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「急性期医療から慢性期医療、在宅医療までをシームレスに繋ぐ」
社会医療法人 美杉会 佐藤病院

プロフィール

美杉会 佐藤病院

美杉会 佐藤病院

 大阪府枚方市は京都府、奈良県との府県境に位置する。かつては京街道の宿場町であり、北河内地域の中核的な都市として発展してきた。七夕伝説やひらかたパークでも知られている。市の西部を京阪電鉄本線、東部をJR東西線が通っており、京阪電鉄本線の牧野駅一帯は住宅街に加え、複数の大学がある文教地区になっている。2012年には駅前広場の再開発が完成し、東口にバス乗り場を備えたロータリーが設置された。佐藤病院は2002年にその牧野駅から徒歩20分の場所に新築移転を行った急性期病院である。病床数120床の規模ながら、大阪府のがん診療拠点病院に認定されるなど、がん診療では目覚ましい成果を上げている。経営母体は医療法人美杉会で、近年は男山病院、みのやま病院も傘下に加わるなど、急性期医療から慢性期医療、在宅医療までをシームレスに繋いでいる。
 今月は佐藤病院の河合泰博院長にお話を伺った。


河合 泰博 院長

河合 泰博 院長 プロフィール

1959年に福井県に生まれる。1989年に京都大学を卒業後、田附興風会北野病院、医仁会武田病院で研修を行う。1994年に京都大学大学院に入学する。1998年に大学院を修了し、北野病院に勤務する。2001年に佐藤病院に外科部長として入職する。2009年に佐藤病院院長に就任する。
 日本外科学会専門医、日本消化器外科学会認定医、がん治療認定医など。

病院の沿革

 佐藤眞杉理事長が1979年に開設した有床診療所が佐藤病院の前身である。1982年に佐藤病院となり、1988年には120床までの増床が行われた。

 「開設以来、地域密着型の医療を行っています。在宅医療という言葉が耳慣れない1990年に在宅医療、訪問看護、透析を始めたんです。医療機能評価機構の認定も1999年が最初でしたから、全国的には早いですね。その頃、『日本の良い病院ベスト100』のようなランキングにも選ばれました。『患者さんのために、患者さんの目線で今すぐ医療を行う』のが基本的な考えです。遠くの大きな病院に行くという選択肢もありますが、近くの病院で医療を受けられるのが患者さんにとってはいいことなのだという信念を持ち、人や道具を増やしてきました。その結果、もともとは小さな有床診療所だったのが、外科、整形外科、内科と増えていき、佐藤病院の新築移転に際しては心臓カテーテル検査も行えるようにしたり、最先端のCTも導入しました。」

 河合院長が外科部長として、佐藤病院に着任したのは2001年のことである。

 「外科では私が着任するかなり前から腹腔鏡手術を取り入れていましたが、私が当院に来るにあたって、必要な道具などを更新させていただいたのです。当時の腹腔鏡は保険診療上はそれほどの評価はありませんでしたが、それでも積極的に行ってきました。」

 佐藤病院は2002年に現在地に新築移転を行う。手術室が2室しかないなど、それまでの施設が手詰まりになってきたからだ。新築に際しては手術室を4室に増やすなど、ハイスペックな医療設備を整えた。

 「今は4室でも手詰まりですけどね(笑)。当院は120床ですので、一般的には小さい病院です。規模が小さいと、療養病床がメインになる病院が多いのですが、当院でもどちらを選ぶのかと議論した時代もあったんです。そのときに急性期を選び、しかも最先端医療を取り入れていこうという方針にしました。そのため、病院の規模からすれば、かなり高額な医療機器を多く導入しています。」

 2009年には関西医科大学附属男山病院を継承する。男山病院は関西医科大学の3つ目の附属病院として、京都府八幡市に1975年に開設された病院である。当時、212床を有していたが、関西医科大学の構想整備に伴い、医療法人美杉会が継承することになった。

 「212床の病院を120床の病院が引き受けるのは冒険でしたし、大変なこともありましたが、やり切りました。建物の耐震性に問題があり、これを建て直すのも冒険でしたね。しかし、投資に踏み切り、2014年に綺麗な病院に生まれ変わりました。継承したときは赤字でしたが、医師や患者さんも集まるようになったので、今は単年度の黒字を達成しています。」
 
 2015年にはみのやま病院の経営に携わることになり、2016年に正式に法人化した。みのやま病院は京都府八幡市にある50床の病院で、内科、内科、整形外科、リハビリテーション科を標榜し、外来人工透析や在宅訪問診療、通所リハビリも行っている。
 
 「みのやま病院は当院に勤務されていた医師が開設したのですが、赤字になったため、佐藤理事長にご相談があったんです。美杉会としてもJR松井山手駅の近くに拠点を作れるのが魅力でしたし、佐藤病院も男山病院も平均在院日数12日ほどの急性期病院ですので、患者さんの移動先が法人内にあるのは有意義だということでお引き受けしました。5カ月で単月度黒字になり、それからずっと安定しています。美杉会の3つの病院を中心に、老健や特別養護老人ホームなど、健康な方が病気になったり、体力が落ちたり、生活に困ったときに、どこかでお世話をしてさしあげたいですし、それが法人内であれば紹介自体も簡単に済むのがいいですね。」
 
 美杉会では有床診療所も開設している。
 
 「これは赤字覚悟ですね(笑)。ただ、病院を退院した後も、治療が必要な方の受け入れ先として重要です。法人施設内で、その時々の病態やニーズに応じた施設にシームレスに移れるのは患者さんも安心です。在宅で急変した場合はまずは病院できちんと診ますが、ある程度、良くなってきたときの退院先に心配がいらないとなると、地域の信頼に繋がります。患者さんのご要望に応える形で自然に進めてきたのが、結果としては地域包括型になったのだと思います。」
 
 2015年には大阪府がん診療拠点病院の認定も受けた。
 
 「大阪府でがん診療拠点病院の指定要件があり、がん患者さんの数などを調べていると基準を満たしていることが分かったので、手上げしたんです。120床の病院が大阪府のがん診療拠点病院になることは珍しいのですが、認めていただけました。現代人の半分ががんになり、3分の1の方が亡くなっています。したがって、地域医療において、がん診療は外せないものなのです。地域の皆様からの信頼をいただくためにも、がん診療には力を入れています。手術、化学療法、放射線治療の3本柱に加えて、男山病院には緩和ケア病棟を作りました。緩和ケアの考え方はがんという診断を受けたときに始まるとも言われていますので、緩和ケアチームを立ち上げ、男山病院のみならず、佐藤病院や外来機能も含めて取り組んでいます。2016年に名誉院長に就任した山岡義生医師は京都大学の元教授ですが、緩和ケアにも強いので、助けてもらっているところです。」
 
 佐藤病院では今後も切れ目のない地域包括ケアを推進していくだろう。

2017.06.01 2017.06.01 掲載 (C)LinkStaff

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