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癒しの空間で、最高クラスの人間ドックと終身医療を保障

グランソール奈良



辻村 拓夫理事長

グランソール奈良は豊かな緑が広がる奈良県宇陀郡菟田野町に位置し、大阪市内から近鉄大阪線特急で約45分の榛原駅からバスで約15分の立地にある。
4年前、自然に囲まれた静謐な地に、白亜のリゾートホテルのような建物が出現した。これがグランソール奈良で、その医療システムは会員制医療組織として検診、治療、入院、終身看護が一定の金額で保証されるという大変ユニークなものである。
辻村拓夫理事長は新潟県出身で、1972年に新潟大学を卒業後、奥様の実家がある奈良県に居を移し、奈良県立医科大学第一内科に入局した。その後、1978年に辻村内科を開業し、1988年には菟田野辻村病院を開院する。こちらは現在、医療法人拓誠会辻村病院となっており、グランソール奈良はその関連施設の一つであるが、患者と医療をつなぐ「メディカルエージェント」としての役割も担っている。



 ■開業前後

 辻村理事長にグランソール奈良の開業のきっかけをお尋ねした。
「将来、医療もアメリカ型になっていくだろうという確信がありました。医療は平等であるべきだという考えから、自分で守るべきもの、つまり投資であるという考え方に変わっていくのでは?と思ったのです。そこで、どう生きるべきかと模索される患者さんに、早期発見、早期治療と将来の安心の場所を作りたかったということですね。
いい予防医学を実践したいと思いました。リゾート感覚の癒しの空間を作りながら、手遅れにならないように早期発見を行う。そして、患者さんが健康なときから亡くなるまでをメディカルエージェントというべき代理人としてカバーしたかったのです。もちろん患者さんにお金の心配をさせたくはありませんでした」



ロビー
 

 そこで開業に伴い『グランソールマネープラン』の策定にあたったが、これは実に画期的なシステムとなっている。このプランは、生涯の医療費を定額、前払い、預託制の方式を採り、不況などの社会情勢に左右されないのが特徴である。つまり、生涯の医療費として保障金を預かり、そこから人間ドックなどの費用、入院治療費、終身ケアにかかった実費を差し引いて、退会時に返却するのである。保障金より実費が上回っても、追加負担はないし、入院治療の際の家族の付き添い費用もこれに含まれている。
このシステムには、当初行政レベルでの反発もあったようであるが、辻村理事長はライブドアの堀江社長の口癖をまねて『全て想定の範囲内』であったと語る。それでも金融監督庁、厚生労働省に問い合わせたり、何回も足を運んで、ようやく実現の運びとなった。
また『グランソール検診システム』も構築した。これは電子カルテ、遠隔画像診断システムが相互に機能しているものである。まず、検査画像は光ファイバーで提携先の認定病院に送られる。そこで、臓器ごとの複数の専門医によるスペシャリストの診断を受け、的確な診断結果を得て、早期発見、早期治療を実現するものである。フィルムレスで、モニター上での専門医によるトリプルチェックのこの体制は、アメリカでは一般的になってきているが、日本では最先端のシステムであるといえる。



外観

 開業地は、辻村病院の向かいに約8,000坪の敷地を取得した。設計は中村勉氏に依頼した。中村氏は公共建築賞(旭町立旭中学校、現愛知県豊田市)、JIA第一回環境建築賞(浪合フォーラム、長野県下伊那郡浪合村)など多くの受賞歴を誇っている有名デザイナーの一人である。
「病院らしくない病院にしたかったので、動線を無視した設計をお願いしました。例えば、終末ケアの患者さんの個室へは一旦外に出なければ入れません。少しでも外気に触れることで、自分の部屋に帰るという実感を得てほしいと思ったからです。もちろん重症の患者さんには別の配慮をしています。ただ癒しの空間になることを望みました」
外観は白を基調としており、窓が全面に配されているので開放感がある。一歩、中に入るとリゾートホテルのようなロビーがあり、入院の受付もソファーに座って行うなど全く病院らしさを感じさせない。このほか珍しい極太の槙を使った大浴場や数種の薬湯が人気を集める黒御影石の大浴場、サウナ、ジャグジー付きの個室など、安らぎのためのアメニティーの充実振りに驚かされる。なお、この建物は2001年度グッドデザイン賞を受賞している。

