クリニックの窓教えて、開業医のホント

バックナンバーはコチラ

都市生活者のための多様なニーズに対応

インターシティクリニック



平 竜三院長(当時)

インターシティクリニックは2002年2月、JR・西武・東武・東京メトロ線が交差する池袋駅西口駅前のビルの3階に整形外科・内科で開院した。
平竜三院長(36)は1994年、東北大学医学部を卒業後、2002年、東北大学大学院で医学博士号(整形外科学)を習得。宮城県内の病院勤務を経て、03年、インターシティクリニックの副院長に就任した。04年2月、前院長の退職に伴い、クリニックを継承した平院長。整形外科と内科を標榜し、日曜診療も行っている都市型クリニックを訪問した。

*取材は、2005年5月27日に行われました。肩書き及びクリニックの診療内容は、取材当時のものです。現在では、異なっておりますので、ご注意ください。



 ■院長就任前後

 開業資金約4000万円(うち運転資金約2000万円)で開院したインターシティクリニックは当初、地域密着を目指してチラシをまいたり広告を出したものの、十分に患者が集まらず厳しい経営状態に陥っていた。平院長は、当時を次のように振り返る。
クリニック周辺は人通りが多いものの、そのほとんどが他社線への乗り換え利用者であり、地域住民は少ない。また中心患者層と見込んでいた会社員は、会社帰りに立ち寄れる夜間診療を望んでいるが、午後6時までの診療では十分応えきれない。当時の院長が辞めることになり、平副院長(当時)は閉院に伴う退職か、クリニックを継承して院長に就任するかどうかの決断を迫られた。



クリニック外観

「仙台で勤務医をしているときから、将来開業しようと考えていたため、経営者の会合やビジネスセミナーなどに月1回くらいのペースで参加していました。自分なりのアイディアがあったので挑戦してみる価値はあるだろう」と自身が院長に就任して、クリニックの再建を目指すことにした。

 ■クリニックの内容

 標榜科目は整形外科・内科・リハビリテーション科。04年2月、クリニックを継承した平院長は、すぐさまコスト削減に着手。クリニックの運営方針を「忙しい都市生活者が楽に通えて、検査レベルは比較的高く、早く気軽に診てくれるクリニック」と決めた。都市生活者に広く知らせるため、まずホームページ戦略を打ち出した。3ヶ月かけてSEO(検索エンジン対策)などに力を入れた結果、検索エンジン「Yahoo! JAPAN」で検索すると、池袋の整形外科では常にトップに表示されるようになった。現在も月5000件ほどのアクセスがあり、初診患者の90%以上はインターネット検索による来院だという。
患者数は平院長が継承した当時、1日40名くらいだったのが、現在は80~100名と2倍以上伸張した。また忙しい都市生活者の利便性を考えて診療開始時間を午前10時半に変え、その分、診療受付終了時間を午後6時半、リハビリなどの再診患者は午後7時半までと遅くしたことで、会社員が立ち寄りやすいように配慮した。また日曜しか休みのない患者や、土日にけがをしたり、体調を崩した患者が来院できるように、休診日を土曜に変更し、日曜診療も開始した。



リハビリ室・物療

 「夜間・日曜診療を行うことで、スタッフには負担をかけていますが、そのおかげで夕方の患者数がものすごく増えましたし、日曜は朝一番から患者さんが並んでいます。日曜の新患数は20~25名くらいですね。患者さんはインターネットで日曜にやっている病院を必死で探して来院します。池袋周辺はもちろんのこと、山手線のほぼ全域、東武東上線や西武線沿線からも患者さんが来ます。『日曜日に診療してくれてよかった』という方が多いので、引き続きやっていこうと思っています」と語る平院長。院長の診療方針は『親切、親身、スピーディー、患者中心の診療』だ。

 主な医療設備は、レントゲン、心電図・ホルター心電図、エコー、特殊牽引器、電気刺激治療器、光線治療器、活性酸素フリーラジカル測定器、血管年齢測定器、自律神経ストレス測定器などだ。中でも平院長が導入を決めたストレス・アンチエイジングの検査機器については、自分の体内環境の状態を示すデータを見ながら医師のアドバイスを受けられるので患者の満足度が高いという。
院長就任後、クリニックにないMRI・CT検査等を迅速に行うため、検査専門機関であるメディカルスキャニングと提携した。メディカルスキャニングは、クリニックから徒歩3分の場所にあり、空きがあれば即日撮影が可能なので、検査を受けた日から治療を開始できる利点がある。



