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電子カルテの実践モデルクリニックを開院

練馬桜台クリニック




理事長 永野正史氏

平成3年、病院勤務をしながら、「開かれた医療」を目指し「メディカル・ブレイン」を結成した永野正史氏(46)。その後、開業医向け電子カルテシステム「あんしんチャート」を発売。その実践を兼ねたクリニックとして平成15年2月に開院した「練馬桜台クリニック」を訪問した。



■開業前後

 理事長・永野正史氏は昭和60年に佐賀医科大学を卒業し、三井記念病院に腎臓内科の専門医として勤務する。平成3年には三井記念病院の「内科レジデントマニュアル」作成に関わった若手医師を中心に、「良質の医療の提供」と「医師と患者の信頼関係の向上」を目指し、「メディカル・ブレイン」を結成した。平成4年に敬愛病院に移り、平成11年には副院長をしていたが、自分の満足する医療を行うために開業を決意する。そこで人工透析施設など、希望する内容を盛り込んだ有床クリニックの開業資金を概算したところ、約20億円かかることがわかり途方にくれていた。ところがその年、厚生省(現・厚生労働省)から「診療録等の電子媒体による保存」を認める通達が出された。これを大きなチャンスととらえた永野氏は、自ら電子カルテを開発することと、それを稼働させるモデルクリニックの開業を計画する。



クリニック外観

 そんな折、キョウデングループを率いる実業家・橋本浩氏と出会い、開業の目処がたつ。平成12年、医療のIT化を推進するベンチャー企業のイーホープの設立と同時にクリニックの開業準備を始め、平成14年にはこれまでメディカル・ブレインで培ってきたノウハウを活用して、開業医向け電子カルテシステム「あんしんチャート」を発売した。そのシステムを導入したモデルクリニックが「練馬桜台クリニック」だ。

「自分の満足する医療を行うクリニックを開くには、莫大な開業資金が必要だと悩んでいたとき、厚生省からカルテの電子保存の通達がでて、『これだ!』と思いました。私は全国約15万件の医療機関データベースを構築し、『あんしんドクター情報』というNHK情報ネットワークと提携したインターネットによる医療機関検索サービス事業を始めたところでした。そこで電子カルテの事業計画を立案して、あちこちに相談に行きましたが、なかなか相手にしてもらえなくて・・・。そんなとき橋本会長にプレゼンテーションをするチャンスがあり、幸運にも将来性を認められて、すぐさま開業準備に入るように言われました」

開業資金の目処がたった永野氏は東京都内で透析施設の少ない練馬区の土地を探し始めた。しかし有床クリニックということで、一定の施設基準を満たす土地を探すとなると、マンション建設業者と競合して大変だった。土地の買収価格競争で、販売利益がすぐにでるマンション業者に勝てなかったからだ。そこで永野氏は視点を変え、日影規制(※)の関係で大きなマンションが建てにくい、大きな道路の北側に面した土地を探したところ、条件に合った更地が見つかり、平成13年8月に取得。翌14年正月に起工式を行い、約10ヶ月で完成する。



クリニック受付

 クリニックは直方体に設計して、日影規制(※)のかからないぎりぎりの高さを使い、階高の必要なところは地下に設置した。また、患者向けの広告に関しては敬愛病院時代の経験から、クリニックの半径1キロメートル以内に6割、電車沿線に4割のチラシを配布した。そして平成15年2月のオープンを迎えた。

※日影規制:新しく建物を建築するときは、その周囲への日当たりに考慮して建物の高さに一定の制限が設けられている。

■クリニックの内容

 このクリニック最大の特徴は、練馬区内の医療機関で第2位の透析ベッド数を誇る人工透析室だ。ここは柱がなく処置室全体が見渡せるようになっており、透析ベッド41台が整然と並んでいる。さらに15台ほど透析ベッドを増やすことも可能だ。透析治療は午前と午後の2クール制。なお現在、午後は月・水・金のみだが、平成17年3月を目処に火・木・土も午後のクールを開始する予定だ。


人工透析室

ヘリカルCT

 外来では、急性疾患の疑いがある場合はすぐにCT、超音波診断、心電図による検査、血液検査、尿検査などを行い、その日のうちに治療を始めることができる。総合健康診断でも2時間で生活習慣病の有無を判定可能だという。

 有床クリニックにした理由は、透析患者には入院の必要な場合があることや、透析治療を行うからには患者の最期を見届けるまで責任を持ちたいという考えによる。16床ある病床の稼働率は約70%で、内科の入院患者が中心だ。
またレセプト数の増加には電子カルテ「あんしんチャート」が威力を発揮している。

