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芳仁皮膚科医院
張 賢二 院長  東京都江東区の門前仲町は都民に古くからの下町として親しまれているエリアである。周辺には深川不動尊や富岡八幡宮があり、深川縁日には多くの人出で賑わうなど、江戸の情緒を今に留めている街だ。東京メトロ東西線のほか、都営大江戸線も通り、都心からのアクセスも良好である。
 今月ご紹介する芳仁皮膚科医院は門前仲町に6月4日に開院したばかりの新設医院だ。リンクスタッフ主催の美容研修会で講演講師も務め、「患者様に選択肢のある医療を提供し、地域に密着した医療を目指したい」と語る張賢二院長を訪ねた。
張 賢二 院長プロフィール

1989年に京都薬科大学製薬化学科を卒業し、薬剤師免許を取得する。1990年に京都薬科大学薬品製造学研究室研究員となる。1996年に日本大学医学部卒業後、都立駒込病院内科系総合臨床研修医となる。1998年に日大板橋病院皮膚科学教室に入局する。2002年にシロノクリニック銀座院長に就任し、総医局長を兼任する。2006年から西部中央病院内科、東陽皮膚科医院に勤務する。2008年6月、芳仁皮膚科医院を開院する。
日本皮膚科学会会員 日本レーザー医学会認定医 日本臨床皮膚外科学会認定医
日本臨床皮膚科医会会員 日本美容皮膚科学会会員 日本内科学会会員
日本抗加齢医学会専門医 日本東洋医学会会員
■ 開業前後
 張賢二院長は京都薬科大学を卒業し、薬剤師の免許を取得した。しかし、当時医薬品製造の研究職を希望していたため、「卒業するからには免許を取っておかないと」程度の考えしかなかったという。医学部に関しても、以前から行きたかったというより、薬学部を卒業する頃に「もう一つステップアップしたい」と考えていたところに、医療、鍼、漢方などの選択肢が思い浮かんだことで進学に踏み切ったそうだ。
 「もちろん医療にも少なからず興味はありましたし、人の手助けをしていきたいという気持ちもありましたが、向いていると思ったからとしか今は言いようがないですね(笑)。手当という言葉もあるように、実際に手を当てて実地的なことができる職業に就きたいと漠然と考えてもいました。自分を磨くための場が欲しかったし、体力には自信があったので、頭を使いながら体力も使う仕事と考えたら、そこに医療がありました。人と対面する仕事がもともと好きだし、向いていると思います。色々な人との出会いが自分の刺激になりますし、今は仕事をしていて、こんなに楽しいことはないですよ。」

 医師を目指した張院長は日本大学医学部へ進学し、卒業後は都立駒込病院で内科系総合臨床研修医として、医師としての礎を築く。都立駒込病院は大きな組織で、人材に厚みがあり、スキルアップや自己修練の場として多くのことを学んだという。
 「教科書みたいな方々がずらりと揃っていました(笑)。皆さん、指導は丁寧で、とても親切でしたね。自分自身に厳しく、患者様には優しくといったかっこいい先生が非常に多かったです。憧れるけど、私にはまだ遠い存在だなと思うような優秀な先生が多くおられました。パワーにあふれ、潜在能力の高い方々に引っ張られると、限界ラインも高くなりがちです。寝ないで仕事をし、家にも帰れませんでしたけど、苦痛を感じたことはなかったですね。医師としてのハートの部分は駒込病院で学びました。」

 皮膚科を専門としたのは、日大板橋病院の皮膚科学教室に入局してからのことだ。都立駒込病院のアレルギー膠原病科で、内科であるにもかかわらず皮膚を診る処置を任されたときに皮膚科の面白さを感じたそうだ。
「外科系のことが好きだったんでしょうね。当時は皮膚科か形成外科かで迷ったんですが、形成外科よりも皮膚科の方が病気そのものをミクロに考えられるのではないかと思ったんです。ぎりぎりまで迷ったんですが、自分の母校にも戻るのもいいかなとも考えまして、選びました。」

