「医師として」メインタイトル
その先生が医師になったのは44歳の時。
一般の大学を出て、会社勤めの後に医師を目指した。
けれど、だからこそ、医療にかける想いは人一倍強い。
今回は、明るく朗らかな医師が心に秘めた「想い」の物語。
 

第8話
使命~自ら選んだ医師の世界~
(前編)

 一 64歳、漠然とした条件の内科医
64歳、漠然とした条件の内科医
「最近の求人状況が知りたい・・・」当時64歳だった先生から頂いたこの1本の電話から私と先生の1年がかりのお付き合いがスタートしました。

先生からの電話を受け、私は先生のご希望を伺いました。

先生からは「病院の規模は100床前後、療養型は不可、科目は総合内科・消化器内科・専門性では糖尿病、主治医として病棟も診るが外来は必ずする、検査もする、当直は病院からの要請があれば受ける、地域は日常生活が送りやすい地域なら大阪、京都、奈良でもどこでも良い…」といった内容でした。

先生のご希望に沿う医療機関を選定し、後日面談にて報告させて頂けることになりましたが、この時点の私は正直迷っておりました。

大変お忙しい先生がわざわざ面談の時間を割いて頂けることは大変ありがたいのですが、『求人状況が知りたい』『地域はどこでも良い』この言葉が引っかかり、先生のプライオリティをつかみ取ることが出来なかったからです。

そこで私は先生の冒頭のお言葉『求人状況』を先ずは大まかにお伝えさせて頂く事に決め、求人の選定を各エリア(大阪、京都、奈良、滋賀、和歌山)から3病院、計15病院を選定し、面談に挑む事を決断しました。その上で先生のプライオリティを探る事が出来ればと期待もしていました。
 二 希望の真意
半年後の転職に向けて
面談当日、私は約束の時間の30分前に現場に到着し様々な事を考えていました。

今回持参した求人で先生は満足して頂けるのか? 既に先生もご存じの求人ばかりで先生をがっかりさせないか? 先生はどういったお考えをお持ちで、どういった感じの方なのか? 不安な気持ちでいっぱいでした。私はこの度の面談に対する準備不足、プライオリティをつかめなかった私の力量不足を悔やんでいました。

約束の時間の10分前に先生は到着されました。

その一言目、先生は関西弁丸出しで滑舌よく元気な声で、「リンクさんですかな!? えらい待たせたんと違いますか? 私も昔は営業してましたからこういった時の皆さんの行動は何となく分かりますねん。待たせてしもてえらいすみませんでしたなぁ。それはそうと、どうでした? 求人ぎょうさんありましたか? 私が絞りにくい希望を言うてしもたからだいぶ苦労したんとちゃいますか? まぁとりあえずゆっくり座って話しましょ。」と……。

関西商人と言われても誰も疑わないであろうその人柄と先生から頂いた数々の気遣いの言葉で私は一気に先生に惹かれました。
席に着き一通りの挨拶と先ほど先生から頂いた言葉で救われた事を伝え、早速本題に入りました。
持参した15病院のリストをすべて見て頂き、先生のご感想を伺いました。

先生は「これ全て私のような歳のものでも構いませんのか?」と言われましたが、その点は全てクリアーしている旨をお伝えすると先生は表情を変え、物思いに更けっているような、何か考え込んでいるような声で「ほんまにありがたいですな…」と一言発しました。

その後先生は再度、持参した病院を丁寧に確認されました。一通り見終えた先生が座席に深く座りなおし私に対してご自身の経歴、医療に対する思いを話し始めてくれました。

その内容に私は驚き、恐縮し、感謝し、お詫びの気持ちでいっぱいになりました。と同時に、先生が私に伝えてくれた『希望の真意』を知ることが出来ました。
そしてこの話しを聞いてからが本当の先生とのお付き合いの始まりになるのでした。
 
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