「今、患者さんは5000人ほど登録しています。深夜などに急患で来院したとき、カルテ庫で探さなくても、ナースステーションですぐにカルテ閲覧ができます。また日ごろよく診ている患者さんの家族かどうかも、電子カルテなら住所からすぐわかります」


診察室の電子カルテシステム

さらにいざという時のための安心をバックアップする目的で、成人なら誰でも入会できる「若返り健康倶楽部」という制度がある。クリニックの診察券を持っている人はもちろん、一般の健康な人でも簡単な問診で入会できる。会員になると夜間診療受付、健康セミナーへの参加、倶楽部通信送付などの特典がある。医療費の支払いにはクレジットカードや、電子マネーEdy(エディ)での決済も可能だ。

 医師としてのポリシーは?
「医者は常に勉強、修業だと思っています。また患者さん一人一人にあった生き方がありますが、共通するのは病気を苦にしていることです。透析患者さんが透析をやめたいと思っても、移植以外方法がないのでやめられません。思うがままにならないことを思うようにしようとするから苦になります。そこで私は『苦にするな、前向きにあきらめろ』と言います。できる治療は積極的に行いますが、できないことはいくら嘆いてもだめですよ、というスタンスで診療を行っています」

 開業して約2年が経った今の経営状況を伺うと「単月では黒字になりました」とのこと。


栄養科厨房/多目的ホール

立地も良く、医療のIT化や検査設備の整っているクリニックだが、計画通りにいかなかった事は?

「実は外科学会で症例報告できるような手術を行えるほどの医療設備を揃えました。しかし現段階では損益を考えると設備のフル活用は難しく、透析のシャント、大腸ポリープ、ヘルニア、痔などの軽度な疾患手術に限定して、開腹手術などは大きな病院へお任せするという方向転換をしました」

 医師と事業家の両立で忙しい永野氏のプライベートを伺ってみた。

「週1回は長めに寝るようにし、2~3時間、ぼーっとする時間を作っています。趣味は先人の教えを知るという意味で、ここ3年位は古典、例えば中国の「菜根譚(さいこんたん)」やインド哲学などを読むようにしています」

今後の展望は?
「例えば、旅行会社と組んで、まず当院で健康診断を受けた後、沖縄に行って長寿料理を食べるツアーを企画中です。これからも『21世紀型の望まれるクリニックのあり方』を模索しながら、ありきたりでなくモデルケースになるようなクリニックを作っていきたいと思います」

■開業に向けてのアドバイス

「開業することは自分が経営者になることです。一昔前までは病院がつぶれることはなかったかもしれませんが、これからの時代はそう簡単にはいかないと思います。また自由になる時間が少なくなるので、本当に自分のライフスタイルに合っているかを考えてみてください。また勤務医ではあまり良いポジションが得られないとの理由で、『開業でも』『開業しか』といった『でもしか開業』だけはやめて欲しいですね。自分の学んだ技術を活かし、今後も学び続ける医者としての覚悟をもって開業するのが良いと思います。
今までは医者の独断で通ったかもしれませんが、これからは自分の医療技術を買って頂くのだというビジネス感覚をもっていないと開業しても流行らないと思います。この先生にかかって良かったと思ってもらえるような医療サービスを提供できないとうまくいかないですね。また開業の最終目的がお金だとなかなかうまくいかないですね。何をしたいのかを見つめて開業して欲しいです」



先生タイムスケジュール


クリニック平面図
*画像はクリックすると拡大します

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練馬桜台クリニック
院長 理事長 永野正史氏
住所 〒176-0012 
東京都練馬区豊玉北4-11-9
医療設備

入院16床
透析室41床
電子カルテ(株)イーホープ発売の電子カルテ「あんしんチャート」を導入
主な設備エコー、心電図、透視台、内視鏡、レントゲン、ヘリカルCT

診療科目 内科、外科、消化器科、循環器科、(人工透析)
延べ床面積 613坪(2021.8㎡)/敷地面積150坪
物件形態 ビル 地上3階、地下2階
スタッフ数 常勤医師1名(理事長)、非常勤医師11名、医療事務3名(受付兼務)、看護師11名、看護助手3名、臨床工学技師4名、検査技師2名、放射線技師2名
開業資金 合計 約20億円 (運転資金含む)
HP http://www.ehope-med.jp/index.htm


(終わり)
2005.2.1掲載 (C)LinkStaff

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