提携したメディカルスキャニング
(検査専門機関)


血管年齢測定(上)、自律神経ストレス測定(下)

 さらに漢方診療・サプリメント相談、プラセンタ療法、にんにく注射など、都市生活者のニーズに応える診療を行っている。平院長は「自費診療のプラセンタ療法やにんにく注射などは、都内でも最安値に近い価格設定で提供していますので、忙しいサラリーマンや試験間近の学生などに好評です。最初は注射だけで通ってきた方が体調が悪いとき、『日曜診察が受けられる』と思い出して、来院してくれるのです」という。

 インターシティクリニックには現在どのような課題があるのかと伺うと、「一番はスタッフの雇用です。当院が看護師や受付のスタッフに求めるスキルのレベルは非常に高く、臨機応変に対応できて、患者さんとも上手にコミュニケーションが取れる方でないと務まりません。『夜勤や救命の経験があります』といったキャリアのある看護師さんでも戸惑うことがあるようです。ですから、うちで長く勤務しているスタッフは相当レベルが高いと思いますよ。本当は時間を取ってスタッフ教育ができれば良いのでしょうが、今は人員の余裕がないので、即戦力としてバリバリ働いてもらっています。ただ今後は、少し余裕をもってスタッフを採用したいですね。自分の担当業務がクリニック全体に影響すると感じるスタッフには、非常にやりがいがある職場だと思います」という答えが返ってきた。現在のスタッフは、常勤医師1名(院長)、非常勤医師1名、医療事務2名、看護師1名、放射線技師2名(うち1名パート)、検査技師1名が勤務している。



院長とスタッフの皆様
 ■分院を新規開業

 インターシティクリニックの経営再建に成功した平院長は05年8月、板橋区小豆沢に分院として整形外科、形成外科、リハビリテーション科、健診、ペインクリニックを標榜した小豆沢整形外科を開業する。物件探しのポイントは、平院長が都内でイメージがわく東京北部方面と決めた。当初は巣鴨、田端、王子、赤羽、南浦和の駅近で、人通りや同じ診療科目で開業している競合病院などを調査したが、このような場所は老舗の病院が盛況の上、地代も高く新規開業は難しいと判断した。そこで今度は多少駅から離れていても人口増加が見込める場所で探したところ、都営三田線志村坂上駅から徒歩9分ほどの住宅街に05年の1月に建ったばかりの5階建てクリニックビルを見つけた。クリニックビルを中心に半径1km圏内に7万人ほど住んでおり、現在建設中の住宅もあるので更なる人口増加が見込める場所だ。近くに板橋中央総合病院があるものの、整形外科、リハビリ、マッサージを気軽に受けられるクリニックがあっても良いと考えて、開業を決意したという。1階が薬局、2階が内科、3階が小児科、そして4階と5階が小豆沢整形外科となる。開業資金は約5000万円で、面積はインターシティクリニックの約2倍だが、地代はむしろ安いという。CTの導入やワンフロアをリハビリ室にする改装も終わり、あとは開院を待つばかりの状態にある。平院長によると、小豆沢整形外科は地域に根差した地域一番の整形外科医院を目指すとのことだ。



小豆沢整形外科・平面図

 今後の展望について伺うと、都市生活者を支援するクリニックをチェーン展開をしていきたいという答えが返ってきた。平院長は近くにメディカルスキャニングのような検査専門機関があれば、大きな病院で長時間待たなくても診療の質は落とさずに大病院と同レベルのプライマリな診療が可能だという。手術が必要になったら中核病院で手術をして、術後のリハビリは近隣のクリニックで行う『クリニックの適正配分と患者さんの適正配分』を目指している。
「医療ビジネスとして、同じ志を持って下さる30代から40代の先生と一緒に仕事をしてみたいですね。経営支援は我々の本部の方で精一杯やりますし、病院経営の自信がない先生には半年くらいかけて経営者としての人間性も学んでいただいて、十分にモチベーションと情熱が高まり、覚悟ができたら、開業支援をさせていただきたいと思います。またクリニック同士をネットワークでつなぎ、各クリニックで医療情報をスムーズに引き渡せたら良いと思います。優秀な先生が都市型クリニックの経営者になってくださるには、ある程度の収益が上がらないと情熱もわかないと思います」と語る平院長。

