最近wifeがNetflixにはまって韓国の連続テレビ映画を見始めた。女子はコンピューターの設定が不得意なので、私が代わってPWを決めてカード決済の入力をしてあげた。今では夜遅くまでPCで続きを見ているので、私の睡眠時間が削られて困っている。毎日の診療が終わった後、スーパーにwifeが夜の買い物をしている間に、iPhoneをハンドルに置いて「Chuck」を見ているのを冷ややかな目で見ていた彼女だが、最近は「あなたが待っている車の中で見る気持ちがやっと分かった」と共感してくれている。
今年は夏休みに外国旅行には行けそうもない。COVID-19も燻っていて自主的な自粛が必要だ。そんな時には、7月号でも紹介したPrime Videoで連続テレビ番組を見るのがおすすめだ。日常診療で緊張を強いられている我々にとっては、シリアスなものよりheart wormingなものの方がリラックス出来る。Humanity、患者の命に寄り添うには、sense of humorが何より大切だ。
2007〜2012年「CHUCK」
主人公チャックは、母を亡くした後父が失踪したことで、医師である姉とそのボーイフレンドの外科医と共に借家住まいをしているさえない若者だ。彼はアメリカでは10指に入る名門であるスタンフォード大学の成績優秀な学生だったが、カンニング疑惑で退学の憂き目に合う。ある日、友人でありライバルだったCIAエージェントのブライスから送られて来たCIA (Central Intelligence Agency=中央情報局) やNSA (National Security Agency=アメリカ国家安全保障局) の全機密情報を集めた最新テクノロジー「インターセクト」を脳の中に移植されてしまう。その結果、この情報を巡って様々な組織からチャックが狙われる事になる。CIAはチャックを守るために、ヒロインの美人エージェント、サラ・ウォーカーと、愛国主義者でレーガン大統領を崇拝するジョン・ケーシー少佐を警護にあたらせる。長いシリーズを視聴者に飽きさせないために、どんでん返しの意外な展開が随所に散りばめられている。脇役陣がこれまた個性派揃いで、やりたい放題ドタバタしてストーリーを盛り上げる。ゴージャスでセクシーなアクションコメディ。
2010~2020年「Hawaii Five-0」
元Navy SEAL(アメリカ海軍特殊部隊)で活躍した、オーストラリア出身の俳優Alexander O'Lachlan が演じるSteven Jack McGarrett少佐が、ニューヨーク市警からホノルル市警に転勤してきた、アメリカ俳優Scott Andrew Caan 演じるDaniel Williamsと共にハワイ州内の事件を解決する物語。日系韓国人、ハワイ現地人などの脇役が個性的で、ハワイ州の知らない側面を見るのも興味深い。
コーヒーにバター
Hawaii Five-Oのシーズン5、エピソード15で出てくるのがコーヒーにバターを入れて飲むシーン。ある朝McGarrettの自宅にDaniel Williamsが前日の捜査結果を報告しに来る。
「娘に男友達からメールが頻繁に来るのが頭にくる」
と小言をいいながら、キッチンでコーヒーを飲むのだが、ふとMcGarrettのコーヒーの入れ方を見て、
「おいおい、何でコーヒーにバターを入れるんだよ!」と驚く。
Steve「鍛える男の朝食だ。エネルギー補給で脳がよく働く。お前も脳を働かせろよ」
Dany「心臓発作ならold fashionで行くよ」
と冷蔵庫からミルクを取り出して呆れた顔でコーヒーカップに注いだ。
このシーンを見ていた時には、えーっコーヒーにバター?かなり脂肪が多くてしつこいんじゃないの?とDanyと同じ感想を持った。その後中鎖脂肪酸の健康情報を調べていて、最近はMCT oilをコーヒーに入れて飲むことがトレンドになっていることを知った。それでもう一度このシーンを見直してみると、SteveがDanyに「Yeah, grass fed butter」といっているのが分かった。コーヒーにバター、ではなく、コーヒーにgrass fed butterだったのだ。
Bulletproof coffee
コーヒーにgrass fed butterを入れて飲むのは、2014年に出版されたDave Aspreyの「The Bulletproof Diet(シリコンバレー式自分を変える最強の食事)」から始まったといわれている。「The Bulletproof Diet」は「完全無欠ダイエット」と訳されていて、The Bulletproof coffeeは完全無欠コーヒーというわけだ。
Grass fed butterは、無農薬で良質な草を食べて、放し飼いにされてストレスのない牛から作られるバターだ。トウモロコシや大豆など普通の飼料を食べて牛舎で育った牛のバターに比べると、不飽和脂肪酸、ω9,ω3を多く含んでいて、燃焼しやすく、血中脂質を下げて代謝を活発にし、体重を減少させる働きがあるといわれる。免疫力の向上、アレルギーの抑制、血流改善作用も期待される。また一般的にバターに含まれる酪酸(短鎖脂肪酸)の量がGrass fed butterは多く、炎症抑制作用のある制御性T細胞を増やすともいわれている。
料理研究家の ベッキー・ハーディンが作るBulletproof coffeeのレシピには、このGrass fed butterに加えて、ココナッツ由来の中鎖脂肪酸MCT(Medium Chain Triglyceride)が入っている。
