誠実な心のふれあいと細心のテクノロジー
医療法人 里会 はやし内科・胃腸科クリニック |
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林 一朗 院長 |
はやし内科・胃腸科クリニックは北九州市小倉南区にある。北九州市は人口約100万人の政令指定都市であり、新日鉄をはじめ大規模な工場群を擁する工業地帯で知られる。小倉南区はかつては田園風景が広がっていたが、近年マンションや住宅が活発に建設されており、急速にベッドタウン化が進むエリアである。クリニックの立地はJR小倉駅からバスで30分ほどであり、近くには北九州モノレールの北方駅、JR日豊本線の安部山公園駅もあり、交通の便も良い。クリニックの近くに高速道路が通っているにもかかわらず、町並みはとても穏やかで、落ち着きを感じる。
はやし内科・胃腸科クリニックは4クリニックが入居する医療モール「ひまわり村」の中の一つである。「ひまわり村」の名は北九州市の市花であるひまわりに由来するものだ。ひまわりの活力あるイメージ通り、はやし内科・胃腸科クリニックでは早期消化器がんの発見・治療を目的とする高度医療、また地域の皆さんとの心のふれあいの場を目指している。
今回は林一朗院長にお話を伺った。
林 一朗 院長 プロフィール
林院長は1947年に長崎県佐世保市で生まれた。1974年に久留米大学医学部卒業後、久留米大学医学部第一内科に入局し、1975年に北九州市立若松病院、1977年東京女子医科大学消化器病早期がんセンターへ勤務する。
1979年に久留米大学第一内科に帰局し、その後1986年に小倉新栄会病院、1991年に小文字病院での勤務を経て、1995年に北九州市小倉南区にはやし内科・胃腸科クリニックを開業する。 |
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■ 開業前後 |
林院長が医師を目指したきっかけは「祖父と父が医師をしていたので、自然と目指した」ことだそうだ。子どもの頃から医師であるお父様の背中を見て育ってきたこともあり、迷いはそれほどなかったという。
「一度はパイロットに憧れたこともあったんですが、よく考えてみると高所恐怖症だったから目指さなくてよかったですね(笑)。」
久留米大学医学部卒業後は様々な病院への勤務歴を持つ。開業を決めた理由を尋ねてみた。
「約18年間医局に所属し、医局人事で方々の病院勤務をして十分な経験を積み上げたことに対する自信と、診療報酬が年々下がっていく中で経営の舵取りをどのようにやっていくかに興味があり、それを自分で実践してみたかったからですね。」
そのため開業する2年ほど前から、地元の医療コンサルタント会社や開業を計画している医師と「これからの病院経営」について数多くの話し合いの場を持ち、ノウハウを蓄積していった。
この地に開業を決意したのは、開業以前の約8年間、北九州市内の病院に勤務していたこともあるが、最大の理由は医療モール「ひまわり村」の存在だったという。自己資金も少ないが、一方で多額の借入金を抱えるのも問題があった。また単科の科目では患者さんの来院数にも限度があると考えていた頃、知人にこの物件を紹介され、検討してみることにした。
この医療モール「ひまわり村」は大手デベロッパーの関連会社が運営しており、ビルではなくて平地に平屋戸建で4つのクリニックが集まってモールを形成していた。建物は図面段階から打ち合わせに参加し、外見やレイアウト、内装なども林院長自身が決めることができた。以前勤めていた病院の院長からCTスキャナーやエコーのリースアップの機器を譲り受けたこともあり、開業資金と運転資金を合わせても約3000万円で賄えたという。
「ひまわり村」に3番目に入居し、1年ほどで残った一つのクリニックの入居をみて全容が整った。モール全敷地740坪で、はやし内科・胃腸科クリニックの延べ床面積は72.48坪である。駐車場は共有で20台収容でき、少し離れたところに16台の収容スペースがある。なお他の3軒のクリニックは整形外科、皮膚科、歯科となっている。
内装についてはヨーロッパモダンを意識した癒し系にこだわった。
「私の趣味でもありますが、来院される患者さんは検査目的の方が多く、長時間滞在されるので、少しでもリラックスしてもらおうと考えた結果です。」
看護師やその他スタッフについては、ハローワークと新聞の折り込みチラシで募集をかけたところ、苦労せずに良い人材が集まったという。現在は看護師4名、準看護師2名、臨床検査技師1名、その他の医療スタッフ7名で運営している。
開業は1995年2月6日であった。
「特に理由があって開業日を決めたわけではありません。その日は近年稀にみる大雪が降り、暗雲立ち込める気配でしたが、気象条件が悪いのにも関わらず60人ほどの患者さんが来院され、大忙しの開業日となりました。以前勤めていた近所の病院の患者さんが来院してくださったお蔭ですね。」
院長の高い技術力、人柄が患者さんを惹きつけたのであろう。開業にあたってのPRは新聞への折り込み広告1回のみだったが、地元の放送局や新聞社が当時としては珍しかった、ビルではない「平屋の医療モール」の特集を組んだために、経費をかけずに知名度を上げることができたという。
「お蔭様で借入金も最小限に止めることができ、毎月賃借料を支払ってはいますが、一度も赤字になったことはありません。現在のところ、1日平均の来院患者数は70人から80人で推移しています。今後大きく来院数が増えることはないでしょうから、患者さんの再来院数をいかに増やすか、また患者さんの来院を待っているだけでなく、患者さんがいるところに伺うなど、攻めの営業戦略をどう展開するかが大きな課題になってくると考えています。」 |
