住み慣れた自宅での在宅医療を望む患者をサポート
医療法人社団 共進会 |
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阿部信一理事長 |
厚生労働省が病院の在院日数短縮の方針を打ち出した結果、今後、在宅医療のニーズがさらに増えてくると予想されている。大学病院と市中病院での勤務医、福島県での開業医を経て、東京都杉並区で在宅医療クリニックを開業し、その後、医療法人社団共進会を設立して、短期間のうちに東京、神奈川、千葉の計5個所に在宅医療のクリニックを開業した阿部信一理事長(46)に話をお伺いした。 |
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■開業前後 |
ドーミー方南町クリニック・まくはり南クリニックの院長を兼務する医療法人社団共進会の阿部信一理事長。昭和60年に東海大学医学部を卒業した後、同大学病院の研修医を経て、竹田綜合病院呼吸器科、東大宮病院内科を歴任する。平成5年、開業医をしていた父親の病気を機に、福島県にある阿部医院の副院長に就任した。
「上下関係のある大学病院からアットホームな市中病院に移り、さらに開業医をしていた父親の医院へと、いろんな現場を見てきました。医院は福島の田舎にあったので、地域と密接しています。また昔は何かあると、往診というかたちで診ていました。患者さんが外来で来られたときの顔とご自宅での顔は全然違っていて、ご自宅では本当にありのままでしたので、そのとき初めて『在宅』の良さに気がつきました。その後、父が亡くなって阿部医院を閉めたときに、今後は在宅医療をやっていこうと決めました」
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ドーミー方南町クリニック |
平成13年4月、東京に戻った阿部理事長は、杉並区方南町に在宅医療を提供するドーミー方南町クリニックを開業した。物件探しのポイントについて阿部理事長は「方南町は老人人口が過密な地域であることがポイントでした。これは方南町だけでなく、東和、つくし野などもリサーチしてみると、老人人口が多くて、なおかつ訪問診療をやっているクリニックが少ない地域だったのです。実際、方南町で開業した当初は在宅医療を行っているクリニックがなかったので、そういう意味で杉並ではパイオニアです」という。
平成14年、医療法人社団共進会を設立。共進会という名前の由来については、「在宅医療は寝たきりの高齢者の方とそれを取り巻くご家族の方々、そしてケアマネジャー、訪問看護ステーションや他の連携医療機関等、様々な人や機関のチームワークで成り立っています。医療法人『共進会』には、そういった人々や機関と、『共』に『進』んでいきたいという思いが込められています」とのことだ。共進会では平成14年7月に、東和クリニック(東京都足立区)・つくし野駅前クリニック(東京都町田市)を、平成15年5月には、まくはり南クリニック(千葉県千葉市)・さがみホームクリニック(神奈川県相模原市)を開設して、現在5個所のクリニックを運営している。
短期間で5つのクリニックを開設できた一番のポイントは、常勤・非常勤を含めた医師の確保がスムーズに運んだからだという。共進会では在宅医療に関心のある医師を探すにあたり、いろいろなところに声をかけた。その中にリンクスタッフも含まれていて、つい最近も常勤医師と非常勤医師が決定している。 |
共進会クリニックマップ |
各クリニックの訪問エリアは
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◆ドーミー方南町クリニック・・・中野区・杉並区・世田谷区
◆東和クリニック・・・足立区・葛飾区
◆つくし野駅前クリニック・・・町田市東部・横浜市青葉区・横浜市旭区・横浜市緑区
◆まくはり南クリニック・・・千葉市美浜区・千葉市花見川区・千葉市稲毛区・習志野市(一部地域)
◆さがみホームクリニック・・・相模原市・座間市および町田市、大和市(一部地域)
となっている。
エリアの広さが運営上のネックにならないのかを伺うと、「各クリニックには事務長がいて、いろいろな病院や介護事業者との地域連携を図り、医療と介護のコーディネートをしています。また常時、車で移動していますから、フットワークは軽いです。都心の密集した地域だと限られたところしか行けませんが、どのクリニックも区境や県境に近く、幹線道路にも近い場所を選んで開設しましたので、エリアの広さは問題ではないですね」という答えが返ってきた。
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開業前後の患者さん向け広報活動は、各クリニックの院長と事務長が地域の責任者として近隣の病院、訪問介護ステーション、行政機関などを直接回ってパンフレットを配布した。その結果、ドーミー方南町クリニックでは杉並区役所にもパンフレットを置いてもらうことができ、患者の家族が相談に来ると「こういうクリニックがあるわよ」と紹介してもらえたという。また、共進会のホームページも作成し、インターネット上で公開している。
