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子どもが楽しく安心して受診できるクリニックを

よしはらこどもクリニック
 



吉原 洋子 院長

 よしはらこどもクリニックは大阪府茨木市の阪急茨木市駅から徒歩1分ほどの場所にある。茨木市は大阪と京都の中間地点であり、人口25万人を超える住宅都市である。2004年春には茨木市北部に広がるニュータウン「彩都(国際文化公園都市)」が一部まちびらきを行った。大阪モノレールも延伸工事を行うなど、今後さらなる人口の増加が見込まれる街である。
吉原洋子院長は1999年に香川医科大学を卒業後、大阪大学小児科教室に入局した。その後、兵庫県立西宮病院、大阪府立母子保健医療センターなどの勤務を経て、2005年4月によしはらこどもクリニックを開業した。

 
 ■ 開業前後

 吉原洋子院長は福岡県久留米市出身で、現在32歳である。医師を目指したきっかけを「白衣を着る仕事に憧れがあったので、薬学部もいいなあとは思っていたのですが、結果として医学部になりました(笑)。」と語る。香川医科大学に進学し、5年次にはポリクリで病棟を回った。もともと大人と接するより、小さい子供と接する方が好きなので小児科を専攻することにした。
香川医科大学には小児科の関連病院が少なかったことと、何となく親から離れてみたいとの思いから大阪大学の小児科教室に入局を決めた。
「阪大は規模が大きい関連病院をいくつか持っているので、勉強になるのではないかと思いました。1年目は阪大病院で研修し、2年目は兵庫県立西宮病院へ移り、2年間勤務しました。4年目にまた阪大病院に戻りました。」
小児科医として順調に研鑽を積んできた吉原院長の転機はその後に訪れた。5年目に大阪府立母子保健医療センター(大阪府和泉市)へ転勤したことである。ちょうど結婚して、阪大病院の第3内科に所属するご主人(吉原哲先生)に合わせて、茨木市へ住居を構えていた。
「まず車で高速道路を使っても1時間以上かかる通勤時間がきつかったですね。病棟勤務で、当直は週に1回程度でしたが、重篤な患者さんが多いので呼び出しの回数が多くて・・ふらふらの状態になってしまい、歩きながら膝を脱臼したんですよ。それで疲れ果ててしまって、退職を決意しました。」
退職してからは、非常勤で市立池田病院、富田町病院、西淀病院などの外来に勤務した。
「週1回から2回の勤務の割に、非常に収入がよかったので、このまま暮らしていくのもいいなあと思っていました(笑)。でも、病棟では患者さんと人間関係を築いていけますが、たかが3時間の外来では難しく、次第に空しさを感じるようになりました。かと言って、また病棟勤務では家事など全くできませんから、自然に開業へと気持ちが傾いていきました。」


クリニックビル正面

エントランス

 丁度そのころ、ご主人のお父様吉原正道先生は阪急茨木駅前にクリニックビルを建築、移転開業を計画していた。
1階には皮膚科、2、3階にはオペ室を完備した吉原正道先生の開業する吉原眼科医院が入居する予定であった。
ところが皮膚科の開業が諸般の事情により断念することになった。
そこで吉原院長は迷わず、その1階への開業を希望した。2004年11月のことである。全ての非常勤勤務を辞め、開業準備へ専念することになった。
まず、内装であるが全面に配された窓からの陽光を生かし、なおかつ木の暖かみのある「ルーバー」を設置することにした。これで待合室の雰囲気が明るく、親しみやすい効果をもたらした。
「開業されている先生方のところへひたすら通って、見学させて頂きました。そこでレントゲンや心電図は必要ないと言われたりして、経費を削減できる有益なアドバイスを得られました。」
電子カルテの導入にも積極的に取り組んだ。
「テンプレート作成などのカスタマイズには確かに時間がかかりましたが、それだけの価値があったと思います。電子カルテのメーカーの方に、オンライン予約システムについて伺ったのですが、これが非常に増患に効果的だった気がします。」
オンライン予約システムは携帯電話やパソコンから直接、外来の予約ができるシステムで、患者さんの待ち時間の短縮につながり、好評である。
ホームページのデザイナーにはロゴマークなどのデザインも依頼し、結果として院内とサイトのイメージの統一を図ることができた。
「実は一番心配だったのは、スタッフの方が集まるのかということでした。ところが新聞に折り込み広告を出したところ、予想を超える数の応募がありました。その頃、この付近で長く開業されていた小児科の先生が廃業されることになり、そちらにいたスタッフの方に来て頂けたのは本当によかったですね。」
スタッフは看護師3人、受付4人の陣容で、ローテーションを組んで、常時看護師1人と受付2人が勤務する体制を取っている。

