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病気の早期発見・治療と代替療法を中心に行うクリニック

渡邉内科クリニック




院長 渡邉修俊氏

平成7年、消化管疾患の内視鏡的治療を学ぶために秋田大学医学部附属病院から千葉県の新東京病院に移った渡邉修俊氏。平成12年6月、国分寺市に「渡邉内科クリニック」を開院した。現在は内視鏡検査・内視鏡的手術を中心に、末期がん患者に対してはフコイダンを使った代替療法を行っている同クリニックを訪問した。



 ■開業前後

 院長は渡邉修俊氏(44)。平成2年に鳥取大学医学部大学を卒業した後、出身地の秋田に戻り、秋田大学医学部附属病院第一内科(消化器・肝臓・糖尿病)に入局する。その後、平成7年から内視鏡的治療を積極的に行う新東京病院消化器内科に勤務、平成11年に保谷厚生病院内科部長に着任して、早期がんの粘膜切除術、内視鏡的止血術、内視鏡的ステントなどの内視鏡的手術を行ってきた。

平成11年末に開業に向けての構想を練り始め、平成12年4月末まで保谷厚生病院に勤務しながら、開業準備を進めていった。物件探しでのポイントは、患者さんの集まりやすいJR中央線沿線の最寄り駅から徒歩圏内で、かつ開業の初期投資が抑えられる坪単価の安いテナントビルとした。また内視鏡検査、健康診断、人間ドックを中心にするため、他院からの紹介患者が多くなるという想定から、電車で来院する患者の利便性も考え、JR中央線特別快速が停まる国分寺駅から徒歩圏内で手頃な家賃であったこの立地に決めたという。



クリニック外観
 

 クリニック内はすべての部屋をLANでつなぎ、どこからでも電子カルテを閲覧可能。診察券、パンフレットといった院内で使うものはできる限り院長自身が作り、内装の設計、PCの準備、院内LANの構築なども自身ですることにより、開業時の初期投資額を低く抑えている。患者向けの広告は、駅と電柱に看板を設置し、チラシを配布した。ホームページについては、クリニックの方向性が固まった開業4年目の平成16年に本格的なものを立ち上げた。代替医療に興味のある患者さんがホームページを見て来院するようになったので、十分にPR効果があったという。なおホームページに掲載している文章や写真も院長が作成している。

 ■クリニックの内容


待合室

 平成12年6月1日、渡邉内科クリニックはJR国分寺駅北口から4分ほど歩いた住宅街に建つビルの3階に内科・消化器科で開院した。1階には調剤薬局が入っている。

「開業準備に3ヶ月間しか費やせなかったので、立ち上げ当初は決して順調だったとはいえなかったですね」と語る渡邉院長。

スタッフは医師(院長)1名、看護師3名、医療事務4名。医療設備は電子内視鏡、腹部超音波検査装置、デジタル心電図計、デジタル眼底カメラ、X線テレビ、電子カルテなどを備えている。内科・消化器科系疾患の診察、胃・大腸内視鏡検査、人間ドック、各種健康診断を中心に、肝臓外来、禁煙外来、ED治療、フコダイン療法、プラセンタ療法まで行うクリニックには、実際どのような患者が来院しているのだろうか?

 

 

「外来は午前と午後の診療で、計60名位の来院があります。国分寺市、小平市、小金井市を中心に、多摩地区全域から来られる患者さんをはじめ、JR中央線での通勤・通学途中に立ち寄る患者さんも多いですね。学生、OL、サラリーマンなどの若い年代が中心で、内視鏡検査や健康診断で病気を早期に発見してもらいたい方、美容に関心がありプラセンタ療法を受けに来られる方などさまざまです」

 開業して4年が経過した現在、どんなクリニックを目指しているのかを伺うと、「町のかかりつけ医というより、予防医学や検診、健康診断、人間ドックなどに力を入れたいですね」と渡邉院長。

 病気の早期発見の鍵となる内視鏡検査は、大きく鮮明な画像により正確な診断を行うことが可能な最新の内視鏡装置を使って、1日3~4件、年間で1000例ほどを実施している。

 健診は1日5~6件の予約があり、入学や入社に伴う健診から、近隣企業の企業健診などにも対応できる。また立川市にある総合健保多摩健康管理センターの2次検診の指定医療機関になっているため、そちらからの依頼も多い。これは胃と大腸の内視鏡検査のいずれも行えて、治療が必要と診断された患者さんは、そのまま内視鏡的治療ができる点が評価されたからだろう。



内視鏡検査室
 

 人間ドックは、以下の項目が基本コースで31500円と低価格の設定になっている。これは人間ドックの利用者を増やして、病気の早期発見につなげたいという院長の考えからだ。

◆診察(問診、聴診、触診、乳房触診、血圧測定、身長・体重測定)
◆採血(肝機能・脂質・糖尿病・腎機能・尿酸値・電解質・感染症等検査)
◆尿検査、便潜血検査(2回法)
◆聴力検査、視力検査、色覚検査、眼底検査
◆心電図検査
◆胸部レントゲン検査
◆腹部超音波検査
◆胃内視鏡検査、ピロリ菌検査
なお人間ドックの結果は、検査データや画像をデジタル化して製本したものを渡しており、患者に好評だという。

 禁煙外来については、「禁煙をするだけで、病気のリスクを大きく減らせることを認識してもらいたいと思います。厚生労働省は、たばこの発がん性をはっきりとパッケージに記載することを義務付けて欲しいですね」と力を込めて語る。



