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在宅医療のオンライン化を進める
あんの循環器内科

阿武 義人 理事長

 あんの循環器内科は山口市に位置し、クリニック以外にも訪問診療、訪問看護、訪問リハ、在宅介護、通所リハ、通所介護など幅広く、地域に密着した医療を展開している。市内のメイン通りである国道9号線沿いにあり、またJR山口線の湯田温泉駅や「のぞみ」の停車駅である新山口駅からのアクセスも良く、便利な場所である。昨今のダイヤ改正で新山口駅に停車する「のぞみ」の本数も増え、広島や福岡からのアクセスも容易になり、 通勤圏内になった。
 今回はあんの循環器内科を含めた医療法人社団青藍会の阿武義人理事長にお話を伺った。

阿武 義人 理事長 プロフィール

1974年に九州大学医学部を卒業後、山口県立中央病院で2年間の研修を行う。その後、山口大学医学部第二内科に入局し、松崎益徳教授に教えを受ける。専門は内科と循環器科で、心エコー図を専門分野とする。山口大学医学部附属病院で第二内科医長、病棟長を務めた後、1990年6月1日に山口市にあんの循環器内科を設立する。日本内科学会認定医、日本循環器学会認定・専門医。

■ 開業前後

 阿武理事長は山口県阿武(あぶ)郡の出身であるが、「あんの」と読ませる苗字である。
 これは「阿武の」が次第に訛って、「あんの」になったということだ。阿武理事長は1974年に九州大学を卒業した後は故郷の山口県に帰り、山口大学で研鑽を積むことになった。

 「松崎益徳教授は心エコーの大家で、日本循環器学会で名前を知らない人はいないというぐらいの有名な先生です。松崎先生から直接の教えを受け、私も心エコーの勉強に取り組みました。」

 大学病院で第二内科棟長まで務めた阿武理事長だったが、徐々に開業を考えるようになる。そして1990年に山口市であんの循環器内科を開業した。当時は田んぼの中を国道9号線が走り、あんの循環器内科が建設されるまで、何もなかったような場所だったという。

 「今でこそ国道9号線に沿って便利な場所にありますが、当時はなぜこのような場所にと思われたかもしれません。しかしながら国道9号線が後にメインの通りになることは分かっていましたので、それを念頭に置いて、この地に設立しました。先を見越しての場所選びが今となっては大きなプラスになっています。」

 開業当初は本部の隣の3階建ての建物で、1階は外来、2階は19床の病棟という形でスタートした。当時の標榜科目は内科と循環器科、小児科だったという。小児科は開業当初から患者数が多く、地域のニーズに応えるために病児保育も開始した。1993年12月には医療法人社団「青藍会」が認可されている。
 さらに介護保険制度が始まる前の1997年に老人保健施設を設立し、併設の形で社会福祉法人を1996年に設立し認知症のデイサービスを行っている。

 「開業当初は子どもの数も多かったので、病児保育を作ったといういきさつがあります。しかしメインは循環器ですし、成人以降の方が対象となるので、急性期の治癒終了後の生活を支えるために介護保険とリンクしやすい形で施設を増やしていきました。」

■ クリニックの内容

 現在の標榜科は循環器科、脳神経外科、呼吸器科、小児科、リハビリテーション科となっている。患者数は外来が約200人程度だという。
 医療法人青藍会はあんの循環器内科の外来治療、病棟の亜急性期治療、リハビリ、老人保健施設での維持期リハビリ、在宅医療支援センターでの訪問看護、訪問リハビリと在宅に向けての一連の流れを作っている。山口市の約20万人規模の場所に点在して施設を持っているため、オンライン化の必要性を早くから感じ、2002年には電子カルテを導入した。

 「電子カルテは全国でも早い方でしたね。私どもはSEが多いというのも特徴で、ロータスノーツからの提案を受け、SE4人で作り上げた1つの画面で医療と介護一度に見ることができるという国際特許を取っています。今年はちょうどバージョンアップの年になっているので、その作業をしていかなければいけないところです。」

 医療法人青藍会には6つの拠点の中に40弱の部署があるため、情報共有は課題であったが、紙ベースのカルテを使って、状況などを電話で確認していた時に比べて、極めて効率的になったという。また、医師が本来するべきことに専念でき、診察のスピードも向上したといったメリットも大きい。

 「オンライン化によってどの施設でも来られた患者さんの情報がすぐに分かります。最近の不況の中で贅沢品としての外来診療が減っていますが、在宅医療は命綱のようなものです。それがあるからこそ、家族が家で面倒を見ることができるわけですし、家族が見られない場合は住宅型有料老人ホーム、シニアマンションがあります。ここに力を入れる以上、地域に根ざして残っていけるはずです。」

 6月には道路を挟んだ向かい側にあるビルに在宅医療支援センターを開設し、コメディカルによる当直体制を整えることが決まっている。

 「訪問看護の人材も優秀な人が多く、ほとんどのことは医師を通さずに判断できています。医師の診断が必要な場合は365日24時間、連絡が取れる体制も整っています。また三次救急などの場合は直接病院へ搬送をするようにしています。」

