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高度機能を持った、かかりつけ医
医療法人弘道会 第2西原クリニック

西原 弘道 理事長

 大阪国際空港のある街として知られる兵庫県伊丹市は大阪市内からもほど近く、衛星都市の一つとして発展してきた。一方、市の東西の端を猪名川と武庫川が流れ、中心部には渡り鳥が飛来し、野鳥のオアシスにもなっている昆陽池公園があるなど、都市部では珍しいほどの自然に恵まれた環境である。
 第2西原クリニックは尼崎市の西原クリニックの分院として2006年に伊丹市野間に開設された。阪急神戸線の塚口駅、武庫之荘駅からそれぞれバスで15分ほどと、いわゆる駅前クリニックのような至便さはないが、開設以来、多くの外来・入院患者さんを迎えている。
 診療の主軸は内科、外科、整形外科であり、高度な最新機器や手術室を完備し、24時間対応救急告示施設にも認定されている。
 今回は第2西原クリニック、西原クリニックを統括する医療法人弘道会の西原弘道理事長にお話を伺った。

 

西原 弘道 理事長プロフィール

1961年に大阪市で生まれる。1992年に兵庫医科大学を卒業後、兵庫医科大学第一外科に入局し、兵庫医科大学病院で一般外科、麻酔科、集中治療室の研修を行う。1994年に川西市の協立病院外科医員、1997年に兵庫医科大学病院第一外科医員を経て、1998年に尼崎市の大隈病院に外科医長として着任する。2002年に同病院外科部長に就任する。2004年に尼崎市に西原クリニックを開設する。2006年に医療法人弘道会を設立し、同年に伊丹市に第2西原クリニックを開設する。
日本外科学会専門医、日本消化器外科学会認定医。

■ 開業前後

 西原弘道理事長は医師になることが「小さいときからの夢だった」と振り返る。小さいときにシュバイツァー博士の伝記を読んで、夢を抱くようになったという。そして小学4年生のときに、弟さんが手を怪我して、天王寺区に当時あった桃山市民病院に入院することになった。これが大きなきっかけになったそうだ。

 「父は事業をしており、夜も仕事で忙しかったし、母も妹を出産したばかりの状況でした。そこで私が弟の付き添いで、1カ月間、病院に寝泊まりしたんです。整形外科の先生方や看護師さんたち、皆さんにかわいがっていただきましたよ。先生方がなんともかっこよく見えましたね。そして医師といえば外科医だというイメージもこのときに植え付けられました(笑)。」

 それゆえ大学卒業後は迷わず、第一外科へと入局することにした。当時の兵庫医大第一外科は1年目を一般外科、2年目を麻酔科、集中治療室で半年ずつという研修システムになっていたという。

 「麻酔も含めて、全部一人でできるようにという教育方針だったのですが、これが私にとっては非常によかったです。私は学生結婚しましたし、卒業したときに既に30歳で、奨学金も返していかないといけませんでした。そのため早く臨床の現場で仕事をしたかったんです。中でも救急を極めたかったので、異動先も救急の症例が多い病院を希望していました。」

 西原理事長の希望通り、研修終了後に配属になった川西市の協立病院は非常に救急の多い病院であった。西原理事長は小外科も含めて、3年間で1000例の症例を経験したという。さらに1998年に着任した尼崎市の大隈病院では年間200例の手術のうち180例ほどを執刀した。

 「同級生の倍の件数だと言えるでしょうね。新しい症例を怖がる人もいますが、私はいつもわくわくする気持ちです。協立病院、大隈病院ともに救急が多かったですし、全身麻酔も私が一人で担当することが少なくなかったですね。」

 西原理事長が救急にこだわる理由は「一番困っている人を何とかしたいから」だそうだ。そして、その気持ちが開業へとつながっていった。

 「300床規模の病院に一次救急で済む患者さんが来ることはおかしいんです。そういう患者さんをとってしまうから、満床になってしまいます。一次救急の機能が全く動いていないんですね。そこで私は一次救急はもちろんのこと、二次の手前のところまで診ることのできるクリニックを開業したいと思ったのです。そういう1.5次救急のできるクリニックがあれば、大病院は二次、三次の救急医療に力を注げますからね。」

