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高齢化社会に対応すべく心をこめた地域医療

むらやま泌尿器科クリニック

村山 眞 院長
 

  むらやま泌尿器科クリニックは福岡市南部である城南区七隈にある。近くには九州一のマンモス大学である福岡大学があるため、学生街として賑やかな反面、昔からの町並みが色濃く残ってもいる。 渋滞時は福岡市の中心部である天神までバスで約1時間かかっていたが、2年前に福岡市営地下鉄七隈線も開通し、天神まで約20分のアクセスを実現したことから、加速度的な発展が進む。
今回はむらやま泌尿器科クリニックの村山 真院長にお話を伺った。
  

 

 村山 眞(むらやま まこと)院長プロフィール

村山眞院長は福岡県北九州市の出身で、地元の高校を卒業後、1981年に福岡大学医学部を卒業する。その年、福岡大学泌尿器科に入局し、1985年に北九州市立病院、1988年から1990年まで田川市立病院に勤務する。1991年から2004年まで福岡県飯塚市の医療法人博和会 橋本病院で院長に就任し、2004年10月にむらやま泌尿器科医院を開業する。

■ 開業前後

  村山院長の家系は代々医師が多く、お祖父様、お父様も医師であり、お父様は北九州市で皮膚科を開業されていた。そのような環境の中で、周りからも医師になるのが当然と思われていたという。
  
「小さい頃から本が好きで、アフリカのコンゴのジャングルに病院を建て、現地の人たちを治療したことで有名なシュバイツアー博士の伝記を読んで、憧れたこともありました。自分でも医師になることに何のためらいもありませんでしたね。弟も福岡市の隣の新宮市で皮膚科を開業しています。」

  福岡大学を卒業して、専門科目を泌尿器科にした理由はいくつかあった。 一つは超高齢社会を迎える日本では泌尿器科の存在は重要性を増すだろうということである。身近な例であれば、排尿のトラブルが挙げられる。これは人としての尊厳を失わせ、QOLを落とすことにもなるので、改善が要求される。また近年多くなってきた前立腺がんの対応も泌尿器科の領域である。 二つ目は、尿路生殖器の疾患に対し、内科的にも外科的にもアプローチができるということで、三つ目はがん、生殖、移植という、これからの重点医療全てを体験できる科目であるなど、総合的に判断して決めたそうだ。
 
  福岡大学病院の泌尿器科に入局し、その当時の教授の「患者さんは体だけを診るのではなく、心も診る」の言葉に強く感銘を受ける。当時は「治療で悪い部分が直ればよい」という考え方が主流であり、「その後の快適な生活を送る」、つまりQOLの向上を図るという言葉もない頃であった。
 
  「その時代に、そのお話を伺ったことが現在の治療方針の根底にありますね。」 医局人事により、複数の病院に勤務して研鑽を積み、昔からの夢であった開業医になることを決意する。

  「あまり人の言うことを聞かない性格なので、勤務医には向いていないのかなとも思いました(笑)。そして父も開業医でしたので、私が開業することは規定路線のような気もしていました。」

  開業にあたっては場所の選定から始めねばならず、非常に苦労した。お父様が開業されていた場所で開業することも考えたが、著しく人口も減少しており、経営的に難しいと判断した。村山院長はそこで発想を転換する。標榜科目を皮膚科、泌尿器科、透析科としたため、福岡大学病院と連携をとり、透析患者の紹介を貰うことを考えた。結果的に、福岡大学病院から約1km離れた場所で、かつ大通りに面した場所を選ぶことができた。

  また場所選びと並行して行っていた開業資金の調達も苦しむこととなる。そこで初期投資を極力抑えるために、ある薬局のオーナーの資金で4階建ての建物を立て、毎月賃借料を払う方法にした。新築のため、設計、建築業者と話し合いを重ねることで、内装や間取りについては村山院長の意向を汲んだ内容になった。その意向とは、病院らしくない内装を施し、癒しの空間を演出することである。開業資金は2億円であった。

  「何軒も金融機関に頭を下げても融資を受けられず、高校の友人である銀行の支店長の紹介でようやく開業資金を借りることができました。自己資金は2千万円でした。」

  スタッフ集めについては、新聞への折込広告を行い、ハローワークで募集もかけたが、特に苦労はなかったという。開業当初は病床がなかったので、スタッフ7名でスタートした。

