①日帰り手術専門外来
楽クリニックのメインであり、下肢静脈瘤、鼠径ヘルニア、痔、胆石、皮膚のしこりなどが対象疾患である。術後は自宅で療養できるため、精神的負担を減少させ、また治療時間も少ないので、入院のための時間を取りづらい自営業者や主婦に人気の手術であるが、クリニックレベルで日帰り手術をメインに打ち出している施設はまだ少ない。藤田院長は日帰り手術のパイオニア的存在である徳洲会病院に長く勤務し、技術を磨いてきた。
検査では超細径スコープによる経鼻内視鏡検査を行うほか、2005年当時は和歌山県内に一台しかなかった小腸内視鏡も完備している。そのうえで楽クリニックでは適応を絞り、施設の能力を充分に把握すること、術前の最新の病状の検索を怠らないこと、日帰りにこだわりすぎず、無理ならば近隣の病院を紹介することなどを方針としている。日帰り手術には高度で最新の技術や機器が必要なため、藤田院長も常に研鑽を積む姿勢を崩さない。
流れとしては、1回目に検査を行い、手術対象かどうか判断を下す。2回目が検査結果の説明で、手術日を決定し、手術の説明を行う。3回目が手術当日で、退院可能なら次回の受診日を告知する。退院不可能であれば提携病院へ入院となる。手術翌日には経過を伺う電話をし、2、3日後には社会復帰となる。さらに1週間後に4回目の受診で術後の診察をするというものだ。
「クリニックの名称のように楽に治療ができ、痛みが少なくて済むような体にやさしい治療を心がけています。麻酔も従来の下半身麻酔から全身麻酔へと変わってきましたし、それぞれの特徴を生かした麻酔にしていますが、救急での経験が役に立っていますね。この10年で手術の方法も劇的に大きく変わっていますので、学会や研究会などで勉強を続けています。」
②外科
下肢静脈瘤は女性の患者さんを中心に多くの患者さんが来院している。藤田院長は広島の清水クリニックの清水康廣院長やお茶の水血管外科クリニックの広川雅之院長に教えを乞い、現在の体制を作ったという。また鼠径ヘルニアは執行院長のほか、福岡のおだクリニック日帰り手術外科の小田斉院長、札幌のみやざき外科・ヘルニアクリニックの宮崎恭介院長、市立四日市病院の蜂須賀丈博医師といった日本のトップクラスの医師のもとを訪れ、勉強を重ねた。
「一生懸命やっている姿勢を持って教えを乞うたら、見学においでと誘っていただけるものです。そこでフットワークを生かして、見学に伺ってきました。レベルの違う先生方のお話を聞くだけでも勉強になりますね。」
③胃腸科
内視鏡検査がメインであり、検査結果次第では和歌山県立医科大学附属病院や日赤和歌山医療センターなどに紹介している。
「勤務医時代より開業後の方ががんの発見率は高いです。少ない外来人数ながら、月に1、2人の割合で発見し、紹介状を出しています。」
④肛門科
痔で来院する患者さんがほとんどである。藤田院長は開業にあたり、大阪市の黒川梅田診療所の黒川彰夫院長や京田辺市の増田クリニック肛門科の増田芳夫院長のもとに通い、執刀数万例をこなしてきた神業のようなスキルに感動を覚えたという。
楽クリニックでは開業以来、日帰り手術に合う、痛みの少ない治療を模索している。以前、何回も再発した患者さんにシートン法を用いたところ、良好な結果を得た。しかしシートン法で使用する糸が海外からしか手に入らないと諦めていたところ、日本の糸でも薬を染み込ませれば使用できることが分かり、藤田院長自らが休みの日に糸作りを行っている。以前ではPPH法を得意としていたが、術後の合併症で日帰り手術に適さないケースもあるため、楽クリニックでは古典的治療法と融合させた治療を行っている。
「お二人のクリニックは伝説のクリニックですね。一般的な外科の常識を超えた手術で、無理と思われる疾患も治してしまわれます。私も肛門疾患の研究会には10年以上、出席し、術後の合併症などを勉強しています。経験も違いますが、今後も努力を続けたいですね。また地域への啓蒙活動も積極的に行っていきたいと考えています。」
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