① 精神医療
小宮院長にとってクリニックを開業することの意義は、保険診療の枠にこだわらず、自分の理想の診療を追求することにあった。豊富な勤務医でのキャリアから、重症患者の5人に1人はもう少し時間をかければ治ると思われる症状だったという。ところが、精神科での入院は長期間に及ぶことが多く、そうなると入院したことによる社会的な不利益も被ってしまう。したがって先述の福岡臨床心理研修所の役割が大きくなるのである。
「カウンセリングにあたっては、患者さんにもハードルがあります。病気に対する認識や、どの程度治りたいのかというモチベーション、医師やスタッフの説明への理解力などです。そういったハードルについて細かく説明し、納得して頂いた上で、カウンセリングを行っています。」
このシステムは功を奏し、約5人に1人の患者さんが入院せず、外来だけで完治しているという。臨床心理士は8人おり、手厚い体制になっている。
② 音楽療法、遊戯療法
基本的にカウンセリングは言語によるものであり、それによって、患者さんの心を表現し、心を軽くすることが目的である。しかし、患者さんの年齢や性格によっては言語表現が乏しいことがあり、心や気持ちを豊かに表現してもらうために音楽療法や遊戯療法を取り入れている。
音楽療法とは、音楽療法士のもとで、より自由な自己表現やリハビリテーションのための楽器演奏、歌唱、リラックスチェアーなどの体感音響装置による音楽鑑賞を行うものである。一方、プレイセラピーとも言われる遊戯療法は、箱庭療法や絵画や粘土細工を製作する療法がある。患者さんが自分の気持ちを表現するための創作活動を作業療法士がサポートする。小宮クリニックには音楽療法士、作業療法士がそれぞれ1人勤務し、小宮院長とのチーム医療を行っている。
③ ストレス軽減のために
待合室にはクラシック音楽が流れ、落ち着いた色調で統一された癒しの空間となっている。そして、患者さんの集中を避け、診療時間を確保するために、完全予約制としている。
「患者さんの中には不安が強くて、人が大勢いると来院できない方もいます。待ち時間が長くなるのもストレスになりますし、そういったストレスは軽減してさしあげたいですからね。」
④ 増患対策
開業当初の外来患者数は1日9人だったが、現在は30人であるという。この数字を達成するまで2年を要したそうだ。増患対策としては、開業当初は電話帳と看板での広告がメインだったが、1998年頃からはホームページでの展開を行っている。またクリニックの認知が広がるにつれて、口コミでの来院も増えている。
「精神科の患者さんは通院期間が長いことが特徴ですね。数年かかることもあり、長いお付き合いになります。外来頻度は月1回の方もいれば、2週間に1回の方もいます。月間延べで500人の患者さんを診察させて頂いています。」 |