 その後、美容外科の権威であるシロノクリニックで銀座院の立ち上げの段階から携わり、院長職に就く。西部中央病院では内科を中心に、東陽皮膚科医院での勤務も美容皮膚科、アンチエイジング専門であった。しかし張院長は「美容皮膚科・アンチエイジングに特化する」という考えはなく、「皮膚科の中の美容、皮膚科の中のアンチエイジング」との考えを持っていた。そして、その考えを開業という形で結実させたいと思うようになったという。
 「特化するだけが医者ではないという気構えではありましたが、医者になったからには専門性を持ちたい、武器を持ちたいという気持ちもあって、シロノクリニックに入職しました。美容では人に教えてもらうばかりではなく、自分でやらなければいけないケースが非常に多いんですね。それで、ここから先は自分で磨きたいという気持ちが強くなっていきました。枠のない自由診療という診療体系は常に新しい発想と自己責任が必要とされる究極の診療です。ただ自由診療のみでは患者様の負担も大きくなるので、いろいろな病気や悩みを解決する上で、保健診療で身につけた細やかさを融合した診療を実践していきたいと考え、開業を決意しました。また親孝行のつもりで親に独立した姿を見せたいという思いもありました。」

 最終的に開業を決めたのは2007年度末だった。物件探しでは「やると決めたらとことんまでやる」という持論のもと、クリニックビル内の物件を避けたという。医者同士のつながりにエネルギーを注ぐよりも、技術をもっと磨き、地域の目線に合わせた診療をしていくことが自分らしい開業スタイルだと考えたからである。
 そして2008年6月4日に門前仲町に保健診療と自由診療を融合した芳仁皮膚科医院を開業した。開業することを全く考えていなかったため、知り合いの医師や患者さんは驚いていたという。
 門前仲町に決めたのは町の雰囲気が気に入ったからです。感覚的なものなので説明は難しいのですが、ここなら毎日通ってもいいかなと思いましたね(笑)。町の雰囲気は明るいし、とても活気があります。美容はスペシャルな診療ですが、この土地なら子どもからお年寄りの方までジェネラリスト的な診療ができますし、皮膚科も内科も専門的なことはできないですが、診られる範囲のものを無理せずにきちんと診るということを実践できる土地ですね。ビルのオーナーの方も非常に協力的で、ビルの居住者の方にアンケートを取ってくださいました。その結果、開院に賛成の方が非常に多く、恵まれたスタートでした。」

 待合室は病院や診療所の雰囲気はなく、広く、リラックスのできるスペースとなっている。また廊下から診察室に至るまでは余計な物や装飾を避けている。診察室もかなり広めだ。
 「待合室では病院に来ていることを忘れてリラックスしてほしい、また診察時には病院に来たと思って、診察や治療に専念してほしいという思いを込めています。」

 一般的に皮膚科の診療所は30坪ぐらいといわれているが、芳仁皮膚科医院は54坪とかなり広めの設計だ。保健診療を中心としながらも、美容をはじめとした自由診療も視野に入れており、レーザー機器なども取り入れているためである。張院長は「全てを贅沢に」という表現で、内装にもこだわりをみせている。
 「設計を担当していただいたデザイナーが慎重でかつ細やかな方で、打合せを10回以上重ねて、やっと図面が出て、さらに図面も10回以上変更しました。私だけではなく、デザイナーの方も妥協を許さなかったんですね。私が納得したものを作っているということを私に自覚させたかったのではないかと思います。本来は5月にオ-プンしたかったのですが、焦っても仕方がないですし、日取りも良かったので、6月4日を開業日に決めました。」

 スタッフの募集はハローワークやフリーペーパーの広告を活用するとともに、知人からの紹介で対応した。現在は看護師1名、受付2名、診療助手兼エステティシャン1名の体制である。コミュニケーションを円滑に取れる人を採用したという。古くから一緒に仕事をしていたかのように、院長を含めたスタッフ間の関係は良好で、開院してから数週間とは思えないように打ち解けている。
 「怒鳴り散らすわけではないですけど(笑)、我慢しないで言うべきことは言っていますし、なるべく溜めないように心がけています。単なる事業主と雇用者の関係ではなく、雇う側は親のように責任を持たなければいけないという気持ちで接しています。そうしなければ叱るべきところで叱れないし、褒めても嘘っぽくなってしまいますから。スタッフにとってもスキルアップ、ステップアップの場にしてほしいですね。」

 告知は電柱広告と折り込み広告を活用したが、ホームページはまだ開設していないそうだ。
 「患者様の要望もあり、ホームページ開設の準備を進めているところです。患者様に通っていただくためには、医師、看護師、受付を含めた全てのスタッフの力が必要ですね。」