腹部エコー

 数多くあるがんの代替療法のなかでも、がん細胞のアポトーシスを促進する効果が期待できるというフコイダン療法。渡邉院長がフコイダン療法に取り組み始めたきっかけは、末期がん患者やその家族の方から相談を受けたり、TVや雑誌で取り上げられたりしていたことによる。

「西洋医学だけが医療ではないと思っています。末期がんの患者さんの中には、放射線治療や化学療法が適応しない方や、また治療を行っても効果の現れない方もいます。このような患者さんに対して、ホスピスでもなく入院設備もない当院が何をできるかを考えて、フコイダン療法を中心とした代替医療を行っていくことにしました。今後は基本となるフコイダンに加えて、アガリスク、ウコン、メシマコブ、核酸、さめの軟骨なども組み合わせて、症例数を増やしていきたいと考えています。また外来診療で使える経口の抗ガン剤とフコイダンの併用も検討していこうと考えています」

更年期障害、自律神経失調症、あるいは美白や美肌にも効果を期待できるプラセンタ療法は、注射を中心に行っているが、錠剤、カプセル、ドリンク液、サプリメントなどの内服剤や化粧品も取り扱っている。また、肝臓外来で内服治療との併用も行っている。

 

 一般外来だけでなく、内視鏡検査や健康診断の予約も順調に増えているクリニックだが、問題点はないのだろうか?
「現在はCTスキャンがありませんので、CT検査が必要な患者さんは他院に紹介している状況です。また人間ドックの件数が昨年20件位なので、もっと増やしていきたいと考えています。そこで将来的にはクリニックを移転、拡大して、CTスキャンを導入し、診療を外来・内視鏡・検診の3部門に分けて、国分寺周辺地域の中心となるクリニックにしたいと思っています。そのときは私ひとりでは対応しきれないので、ドクターの増員も図るつもりです」

 経営面においては、「まず開業に際して、開業資金が1500万円、運転資金が1000万円、リース料が1000万円位かかりました。ちなみにこのビルは坪単価7500円ですが、今後、保険診療は点数が下がる可能性が強く、保険診療のみでは経営が成り立たないかもしれません。また自由診療を受けたい患者さんの要望にはできる限り応えたいと思います。そこで内視鏡的手術などの最先端医療を行いながら、サプリメントや自然食品を服用することで病院に通院しなくても快復したいと思う患者さんのために、自由診療の部分にも力を入れるつもりです。予防医療の充実や代替医療の幅を広げていきたいですね」という。

 自由診療を行っているクリニックとして、混合診療についてどのようにお考えだろうか?
「混合診療については、例えば認可されていない抗ガン剤を使う場合でいうと、初診料などは保険診療で、抗ガン剤の薬だけは自由診療でやるべきだと思います。現在のフコイダン療法も、採血、超音波検査、触診などの部分は保険診療でやるべきで、フコイダンだけを自由診療で行えれば良いと考えています。フコイダンについては、大学医学部の研究施設や厚生労働省がお金をかけて研究を行い、治療効果をきちんとしたデータとして解明して欲しいですね。また私自身もフコイダンの研究に参加できればと思います」

 今年6月、開業丸5年を迎える渡邉院長に今後の展望について伺ってみた。
「現在は午前と午後の診療で60名位の来院がありますが、もし100名を越えると今の体制では無理ですね。国分寺駅北口から徒歩圏内で、ある程度大きな道路に面しており、CTを導入できる40坪位のビルがあれば、いつでも引越す心の準備はできています。最初から大規模なクリニックを作るとリスクが大きいですから、まずは小さなクリニックで開業して、患者さんがついたら、ステップアップを図るつもりでした。またホスピスケアの必要な方や肺炎などの患者さんにとっては、入院できる有床クリニックにするのが理想でしょうが、経営面で厳しいと思うので引き続き無床のクリニックで考えています」


スタッフ

 プライベートはどう過ごされているのだろうか?

「自宅でクラシック音楽を聴いたり、コンサートに行ったりします。また人間の手の入っていない自然を愛しているので、ネイチャー系のDVD映像を見て楽しんでいますね」

 渡邉院長の健康法について伺ってみた。

「よく寝ること、ストレスをためないことです。仕事が充実していて、ストレスがなく、十分な睡眠をとれれば、病気にかかりずらいとか。ストレスは病気の引き金になるので、ストレスを少なくすることが一番の健康法だと思います。患者さんの機嫌を取るだけの医療や薬だけを処方する見かけだけの医療を行っているとストレスになるので、患者さんにとって本当に必要な医療を正直にすることにしています」

 ■開業に向けてのアドバイス
 

「十分リサーチをしてから開業するのは当然ですが、万全に準備しても開業当初は苦労するかもしれません。しかし最終的にそのクリニックが生き残れるかどうかは、先生の医療知識が豊富であるか、人間的に優れているか、患者さんに対して熱心であるかどうかで決まります。周囲にライバルの先生がいたり、物件の条件が多少悪かったりしても、患者さんは先生の人間性や医療レベルを見抜きますから、常に自分を磨き、自分を信じて正しいことをやっていければ、必ず患者さんはついてきます。」



先生タイムスケジュール


クリニック平面図


渡邉内科クリニック
院長 渡邉 修俊 氏
住所 〒185-0012
東京都国分寺市本町2-19-5 KBビル3F
医療設備 電子内視鏡、腹部超音波検査、デジタル心電図、デジタル眼底カメラ、X線テレビ、電子カルテ
延べ床面積 38坪
物件形態 ビル診
スタッフ数 医師(院長)1名、看護婦3名、医療事務4名
開業資金 開業資金1500万円、運転資金1000万円、リース料1000万円
HP http://www.watanabenaika.net/index.html


(終わり)
2005.3.1掲載 (C)LinkStaff

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