- MCTは、
- 1)母乳に含まれる成分であり、抗菌・抗炎症作用がある。
- 2)長鎖脂肪酸より分子が短いため、消化・吸収されるスピードは4~5倍早い。炭素を切り離す回数が少なくなり、消化に余分なエネルギーを使わずに済む。
- 3)小腸から門脈を経由して直接肝臓に運ばれ、エネルギーとしてすべて残らず使われるため、体脂肪として蓄積されにくい。
- 4)体内で分解されてケトン体に変換され、糖質が利用できない時の代替エネルギーとなる。特に長時間走り続けるスポーツに向いている。
- 5)ブドウ糖の代わりにケトン体が脳のエネルギー源となるため、アルツハイマー病の予防・改善、また、集中力を高めたい時にも活用できる、などのメリットが多く、完全無欠コーヒーには必須な要素だ。
最近では、ココナッツオイルに抗ウィルス作用があることが分かって、COVID-19にも効果がありそうだと、ココナッツの産地であるフィリピンで研究が行われている。
完全無欠コーヒーのレシピ
これにピンクソルトとシナモンを加えるのがベッキー・ハーディンのやり方で、私も毎日これを加えて飲んでいる。ピンクソルトはヒマラヤ山脈で採掘される岩塩で、普通の塩よりもNaが少なく、世界で最も多種類のミネラルを含んでいるといわれている。シナモンにも豊富なミネラルやビタミンが含まれており、ビタミンB1、B2、Ca、Mg、Fe、Ca、K、Zn、ナイアシンなどが摂れる。また、毛細血管の老化防止に効果のある桂皮アルデヒドが含まれている。効果として、消化促進、抗菌、抗炎症作用、発汗、抗酸化作用、血糖安定作用、脂質低下作用も謳われている。
〈私の作り方〉
- まずはGrass fed butterとMCTココナッツオイルを用意する。私はGhee+MCT oilも買ってみたが、味も使い勝手も固形バターの方が扱いやすかった。
- コーヒーはハワイのコナコーヒーのような甘い香りのものが良さそうだが、私はベトナムコーヒー(皮ごと煎った甘めの豆)を使っている。
- ミキサーに入れたての熱々のコーヒー、Grass fed butterとMCTココナッツオイルを大さじ一杯入れ、ピンクソルト、シナモンを加える。
ミキサーをしっかりと密閉しないと飛び散って大変なことになるので注意が必要だ。ミキサーがなければミルクフォーマー(牛乳泡立て器)を使って攪拌しても良い(右の写真の左側)。最近安いシェーカーをAmazonで手に入れたので(右の写真の右側)、今はそれを使っている。下の写真の左側がベッキー・ハーディンのHPからのもので、右側は私が入れたものだ。
ベッキー・ハーディンからのメッセージ
このコーヒーは、栄養と健康への科学に基づいたアプローチであり、あなたの人生をより素晴らしいものにするためにテストされ、証明されています。Bulletproof coffeeは、正しいやり方で1日を始めるのに必要なすべてのものを備えています。
バターとMCTオイルの健康的な脂肪は、コーヒーを飲むときによく起こる食べ物への欲求を抑えるのに役立ちます。したがって、理論的には、体重を減らすのに役立ちます。
コーヒーを飲むと、最初は気分がよくなりますが、睡眠不足で飲用すると、しばらくして疲労感や集中力の低下、頭痛などが起きてしまいます。これがカフェインクラッシュです。バター入りのコーヒーは、最初は奇妙に聞こえるかもしれませんが、それは思ったほどクレイジーではありません。コーヒーにバターを少し加えると、朝の最初の食事で健康的な脂肪を十分に摂取できます。これはあなたにエネルギーを与えるのを助け、あなたがカフェインクラッシュに終わらないようにします。
バターはまた、最高のラテのように、コーヒーを超クリーミーにします。皆さんもこのレシピを試してみてください。Bulletproof coffeeの利点はあなたを納得させるのに十分であるべきです。しかしそれも超おいしいことを忘れないでください!あなたがバターでコーヒーを試したことがないなら、今がその時です。牛乳やクリームよりも美味しいことに驚かれることでしょう。
〈資料〉
- 1) Hawaii Five-0:
- https://amzn.to/32DdxWc
- 2) デイヴ・アスプリー(栗原百代訳) 「The Bulletproof Diet(シリコンバレー式自分を変える最強の食事)」、ダイアモンド社、2015.
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- 3) 何が違う?》グラスフェッドカウ(牧草飼育牛)VSグレインフェッドカウ(穀物飼育牛):
- https://bit.ly/30qyZeo
- 4) ココナッツコラム「MCTオイルとは!?:
- http://www.cocowell.co.jp/column/25.html
- 5) Fabian M. Dayrit, Ph.D. and Mary T. Newport, M.D.; The Potential of Coconut Oil and its Derivatives as Effective and Safe Antiviral Agents Against the Novel Coronavirus (nCoV-2019):
- https://bit.ly/2WDeJoU
- 6) BULLETPROOF COFFEE RECIPE (HOW TO MAKE BULLET COFFEE):
- https://bit.ly/2WIkFwR