 外来勤務と開業準備に忙しい平院長はプライベートをどう過ごしているのだろうか?
「休みは金曜と土曜日で、医者以外のいろいろな友人と会うことが多いです。スポーツは、夏は月1回ほど、主に東北の山に登山に出かけて、冬はスキーをします。音楽も好きで、幼少からピアノをやっていたのですが、今は忙しいので毎日は弾けませんけれど。疲れたときは、秘湯を探訪しています。まとまった休みが取れると、大学から勤務医時代までの友人が多く住む東北地方に出かけます。でもせっかく東京にいるので、今後は関東周辺にも足を延ばしたいですね(笑)」
また健康法については 、「基本的にはストレス対策です。ストレスを測ったり、血液の流れを見る測定器を導入してから感じたのは、いろいろな健康食品を飲んだり健康法を試していても、ストレス度が高い方は血液も汚れています。逆に健康に無頓着でもストレスが少ないと血液のきれいな方もいるので、ストレスが一番の不健康の原因だと感じます。ですから私自身の健康法もストレスをためないようにしています。具体的には、ストレスと睡眠は深い関係にありますから、寝るときは次の日の良いイメージとか、楽しかった気持ちとかをイメージして寝ます。また睡眠時間もとても重要ですから、忙しくても最低5時間から6時間寝るようにしています。日ごろのスポーツは週1回の水泳ですが、全然足りません。もう少し落ち着いたら週2回くらいしっかりとしたスポーツをしようと思っています」とのことだ。

 ■開業に向けてのアドバイス

 「十分リサーチをしてから開業するのは当然ですが、万全に準備しても開業当初は苦労するかもしれません。しかし最終的にそのクリニックが生き残れるかどうかは、先生の医療知識が豊富であるか、人間的に優れているか、患者さんに対して熱心であるか、そして粘り強く続ける根気があるかどうかで決まります。周囲にライバルの先生がいたり、物件の条件が多少悪かったりしても、患者さんは先生の人間性や医療レベルを見抜きますから、常に自分を磨き、自分を信じて正しいことをやっていれば、必ず患者さんはついてきます。一番よくないのは『やらされ仕事』ですね。勤務医の場合はどうしてもやらされ仕事になりがちですが、開業すれば忙しくても、将来の夢や目標に対して頑張ることができます。自発的にやっている仕事ですから、不思議とそれほどストレスはたまりません。そういう意味では、自分の自己充実感が欲しい先生には、開業という選択肢もあると思います。ただし自己資本が少ない場合、駅近で単独開業するのはあまりお勧めできません。最初にある程度の患者さんを集めることは本当に大変ですから。また、開業後の苦労を乗り越えた先生に目に見えないマインドの部分をよく聞くこともとても大切なことだと思います。自分がそういう苦労を背負いこむことを本当に望んでいるかどうかを考える、大きな指針となるでしょう。また勤務医と開業医はだいぶコンセプトが違うので、お友達はたくさんいた方が良いでしょう」

●常勤医師募集情報



院長タイムスケジュール


クリニック平面図


インターシティクリニック
院長 平 竜三氏(当時)
住所 〒171-0021
東京都豊島区西池袋1-16-1 新東第一ビル3F
医療設備 レントゲン・エコー・心電図・ホルター心電計・特殊牽引器・電気刺激治療器・光線治療器・活性酸素フリーラジカル測定・血管年齢測定器・自律神経ストレス測定器ほか
延べ床面積 33坪
物件形態 ビル診
スタッフ数 常勤医師1名・非常勤医師1名・医療事務2名・看護師1名・放射線技師2名・検査技師1名
開業資金 約3000万円(うち運転資金約2000万円)


(終わり)
2005.7.1掲載 (C)LinkStaff

【クリニックの窓バックナンバーリストへ】

リンク医療総合研究所 非常勤で働きながら開業準備