 ■ クリニックの内容

 ホームページを立ち上げるほか、開業を告知するチラシのポスティングを行い、駅から少し離れたところに広がるマンション群の一角に看板を出すなど、広告活動にも抜かりない準備を行って4月1日の開業を迎えた。
クリニックの延床面積は115平方メートルとかなり広いので「感染症疾患専用診察室」も設けることができた。独立換気システムも完備し、この部屋にも電子カルテの端末を設置するなど、待合室で待つことなくスムーズに受診できるように気を配っている。
「受付スタッフが、おたふく風邪などの患者さんをさっと見つけてくれて、すぐに案内してくれるので助かっています。」
待合室には前述のルーバーのほか、床暖房も備えられ、冬季の患者さんへの優しい配慮を感じさせる。スウェーデンのシュトッケというメーカー製のベビーベッドも木の温もりが伝わってくるデザインで待合室のアクセントとなっている。またテレビでは、ずっと「アンパンマン」「機関車トーマス」などのビデオを再生しており、患者さんがむずかることがないという。
「内科と小児科を両方、標榜されているところでは、お年寄りに隠れるようにして子どもが元気をなくしているような気がします。風邪を引いていても、子どもは動き回りたいものです。玄関から待合室までをバリアフリーにしましたので、患者さんは一直線に走りこんで来ますよ(笑)。」
広さを生かして、点滴室も充実させた。ベッドが3台置けるので、3人同時に点滴を受けることができ、これも待ち時間の解消に役立っている。また、授乳室や広々としたトイレなど母親の視点に立ったクリニックづくりを心がけた。
現在のところ、主な疾患は風邪や湿疹であるが、重篤な患者さんには茨木市の大阪府済生会茨木病院や高槻市の北摂総合病院へ紹介している。
「茨木市は小児科の医療環境が十分に整っているとはいえない状況です。患者さんの親御さんが開業医で済まそうとは思わず、紹介状が欲しくて来院されているというケースもあります。そういう場合には積極的に紹介するようにしています。私自身も難症例を溜め込んでしまうとよくないですからね。」



待合室

バリアフリーの廊下

 毎週火曜日の午後は予防接種と乳児検診に当てており、現在はインフルエンザの予防接種があることから100人ほどの来院がある。診察室も1診、2診と設けており、このときは2診で予防接種をご主人である吉原哲先生が担当されている。吉原哲先生は大阪大学を卒業後、大阪大学第3内科に入局し骨髄移植など血液内科を専攻している。奥様とは同級生だそうだ。吉原哲先生にもお話を伺った。
「小児科というのは、お母さん方からの相談事が多いんですね。『離乳食にしたら便が柔らかくなったのですが、どうしたらいいですか?』というような相談を受けたら、最初の頃は戸惑っていました(笑)。ほかに食事やスキンケアに関することが多いですね。分からないときは1診にいる妻に聞きに行ったりして、何とか手伝ってあげているかなとは思っています。」
一日平均の外来患者数は開院当初は10人ほどであったが、現在は30人から60人と増患している。小児科ではお母さん方による口コミの広がりで来院につながるケースが多いというが、吉原院長は「そんなものかな?」と、謙虚にとらえている。患者さんには待合室のビデオを始め、待合室だけでなく、診察室にもふんだんに置かれているおもちゃが好評のようだ。「ポケモンカード」やシールなども随時配っているという。
「おもちゃは日本のプラスティック製のものに味気なさを感じていたので、ヨーロッパの木のおもちゃを選んでいます。子どもにも木の温かさを味わってほしいですね。」
スタッフの知り合いからも患者さんの輪が広がり始めており、これから初めての冬のシーズンが待たれるところである。
労務管理も全て吉原院長が行っている。
「タイムカードをチェックして、お給料をインターネットで振り込むだけなので、そんなに難しさは感じませんね。スタッフは自分たちで連絡ノートを回しており、それで欠勤のときのフォローなどをしてくれているので、私の負担は軽いですね。
それから、製薬会社の方がいらして勉強会を開催しながら、皆で昼食を頂く機会を作っています。こういったコミュニケーションを大切に思っています。」
卒後7年目での開業は最近では早いほうであるが、吉原院長はどのように受け止めているのかお聞きした。
「確かに、開業すると同級生の友人たちに言ったときは皆に驚かれましたよ。まだまだ勉強中の身ですから。今も大学の先生方とはメールでお伺いを立てたり、勉強会や学会にも積極的に参加するようにしています。」
最後に、吉原院長に今後の展望について尋ねた。
「茨木市は保育園の数が少ないのです。小児医療の環境も整っているわけではないので、病児保育には興味があります。どのような形で行うのかはまだ検討しているところですが。
それからアレルギーなどの専門外来を行いたいと思っています。これからも患者さんには楽しく安心して受診してほしいですね。」

 ■ 開業へ向けてのアドバイス

 スタッフと仲良くすることですね。仲良くできると、様々なことを助けてくれます。そしてそういう雰囲気は患者さんにも伝わるものですから、環境作りは大切だと思います。それから、いい協力者を作ることでしょうか。私の場合は、まずは夫ですが(笑)、これからは友人たちも診察を手伝ってくれる予定なので、楽しみにしているところです。



先生タイムスケジュール

 開業して、体力的にはかなり楽になりましたね。趣味は旅行ですね。今年の夏は北海道に、秋には上高地に行きました。



クリニック平面図



よしはらこどもクリニック
院長 吉原洋子氏
住所 〒567-0828
大阪府茨木市舟木町2-7オフィスルブラン101
医療設備 血球計、CRP、尿検査機器
延べ床面積 115㎡
物件形態 ビル診
スタッフ数 院長、非常勤医師2人、看護師3人、受付4人
開業資金 4000万円
HP http://yoshihara.cc 





(終わり)
2005.12.01掲載 (C)LinkStaff

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