 また、山口県では小学校、中学校、高校の全学年の全生徒を対象に、公費負担での健診が行われているが、そこで再検査が必要となった生徒をあんの循環器内科で診ている。
 山口市は県庁所在地で、山口大学・県庁・県警・市役所があり、いわゆるホワイトカラーの街である。総合大学である山口大学の学生や職員数は多く、あんの循環器内科にも多数の関係者が来院しているという。

 「学長もいらしてますよ。最近は年齢層も広がったので、いわゆるプライマリケアに力を入れています。プライマリケアというと高齢者のイメージがありますが、真のプライマリケアは全年齢的なものだと思います。専門を循環器としながらも、幅広い医療を行っているため、医師を増やし、さらなる充実を図りたいと思っています。」

■ 運営・経営方針

① 職員教育
 新入職員に関しては、本部で人事課が主催する4日間の研修を行う。1日目は座学、2、3日目は清掃、4日目は介護の基本実習を研修させ、終了後に各部署に配属する。
 また、医療法人青藍会では法人が費用を負担して、キーパーソンとなる人に様々な講演などに参加させたり、先進的な取り組みをしている施設などを見学させている。
 現場でも充実した内容の研修を行っている。医療系と介護系に分かれた研修を月に2回ほど行い、そこでは知識や技術の習得のほか、講演などの勉強会に参加した人からの報告を受け、情報共有や意見発表をする。最近では、他の施設から見学に来ることも増えており、他の医療法人との連携も進んでいる。また階層別に分けた研修制度もあり、管理者へのステップアップも万全の体制が取られている。

 「副理事が東京などの講演に出かけた際に有益なものがあれば、帰ってきて伝えるのではなく、実際に講師に来ていただいて講演していただいています。全国でもトップクラスの方を年に数人お招きしています。医療も介護も変化が激しい分野であり、特に昨年の医療についての改訂にあたっては、特定健診などについて数カ月連続で専門家に指導して頂きました。」

② 今後の展開
 現在、山口市内では私どもが最も多くの在宅の患者さんを診ています。関連施設として住宅型有料ホームなどもあり、入居者の方たちの具合が悪くなると入院していただいたり、必要であれば老健施設でリハビリをするなどの対応ができます。住宅やリハビリ施設のほか、認知症の方たちに対する体制づくりはできていますが、要の部分はやはり医師です。循環器か、呼吸器を専門とした、常勤医師と全人的医療のできる医師を募集したいと思っています。

■ 求人にあたってのメッセージ

 高齢化がさらに進む2035年問題と言われているように、これから日本の医療が抱えていくのは20年後の問題です。高齢化は西高東低で、現状は西の方が高齢者が多いのですが、東京などの東はこれから進んでくる地域です。私どもは日本一真剣に在宅に取り組んでいるという自負はありますが、私どもの仕事は若いDrたちにとっても大切でしょう。いずれ東でもしていかなければいけないことを既に私どもではチーム医療で実現している自信を持っています。専門が循環器か呼吸器の方がベストなのですが、一般内科で全身を診ることができ、人生経験が豊富で、人の話をしっかり聞ける医師に来ていただきたいですね。そのような先生方が活躍できる場を用意していますので、興味をお持ちになった方とは積極的にお会いしたいです。

■ 院長のプライベート

 歴史が好きで、長州に関することなどいろいろ詳しいですよ。一番の趣味はインターネットです。1985年からパソコン通信を始めたので早い方だと思っています。1985年か86年頃、山口大学がオーダリングシステムを導入したんですが、これは旧帝大系より早かったですね。そのため必然的にパソコンを覚えていったということでしょうか。趣味でもあり、仕事の一環でもありますね。多くの情報を仕入れることが好きなんですよ。

■ 開業に向けてのアドバイス

 今後は高齢者向けの医療の必要度が高くなってくるでしょう。周辺の医療状況に応じた対応ができるように、幅広い知識を持って開業されるのがベストだと思います。開業のために必要な勉強をしっかりと行い、将来のビジョンをはっきりと持って開業することが成功への近道です。

■ タイムスケジュール
勤務医時代   現在
06:30 起床~朝食 07:30 起床~朝食
07:00 出勤 08:30~  
08:00 ミーティング | 診療(午前)
08:30 外来診察、病棟回診 ~12:30  
13:30 昼休み 12:30~  
14:00 病棟回診 | 昼休み(昼食)
18:00 退勤 ~14:00  
19:00 帰宅 14:00~  
24:00 退勤 | 診療(午後)
24:00 就寝 ~18:00  
18:00~ ミーティング/市の医師会当番/メーカー主催の勉強会/説明会/学会など
(日によって予定は異なる/~23:00)
※21:00~21:30 夕食
25:00 就寝
クリニック平面図
医療法人青藍会 あんの循環器内科
理事長

阿武 義人 氏

住所 〒753-0813
山口県山口市吉敷中東1-1-1
医療設備 X線透視撮影装置、CT、心エコー(ドップラー)
物件形態 戸建
延べ床面積 6718㎡
スタッフ数 理事長、常勤医師3人、非常勤医師5人、看護師61人、療法士(リハビリ専門職)10人、検査技師1人、薬剤師6人、栄養士7人、事務員11人、その他96人
開業資金 約5億円
URL http://www.seirankai.or.jp/
(終わり)
2009.05.01.掲載 (C)LinkStaff

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