プロフィール
医療法人社団 心和会 八千代病院
千葉県八千代市は千葉県の北西部に位置し、千葉県で7番目に多い、約18万5千人の人口を有する都市である。市内に八千代台、勝田台、米本、高津、村上の五つの大規模住宅団地があり、中でも1957年に完成した八千代台団地は日本の大規模住宅団地の発祥の地として知られている。八千代市は首都30キロ圏の位置と交通の便、自然環境の良さから、首都圏のベッドタウンとして急激に発展した。1996年には都心に直結する東葉高速鉄道線が開通し、東京メトロ東西線との相互乗り入れで八千代緑が丘駅と大手町駅を約38分で結び、八千代中央駅、八千代村上駅も含め大型ショッピングセンター、高層マンション、瀟洒な住宅街が出現し、都心への通勤に便利な地域としても注目されている。
八千代病院は1956年に開院して以来、約半世紀に渡り、地域の精神科医療を担ってきた。明るく、広々とした療養環境のもとで、医師、看護師、精神保健福祉士、作業療法士など多くの専門スタッフが「人」を大切にした精神医療を提供している。近年は急性期の精神科医療や認知症といった、時代のニーズに合った診療に力を入れるなど、千葉県の精神科医療をリードする存在である。
荒井宗房理事長は残念ながらお時間が取れなかったため、お父様の荒井壽明会長にお話を伺った。
荒井壽明 会長プロフィール
1942年生まれ。1968年に日本医科大学を卒業後、日本医科大学付属病院、古河電工日光電気精銅所付属病院、山梨赤十字病院などを経て、1974年に八千代病院に着任する。院長、理事長を歴任し2007年に医療法人心和会の会長に就任する。日本消化器病学会専門医など。
荒井宗房 理事長プロフィール
1979年生まれ。2004年に東京大学医学部を卒業後、都立老人医療センター、(現東京都健康長寿医療センター 東京都板橋区で研修を行い、その後シニアレジデントに進む。その間にも、大前研一が代表するBBT大学院大学でMBA取得し、2007年に医療法人社団心和会の理事長に就任する。
病院の沿革
1946年に荒井理事長のお爺様である荒井元吉先生によって、四街道市に荒井医院が設立されたのが八千代病院の歴史の始まりである。荒井医院は1954年に荒井病院に発展し、1955年には八千代市に八千代診療所を開設する。
「父は軍医だったんですよ。満州などにも赴任していたのですが、四街道市の下志津に砲兵隊があり、そこで終戦を迎えました。そのため、馴染みのあった四街道市で診療所を開業することになったようです。荒井医院は町の診療所といった趣で、産婦人科まで診ていましたね。八千代診療所は京成本線の大和田駅の近くで、結核を中心に診療にあたっていました。」
1957年に八千代診療所は53床の八千代病院となる。当時は結核が減少してきた一方で、精神疾患が増加の兆しを見せていた。荒井元吉先生は「社会構造がますます複雑になり、人間の受けるストレスが多くなれば、精神病の患者さんが増えていくだろう」と判断し、1963年に精神科を併設した。
当時の精神病床は全国に約3万床しかなく、1954年に実施された全国精神障害者実態調査による要入院患者35万人に対して1割も満たない状況だった。そのため、国は法律を改正し、補助金なども出して、精神病床の増加に努めていた。この結果、1960年には8万5千床、1965年には17万5千床、1975年には27万5千床まで増え、八千代病院もこの流れに乗り、1965年には135床、1968年には214床、1969年には343床と増床が続いた。
「当時の病室は畳部屋で、30人から40人ぐらいの患者さんが左右に枕を並べて寝ていたんですよ。今からすれば劣悪な環境のようですが、患者さんの間にはある種の秩序が形成されていて、お互い助け合って生活されていましたね。当時はアルコール中毒や薬物中毒の患者さんも多く、病室にお酒を持ち込んで、夜間に酒盛りをしていたこともあったそうです。入院患者さんが2階の病室からシーツを繋いだものを垂らし、退院した患者さんがそれに一升瓶を結んで、差し入れていたんですよ(笑)。また、職員の目を盗んで、何度も無断で離院していた患者さんもいました。職員から『脱獄王』と呼ばれた患者さんで、今も伝説になっています(笑)。患者さんも職員も元気があって、和やかな時代だったんですね。」
その後1983年には、八千代市米本の国道16号線沿いに新しく「新八千代病院」が開設された。これは高齢社会の到来を見据えて開設された病院で、200床の療養病床を有していた。
また、精神科の八千代病院は、1988年に現在地である八千代市下高野に移転を行う。1989年に福祉ホーム(現 地域移行型ホーム)、1990年に援護寮を併設したほか、八千代病院自体も、1991年に重度痴呆患者さん用の50床を増床して、422床となった。
「大和田の旧病院が老朽化してきたことと、京成大和田駅周辺の宅地化の進行を受け、静かな療養環境を求めて、新築移転に踏み切りました。新設の新八千代病院と合わせて、トータルな医療を目指していくことになったのです。新築移転の頃はやはり忙しかったですね(笑)。精神科医療を取り巻く環境が大きく変わっていったことも実感する日々でした。」
1992年には、新八千代病院に近接する土地に介護老人保険施設である荒井記念ホームが開設され、1996年に新八千代、1998年に大和田に訪問看護ステーションを開設する。また新八千代病院の回復期リハビリテーション病棟は、千葉県で初の施設基準総合承認Ⅰを取得し、千葉県の東葛南部医療圏広域支援センターとして療法士80名以上を擁し、患者の早期復帰への医療に努めている。
そして2001年には八千代メンタルクリニックが開設される。京成本線、東葉高速鉄道の勝田台駅から徒歩2分の立地である。
「八千代病院が森の中に移転してしまったので、駅前にサテライトクリニックが必要になったんです。八千代病院の副院長をはじめ、各医師が外来を担当しています。地域のニーズに合わせ、夜7時まで診療を行っています。」
2008年、新八千代病院に隣接して健診クリニック棟が新築され、本年6月にShinwa medical resortとして、内装を一新しリニューアルオープンした。健診施設に加え、スパ、フィットネスを併設しており、「健康の価値を高める」をモットーに、病院色を払拭した施設としており、利用者の皆様に好評をいただいている。これは荒井会長のご子息で、現理事長の荒井宗房氏の構想によるものだ。
「このクリニックの特徴は1つの施設で医療、各種の健診、フィットネス、スパトリートメントなど、様々な角度から医療と癒しの連携を行い、健康増進へのトータルケアを目指すというもので、日本ではまだ珍しい存在ですね。」
医療法人社団心和会では八千代病院、新八千代病院など全ての施設を合わせると、病床数は約715床、職員数も850人を超える。今後も地域に根ざした医療サービスの提供が実現されていくだろう。