 ■クリニックの内容

 早期発見のためには優れた医療機器が不可欠である。特筆すべきはRIであろう。これにより、特に臓器の血流と機能についての情報が得られ、脳血流、心筋の血流、代謝やがんの転移、骨の異常などの診断に使用されている。被爆面で身体に与える影響は少ないことも大きな特徴である。
「RIに関しては採算性は度外視ですね。PETの代わりにもなりますから。PETは私の作った仕組みの中に入る余地がなかったのです。なかなか対象者もいませんし、もしPETを導入したら私どもは苦労したかもしれませんね(笑)」
またMMG(デジタルマンモグラフィー)はアメリカGE社の製品を導入した。この装置は、当時日本に数台しか導入されていなかったもので、これまで描出できなかった微細ながんも発見可能である。近年、食生活やライフスタイルの多様化から日本でも女性の疾病構造に変化が起きていると言われる。中でも熟年層の乳がんの死亡率は、胃がんを抜いて全がんの一位になった。今後さらにマンモグラフィーによる乳がん検診が重要になると思われる。



CT Scanner

 さらに免疫療法のために、隣接した場所に『グランソール免疫研究所』を今年7月に開設予定である。誰しも、毎日のようにがん細胞ができているが発症に至らないのは免疫力のおかげである。最近、民間療法として話題になっているアガリクスやプロポリスも免疫力を高めるためのものと言われているが、グランソール奈良では活性化自己リンパ球療法を行っている。
「現在は1,000倍の血液培養ですが、これを10万倍に増やすシステムを構築しようと思っています。治癒力を高める治療はこれから主流になっていくのではないでしょうか」
院内で出される食事もこれまでの概念を吹き飛ばすものである。食事つきの人間ドックも好評で「食事だけでも」と来られることもあるという。現在は地元の宇陀牛や野菜を素材にした和食を中心としたメニューであるが、今後はフランス料理専門の調理師を採用して、さらに魅力あるメニューを提供する予定であるという。

 2007年7月にはJR大阪駅近くに分院を開設予定である。『都市型』のグランソールもまた話題となるだろう。
辻村理事長に理念をお聞きした。
「色々叩かれることもありますが(笑)、挑戦する気持ちを持ち続けたいと思っています。自分が生きてきた証しを社会貢献という形でお返ししたいのです。私も勤務医時代は1日150人の外来患者を診てきました。今は『数診てなんぼ』の世界から『一人一人に密度の濃い医療を』と思っています。ここでは1日10人の検診で精一杯です。その10人に納得して頂くことが使命ですね」



 ■開業に向けてのアドバイス

 勤務医の先生が開業に踏み切るときには、やはり資金面が大きな心配であると思います。そこで私どもでは開業支援システムを作り、こちらに勤務して頂いている先生方で、将来開業を希望される方をサポートしています。例えば、高価な医療機器は購入するより、一括で注文してリースにするなど、先生方に資金面での心配をさせないシステムと言えると思います。先生方には診療にだけ専念して頂きたいですからね。



 ■タイムスケジュール

 「私は20代後半に内臓疾患を患い、勤務医としては働くことが難しくなったので30歳で開業したのです。ですから勤務医時代と言ってもかなり前のことです。趣味は映画鑑賞ですね。今は韓流ドラマでしょうか(笑)」



クリニック平面図


グランソール奈良
理事長 辻村 拓夫 氏
住所 〒633-2200
奈良県宇陀郡菟田野町松井8-1
医療設備 CT、MRI、RI、デジタルマンモグラフィー、超音波診断装置、DR、CRシステム、電子カルテ
延べ床面積 1,500坪
物件形態 戸建て
スタッフ数 常勤、非常勤医師20人、看護師60人、事務20人、その他20人
開業資金 20億円
HP http://www.grandsoul.co.jp/

TV、書籍など多数のマスコミに取り上げられている。


(終わり)
2005.6.1掲載 (C)LinkStaff

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