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来てよかったと思われる医院に

たかはし耳鼻科

高橋 健太郎 院長

  たかはし耳鼻科は神奈川県高座郡寒川町にある「湘南寒川医療モール」3階にある。最寄のJR相模線寒川駅からは歩いて15分ほどかかるが、町役場などに近く、車での移動がメインである地域性ゆえに好立地である。モールは5階建てで、5階が歯科、4階が産婦人科・小児科、2階にも近く整形外科が開業する予定だ。
  もともと耳鼻科の不足していた地域でもあり、2月の開業早々から多くの患者が訪れ、地域住民から期待を寄せられる医院である。

 

 高橋 健太郎 院長 プロフィール

  1973年香川県小豆島生まれ。1998年に信州大学医学部を卒業し、同大学医学部附属病院耳鼻咽喉科に勤務する。2001~2002年にベルギー・アントワープ大学に留学する。帰国後、東京都江戸川区の医療法人社団宗仁会に勤務し、さくら医院、ひまわり医院の耳鼻咽喉科を経て、サンクリニック院長に就任する。2007年2月1日に、たかはし耳鼻科を開院した。

■ 開業前後

  高橋 健太郎院長は小豆島で生まれ、香川県の高校から信州大学医学部に進んだ。実家は醤油醸造業を営み、医業とは関わりない家庭で育ったが、祖父の姿に大きな影響を受ける。
  「祖父が地方議員をやっていたのですが、当時島に病院がなかったため、誘致しようと熱心に活動していました。それを見ていたので、医者というのはそれだけ必要とされる仕事なんだというのがよくわかり、それから医者になろうと思いました。」

  一方、高橋院長は小学校から高校まで野球に打ち込み、大学でも野球部に所属する。信州大学を選んだのは冬のスキーに惹かれてだという。スキーはインストラクターの資格も取るほどで、馬の八方尾根スキー場で教えていた時期もあったそうだ。

  大学を卒業して研修期間中に診療科を選ぶ際、高橋院長は手術に興味があり、漠然と「外科系がいいな」と考えていた。
  「すぐに自分で手術をしていきたいと思っていましたが、外科では人数が多くてなかなか新人が手術させてもらえる機会はないだろうと、耳鼻咽喉科を選びました。その目論見は当たって、大学病院の医師となってからは即戦力として、どんどん患者さんを診て手術もしました。耳鼻咽喉科は普通の人が考えるよりもずっとテリトリーが広く、脳外科の分野以外の頭部は全て、それに食道や甲状腺なども含まれるので、いろいろなことができるのです。」

  開業までは大学病院の勤務医、クリニックでの勤務医、クリニックの院長に加え、留学も行うなど、様々な経験を積んでいる。大学病院時代には病院での診療のほかに研究も続けていたが、高橋院長はガンの遺伝子に興味があり、その研究のためにベルギーに留学した。 「残念ながら、探していた遺伝子までは究明できなかったのですが、そのときに研究したことは、いま開業医として患者さんを診るのにも役立っています。目の前の症状と直接つながっていなくても、そのような研究をバックボーンに持ちながら診療にあたれば、より広い視野で考えることができますからね。」

  ベルギーから帰国後は東京の医療法人で3つの医院を回った。開業については、積極的に望んだわけではなかったが、2006年7月末に保険会社の営業マンにリンク医療総合研究所(以下リンク総研)を紹介されたことで状況が一変する。
   「『どこかにいい物件ありますか』と尋ねたら、3つの物件の候補が出てきました。さらに『この中でどれが一番か』と聞いたら、『ここだ』との答えで、すぐに見に行き、即決しました。ですから物件を見たのはここだけなんですよ。」

  リンク総研の担当者はこう回想する。
  「『3つあるけれど、私ならここでやります』と答えましたら、高橋院長は急に真剣になって、3つの物件の情報を仔細に見始められました。即座に見学に行ったものの、当時、モール自体はまだ建設中だったので、オーナーの自宅へ伺って話しているうちにすっかり打ち解けてしまい、すぐに決断されたのです。開業といえば人生の上での大きな転換点ですが、高橋院長は短時間にきちんとポイントをつかんで決定する力があると、驚きました。その後のお付き合いの中で、いろいろなめぐり合わせがかみ合っていて運のいい方だとも感じましたが、それもご本人がとても努力家で、ナチュラルで飾らないお人柄だからこそ、自分で運を引き寄せてしまうのだと思いました。」

  湘南寒川医療モールは2006年9月にオープンしたが、開業には最低でも半年はかかるため、患者さんが増える花粉の時期を前にした2月1日を開業日と決めた。
  「物件を決めてから開業までは特に問題はありませんでした。内装の会社がのんびり、ゆったりとした社風なのか、完成したのが開業前日だったので少しハラハラしたぐらいですね(笑)。」

  また開業資金については、高橋院長が早い段階で開業することを考えていたわけではなかったために潤沢な預貯金もなかった。
  「ベントレーという車を買ってしまった直後だったんですよ。車を売って見せ金を作り、借入することをアドバイスされましたが、私としては買ったばかりの車を売りたくないですし、なんとか借りられるように頑張りました。でも、開業するならきちんと貯めておいた方がいいですよ(笑)。」