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■クリニックの内容 |
5個所のクリニックでは、常勤・非常勤医師、事務長、看護師、医療事務スタッフなどを含めて計38名が勤務中だ。医療機器としては、ホルター心電図計、超音波診断装置ソノサイト、電子カルテなどを備えている。
各クリニックの標榜科目、主な設備、患者の特性は、以下の通りだ。
クリニック名 |
科目 |
設備 |
特性 |
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内科 |
待合室、診察室、事務室
(78.34平方メートル) |
居宅介護事業所との連携主体で個人宅が多い(95%)
施設系(5%) |
◆東和クリニック |
内科 |
待合室、診察室、事務室
(86.05平方メートル) |
居宅介護事業所との連携主体で個人宅が多い(80%)
施設系(20%) |
◆つくし野駅前クリニック |
内科
循環器科 |
待合室、診察室、事務室
(61.35平方メートル) |
施設系への診療が多い(80%)
個人宅(15%)
外来(5%) |
◆まくはり南クリニック |
内科 |
待合室、診察室、レントゲン室、リハビリ室、事務室
(128.16平方メートル) |
施設系への診療が多い(80%)
個人宅は病院との連携(20%) |
◆さがみホームクリニック |
内科 |
待合室、診察室、事務室
(74.11平方メートル) |
病院との連携が強く、そこからの個人宅が多い(90%)
外来(10%) |
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阿部理事長は勤務医のときも福島での開業時も在宅医療に携わっていなかった。在宅医療を始めた当初は、すでに在宅医療を行っていた黎明会大塚クリニックや曙光会のやり方を多少参考にした部分もあるという。その後は日々患者さんに接する中で得た経験を元に、在宅診療のスタンダードを確立していった。これが現在も、共進会の在宅診療のスタンダードとなっている。
一件目となる方南町クリニックを開業した当初の苦労した点を伺ってみた。
「今でこそ、在宅医療をしてくれるクリニックとして浸透していますが、開業して間もないころは、在宅医療がどういうものかわからない方も多かったです。『往診してくれるんですか』と言われて、往診と在宅医療の違いから説明をしていました。あるときは杉並区役所の職員から直接電話がかかってきて、『先生、こういう患者さんがいまして、具合が悪いから今から行ってください』と言うのです(笑)。本当に往診ですよ。むげに断りもできないので、すぐに出かけて、そこから患者さんを開拓したという苦労話もありました」
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在宅診療専用車 |
また増患対策においては「開業当初に病院、訪問介護ステーションなどに対してまめにPRをしてなかったら、反響もあまりなかったと思います。その後も地域の中核病院や訪問介護ステーションとの連携を密にとることを大切にしてきました」という阿部理事長。こうした努力が実り、患者数の推移で見てみると、当初20名~30名でスタートして、現在はどのクリニックも100名位と約5倍になっている。
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理事長とスタッフのみなさん |
短期間で急伸張してきた共進会は、現在どのような課題があるのだろうか。「昨日も、ある病院の院長先生が代わられたのでご挨拶に伺いました。我々には入院設備がありませんので、在宅の患者さんがいざ入院となった場合、地域の病院の支援が必要です。そこでどのクリニックでも、地域の中核病院との連携を大切にして、私も各クリニックの院長も地域密着で、その地域に根付くことを目標に掲げています。あるクリニックではケアマネジャー主体の会議に参加していますし、千葉市では病診連携がかなり強いという実情を踏まえて、地域に浸透するようにいろいろと工夫しています。地域にしっかりと根付いたところで、次の展開を行うつもりです。また今後、共進会が発展していくには、ある意味で収益をあげていくことが重要となります。そこで地域と密着しながら、介護保険の動向を睨みつつ、どういう方向に行けば良いのかを模索中です。医療の充実を図りながら、利潤をあげなくてはならないというのがなかなか難しいところです。しかし厚労省の方針で、病院の在院日数が短縮されていきますので、さらに在宅のニーズが増えてくると思っています」と語る阿部理事長。 |