 西原理事長の理想とする「1.5次救急」では経過を診たり、入院が必要かどうかを見極めるためにベッドが不可欠であるが、最近、有床で開業するスタイルは非常に珍しくなっている。西原理事長も「ベッドのニーズはない」と様々な反対意見をもらったという。

 「最も多かった意見は『有床にして、誰が当直するのか』というものでしたが、私がすると言うと納得してくれました(笑)。開業後、45日間は自宅に帰りませんでしたよ。46日目に非常勤医師が当直してくれるようになり、すぐに24時間対応救急告示の認定を受けましたので、患者さんも増えてきました。」

 西原クリニックの開設地に関しても、リサーチを依頼した全てのコンサルタントから反対意見を出された。理由は「関西労災病院の近くに開業して、患者さんが来るはずがない」というものであったが、西原理事長は大病院の近くだからこそ、クリニックを開業することに意義があると感じていた。

 「反対意見ばかりを聞いて、余計にやってやろうという気になりましたね(笑)。大病院はフランス料理屋であって、私どもはふらりと入れる赤提灯の居酒屋なんです。フランス料理屋でメインが出てくるまでに時間がかかるように、大病院もCTを撮って、診断がつくまで時間がかかります。一方、居酒屋は食べたいものがサッと出てきます。高度機能を持った検査機器でスピーディーに検査し、一回で診断をつければ、患者さんのニーズに応えられるという確信がありました。」

 西原クリニックは開業以来、増患を続け、19床では明らかに足りなくなった。しかし、20床以上の病院を新規で開設する認可を受けることは京阪神では難しくなっているため、西原理事長は分院という形で、同じ規模の有床クリニックを別地域に新設することに踏み切った。そこで、西原クリニックに救急搬送されてくる患者さんの住まいを調べると、「救急が弱い地区」が割り出された。その場所の一つが伊丹市野間であり、2006年に第2西原クリニックとして開院した。
 第2西原クリニックも西原クリニック同様に、内視鏡、ヘリカルCTなどに加え、マンモグラフィーまで完備している。手術室も備え、痔などの肛門疾患や乳がんなどの乳腺疾患に積極的に取り組んでいる。

 「血圧計とレントゲンだけを揃えて開業する時代ではありません。昔のように無料や『1割』時代ならとりあえず来院していただけましたが、今は通院すれば通院するほどお金がかかるんです。患者さんのニーズは一回で診断をつけてほしいということにあるので、そういう機能を持った開業をすべきでしょう。内視鏡にしてもCTにしても、患者さんが増えてきてから揃えようという人もいますが、私は間違いだと思います。機械があるからこそ、患者さんがいらっしゃるんです。」

■ クリニックの内容

①外科
 外来の症例としては急性腹症が多い。西原理事長の理想である『1.5次救急』の実現のために全身麻酔での手術が可能な手術室を完備し、地域のニーズに応えている。手術のメインとなっているのは盲腸、ヘルニア、痔などである。がんに関しては、胃がん、大腸がんは兵庫医科大学病院、肝臓がんは西宮市の明和病院と病診連携を行っている。

 「私が技術を知っている中で一番上手な先生に基本的にはお願いしていますが、患者さんから『先生、お願いします』とお願いされたら、私どもでお引受けしています。がん手術は月に1例程度ですね。」

