山口院長は救急を専門としていたため、内科、外科に特化したトレーニングを積んだわけではなく、それが訪問診療にはプラスになっている面が少なくない。また高度医療機器に抵抗がない点も強みであろう。 「救急にいて良かったところは患者さんの状態変化への理解の仕方でしょうか。疾患に基づく変化ではなく、全身を診ることで状態が上向きなのか、下向きなのかなどを理解できますね。そして多科に渡る他科へのコンサルトも救急にいると得意になります。三次救急にはADLの悪い患者さんを送らないなど救急搬送時の受け入れ先の選定も、かつては受け入れる側にいたのですから向こうの気持ちも分かります(笑)。」 一方、やまぐち内科の運営理念の一つに「専門性に甘えることなく、総合的な医学的管理を行い、また総合性に甘えることなく、ガイドラインに沿ったクリニカルパスを駆使し、医学的管理の質の向上を常に目指す」とあるように、クリニカルパスの存在は大きい。
「急性期病院にいたときに慢性期医療こそクリニカルパスが大切だと思うようになりました。最新の知見に基づいた医療が行われているか常にチェックする必要があります。高血圧、皮膚疾患など複数の専門医に受診が必要な患者さんも多く、それぞれの疾患に合わせたクリニカルパスを作成し、それを組み合わせたオーダーメードの医療を目指しています。」 1. 在宅医療 通院不可能な患者さんが対象である。治療上、24時間の監視装置(モニター)の装着が必要な患者さん以外で、本人のみならずご家族が希望する場合は在宅が可能である。診療内容としては、胃瘻、各種ドレーン、各種カテーテル、気管切開、在宅酸素、在宅人工呼吸器、在宅自己注射、褥創、人工肛門・人工膀胱、中心静脈栄養など幅広い。対象の状態も寝たきり、悪性腫瘍末期などのターミナルケア、神経難病、認知症などとなっている。クリニックから車で30分以内の地域であれば、対応可能としているため、垂水区全域はもとより、須磨区や西区の一部、明石市の一部も範囲に含まれている。 「患者さん本人の気持ちを最大限大切にして、倫理的な面を尊重しながら使える医療資源をとことん使って、様々なご提案をしています。有料老人ホーム、グループホームは企業体による経営ですからリスク回避の傾向があり、そういったところの入居者に比べると、在宅の患者さんの方が重症度が高く、医療を受けることにも積極的な印象があります。より納得して頂ける医療方法を深く考えなくてはいけないと思っています。」
2. 有料老人ホームへの訪問診療
施設の人員配置を最大限に利用したコーディネートが必要となる。有料老人ホームの看護師は月曜から金曜の日勤であり、夜間や週末にはいない。またヘルパーでは胃瘻の注入が不可能なこともあるので、胃瘻を短時間で注入する方法なども工夫している。
「施設によっては気管切開や褥創などの処置ができないところもあり、施設のニーズに合わせた治療が前提ですね。」
3. グループホームへの訪問診療
グループホームには看護師がいないので、ヘルパーのみでできることを提案する。またヘルパーの教育も重要であり、患者さんへコミュニケーションをとる上でのアドバイスを常に行っている。
「ヘルパーさんが意識をより向上させることで、患者さんの希望を叶えることにつながればと思っています。」
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