HOSPITAL INFO - 多根総合病院の取材記事

　1949年にフィリピンの戦場から生還した多根要之助前理事長が「戦後の日本の復興に何か役立ちたい」という思いを抱き、大阪市西区九条に21床の病院を開設したのが多根総合病院の始まりである。「愛を原理とし、秩序を基礎とし、進歩を目的とす」はきつこう会の理念であるが、この理念には多根前理事長の強い思いが込められている。
　島根県山間部の貧困家庭に生まれた多根前理事長は幼い頃に父が死亡し、小学校を卒業すると同時に働き始めた。本来の「家族愛」に恵まれず、貧困に耐えながらも、社会の人々の「家族愛」に支えられ、独学で勉強し、医師になった。したがって、「愛」と医療のさらなる発展をめざす「進歩」といった言葉を中心とする理念になったのだという。
　1968年には救急病院の指定を受け、1969年には多根総合病院の名称が承認される。これにより、名実ともに大阪市西部を代表する急性期病院として存在価値を高めることになった。
　1980年代になると、多根第二病院、多根記念眼科病院、多根クリニックなど、きつこう会自体の組織が大きくなり、多根総合病院は急性期の総合病院として、きつこう会を牽引する役目を担っていく。
　1998年には全国に先駆けて、日帰り手術センターが設置される。
　これまでの手術は入院が必要でしたが、医療技術・手術方式の進歩、新型医療機器の開発などにより日帰り手術が可能になってきました。米国では7～8割の比率で日帰り手術が行なわれています。日帰り手術は身体・精神両面での負担も軽く費用においても入院手術に比べ2～5割も安く患者さまの経済負担も少なくて済みます。
　2004年には、全国200床以上の病院を対象に日本経済新聞社が調査した結果において、急性期病院として全国24位という評価を受けました。
　また、2009年1月から、これからの地域医療の主役を果たす「社会医療法人」になりました。これは、利益は患者さまのものであって、経営するものが決して「私」であってはならないという主旨が徹底され、厳しい条件をクリアしたものだけに許可される極めて「公」に近い医療法人です。
　2011年3月には新病院も完成し、多根総合病院の新たな歴史が始まろうとしている。医療、保健、介護のトータルヘルスケアを実現する、大阪市内では唯一とも言える施設である。
　「医師、看護師、患者さんを磁石のように惹きつける魅力ある病院と定義されるマグネットホスピタルを目指したいですね。要之助の志を引き継ぎ、お世話になった社会の人々に恩返しし、患者さんの幸せとともに歩みたいという思いを実践していきます。」