 また第2西原クリニックでは術後の化学療法やターミナルケアの疼痛緩和にも力を入れており、近隣の大きな病院から多くの患者さんの紹介を受けている。

 「大きな病院はそこでしかできない治療に傾注していただきたいんです。私どもでできることは積極的にお手伝いしていきたいと思っています。」

 内視鏡のほか、ヘリカルCTやクリニックでは珍しいマンモグラフィーも完備し、女性の放射線技師による乳がん検診も好評である。

②内科
 循環器と糖尿病の専門医がほぼ常勤に近い形で診療を行っている。ただ、循環器に関してはマンパワーの問題もあり、充実した治療が行えていないことが課題となっている。糖尿病はインシュリンの導入、維持などが主な内容である。

  また、昨今、大きな病院が外来を縮小する傾向にある。第2西原クリニックの近隣の近畿中央病院も同様で、第2西原クリニックの内科がサテライト的な役割を果たす機会も増えてきたという。

③整形外科
 専門医が週に2回、勤務し、手術の不要なケースを担当し、手術が必要な場合は西原クリニックで引き受けている。そのため第2西原クリニックでは外傷がメインであるが、膝や腰などの慢性疾患も少なくない。大腿骨や頸部などの大きな手術に関しては大隈リハビリテーション病院と連携を図っている。

■ クリニックの運営・経営方針

①増患対策
 西原理事長の増患対策は「口コミに勝るものはない」と極めて明快である。広告としては西原クリニックの開業時にJR立花駅と阪急武庫之荘駅に看板を出し、現在も継続している程度である。第2西原クリニックに関してはほとんど広告していない。それでも西原クリニックには1日100人、第2西原クリニックにも1日50人の外来患者さんが来るという。病床稼働率にいたっては西原クリニックで90%以上、第2西原クリニックで80%と非常に高い数値をキープしている。

 「本院を開業して4年経ったところですが、これまで『駅の看板を見てきました』とおっしゃった患者さんは2人だけです(笑)。看板広告よりも口コミですね。しっかりした医療としっかりした説明ができれば、患者さんは来てくださるものだと思いますよ。」

 さらに両クリニックの増患を支えている要因として、救急隊との信頼関係が厚いことも挙げられる。西原理事長がかつて勤務していた大隈病院は救急隊員の研修先の一つであり、西原理事長も長く講師を務めていた。

 「尼崎市の救急隊員は皆、知り合いなんですよ(笑)。夜中にお腹が痛くなったと119番する患者さんが近くにいらっしゃったら、私どもに運ばれますね。そういった一次救急や二次の手前までを診る『1.5次救急』のできるクリニックでありたいと思ったのが開業の動機ですから、救急隊に選んでいただけるのは有り難いことです。」

②主治医制
 医療法人弘道会では主治医制を採用している。入院患者さんからコメディカルに対し、病気などについての質問があった場合でも必ず主治医が患者さんのもとへと赴き、丁寧な説明をしている。また内視鏡検査など、他院の医師とやりとりをする機会も多いが、そういった場合も他院の医師に手紙を書いて、適切な報告を心がけている。

 「現在は私のほか、常勤医師1人、非常勤医師3人の体制ですから、大人数というわけではありません。それでも情報の共有化を図るため、カンファレンスも適宜行っています。それから当直に入る非常勤医師には必ずしも『診なさい』と強要していません。私自身であればトラブルに対処する義務がありますが、非常勤医師にはそこまでの責任はありません。自分のできることをしてくれればいいのであって、彼らの夜間の頑張りで利益を上げようとは考えていないんです。大病院による搬送受け入れ拒否も問題になっていますが、私は行政の問題だと思っています。その対策や提言は今後も積極的に行っていくつもりです。」

③スタッフ教育
 西原理事長は兵庫医科大学で恩師の岡本英三教授から言われた「常に患者さんのことを考えなさい」との言葉を大切にし、スタッフにも徹底している。

 「ただしスタッフを怒るのは嫌いなんです。怒るよりもまずは褒めないといけません。我々は一つ間違うだけで死につながりかねない世界にいます。ある薬を使用していいのかどうか不安に思うようなことがあれば、周囲に尋ねることができる雰囲気を院内に作るようにしています。看護師長には若いスタッフが委縮しないで、何でも尋ねられるイメージを保つように、また良いことではなく、悪いことを報告するようにということも言っています。早く報告してもらえれば、早くリカバリーすることも可能ですからね。」