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■ クリニックの内容 |
①消化器科 電子内視鏡検査
早期発見・早期治療を目的に特に大腸がんを中心に内視鏡による検査を行っており、症例数は現在までで約25,000例を数える。大腸がんは主に遺伝的因子による発生が多く、家族間の遺伝により、もともとある自分の細胞から発生する。
一方、免疫機能もがんを異物として捉えないため、がん細胞は身体の一部分として成長してしまい症状が現れにくい。そのため定期的な検査が必要である。
「患者さんに対しては丁寧な説明を心がけています。患者さんの大半が毎年1、2回来院され、一年中を通して予約を頂き、有難く思っています。」
②アンチエイジングセラピー
老化の原因が消化器系であることも多く、大腸検査などが多いはやし内科・胃腸科クリニックではハイドロコロンセラピーを勧める場合もある。これは化学物質や薬剤を一切使わずに、ろ過した温水を使用して腸内を洗浄するシステムである。このシステムにより苦痛を伴わずにリラックスして、安全に治療を受けられ、直腸から盲腸までの大腸全体の洗浄を行う。そして便秘の根本的処置と長年にわたって腸壁にこびりついた老廃物(宿便)を排泄することで、身体の健全化と美容につながる役目を果たす。
またクリニックとは別に「サロンドミレア」というサロンを開いている。はやし内科・胃腸科クリニックから車で約20分程の北九州市八幡東区にあり、スタッフ6名でアンチエンジングセラピーを行う。内容はE・M・S(電気的筋肉刺激運動療法)、リンパドレナージュ(究極のリラクゼーション)、超音波マッサージ、レーザー治療、アロマテラピー、ヒューマンプラセンタ(胎盤エキス)などである。内面から外見まで全てにおいて無理なく、安全に若返るように、細かく内容を分けて患者さんが求めやすい金額でケアできるように工夫している。
「これらの治療やサロンは経営的な面からいうと何の貢献もないのですが、患者さんの健康や老化防止を考えると止める訳にもいかず、複数の治療法の一つとして提案していきたいですね。」 |
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■ 今後の展望 |
林院長が今一番力を入れているのが訪問診療だ。行政の医療費抑制政策もあり、開業して7年間で患者さん1人当たりの報酬は3割減少しているという。また来院数の大幅な伸びも期待できない現在、患者さんがいるところに伺うことによる報酬のアップを図りたいとする。2011年には介護病床が廃止され、また療養病床も大幅に削減されれば、患者さんは介護施設に入居するか、または自宅での療養を余儀なくされることになろう。したがって林院長はこのマーケットに非常に見込みがあると考えている。そこでコンサルタント会社と一緒に施設の開拓を行い、また北九州市から遠く離れた地域でも診療ができるように、複数の医師とのネットワークで対応できるようにしている。林院長は平日の午後と日曜日は訪問診療に当てており、始めて2年足らずではあるが、着実に実績は上がっている。
「このクリニックの核は消化器系がんの早期発見と治療です。特に家族間の遺伝による大腸がんの場合、一般のがん年齢より早く罹患する確率が高いので、ポリープが発見された患者さんには必ず年に1回は内視鏡検査をするように呼びかけています。がんを早期発見でき、大事に至ることなく、患者さんに感謝されたときは医師冥利につきますね。この分野にはスタッフをさらに充実させ、高度医療機器の導入を進めていきます。」 |
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■ 開業に向けてのアドバイス |
これからの医療はフットワークが必要になってくると思います。特殊な技術があり、それで患者さんを集める自信のある医師は別ですが、今までのように診療所で患者さんを待っているだけではやはり限度がありますし、来院数の増加はあまり期待できません。これからは訪問診療、在宅診療などの、たとえて言うなら「動き回る診療所」を目指してほしいです。
開業をするとなると従来通りの診療所のイメージがどうしても強くなりますが、その中で発想の転換をしていくことが求められると思います。それから開業資金です。多額の借金をして開業するのでなく、医療モールに入居するなどアイデアを出して極力少ない資金で開業すべきでしょう。医療費の抑制がさらに進むことが予想されますので、億単位の借金を抱えての開業は控えるべきですね。 |
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■ プライベートについて |
プライベートの時間が少なく、帰宅も深夜になることが多々あるため、リラックスすることがなかなかできないのが目下の悩みです。休みもほとんどなく、休みがとれたときは日帰りや1泊で旅行に行くことが多いです。特に温泉が好きで、場所で選ぶというよりはホテルや旅館の雰囲気が良かったり、泉質が良かったりということで決めています。モダンアートも好きで、院長室にはグスタフ・クリムトの「接吻」という作品を飾っています。 |
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先生タイムスケジュール |
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クリニック平面図 |
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(終わり) |
2006.11.01掲載 (C)LinkStaff |
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