クリニックの窓教えて、開業医のホント

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クリニックビルでの「制限」を気にすることなく、
専門に特化した開業


かきのき泌尿器科クリニック
    
    

院長 柿木 宏介 氏

今回取材した「かきのき泌尿器科クリニック」は、本年5月に開業したばかり。場所は大阪市。院長の柿木宏介氏が「これから発展していくエリアに思えた」という、活気あふれる町だ。同クリニックは駅前のクリニックビルに入居しているが、このようなビルでは標榜科目が制限されるのが普通である。しかし、氏はそのような制限など気にすることはなかった。当初から専門の泌尿器科のみを標榜するつもりだったからである。このあたりに、氏の専門へのこだわりが現れているのではないか。


 ■開業前後

 院長の柿木宏介氏は大阪府大東市出身。昭和56年に大阪市立大学を卒業、泌尿器科医局に入局している。その後は、明治橋病院や大阪市立十三市民病院、八尾市民病院、特定医療法人大道会で勤務した。大道会では泌尿器科の医長として透析治療も担当し、多忙な日々を送っていたという。その頃、リンク医療総合研究所(Medical Research Institute, Ltd. 以下、MRIと略)から「開業セミナー」のDMが届いた。医師になったときから開業など考えたこともなかったという氏だが、「タイミングを感じて」出席したという。


受付

待合室
「今の世の中、開業したからといって、いつも『いい目に会える』わけではありません。しかし勤務医を続けても、誰しもが教授や院長になれるわけでもありません。また、定年まで勤めてあとは悠々自適の人生を送るというのも、みんなができるわけではない。どういう風に人生を終わるのがよいのかを考えると、開業という結論になりました」
 
 > 開業担当者の視点
 
 何件かの物件を紹介したものの、近隣に競合物件があったり、立地の周辺環境がクリニックにふさわしくなかったりした。ようやく現在の物件を見つけて紹介したのが、昨年7月だ。
場所はJR学研都市線放出
(はなてん)駅前にある、新築のクリニックビル。大阪環状線や同東西線などが集まる大ターミナルである京橋駅から、JR学研都市線に乗って2駅目という好立地である。大東市出身の柿木氏には身近な路線であり、自宅や大道会からも近いというメリットがあった。
開業担当者は、このクリニックビルの周辺で通行人から聞き取りをするなど、徹底的に診療圏調査を行ったという。たしかに、診療圏内人口の分布や競合物件の存在などは、インターネットや専門のソフトで調べればすぐに判明する。しかし、これらでは周辺の雰囲気や環境まではわからない。開業担当者は「1階にはコンビニエンスストアの入居が決定しており、ビルの隣には銀行が3行、周辺は商店街なので、人が集まりやすいのは明らかでした。また、駅の近くに高層マンションも建築中で、周囲の人口増加も当然見込めました。しかし何よりも、このような好物件の情報をビルの計画段階で入手したうえ、あわせて地域住民のニーズなども徹底的に調べて先生へご紹介できたのがよかったと思っています」と、今回の開業を振り返る。

 再開発が進む放出駅前

クリニックビルとそのすぐ裏手に建設中の 超高層
マンション

柿木氏とスタッフ
 スタッフ募集もMRIの仕事だ。経営支援担当者が新聞の折込広告に求人を出したところ、すぐに応募があった。結局、受付や事務を担当するスタッフが2名と看護師3名、患者さんが親しんでくれそうな性格の人を選んだという。開院後は、氏自身が労務管理を行っている。
オープンからわずか3ヶ月、季節的なこともあるせいか、平均外来患者数は「門前市をなす」というほどには上がっていない。開院時に放出駅へ看板を出したが、もう1枚駅看板を出すことを検討中である。また、ホームページも構築中だが、クリニックビル全体のホームページにした方が効果的であることから、他のテナントと足並みを揃えている最中だ。
   
 ■クリニックの内容

「やはり、自分の専門を打ち出して標榜したほうが患者さんから好感を持たれるのではと考えました。PSA(前立腺特異抗原)を測定することは内科医にもできますが、泌尿器科専門医として、その後の診断もしていきたいと思っています。例えば、敗血症などのリスクはありますけれど、前立腺の生検まではやりたいですね。また、尿道狭窄や性行為感染症、男性更年期の問題などは泌尿器科の医師にしか診察できませんから、その方面でも活路を開いていきたいと思います。泌尿器科への単科のこだわりというのは、そういうことでしょうか」
クリニック内の設備面について周囲の勧めもあって電子カルテを導入した。実際使ってみると、「この患者はどこから来られている」とか「何ヶ月ぶりに来院されたのか」など、診療面のみならず経営計画を立てる面においても大変便利であるという。また、柿木氏は以下のように続ける。

「病気を診るのが大病院なら、人を診るのが開業医です。大病院では3時間待ちの3分診療ということを言われて久しいです。実際、大きな手術が必要な病気であったり、担当医師の研究テーマであったりという場合ならともかく、そうでない場合は十分な時間を取って診てもらうことは難しい状況です。そういう患者さんを開業医としては大切にしたいと思います。また、高齢化社会では『いかに楽しく長生きをするか』というのが最も大切なテーマですから、病気の早期発見や治療、重症化を防ぐことに今後も力を入れていきたいです」

 

■開業に向けてのアドバイス

最後に、開業にあたってのアドバイスを伺った。

「勤務医の生活とは180度変わります。特に、当初はカルチャーショックを受けます。『病院に何時間いていくら』の世界から、『患者さんに来て頂いていくら』の世界となるわけですから。それから、医師自身の健康管理が重要であると痛感しました。当初患者さんが来なかった時は、自分の実力はこんなものなのかと大変落ち込んだりもしました。だからこそ、今では肉体的な管理だけでなく精神的な健康管理も必要であると考えています」

 

先生タイムスケジュール
 
クリニック平面図
 


かきのき泌尿器科クリニック
院長 柿木 宏介 氏
住所 〒大阪市鶴見区放出東3-21-50
JR放出駅NKビル4F
医療設備 エコー、レントゲン、内視鏡、内診台
標榜科目 泌尿器科
延べ床面積 35坪
物件形態 ビル診
スタッフ数 受付2人、看護師3人
開業資金 5,000万円
       

開業支援・経営支援に関するお問い合わせはこちら
TEL:03-3401-8907(リンク医療総合研究所まで) 
FAX:03-3401-8884
e-mail:ke@linkstaff.co.jp
URL:http://www.linksouken.jp/


            
(終わり)
2004.9.1掲載 (C)LinkStaff

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