④今後の展開
 救急をメインにした高度機能を充実させたいですね。あと一人医師を増やすことで、専門分野の裾野を広げたり、厚みを持たせることができます。その方が循環器科でしたら、さらにアクティビティが向上しますし、外科なら症例も一気に増えるでしょう。周囲の開業医の方々に「盲腸の疑いがある」とか、「2、3日経過を診てほしい」と頼られるクリニックであることが理想です。
 それから後期高齢者、医師不足、保険制度、救急医療体制など医療を取り巻く様々な問題について現場から発信し、政治家や厚生労働省に働きかけることができたらと考えています。それと並行して、市民講座、講演会やケーブルテレビなどで市民の皆さんへの情報提供も行っていきます。

■ 求人にあたってのメッセージ

 第2西原クリニック、西原クリニックの両クリニックで、管理医師を募集しています。一次救急に興味のある方のご応募をお待ちしています。できれば外科医がベターなのですが、傷の縫合ができるという程度でも構いません。また将来、開業を考えていらっしゃる方で、開業前にクリニック運営のノウハウを見たいという方も歓迎致します。私どもで必ずやいい経験を積んでいただけるものと思います。

■ 院長のプライベート

 趣味は旅行とスキーです。開業後も週の半分は当直をしており、日頃は全く休めませんので、夏休みと冬休みを約10日間ずつ、しっかりとっています。去年の夏はフロリダに行ってきました。スキーはもう20年以上やっていますね。冬休みはスキーと決めていて、今年は北海道に行きました。

■ 開業に向けてのアドバイス

 コンサルタント会社や銀行に相談したとしても、最後に決断を下さないといけないのはご自分です。一度決心したら、誰の責任にもできないということをまず知っておいていただきたいですね。
 医師としての「上がり」は二つあります。一つは教授になることで、もう一つは開業することです。教授への道が無理だと思ったら、早く次の道を目指すべきです。救急を経験しておくことがその道を助けてくれます。もう数年したら、特に京阪神は医師過剰地域になりますので、なおさらプライマリケアの腕が必要になります。勤務医のうちに研修や勉強を積み重ねないといけないでしょう。それでも分からない症例は積極的に大きな病院に紹介すればいいと思います。
 また資金面に関しては、ご自分の生活もあるということを忘れないでください。どこの世界に最初から自社ビルを構えている企業があるでしょうか。最初はテナントに入居し、器械もリースして、損金として計上すればいいのです。

■ タイムスケジュール
勤務医時代   現在
06:00 起床 06:00 起床
07:00 家を出る 07:00 家を出る
07:30 出勤、回診、指示出し 07:30 出勤、回診、指示出し
9:00 外来、検査 09:00 外来、検査
12:00 昼食 12:00 昼食
13:00 手術(なければ休憩、勉強、待機) 13:00 手術
17:30 退勤 17:30 外来
18:00 帰宅 20:00 退勤
21:00 就寝 20:30 帰宅
  ※当直はアルバイトを含めて週に2、3回 21:30 就寝
  ※当直は週に3回
クリニック案内図
医療法人弘道会 第2西原クリニック
理事長 

西原 弘道 理事長

住所 〒664-0873
兵庫県伊丹市野間8-5-10
医療設備 心電図、ホルター24時間心電図、腹部・心臓エコー、ヘリカルCT、マンモグラフィー、透視室、手術室、リハビリ用器械
延べ床面積 950㎡
物件形態 戸建
スタッフ数 理事長、常勤医師1人、非常勤医師3人、看護師30人(パート含む)、事務長、事務員4人、放射線技師2人
開業資金 本院:5000万円、分院:建物別で5000万円
URL http://www.nishihara-clinic.com/
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(終わり)
2009.03.01.掲載 (C)LinkStaff

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