 内覧会を5月31日に行い、あいにくの雨にもかかわらず50人の方が来院し、十分な手ごたえを掴んだという。開院日には40人の方が来院し、運営は順調である。
■ クリニックの内容
 張院長は開業するにあたって実現したい理想の医療を追求していこうと決意し、選択肢のある医療を提供している。
 皮膚科では湿疹やかぶれ、じんましんなどの日常的な疾患からスーパーライザー、炭酸ガスレーザーなどを用いた先進的な医療まで提供している。内科では風邪や生活習慣病(メタボリック症候群、高血圧、高脂血症、痛風など)を診療するなど、まさしく地域のかかりつけ医だ。院長の経験から美容皮膚科も標榜し、毎週土曜日の午後には完全予約制の手術も行っている。

 「患者様が何を求めているのかを明確に掴むことを重視し、過剰な検査、過剰な治療、高額な治療にならないように、なるようなら必ず十分なインフォームドコンセントを心がけています。完治まで診療回数を数多く重ねる必要があれば、保険診療の方が遠回りになってしまうケースもあります。レーザーなどの自由診療で1回の治療で済むものと保険診療で何回も通うのはどちらが患者様にとって優しいのか、トータルで考えるようにしています。自由診療は敬遠されがちですが、金銭的にも負担が軽くなるケースもあります。そういったときには十分に説明をして理解をしていただける方には対応していきますが、決して強要はしません。患者様の選択を優先します。なかなか理解が難しい患者様にも時間をかけて説明しています。コミュニケーションを取っていくうちに患者様自身も診療回数や治療方法を勉強されていくと思っています。」
■ クリニックの経営方針・運営方針
 芳仁皮膚科医院は「皮膚科・アレルギー科・内科・美容皮膚科」を標榜している。地域の小さな子どもからお年寄りまで、近隣の方々が安心して受診できるホームドクター(家庭医)が目標だ。理念や具体的な方針は特に標榜していない。
 「家族のように責任を持って患者を診る、そして治すことに尽きますね。とても難しいことですが(笑)。理念の標榜は考えませんでした。治療方針も3つぐらい掲げている医院もありますけど、それぞれの違いがよく分からないところもありますね。」

 張院長は院長職として経営に携わるのは初めての経験であるが、特に緊張もなく、無理をしないように心がけているという。
 まだ開業して間もないが、張院長は今後の課題を「私を含めたスタッフが診察を通して『医療とは、クリニックとは、ここにいる私たちの役割とは』という心構えを学び、成長していくことだ」と挙げた。
■ 今後の展開
 いろいろと考えていますが、具体的に一つ挙げれば若い医師やレーザーを学びたいという医師の修練や教育の場のようになっていければいいですね。以前はそういった教育の場がありませんでしたし、私の場合は早めに大学から外の世界へ出てしまいました。当時、そういった教育の場所があればまた違う経緯があったのかもしれません。勤務医時代には休日を利用して3年間、大学病院に指導に通っていた時期もあります。そういった経験を今後も生かしていきたいですね。
■ 開業へのアドバイス
 開業をすると先は長いので、気持ちを大きく持って、焦らないことですね。あとは健康が一番です。何よりも体力に尽きますね。お金もかかることですし、いろいろと乗り越えていかなければならないことも多いですけど、「よし決めた」と決心したらあとは一直線です。ただ開業する場所は自分の理想と照らし合わせて、慎重に考えたほうがいいですね。
■ 院長のプライベート
 海や水のあるところが好きなので、休みの日は釣りに行くこともあります。また週末には飲みに行ったりしています。最近はスポーツをしていないので、スポーツを趣味と言うのは嘘っぽくなりますね(笑)。以前は空手を20年ぐらい続けていたんですが、もう10年近くやっていないです。
先生タイムスケジュール
勤務医時代   開業医時代(現在)
08:30 起床 6:00 起床
10:00 出勤 08:00 出勤
10:30~ 診察 9:00 診察
20:00 整理 20:00 整理
22:00 帰宅 21:00 帰宅
02:00 就寝 24:00 就寝
クリニック平面図
芳仁皮膚科医院
院長 張 賢二 氏
住所 〒135-0047 東京都江東区富岡1-23-17 T.Tビル2F
URL http://www.ho-jin.jp/
医療設備 スーパーライザー、炭酸ガスレーザー、Qスイッチルビーレーザー、ロングパルスアレキサンドレーザー、光治療、超音波イオン導入機、クリスタルピーリング
延べ面積 178.2㎡
スタッフ数 院長 看護師1名 受付2名 診療助手兼エステティシャン1名
開業資金 4500万円
(終わり)
2008.7.01.掲載 (C)LinkStaff

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