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一人一人に合ったオーダーメイドの医療を
石川内科クリニック

石川 雅邦 院長

 石川内科クリニックは2008年11月4日に開院した。場所は東京都足立区にあるメディカルモール、ハートアイランド新田メディカルスクウェアである。新しく開発されたマンションの密集地に新設されたモールであるが、周囲には隅田川と荒川に囲まれた自然豊かな場所もあり、広大な河川敷を利用した野球場などのレクリエーション施設が整備されているなど、緑地が広がり、サイクリングやジョギング、ウォーキングを楽しめる区民の憩いの場ともなっている。
 以前はバスを中心とした交通手段が主力であったが、1991年に東京メトロ南北線が開通し、都心へのアクセスも便利になった。また、都市開発によって高層マンションも増加し、若い世代を中心とした人口が右肩上がりの発展を遂げているエリアである。
 今回ご紹介する石川内科クリニックは消化器・呼吸器・循環器・糖尿病といった内科を中心としながら、様々な症状から併発されるアレルギー科も標榜した、地域におけるかかりつけ医として、近隣住民の健康をトータルにサポートしている。
 「一人一人に合ったオーダーメイドの医療を実践する」と話す石川雅邦院長にお話を伺った。

石川 雅邦 院長プロフィール

1960年10月16日、東京都に生まれる。1988年に順天堂大学医学部を卒業後、順天堂大学研修医を経て、1992年に順天堂大学消化器内科へ入局した。その後、各地の順天堂大学附属病院で経験を積み、2006年9月に順天堂静岡病院で内科医局長に就任する。2007年4月に浦安市川市民病院の消化器内科科長を経て、2008年11月4日に石川内科クリニックを開業した。
所属学会:日本内科学会、日本消化器病学会、日本肝臓病学会、日本内視鏡学会
認定医:日本内科学会認定医、日本内視鏡学会認定医
専門医:日本消化器病学会専門医、日本肝臓病学会専門医

■ 開業前後

 石川雅邦院長は芸術や建築関係の分野に興味を持っており、医師という職業に就く将来像は全く頭になかったそうだ。しかし医師という職業に目覚めたきっかけは病弱であったご両親にあると語る。

 「高校生のときに両親がともに肝臓を患ってしまって、それが医師としての職業を意識したきっかけですね。それまでは建築を学んだり、学校の先生になることをおぼろげながら考えていました。自分の手で治そうという使命感なんでしょうか、育ててくれた両親の力になりたいと思いました。」

 順天堂大学医学部を卒業後、石川院長は消化器内科を選択した。ご両親が消化器系の疾患を患っていたということもあるが、将来的には開業の可能性もあると感じていたのだという。

 「外科や小児科も選択肢の中にはありましたね。手仕事のある分野に携わりたいというのが私の頭にあって、内科を選択するのであれば、機械やカテーテルを使える消化器か循環器かなと考えました。両親の病気のこともありましたしね。勤務医、研究医、開業医という将来の道の中で、もし開業を選ぶのであれば、外科ですと、せっかく身につけた技術を置いていかなければならないのかなと思ったんです。それで内科全般を勉強し、将来の糧にしようと決めました。それに、不器用だから外科は止めておけと両親に言われたということもあります(笑)。」

 その後、勤務医としての経験を積んだ石川院長が開業医としてのグランドデザインを描きだしたのは順天堂静岡病院で内科医局長に就任した頃だ。当時はご家族とは離れて、単身赴任で勤務していた。精神的な支えであるご家族との別居生活は負担が大きかったという。2007年に医局人事で浦安市川市民病院の消化器内科科長として赴任した頃から、看護師である奥様の助言もあり、開業に踏み切る決意をする。そこから開業地を具体的に模索し始め、現地に決めたのは2008年の春先であった。
 「都内は開業医の激戦区だという認識はあり、色々と探しているうちに難しさを感じていましたが、この地は競合のクリニックが近隣に比較的少なく、都市開発も盛んで、若い世代を中心に人口が増加傾向にあったというのがポイントでした。また古くからの住宅街や商業地も近くにありますし、慢性的な疾患を抱えている高齢者の割合も比較的多い地域です。余命を左右する現代の2大疾患はがんと循環器、脳疾患、糖尿病などの血管系で、症状が軽い状態もしくは無症状の時期からの予防、未病が大切であると私は思っています。慢性的な疾患を持っている高齢者で、初期の症状の方は多いですし、若い世代の方は予防の一助を担えるのではないかと考えています。私の理想の医療を実現できる場として最適だなと思いました。自宅から通えるというのも非常に大きいですけどね(笑)。」

 石川院長は建築や設計の分野に興味を持っていたこともあって、内装のレイアウトにはこだわりがあった。白を基調とした院内、オレンジを基調とした待合室や診察室の椅子、デスクなどがバランスよく配置され、温かみがあり、落ち着いた雰囲気を醸し出している。

 「全てが私の理想とする医療を実現するためのこだわりですね。内装業者には口出しをし過ぎてしまったようです(笑)。」

 またスタッフの募集には新聞折込やハローワークなどを利用したが、看護師の確保には非常に苦労し、開業日1カ月前でも完全に決定していなかったのだという。

 「受付事務は早めに決まったのですが、看護師は開業日ぎりぎりまで決まらずに、苦慮しました。医師だけではなく、看護師も不足しているのだなと改めて実感しましたよ。集まったスタッフは意識も高く、クリニックを運営していくにあたり、非常に助かっています。」

 開院に先立つ内覧会はメディカルモール内の小児科や歯科のクリニックも同時オープンのため、メディカルモール全体で行った。お子様を連れたご家族の方や歯の治療に訪れた方なども来院し、盛況であったという。