  開業にあたって一番大変だったのは勤務先の病院を退職することだった。病院からは慰留もあり、患者さんにも退職をなかなか告げられなかったという。結局、12月30日まで勤務し、開業後も3月まで、休みの日には江戸川へ診療に通っていた。退職から開業まで1か月しかなかったため、病院の診察後や休日に設計士やインテリアデザイナーと打ち合わせをしたり、自宅の引越しも済ませた。「開業準備をしている頃に、茅ヶ崎でペットショップをやっている知り合いからネコをもらったりして、この地への縁を感じました。」

■ クリニックの内容
 

  医療モール3階にあるクリニックのドアを開けると、広々とした待合室がある。キッズスペースもあり、椅子がゆったりと置かれている。オレンジ色を基調とした内装はやさしい暖かさを感じさせる。診察室もカラーベースはオレンジとなっている。オレンジ色は高橋院長の好きな色で、診察室で患者さんが座る椅子や医療器具も全てオレンジに統一している。これなら子どもも緊張せずに診察が受けられそうだ。

  「医療器具は銀色や白のものが多くて、冷たい感じがするのが嫌だったのです。そこで金属の器具の上に塗装したのですが、狙った色がうまく出ず、やり直してもらったものもありました。それだけに患者さんにも好評ですよ。最近、待合室の椅子が足りなくってしまってなんとかしなければと思っています。空間は大きいのですが、椅子をたくさん並べるには不向きな形で、頭を悩ませているところです。」

  広い診療スペースに恵まれたため、診察室内に個室の点滴室を設けたり、細かい手術ができる手術室、処置室、レントゲン室もとることができた。吸入器は窓に向かう場所に5台分設置している。窓の外には左手に富士山が見えるなど、吸入しながらやすらげる環境となっている。しかも1台おきにしか使用していないため、子どもさんと保護者が並んで座ることが可能であり、高橋院長の狙い通りのスペースになった。

  寒川町は藤沢、平塚、厚木などの市に囲まれているが、耳鼻科の医院はほとんどなく、たかはし耳鼻科には開業当初から高いニーズがあった。開業月の2月でも1日の外来患者数が70人から100人だったという。そして3月から4月にかけては100人強と、診療時間が短い土曜日があることを考慮しても、驚異的な数字となっている。患者層も子どもから高齢者まで幅広いが、半分以上が茅ヶ崎、藤沢、海老名、平塚といった周辺市からの患者さんで、寒川町内の患者さんは半分以下である。
   「寒川だけでなくこの地域全体で耳鼻科が求められていたのですね。広告も出していませんし、ホームページにもあまり力を入れていないので、患者さんからの口コミがほとんどですね。子どものお母さん同士での話を聞いてという方も多いですよ。」

  医療モールでの開業は医院相互の連携がとれることが最大のメリットである。風邪で小児科に来院した患者さんが蓄膿症などになれば、たかはし耳鼻科を紹介されるし、たかはし耳鼻科から歯科に紹介することも多いという。高橋院長は「モールでなかったとしても、信頼できる、別の科の病医院が近くにあるというのは大事なこと」だと語る。

  ベースカラーをはじめ、自分らしさを出したクリニックづくりにこだわりを感じるが、医療機器、器具などにも力を入れている。その中でも電子ビデオスコープは直径3.1mmの内視鏡で、世界最小のものを導入した。耳、鼻、のどに汎用でき、カラーモニターで患部を患者さんと一緒に見て納得してもらうことができる。また動画も撮れるため、将来的に電子カルテを導入すれば、動画のデータを取り込むことも可能である。この地域では先駆的な器械であり、都内でも都立墨東病院と東大病院にしか入っていないそうだ。耳の手術用顕微鏡も高品質である。

  他にも、耳垢を取るアリゲーター鉗子は刃先がどれだけ精密に合うかが重要であるが、気に入ったものを入れ、メスの刃先などにもこだわるなど細かい医療機器の選定には気を配る。また耳の中を見るブリューニングは、表面が金属だと光が反射して見にくいので、黒にコーティングするというような工夫も怠らない。

  「耳鼻科は細かい作業をする外科のようなものですから、こういうところがとても大切なんです。私は小さいときからプラモデル好きだったので、耳鼻科は合っていたのかもしれませんね。ここはクリニックですが、最先端の医療機器を導入することなどで大学病院と同じような高度な医療レベルを患者さんに提供していけるようにしたいと考えています。」

  スタッフは、医師が院長1人、その他、看護師1人、看護助手1人、事務員3人の体制である。
  「患者さんをお待たせする時間が長いのが今の悩みの種です。しかしながら診察の前にスタッフが患者さんの様子を聞いておいてくれたり、診察後にも『聞きそびれたことなどはありませんか』と一声かけてくれたりするのがとてもありがたいです。
  スタッフの募集はアイデムで行いました。リンク総研の担当者も全員の面接に立ち会ってくれて、いいスタッフを採ることができました。」

