためどうしても患者さんやご家族と接する時間が短くなってしまいがちです。開業して成功したかどうかはまだわかりませんが、仕事の満足度は確実にアップしましたね。反面、家族とのコミュニケーションは減りましたが・・・。
患者数を増やさずに一人でやっていくことも出来ますが、できれば需要に応えられるように一緒に手伝ってくれる仲間を探しています。自分が専門でない分野の意見を頂いたり往診を手伝ってくれる先生です。医療の質はマンパワーによるところが大きいと思っております。e-doctorに求人票を出していますので興味がある先生は気軽にお問い合わせください」

 

 ■開業に向けてのアドバイス
 

「各科の専門医が揃っている病院と違って、医者が自分ひとりで、患者さんのお宅を訪れるわけですから、プライマリケアの知識は不可欠です。さらに長時間の車の運転に耐えられる、24時間オンコールでも平気な若くて元気な先生が最適かもしれません。多い時で週に3~4回、就寝中に呼ばれた事もあり、そうした時の対応が患者さんとの信頼関係につながります。
また出来れば地元の医師会に入って、研究会等にも出席し地域の病院・クリニックの先生たちと交流を図り、情報交換をして患者さんを診ていくことが大切です。自分が確実に出来る範囲のことは行って、それ以外のことは速やかに他の先生に紹介するという考えがないとうまくいかないと思います。なんでも一人で抱え込まないことがポイントですね

 
「タイムスケジュール」および「クリニック平面図」は社外秘
 


院長 高久 仁利氏
孝仁ホームクリニック
院長 高久 仁利
住所 〒140-0011
東京都品川区東大井5-14-11
サンフラワー1F
医療設備 レントゲン、ポータブルECG
エコー、往診車
標榜科目 在宅診療(内科、外科、ターミナルケア)
延べ床面積 約13.5坪(44.44平方メートル)
物件形態 ビル診
近隣に往診車用の駐車場
スタッフ数 非常勤医師計3名
全員運転免許を取得している医療事務、
社会福祉士、介護福祉士計4名
開業資金 社外秘
HP http://www.e-doctor.ne.jp/koujin-homeclinic/index.htm
求人票 http://www.e-doctor.ne.jp/script/query_2.php?kyu_no_e=No.03691
(終わり)
2004.11.8掲載 (C)LinkStaff

【クリニックの窓バックナンバーリストへ】

 
 
リンク医療総合研究所 非常勤で働きながら開業準備