 「大変盛況だったのですが、モール全体で何百人と来ていただいたので、患者さんの傾向を掴むことはできませんでした。メディカルモールのメリットを感じつつも、医療はデパートのように食品のついでに衣服を買うのとは違うという意識を常に持っています。医療は誰でも同じ方法が通じるということではなく、一人一人の患者さんにあったオーダーメイドの医療の提供を心がけるということを肝に銘じました。」

■ クリニックの内容・経営方針

 石川内科クリニックは地域住民に感冒はもちろん、高血圧、糖尿病の管理のほか、各種肝臓病(C型肝炎インターフェロン治療)、ピロリ菌除菌治療、呼吸器疾患、喘息、花粉症を始めとするアレルギー疾患など、内科全般に対する診断、治療、各種予防注射に対応している、いわゆるかかりつけ医(家庭医)の役割を担っている。
 診療方針は4つの言葉で掲げている。

1.ていねいに
・患者さまの訴えやお話を拝聴し納得がいくまでご説明申し上げます。
・検査の説明などは不安がないようにわかりやすく丁寧にいたします。

2.お一人お一人に
・一人ひとりの患者さんの生活環境、病状に適した医療を目指します。

3.負担を少なく
・少ない投薬で最大の効果が得られるよう努めます。

4.的確な判断で
・可能な診療範囲を超えていると判断した場合、他施設を紹介させていただきます。

 石川院長の診療のコンセプトは「一人一人に合ったオーダーメイドの医療」である。

 「ありきたりかもしれないですが、患者さん一人一人と対峙すると、同じ病名、同じ症状であっても、それぞれの感じ方や捉え方は違います。なぜなら一人一人が違った人生を経験しているからです。どういうふうにお話をして、どういうふうに喜んでもらえるのかという部分を非常に大切にしています。」

 石川院長は大学病院在職中には胃カメラを年間400~500例、大腸鏡200件余りの症例をこなしていた消化器系の治療、予防医療のスペシャリストだ。石川内科クリニックでは患者さんにとって苦痛の少ない最新の最小径・経鼻内視鏡を採用し、大腸カメラでポリープを切除、治療することが可能な数少ないクリニックの一つである。

 「内覧会にいらっしゃった患者さんも来院されていますね。大腸に関しては、病院ですと小さなポリープでも安全性を考えて入院させるケースも多いのですが、当院では可能な範囲でその場で処置しています。入院の必要性もなくなりますので、患者さんの経済的な負担の軽減につながっているようです。胃がんの発生率は増加していないものの、依然として日本人には多く、早期発見、早期治療が必要です。また大腸がんは女性のがん死因の一位であり、40歳代から急激に増加しています。大半は初期症状がないので、診察の際に気がつくことがあれば、お勧めしています。」

 現在ではプラセンタ注射やにんにく注射、AGA治療なども取り入れている。開院当初は採用していなかったが、看護師である奥様のアドバイスにより始めたそうだ。若い世代が集まっている立地なので、非常にニーズが高いという。始めた当初は来院した患者さんへ勧めていたが、今では注射だけで来院するケースが増えている。

■ 今後の課題・計画

①増患対策
 石川院長は今後の課題として、クリニックをより成長させるために地域住民にどのようなアピールをしていくのかということを挙げた。現在、ホームページの作成が進行しているほか、広い範囲での折込チラシを配布することを計画中だ。今のところ、近隣の若い世代を中心とした患者層なので、子どもから高齢者の方までの幅広い患者層を目指すために、宣伝活動に一層力を入れていく。

 「診療では、EDの診察を最近始めたところですが、後は皮膚科の領域を広げていきたいです。当院では内科とつながる部分でのアレルギー科を標榜しているのですが、アトピー性皮膚炎などの患者さんが非常に多く見受けられます。まだ具体的な実行には移せていませんが、勉強していくべき分野ですね。近々どちらかで勉強させていただいて、診療に活かせればと思っています。それから訪問診療も検討しています。周辺のマンションには若い方が多いので、ニーズを吸い上げてはいませんが、医療に対する地域のニーズに合わせて、地域の一員として成長して、応えていきたいですね。」

■ 院長のプライベート

 最近はなかなか通うことができませんが、水泳や有酸素運動をしに、スポーツジムに行くのが好きです。あとは温泉やドライブに出かけたり、皆さんとあまり変わりはないですね。設計や建築の分野には今でも興味があり、雑誌を買って、クリニックをこんな感じにできればいいなあと照らし合わせながら、読んでいます(笑)。そんな雑誌を眺めていると、昔に立ち返って設計してみたいなあという衝動にも駆られますね。

■ これから開業を考えている人へ

 まだ私も開業して間もないので、おこがましいのですが、開業医には全人的に診られるプライマリケアが求められていますので、自分の専門分野を全面に出してやっていくのは非常に難しいのではないでしょうか。開業医には広範囲にわたる知識が必要ですので、幅広く、色々な領域を視野に入れた方がいいでしょう。地域性や住民の年齢層なども、開業地の選定には必要なファクターですね。そういった部分をじっくりと調査をしていけばいいのではないかと思います。

■ タイムスケジュール
クリニック平面図
石川内科クリニック
院長

石川 雅邦 氏

住所 〒123-0865
東京都足立区新田3-34-5
ハートアイランド新田メディカルスクウェア内 3F
医療設備 X線撮影システム、心電図、超音波装置、生体モニター装置、細径経鼻内視鏡、大腸内視鏡システム、超音波ネブライザー、画像ファイリング装置、電子カルテなど
物件形態 ビル診
延べ床面積 47坪
スタッフ数 院長、看護師3名、受付事務2名
開業資金 2,500万円
URL ホームページ作成中
(終わり)
2009.07.01.掲載 (C)LinkStaff

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