  「最初は患者さんが全くこない日も多かったんです。増患対策として道路脇や地下鉄のコンコースに看板を設置したんですが、効果はすぐには表れませんでしたね。その後、大学病院や近隣の病院からの紹介が徐々に増えていきました。」

1日平均の外来患者数は最初の半年間は5人くらいであったが、現在では15人程度まで増加している。

■ クリニックの内容・運営
 むらやま泌尿器科クリニックは村山院長の専門性を全面に出し、泌尿器科を標榜し、その相乗効果で増患対策を図っている。

  泌尿器科では、尿路感染症での外来が多く、内科的治療で回復に向かわせる。最近では、前立腺肥大症や膀胱腫瘍の患者さんも多くなり、内視鏡的治療法である経尿道的切除術(TUR)で対応している。

   「私一人でやっていますので、クリニックでできる外科的治療はTURが限界です。」

  また透析室を設けており、開業時からのパートナーである透析専門医が対応している。現在は福岡大学病院の紹介患者を約40人受け入れる。


  「スタッフの教育も非常に熱心に行っている。最小のスタッフで、患者さんに最大の満足を与えるためには、一人一人の「気づき」が必要だと説く。

   
「常に高いアンテナを張り、患者さんが何を欲しがっているのかを感じ取り、それを行動に移すことが一番大事であると、口を酸っぱくして言っています。」  

   前回の診療報酬改定で、人工腎臓への各種治療の包括化が進み、透析食、腎性貧血治療薬のエリスロポエチン、長時間透析などは従来は出来高払いであったが、ことごとく包括化された。夜間の休日加算点数も引き下げられ、若干の影響が出たという。

  病院からの紹介ももちろんあるのですが、スタッフの態度が患者さんの共感を呼んだようで、患者さんからの紹介が増えてきたことが嬉しいですね。最近では多少の余裕もできました。」

今度の展望

  院長が今後力を入れようとしているのが在宅診療である。厚生労働省は医療改革の目玉にしているが、従来の内科系の医師でなく、泌尿器科医の在宅診療は成り立つものだろうか。


  泌尿器科医が診察する患者さんは少ないと思います。しかしながら在宅の場合ですと、高齢者の尿失禁や排尿困難などの排尿管理は非常に重大な問題であり、そこに我々の役割も出てくるのではないでしょうか。」


  村山院長は現在、老健施設で在宅診療を行っている。ただ、クリニックも開設して3年弱であり、まずは外来患者を獲得することが優先されるため、在宅診療を本格的に行う体制は取れていない。

  TURなど、クリニックでの外科的治療は少なくなることが予想されるので、病診連携を充実させ、透析患者の受け入れを増やしたいですね。そういった中期的なビジョンの中で一つのテーマとして在宅診療を考えていきたいと思っています。」

開業に向けてのメッセージ

  まず初期投資を極力抑えるべきです。さらに自分が思い描いている建物の大きさ、導入予定の医療設備機器を、実際は少し抑えて下さい。計画段階では「何とかなるだろう」という気持ちがどうしても出てしまいがちですが、あとで大変な苦労をすることになります。
  二番目は医者にもそれぞれタイプがあります。例えば大学病院に残って力を発揮するタイプ、また市中病院で力を発揮するタイプ、そして開業医で力を発揮するタイプなどがあると思います。自分自身を冷静に分析して、方向を決めるべきです。今からは淘汰の時代です。したがって安易に開業を考えるのは危険です。

村山 眞院長のプライベート

 休みがあまり取れないので、いまのところ「旨いもの巡り」をしています。高級料理屋だけでなく、B級グルメも大好きで、特に焼酎にあう肴であれば言うことありません(笑)。

先生タイムスケジュール


クリニック平面図



むらやま泌尿器科クリニック
院長 村山 眞  氏
住所 〒814-0133 福岡市城南七隈7-2-1
敷地面積 270㎡
tel 092-874-0020
延床面積 703㎡
病床数 13
設備 透析室(同時透析30台)、レントゲン室
  膀胱鏡室
物件形態 4階建て,1皆駐車場
スタッフ数 常勤医師2名、看護師16名(準看、パート含む)、事務員2名、技師2名
開業資金 2億円
運転資金 2,000万円
HP http://www.myclinic.ne.jp/murayama/pc


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(終わり)
2007.07.01掲載 (C)LinkStaff

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