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予防医学を含めたトータルサポート

医療法人 敬節会 西中島クリニック



高田 達良 院長

 今月は大阪市淀川区に位置する「西中島クリニック」をご紹介する。地下鉄御堂筋線・西中島南方駅、阪急京都線・南方駅から徒歩2分ほどに位置する。1997年11月、創設以来37年間続いた「高田医院」を改名し、新しく生まれ変わった。高田医院でも、当時のクリニックとしては珍しい「総合診療」を80年代から行っていたが、西中島クリニックではそれに加え、循環器内科、消化器内科、皮膚科、整形外科、泌尿器科などの専門外来を設けた。さらに検査でも1999年にヘリカルCTスキャナを導入し、現在ではフルデジタルX線テレビシステムも完備するなど充実した内容となっている。
父の高田敬二氏から受け継いで、西中島クリニックを率いる高田達良院長にお話を伺った。

高田達良院長は1959年に生まれ、1985年に関西医科大学を卒業し、同大の高度救命救急センターに入局した。救急を専攻しようと思ったきっかけをお尋ねすると「飛行機の中で、ドクターコールがかかったときに手を挙げられる医師像に憧れていたんですよ(笑)」との答えが返ってきた。当初は父の医院を継承するつもりもなく、米国メリーランド大学ショック外傷センターに留学するなど、救急医としての研鑽を積んだ。
しかし関西医科大学救急医学科で外来医長を務めていた1998年、ストレスによる狭心症で倒れる事態となった。さらにはその年の大晦日には父が脳梗塞で倒れた。その翌日の1999年の元旦、勤務医を辞めて西中島クリニックの院長を引き継ぐことを決意する。高田院長は多岐に渡る院内改革に着手することになった。

 
 ■ 開業前後

 院内改革の手始めに、高田院長は西中島クリニックの方針を明確にした。
(1)生活習慣病の早期発見のため、健診や人間ドックなど予防医学を
推進
(2)がんの早期発見のため「全身3次元CT検査」「超音波検査」
「上部消化管内視鏡(胃カメラ)検査」など画像診断の徹底
(3)肩こり、腰痛、膝痛などに対するリハビリテーション(SSP、
レーザー治療、マッサージなど)の拡充
そのうえで「総合診療所としてハイレベルジェネラル(High Level General Doctor)を目指す。」と大きな理念を揚げる。
「これまで救急医として学んできたことを総合診療に生かしていきたいと思いました。医学は専門科へ分化していく傾向にはありますが、その反面、どこへ振り分けるかを考えるトリアージ役の医師も必要です。また、他院に紹介する場合、患者さんは一日がかりで新しい病院に向かわなくてはいけません。一つのクリニックで完結できることは完結したいと考えたのです。主治医を決めてはありますが、トータルで診てさしあげることでの安心感を、患者さんに持って頂きたいですね」



クリニック 外観


人間ドック待合サロン

 そこで高田院長は常勤医師4人、非常勤医師7人というメンバーを揃え、専門外来の充実を図った。現在、標榜は、内科・外科・小児科・消化器科・循環器科・放射線科・皮膚科・整形外科・リハビリテーション科と極めて多角的である。
「例えば、下腹部に痛みのある患者さんが来院された場合、消化器疾患、膀胱炎、生理痛など様々な疾病が考えられます。そのようなケースに対して、自己完結的に解決していきたいと思ったのです。標榜していない眼科や耳鼻咽喉科疾患の患者さんもいらっしゃいますが<まずは診る>というスタンスです。ただ、患者さんとしては何科の先生が診ているのだろうということが気になるでしょうから、インフォームドコンセントは徹底しています。」
そのため病診連携にも積極的である。関西医科大学附属病院、大阪大学附属病院を始め、東淀川医誠会病院、淀川キリスト教病院、大阪府済生会中津病院などが主な後送病院となっている。
診療内容の充実に努める一方、医事課とは別に「推進課」を新設した。これは診療や健診、人間ドックなどを受診した人への徹底した総合サービスの向上を業務とする。例えば、患者さんを診察室へ誘導して、衣服の着脱を手伝うことや、受付で初診を担当している医師や慢性疾患を担当している医師へカルテを振り分けるなどの業務を行う。徹底したサービス精神をもって「おもてなし」をするため、患者も声をかけやすく好評のようだ。
「医療行為は行いませんが、推進課の職員がきちんとした診療補助をすることによって、看護師も本来の業務を行えます。結果として確実で迅速な医療の提供につながっていると思います」

 ■ クリニックの内容

①予防医学
救急医としてのキャリアが長い高田院長は「救急医学と予防医学とのデュアルメジャー」を目指している。地域住民のQOL向上には疾病の早期発見、早期治療が不可欠だ。そこで導入されたのが前述の医療機器である。特にフルデジタルX線テレビシステムは、大学病院と同レベルの水準での検査を可能とした。撮影画像をコンピュータで処理・記憶し、クリアな画像処理を行えるので、わずかな病変も発見できる。デジタル処理によって、管理が楽になったこともメリットである。

②健診部門

「HEP Shin-Osaka 新大阪総合健診センター」と提携し、健康診断や人間ドックの受診を受け付けている。HEPとはHealth Evaluation &Promotion(総合的健康診断)の頭文字であり、企業健診の提案や、健診後のアフターフォローまでの体制を整えている。健診に関しては高田医院時代から、人間ドックも1990年からと長い歴史を誇る。現在ではアクセスの良さもあり、年間1,000人以上の人間ドック受診者、20,000人以上の健診受診者を数えている。本年7月には「政府管掌健康保険生活習慣病予防健診」指定医療機関に登録された。



