目白駅・駅近くの階段 |
山手線の駅はたいていどこも賑やかですが、この駅だけは静かなもので」と、山田先生はジェントルな表情で穏やかに笑う。実際、周囲は都内と思えないほど静けさに満ちていた。
JR山手線目白駅の改札を出て、表通りから1つ入った道を歩くことわずか1分。地中海を思わせるような洒落たビルの階段を3歩下ると、そこが今回紹介する山田皮膚科である。
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■開業準備
クリニックの院長である山田先生は、東京大学医学部を卒業するとともに皮膚科学教室に入局、その後は病院勤務などを経て、2度の渡米を経験している。アメリカでは皮膚の免疫学を究めるため、主にNIH(米国立保健研究所)で研鑚を積んだ。その満足度は「最高の環境で研究に没頭できて、本当に幸せでした」という言葉に表れているだろう。帰国後は大学に戻り、アトピー性皮膚炎や円形脱毛症など、免疫が深く関与する疾患の専門外来を担当するようになった。 |
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そもそも、大学病院には診療・教育・研究の3つの使命がある。その当時、専任講師として、先生はその3つをバランス良くこなさなければならない立場にあった。しかし、実際は「研究より、患者さん1人1人の患者さんが満足できるような診療を受けているかどうか、こちらの方が気になってしかたがなかった」という。さらに、専門としている円形脱毛症の患者さんの多くが、「脱毛はストレスが原因」などと片付けられて、適切な治療を受けていないことに不満を覚えていた。そのような患者さん達に正確な情報を提供したい、エビデンスに基づき、かつ最善の治療を提供したい。このように考えて、本格的に開業準備を始めたのは2年ほど前であった。そこで、まず何から始めたらよいのか思案していたところ、開業・経営支援を行っているリンク医療総合研究所(Medical
Research Institute, Ltd. 以下、MRIと略)を知ったのである。 |
院長 山田先生 |
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>開業担当者の視点
先生の依頼を受けて、MRIの開業担当者は「先生の『アトピー性皮膚炎』『円形脱毛症』といった専門性を最大限に活かすために、どのように開業すればよいか」を念頭に置いて、最適な開業物件を探し始めた。
最初に考えたのは立地。先生の専門性―特に円形脱毛症―から、診療圏は通常より広く設定できる。そのため、アクセスが良く知名度のある駅周辺で開業するならば、より一層効果的であろう。その一方で、クリニックの患者さんはアトピーや脱毛症に悩む人々である。彼らのプライバシーを考えると、逆に表通りから少し外れている方がよい。その観点からすると、多くの利用者数を誇る山手線の駅で、かつ学習院などで知られる目白駅は申し分ない。さらに、駅のプラットホームから本物件を有するビルが見えるため、近隣で働く多くの人々の目につきやすい。
次に診療圏。目白駅の近くには数軒の皮膚科クリニックがあるが、そのほとんどは形成・美容皮膚を中心とした診察を行っている。一方、先生は伝統的な皮膚科を専門とするため、特に競合するとは考えられない。
本物件を先生に紹介したところ、心惹かれているのがはっきりと見てとれたという。かくして2003年4月にコンサルティングはスタートし、その翌月に物件決定、半年後の11月1日には開院の運びとなったのである。
「先生は勉強熱心で大変几帳面な方。ご自分の理想や希望をはっきり伝えてくださったので、コンサルティングがスムーズに進みました」とは、担当者が今回の開業を振り返っての感想だ。
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外観
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先生曰く、目白は「おっとりとして上品な街」であり、並々ならぬ愛着を持っているようだ。また、この目白は先生の地元に近く、馴染み深い土地でもある。
「長い間連絡もとらなかった小学校の頃の友達が、ひょっこり訪ねてきてくれたりするのですよ。それが大変うれしくて、励みになりますね。また、昔の知り合いから紹介されて来てくれる患者さんがいらっしゃったりと、1度は途切れた人脈がよみがえってくる感じがします」 |
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■クリニック経営
クリニックのドアを開けると、そこには落ち着いた待合室が広がっている。患者さんにとって居心地の良い空間にするため、この待合室の内装にはできる限り心を配ったという。
まず、その中心に置かれている受付カウンターは、ヨーロッパにあるプチホテルのフロントのような雰囲気を漂わせており、優雅さを感じさせる。また、新鮮に映るのはインターネットカウンターであろう。診察を終えた患者さんが、時が経つのを忘れてパソコンに向かっていることもしばしばあるという。このように、清潔感のみならず、優雅さや快適さを備えており、暖かく患者さんを迎えている。 |
受付 |
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右文参照 |
オープンして以来、看板等の広告は特に行っていない。しかし、先生お手製のホームページにアクセスしたり、人づてに評判を聞いたりして、なんと岩手や兵庫からはるばる訪れる患者さんもいるという。このような遠方の患者さんを含め、1日の外来患者数は40人から50人ほどで、きわめて順調に患者さんからの信頼を得つつある。そしてその半数以上が、アトピー性皮膚炎・円形脱毛症に悩んでいる患者さんであるという。ここに先生の持つ専門性の強みが現れているのではないか。
