「医師として」 - 基礎から臨床へ 定年後の新たな挑戦（後）

その後、複数の医療機関へ相談させて頂くも、やはり即戦力として活躍して頂ける経験・スキルをお持ちでなく、年齢面でも定年後のDrとなると検討しようがないというのがほとんどの医療機関からの回答であり、T先生が求めるエリアも関東での人気エリアだった為、早々に行き詰ってしまいました。

T先生ご自身も、臨床から30年近く離れた高齢Drを好き好んで取ってくれるところは簡単には見つからないだろうと現状に対して十分に理解を示して下さり、エリアも広げ待遇面も気にしなくて良いので受け入れてくれるところがあれば提案して欲しいと仰られ、求人探しを再スタートさせて頂くことになりました。

その中で、自宅からの通勤圏内にて介護老人保健施設が1件見つかりました。
この施設では、入所定員が100名を超えている為、医師の配置基準が1名以上となり、非常勤のDrも週に2日程度勤務されており、80歳を超えた施設長の後任を担って頂ける「人柄の良いDr」を募集しているとのことでした。

後日、T先生にも施設見学に行って頂き、その人柄の良さに施設の採用担当者も非常に喜ばれ 話を進めさせて頂けることになりました。
臨床能力に関しては少しずつ勘を戻して頂ければ問題なく、非常勤のDrはもちろん、ベテランNSも複数名在籍しており、すぐ近くにグループ病院がある為、夜間の急変時なども一切心配されずに勤務頂ければ大丈夫とのことで、双方ともに喜んで頂くことが出来ました。

今回、T先生の担当をさせて頂いたことで、あきらめない気持ちがいかに大切であるかを再認識させて頂いたと共に、「医師」としての能力はもちろん大切ですが、「人」としての魅力、すなわち「人間力」が最も大切なものであると、しみじみ感じさせて頂きました。