共進会の将来の展望については、「最近の傾向として、介護付き有料老人ホームやグループホームがクリニックの周辺にできています。そこで今度分院を出す際には、介護施設のすぐ横にクリニックを開設するとか、共進会が介護施設を運営することも視野に入れています。また在宅をやりたいという熱意のある先生がいたら、さらに拠点を増やすかもしれません。ただし今後、介護保険がどのように変わるのか、どこに落ち着くのかを、今は見通す時期だと思っています」という答えが返ってきた。
院長を兼務して多忙な阿部理事長に、プライベートを伺ってみた。
「休日は、趣味のゴルフと家庭サービス。家族は妻と長女と長男。健康法はよく食べ、よく寝る。それが一番です。好き嫌いせず、なんでも食べて安眠ですね」
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■開業に向けてのアドバイス |
「在宅医療に関して、患者さんは『24時間いつでも電話できるんだ』と思う事で安心感を得ますが、医師の方は『24時間当直だ』と感じたりするかと思います。もちろん共進会も24時間の対応をしていますが、もし先生ひとりで開業して患者さんが増えてきたら、寝る時間もなくなって疲れてしまいますよ。また他の医師がここまでやっているから自分も、ということではなくて、ご自身の個性と技量にあった状態でやっていただいたほうが良いと思います。あまり無理しないほうが良いですね。
介護保険制度は今後どう変わるかわかりませんが、一通り勉強しておいたほうが良いでしょう。あとは事務長の役割をする人がいると、診療に専念できます。
もし将来、在宅医療の開業を希望していて経験を積みたいとお考えの方がいらしたら、共進会での勤務をステップアップに使っていただいてもかまいません。真剣に在宅医療に取り組みたいと思っている方なら、大歓迎です」
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訪問診断専用検査機器 |
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先生タイムスケジュール |
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クリニック平面図 |
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ドーミー方南町クリニック |
院長・副院長 |
阿部信一・飯田竹美 |
住所 |
〒168-0063
東京都杉並区和泉町
1丁目38番12号
ドーミー方南町1階 |
標榜科目 |
内科 |
延べ床面積 |
78.34平方メートル |
物件形態 |
ビル診 |
訪問エリア |
中野区・杉並区・世田谷区 |
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東和クリニック |
院長
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江頭元樹 |
住所 |
〒120-0003
東京都足立区東和
2丁目1番1号 |
標榜科目 |
内科 |
延べ床面積 |
86.05平方メートル |
物件形態 |
ビル診 |
訪問エリア |
足立区・葛飾区 |
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つくし野駅前クリニック |
院長・副院長 |
粟屋透・小山憲 |
住所 |
〒194-000
東京都町田市つくし野
2丁目26番4号
つくし野第3ビル2階 |
標榜科目 |
内科・循環器科 |
延べ床面積 |
61.35平方メートル |
物件形態 |
ビル診 |
訪問エリア |
町田市東部・横浜市青葉区・横浜市旭区・横浜市緑区 |
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まくはり南クリニック |
院長・副院長 |
阿部信一・飯田竹美 |
住所 |
〒262-0032
千葉県花見川区幕張町5-187-1 幕張センタービル2階 |
標榜科目 |
内科 |
延べ床面積 |
128.16平方メートル |
物件形態 |
ビル診 |
訪問エリア |
千葉市美浜区・千葉市花見川区・千葉市稲毛区・習志野市(一部地域) |
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さがみホームクリニック |
院長
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山本雅己 |
住所 |
〒228-0803
神奈川県相模原市相模大野3-19-11 |
標榜科目 |
内科 |
延べ床面積 |
74.11平方メートル |
物件形態 |
ビル診 |
訪問エリア |
相模原市・座間市および町田市、大和市(一部地域) |
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(終わり) |
2005.5.1掲載 (C)LinkStaff |