興味深いのが待合室に飾られている1枚の写真である。3匹のかわいらしい猫が、ガラスのドア越しにじっと見つめているという写真だ。先生はこの写真を指差しながら、ユーモアを交えて言う。
「この猫達のように、いまだ見ぬ患者さん達が、ドアの外からこのクリニックを興味深そうに眺めているような感じがするのですよ」 |
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先生とクリニック経営をしっかりと支えるのが、常勤1名と非常勤2名のスタッフである。広々としたカウンターで、にこやかに患者さんに接している。なお、先生の夫人も皮膚科のドクターであり、専門医の資格を取得した後に、美容皮膚科を担当する予定であるという。
努力のかいあって、先生は自分の満足できるクリニックを築きつつある。それでは、今後はどのように展開するのだろうか。
「やはり、このクリニックの分院をつくるなどして、もっと大きくしたいですね。ただし、いたずらに大きくするのではなく、診療のクオリティーを高く保つことが不可欠です。
日本の病院において、女性医師は男性医師と同じ待遇を受けているとは言い難い状況です。とても優秀であるのに、それに見合った待遇を受けていない先生も少なくないでしょう。そのような先生方に、スキルを最大限に発揮できる場を提供できればと思っています」 |
クリニックスタッフ |
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HP・clickで移動します↑
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ホームページのトップに書かれている「丁寧な説明・親身な治療」。そもそも、これは先生が開業医となった原点である。
「アトピーや脱毛に悩む人達は、民間医療や代替医療に頼りがちです。しかし、このような治療法には科学的根拠、すなわちエビデンスがはっきりしないものが少なくありません。その点、私はエビデンスがある治療法のみを勧めています」 |
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多くの病院を訪れたり、様々な治療法を試したりしても効果がみられずに、半ば諦め顔で訪れる患者さんが少なくない。そのような患者さんに対して、先生はわかりやすい言葉を用いて説明し、励ましている。また上述の通り、インターネットや先生の評判を耳にして、訪ねてくる患者さんも多い。たいてい、このような患者さんは自分の病気について多くの知識を持っているという。こういった患者さんと向き合うのは少々難しいのではないかとの質問に、「そんなことはないですよ。賢い患者さんを相手にするのは、大変やりがいがあります」と、控えめながらも自信溢れる答えが返ってきた。このような診療に対する真摯な姿勢から、雑誌の取材や治験の依頼が少なくないという。 |
クリニック内インターネットカウンター |
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■開業に向けてのアドバイス
最後に、将来開業を考えるドクターに向けてのアドバイスを尋ねた。大前提として、大都市で開業するには何らかの強み、つまり専門性が必要であるという。さらに、先生は以下のように続けている。
「大学を卒業して何年か経つと、妙に自信過剰になったりする時期もあります。それを克服して、役職なども多少なりとも経験して、医師としてのスキルも人格も十分に成熟されてから開業することをお勧めします。その方がご自分のためにも患者さんのためにも良いですし、『医療の質』を高めることに繋がるでしょうから」 |
クリニック平面図 |
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高度な専門性を活かした山田先生の開業。それは患者さんと直に向き合うことであり、医療の原点に立ち戻ることであったといえるだろう。 |
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★先生タイムスケジュール★ |
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開業前 |
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開業後 |
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開業前の木曜日 |
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開業後の金曜日 |
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山田皮膚科 |
院長 |
山田 伸夫 |
住所 |
〒171-0031
東京都豊島区目白3-2-10
目白駅前柳屋ビル1階 |
医療設備 |
顕微鏡 |
標榜科目 |
皮膚科 |
延べ床面積 |
29.34坪 |
物件形態 |
ビル診 |
スタッフ数 |
3人 |
開業資金 |
設備:3000万 運転資金:1800万 |
HP |
http://www.hihuka.com |
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クリニック前の様子 |
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(終わり) |
2004.3.1掲載 (C)LinkStaff |
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