  リンク総研の担当者は、「クリニックは人で決まるので、人材募集は慎重に行わないといけません。たかはし耳鼻科では1回目の募集で来て頂きたい人材が必要なだけ揃わなかったので、妥協せずに再募集をかけました。その結果、全体的に暖かい雰囲気のスタッフ構成になりました。あまり堅苦しい人だと高橋院長のお人柄と合わないですし、患者さんと自然に接することのできる人に来てもらえたのが、クリニック全体の雰囲気づくりにとって非常にプラスだったと思います」と話している。

今後の展望

  「患者さんに『来てよかった』と思われるような医院にしていきたいです。患者さんはそれぞれ求めるものが違います。病名を聞くと安心される方、逆に病名を聞くと不安になってしまい、状態を説明して処置や投薬をしていくのがいい方もいます。患者さんの気持ちを汲んで、対応したいと思っています。毎日が他流試合の連続のようなものですが、それが開業の楽しさですね。
  大きな病院で手術をすることになった事例はまだありませんが、そのようなときにはぜひ私も立ち会いたいと思っています。」

  高橋院長は毎朝7時30分に出勤し、2時間を準備にかける。また診療が終わってからも残ってカルテの整理をする。その日のカルテを全部見直すことで、今後の治療方針やシミュレーション、アプローチ方法などの作戦を練る時間となっているのだという。また、朝は急に手術が入っても対処できるよう、手術の準備をも整えておく。

  患者さんひとりひとりに向き合い、どれだけ安心して治療を受け、楽になってもらえるかということを考えるために、高橋院長は患者さんから見えないところで行動しているのである。
   「耳鼻科では夏に向かう時期に患者数が減少しますので、患者さんから要望の出ているレーザー治療についても検討したいと思っています。今後も患者さんの望みに応えられるような医療レベルを持った開業医として、やっていきたいです。」

■ 開業に向けてのアドバイス

  たかはし耳鼻科のように、開業早々から1日100人の来院者を迎え、順調にスタートできる例は少ないかもしれない。これには商圏としての立地条件や、車での来院者が中心の地域で駐車場を充分にとった医療モールであることなども大きな成功の要因になっているだろう。しかしそれより大きいのは、毎日カルテを見直しなどの積み重ねや、院内3カ所に絵本の棚を設け、吸入器の台には絵本のカバーから切り取った絵を自分で貼り付けて子どもが退屈しないようにするといった心遣いを感じ取った患者さんからの信頼があるからだろう。高橋院長が勤務医時代から治療だけをするのでなく、患者さんひとりひとりに思いを込めて接してきた成果なのである。
  「開業すると、全部自分で診られるのがいいですね。病院だと、曜日のシフトなどあってなかなかひとりの患者さんをずっと診ることができませんが、クリニックだと初診から経過を全て追うのできめ細かく診られます。それだけに全て自分の責任にかかってくるわけですが、そこに大きな遣り甲斐を感じています。また人として接することができることも仕事に対しての高い満足度につながっています。」

■ 高橋院長のプライベート

  「草野球のチームに入っていて、休みの日には練習や試合に行っています。横浜のチームに入れてもらっているのですが、ゆくゆくは地元で選手を集めてチームを作りたいと思っています。江戸川では自分でチームを作ってやっていたんですよ。
  それと船釣りですね。よく行くのは伊豆半島の方で、今の時期だとキンメダイなどを狙って釣ります。仕掛けなどもいろいろあるので、釣り道具だけでも結構な量ですね。小豆島出身なので、やはり海と気分的に近いのでしょう。

  晴れていれば野球か釣りですが、雨が降ると車をいじっています。車も好きで、一番新しいベントレーの他に、通勤用のアルファロメオ、軽快に走れるフィアット・パンダ、頻繁に壊れることが楽しくもあるアウトビアンキ、あまり日本では見られないフィアット・ムルティプラを持っています。あまり丈夫で安定している車は可愛げないのですが、壊れてくれるとそこを修理するのが楽しみなんです。」

  高橋院長は趣味でも外科的な作業が好きなのだろう。また、自宅には2匹のネコがいるというが、先述の茅ヶ崎のペットショップに預けられた子猫の中で、仲のいい“ふたり”を連れてきた。
  「私が昼間いないので、ひとりだと寂しくてかわいそうだから」という言葉の中にも、人間にだけではなく、生き物みなに対する思いが垣間見られた。

先生タイムスケジュール


クリニック平面図



たかはし耳鼻科
院長 高橋 健太郎 氏
住所 〒253-0105 神奈川県高座群寒川町岡田5-5-8湘南寒川医療モール3F
敷地面積 1,000㎡
延床面積 188㎡
医療設備 中耳内視鏡、鼻腔内視鏡、喉頭内視鏡、精密聴力検査
物件形態 ビル、5階建て
スタッフ数 常勤医師1名、看護師1名、事務員3名
商号 たかはし耳鼻科
設立 2007年2月1日
資本金 1,000万円
業務内容 耳鼻咽喉科、気管食道科、アレルギー科
従業員 5名
HP http://www.takahashi-ent.jp/


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(終わり)
2007.06.01掲載 (C)LinkStaff

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