開業した土地には北川院長の友達や知り合いがいなかったため、地盤ができているわけではなかった。
また近くの病院に勤務していたわけでもないので、自分の患者さんを一人も持っていなかった。
そのため最初は「あの人だれ?」といった雰囲気もあったようだ。ところが北川院長には不思議なことに、不安がなかったという。
「中村眼科では1日に何百人の患者さんを診ていました。そのときに中村院長のご友人の歯科医の方が『北川君は患者さんを集める何かを持っているから、開業しても大丈夫だよ』と言って下さったことがあって、開業直後にはその言葉をよく思い出して、自信を回復させていました。」
北川眼科では、開業当時1日平均の外来患者数は50人だった。1994年3月に100人を超え、2001年4月に200人を超えた。順調に外来患者数は増加していったが、300人は遠い目標のように感じられた。だがついに2006年7月300人を超え、その2週間後には338人の来院患者があったそうだ。今は平均210人の来院である。開院して6ヶ月の間は暇な日が多かったが、その後患者数は増えていった。その後3年間は横ばいだったが、この2年間は右肩上がりになっている。この増患の理由を北川院長はこのように語った。
「技術はどんな医者でもほとんど変わりません。重要なのは患者さんとの会話によって状況を理解し、不安を取り除いてあげることに尽きます。例えば、結膜炎で来院した患者さんに対して、いきなり視力を測る、眼圧を測るなど、関係のない様々な検査をする医療機関もあるそうです。患者さんはそれにより高いお金を払わなければならなくなるので、薬局で市販の目薬を買って済まそうとします。
開業医はそういうものではありません。患者さんが、何を一番望んでいるのかを知ることです。結膜炎がひどければ、まず目やにを止めてあげる、そして結膜炎の治療をし、その後視力検査などをするのが当たり前です。それなのに患者さんが来たらいきなり検査のフルコースをするので、医療費も増えます。そんなことをしたら、患者さんは来てくれなくなります。当たり前の話なのに、これができているところは、なかなかありません。」
北川眼科は13床の病床を有し、白内障などの手術にも対応している。病室にはテレビや電話を備え、すぐれた療養環境を実現している。 さらに北川眼科には「アイホール」という名称の部屋が存在する。これは月に2回の健康教育講座やスタッフ教育などのほか、白内障の手術をする前に、患者さんとそのご家族の方を集めて、手術の内容や、危険性を説明する場にもなっている。