最新式のフルデジタルX線テレビシステム


リハビリテーション室/運動療法室
/運動療法室施設

③リハビリテーション
高校、大学とサッカーに親しんだ高田院長は、現在もJリーグガンバ大阪とJFL佐川急便大阪SCのチームドクターを務めている。また関西医科大学健康科学センターと協力し、運動療法による能動的なリハビリテーションの充実を図ることになった。リハビリは従来、ホットパック、EMS、半導体レーザーなどの物理療法が主であったが、高田院長は運動療法へのこだわりを持つ。
「物理療法やマッサージは患者さんが受け身になってしまいます。より元気になって頂くためには、自ら身体を動かしてもらう能動的な療法が必要だと思いました。高齢の方でも自転車にまたがることができる、そして漕ぐことができる、ということから来る自信があれば『元気』につながり、お孫さんとのコミュニケーションにも役立ちます。それで関西医科大学第二内科の木村穣助教授にご相談し、現在のような運動療法室を整備しました」
専門外来でリハビリが必要だと診断された患者さんは、医師の指示やリハビリスタッフによる評価のもとで治療目標を設定し、リハビリを開始する。物理療法ももちろん可能であるが、運動療法ではストレッチング、関節可動域訓練、筋力アップ訓練、マッサージ療法、リハビリウォーカー、エルゴメーター、オーバーヘッドフレーム、フリーウェイトなどの器材を完備している。
「現在は1日約40人ほどの患者さんが運動療法に来院されています。施設の問題もありますが、患者さんが継続して来られるようにしていくことが当面の課題でしょう。今後はハイレベルな心臓リハなども行いたいですね」

 ■ クリニックの運営

増患対策について
1998年には約120人だった1日平均外来患者数は現在210人を超えている。高田院長はこの伸びの大きな要因にホームページの開設と、コンテンツの充実を挙げている。
「クリニックのブランド力を高めるためには、ホームページは重要ですね。特に若い患者さんの来院のきっかけになっていることが多いです。全ての診療変更などの情報を載せていますし、生活習慣病の予防や各種の疾患についての指導ファイルなども好評頂いています。さらに見応えのあるサイトにしていきたいですね」
ほかには阪急京都線の十三、南方、崇禅寺、地下鉄御堂筋線の西中島南方の駅ホームに看板広告を出し、阪急の駅で配布する時刻表にも広告を掲載している。
「私どもは阪急京都線の車窓から見える線路沿いにあります。実はこの建物こそが<広告発信源>として一番効果があるのかなと思っています(笑)」

人事、労務管理について
西中島クリニックには34人のスタッフが在籍しているが、その労務管理は全て高田院長と4人の幹部が行っているという。
「ずっと臨床一筋で来ましたから、最初のうちは人を使うことに全く慣れなかったですね。職員が入職しても、すぐに辞めたり、無断で来なくなったりで、うつ病の一歩手前まで精神的に病んでしまいました。そのうえ高血圧や尿管結石などにもなってしまい、精神力を高めるためにも夕食を断食することにしたんです。結局、22キロ減量しましたよ。それで病気は完治し、精神的に負けない自信が付きました。
労務自体には慣れも必要ですが、労務とは言っても、つまりは人との関係なのです。一人一人のスタッフに喜んでもらえて、クリニックとつながっていると感じてもらえるようにするのが大事ですね」

今後の展望について
高田院長は、健診を中心とした予防医学の徹底を図りたいという、「訪問看護ステーションや訪問リハビリの開設も視野に入れています。また半日ドックではより健康への意識に訴えかけられるような内容を考案中です。例えば陶芸などを取り入れ、作品の皿に健康への目標を書いて頂くと、受診される方の意識改革につながると思います。受診者の感性に響く健診ができるといいですね」



総合受付/待合室
 ■ 開業へ向けてのアドバイス

 「脱!傲慢(ごうまん)」ということでしょうか。開業してしまえば、これまで勤務していた大学病院や大病院などの看板が全くなくなります。それまで、そういう看板に頼って「自分は偉いはず」と思い込んでしまうことがどうしてもあります。そういう傲慢さを一切取り除いて「バカになれ!」と思いますね。成功している開業医の先生方は謙虚に患者さんや地域の方に接しています。一般の世界より更に丁寧に接するぐらいで、ちょうど良いのではないでしょうか。



先生タイムスケジュール

 開業医になって、仕事が終わってから就寝の時間まで3時間もあることが信じられなかったですね(笑)。「ほんまに終わりか?」と心配にもなりましたよ(笑)。趣味はたくさんあります。サッカー、ゴルフ、クルーザーでの釣りに加えて、45歳からトランペットを始めました。そして今はランニングですね。来年のホノルルマラソン出場と完走が目標です。家族は皮膚科医として当院に勤務している妻と、高3の長女、高2の長男です。子供は二人とも私の母校である大阪教育大学附属池田高校に通っていまして、現在私自身PTA会長も務めています。PTAでは「利害のない人とのつながり」ができて、大変いい社会勉強になっています。



クリニック平面図


西中島クリニック
理事長 院長 高田 達良 氏
住所 〒532-0011
大阪市淀川区西中島3-2-11
医療設備 X線撮影装置(一般撮影)、ヘリカルCT、内視鏡、心電図、超音波など
延べ床面積 約782 ㎡
物件形態 ビル、4階建て
スタッフ数 医師11人(常勤4人非常勤7人)、リハビリスタッフ5人、
看護師5人 、放射線技師2人、事務スタッフ11人
開業資金 4億5千万円(土地は継承のため取得済み)
HP http://www.nishinakajimaclinic.com/




(終わり)
2005.10.01掲載 (C)LinkStaff

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