ドクタープロフィール
ドクター神津
神津院長は昭和52年に日本大学医学部を卒業後、同大学第一内科に入局され、その後、神経学教室が新設されると同時に同教室へ移られました。医局長、病棟医長、教育医長を長年勤められ、昭和63年、アメリカのハーネマン大学およびルイジアナ州立大学へ留学。帰国後、特定医療法人佐々木病院(内科部長)を経て、平成5年に神津内科クリニックを開業された。神津院長の活動は多岐にわたり、その動向は常に注目されている。
2006年8月号  介護保険残酷物語
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  介護保険残酷物語

  患者の妻「先生、介護保険て、なんなんですか・・・」
  Dr.「え、なんのことですか?」
  患者の妻「だって、私の夫は膝が悪くて動けないのに、この間来た在宅支援センターとかいうところから来た人が、動かなきゃいけない、家の中を掃除しなさい、掃除機を掛けなさい、っていうじゃないですか、動けない人を介護するのが介護保険じゃないんですか?」
  Dr.「そういえば、四月から介護保険の見直しということで、まだ動ける人に対しては、出来るだけ生活活動度が落ちないように、寝たきりにならないようにと支援する体制に変わったのですね。」
  患者の妻「変わったか何だか知らないですけど、うちの主人が何悪いことをしたっていうんですか。長年お国の為に働いて、勲章ももらい、会社の社長もやって社会の為に良い事ばかりやってきたのに、こんなひどい仕打ちを受けるなんて(泣く)・・・。」
  Dr.「それはその人が悪いわけじゃないんですよ、国がそうしろと。老人が病気になるとお金がかかるから、元気でいてください、そういう意味なんです。」
  患者の妻「主人もそういうんです、その人が悪いんじゃないんだ、やらされてるんだからって。その人を恨むのは筋違いだって。」
  Dr.「そうでしょう。」
  患者の妻「でもね、それをさせるために契約書にサインをさせられたんですよ。その人に従わなければ介護保険を打ち切るって。そんなこと、あるんですか?」
  Dr.「それはちょっとね。介護保険というのは、ケアを必要とする人に対して、社会全体で助けてあげましょうという理念から作られたものなんですが、実は、医療費の抑制を目的にもしていたんです。日本が戦後豊かになり、医療が進歩発展し欧米並みの医療内容になったのはいいのですが、それにかかるコストも高くなった。それでも、先進国に比べればまだまだ安いのですが、20年後30年後を考えると、今からコストを抑えなければ国の財政が破綻してしまう、という危機感を政府が持ったからなのです。しかし、社会福祉にお金をかけることは、国民の幸福のためになることですから、当然どんどんとやらなければならない。そのためには企業の収益から取れる税金をもっと上げてもいいんです。もちろん、消費税も上げないといけない。しかし、日本の沿岸をコンクリートで埋め、鹿や熊しか通らない道路を作るといった公共事業をまず減らさないといけない。だいたいですね、国家予算といっている80兆円の他に、特別会計といって違う財布に莫大なお金を日本の国は持っているんです。それをアメリカの国債を買うのに使ったり、余計な公共工事や役人の天下り先の給与に消えている、こんな事が許されている国はおかしいですね。」
  Dr.「2000年より前にマッキンゼーという会社が調査したところ、医療サービス分野における成長は1.4兆円規模だと試算し、これは『医療産業』といってもよい、これに国は目を付けるべきだ、とアドバイスしたんです。昔の厚生省だったら、こんな話はとてもじゃないけれど大見得切って議論できない。日本医師会から何ていわれるか。だけど、今じゃ厚生労働省だから、労働省としては雇用の促進などの施策を考えなければならない。で、介護は医療からはずす、と。医療保険とは別です、と。介護は介護サービスというサービス業だから、これに関連する業者に儲けさせる、雇用が確保されれば、失業率も下がる。医師にもその分け前を上げますから、居宅療養管理指導を行う『みなし業者』になってくださいよ、と。」
  患者の妻「そうなんですか。だから、かかりつけの先生も何も何も教えてくれないんですね。医者外しですか・・・。」
  Dr.「そうなんですよ。この介護保険の基礎を作った人たちの中には、昔の日本医師会のおじいさん先生たちにいじめられた、木っ端役人や、病院事務スタッフ、保健福祉分野の青二才たちが少なからずいて、今度は自分たちが逆襲する番だ、とばかりに、まじめなお医者さんたちを『医者はみんな嘘つきだから』呼ばわりして、介護と医療を切り離したんです。とにかく、介護保険とそれを支える組織作りの強引なことといったらなかったですね。だから今でも可笑しいわけですよ。だいたい、『介護』という患者さんに対するアプローチは、医療的な知識なしには決して出来ません。医療者のアドバイス、医師の指導によって介護スタッフがチームの一員として働かなければ、決して良い介護が出来るわけがありません。あなたのご主人だって、介護用のご主人と医療用のご主人と二つに分かれているわけじゃないでしょう?」
  患者の妻「そうですよ、冠動脈閉塞で心臓バイパス手術も受けたし、お腹の大動脈瘤の手術もしました。今は先生に血圧も診て頂いているし、膝には毎週整形外科で注射をしてますから、れっきとした病人です。この契約書にサインさせられる形ばかりの介護保険利用者なんていうんじゃないですよ、主人は。たまたま保険を利用しているだけで、れっきとした『患者』ですから。」
  Dr.「いやいや、本当ですね。この介護予防だか介護支援だか何だか知りませんが、老人をいじめるだけのもののようですね、お話を聞くと。」
  患者の妻「私たち、こんなひどい仕打ちを受けるために、保険料を年金から支払っているんですか?先生も、年をとったら、すぐ寝たきりになったほうがいいですよ、なまじ元気だと、地獄を見ます。」
  Dr.「ん~ん。高度高齢社会というのは、日本の社会のために一所懸命働いた老人にとっては、高度幸福化した社会でないといけないと思っているのですが・・・。日本国民は、自分たちの国を、北欧のように優れた社会福祉国家になぜしようとしないのか分からないですね。」
  患者の妻「馬鹿ばっかりなんですよ、日本の官僚も政治家も国民も・・・。」
 (註:このお話は事実に基いていますが、一部を除いてフィクションです、悪しからず。)

神津内科クリニックでは新患登録10000人を突破しました。クリニックでお祝いをした時の写真です。

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